豊竹英大夫さん | おけぴ管理人インタビュー#8 | チケット救済 | 公演紹介 | 観劇ノススメ | 検索 | 使い方(FAQ) | サイトマップ | トップ |



舞台を作り上げている人たちにお話を聞くおけぴ管理人インタビューシリーズも 第8弾となりました。今回の管理人インタビューは、文楽の太夫、豊竹英大夫(とよたけ はなふさだゆう)さんです!
2年前、文楽教室に誘われて、はじめて文楽を見て、 文楽って面白い!と思った管理人ですが、その後 文楽好きの方達の観劇会などに参加しているうちに、 とても気さくな英大夫さんと知り合い、ぜひお話 きかせてください!とお願いして、実現いたしました♪ 公演本番の後、お話をお伺いしてきたのですが、 この後さらにお弟子さんのお稽古があるというハードスケジュールの中、 1時間、とっても楽しくお話して下さいました。 たっぷりとお聞き(お読み)下さい!


※以下、括弧内※印は管理人注釈です

文楽を知らない人も多いと思うので、最初に”文楽”についてお聞かせ下さい


文楽というのは、骨太な三味線の音に乗って、 義太夫が、鍛えられた声を駆使して縦横に、人情の機微を語り分け、 端正な顔立ちの人形が、その語りと一体となり、 的確な動きを通して物語を彩るというものなんですね。

起源は江戸時代、17世紀後半、 天王寺村の百姓だった竹本義太夫という人物が、 畑仕事をしながら旦那衆が近くの家で古浄瑠璃(こじょうるり)という浄瑠璃 (三味線を伴奏として太夫が語る音曲)を習ってるのを聞いているうちに、 浄瑠璃がうまくなり、義太夫節を作り出したんです。

その竹本義太夫義太夫節という「技」と
近松門左衛門という劇作家の「知識」の出会いが、文楽を作ったんですね。

ちなみに、文楽という言葉は、植村文楽軒という人形浄瑠璃一座、興行主の名前だったんです。
つまり歌舞伎でいう「松竹」(興行主)にあたる言葉が、人形浄瑠璃でいう「文楽」だったんです。
(※昔は歌舞伎も松竹歌舞伎のほか、東宝歌舞伎もありました)


文楽の世界に入られたきっかけは?

最初はね、やる気なかったんです。

大阪生まれなんですけど、進学のために中学から上京して、 大学(※東大!)に落ちて、小説家になろうと思ってたんですね。

ちょうどその頃、僕の祖父が亡くなって、お通夜の時に、 芸がめちゃめちゃ素晴らしい呂大夫さんという方が
「声が大きいから太夫になれ」と言うんですよ。
確かにちっちゃい頃から声は大きかった。 (※中学の時、弁論大会で優勝されてます!)
で、やれやれやれやれ言われて。。。
この時点では、やってみてやっぱりあかんかったら、小説家になろうと思ってたんです。
(※ヒッピーになってもいいと思ってたそうです)

ところが、文楽の世界へ入って、 今まで古臭いと思っていた文楽に改めて触れてみたら、
こんなシュールな、サイケデリックなものはないなと思ったんです。
シュールレアリズムの小説を書こうと思ってた僕が
文楽の舞台を見て、こんなシュールでサイケなものはない!と興奮しまして。

そして、浴衣を着て、師匠に「酒屋のさわり」というのを稽古してもらったんですが、
これはすごいなと。わけわからんけどすごい、と思いました。


小説家志望から文楽へと入って行ったんですね

祖父が太夫だったので、 子供時分から文楽も結構見てるんですけど、拒否反応を示してました。
わけわからんし。古臭いもんやと。何言うてるか分からんし。

ただ、この時、自分が書きたいと思っていた大江健三郎倉橋由美子の シュールな小説と、文楽の芸術芸能とがピッタリ合ったんです。 文楽もわけわからんでしょ?

それでちょっとくらい続けようと思ったんですね。
50歳を過ぎてからやっと(※!)、 文楽に打ち込まんとあかんなと思うようになりました。

太夫にとって大切な素質はなんでしょう?

声が大きいことと、ええ声とかいうのも確かにあるんですが、
一番大切なのは「言葉」、それと「情」ですね。
声の良さが邪魔になることもあるし、
声の大きさが邪魔になることもあります。

声がええから言うて、泣かせられるとはならないですしね。
単に綺麗やから、美人やからええとは限らんのと同じです。

芸的素養というのは生まれつきのもんですが、
もともと持ってるその素養も、クレイジーなほど努力してこそなんです。

だから文楽では、芸は一代。
もちろん私は祖父が太夫だし、そういう方もいますけど、 世襲じゃない人の方が多い世界なんです。

時々テレビとかでも放送されてますが、生は本当にいいですよね。


生の良さは、やはり緊張が伝わることでしょ。 ドキドキしてるのが伝わると思います。

毎日タイミングとか間は変わりますか?

その日の体調によって違いますね。いわゆるアドリブは、型が決まってるのでないですね。

語りながら人形を見たりもされるのでしょうか。

なるべく見ないですね。
ただ、人形を待つ場合はたまにあります。
まず太夫が主で、三味線、そこに人形があわせる形です。


外国人の方も結構客席でみかけますね

彼らは、日本の文化に対する感心が大きいですね。
日本人以上に文楽を知ってますよ。

客席にはご年配の方が多いでしょうか

経済的な問題もあるかもしれませんね(※でも一等で5800円、二等だと2300円!)。
あとは時間的な問題。開演4時とかですからね。そんなん若い人にはなかなか無理ですよね。

イヤホンガイドはいいですよね。

ええですよね。
イヤホンガイドを聞いた人に質問されると困るんですよね、 僕らより物知りになってるから(笑)。
僕らは口伝(くちうつし)で節で習ってるから、
時々知らない文学的知識をイヤホンガイドで解説したりするんです

公演での字幕表示については?

邪魔やいう人いますけどね。
聞くのと読むのでは違うでしょ。
それに漢字って大事でしょ。
少しでも分かりやすく公演を見ていただけるように、 2、3年前から始めました。


文楽って休憩時間は短めですよね

歌舞伎は、食堂で食べさせて儲けようとするでしょ。
だから30分以上使うでしょ。
うちはロッカー10円とかじゃないですか。儲け主義じゃないんです(笑)。

文楽も、昔はビール飲んで食事しながら観てもよかったんです。 大阪道頓堀の朝日座の前の更科というそば屋のきつねうどんを こう二つ持って入って来て、こうやって食べながら見てる人もいましたね(笑)。 40年ほど前かな。

芝居ってのは元来、飲み食いしながら楽しめるもんだったんですが、 今は隣の人と話すのもダメですよね。 掛け声とかは、こっちも嬉しいもんですけどね。

あと、寝るのはいいんだけど(※いい寝方。下記写真左)、
こうやって寝られたら嫌なんですよ(※写真右)。 こっちからはよう見えるんです。この人眠たそうやなぁとか。

終わってから「よかったですよー!」と言いわれても、 アレー?確かずっと寝てたよな〜って(笑)


オフの日は?

次の仕込みです。

心がけてることがあれば教えてください

風邪をひくということはまずい。 ひいても黙ってますもん。 声が出なくなっても、少々喉を痛めても、舞台に立つ。 それによって、また声の出し方が分かってきたりするんです。 病気するのは悪ですね。


体調管理でされてることがあれば教えてください

じゃがいものとぎ汁。
毎朝朝食前に必ず飲みます

りんごのとぎ汁ってあったでしょ。あれのじゃがいも版。 昔、越路師匠が十二指腸潰瘍をやったんです。 それにええってことで、当時僕は内弟子してたんですが、 じゃがいもをするのが僕の役目で、ずっとすってたんです。 その頃、僕は胃が悪くて消化薬と胃の痛み止めを持ってたくらいなんですが、 師匠のをすりながら、ちょこちょこ盗み飲みしてたんです。 そしたら調子が良くなってきた。 今はもう全然薬は飲んでません。

作り方は、皮を剥くでしょ(※メークインが剥きやすいそうです)
それを、大根こするのでするでしょ。
すったら、日本手ぬぐいの布巾に入れて絞る。
それだけは今も続いてますね。

文楽と宝塚歌劇の共通点があると?

芝居をする芝居心が、文楽も宝塚も同じ大阪出身やというところ。
東京の発想じゃないでしょ。東京やったらもっとお洒落でしょ(笑)。
大阪のほんま大阪らしいところです。

宝塚も結局上方芸能ですよね。
原色で迫ってくる。文楽も、そうなんです。
宝塚ファンで文楽ファンって方は多いですよ。
なので宝塚ファンの方で、結構文楽にはまる人も多いんです。

みんながみんなそうではないでしょうけどね。
僕のまわりには、文楽と宝塚はまってる人が多い。


ゴスペル・イン・文楽といった創作活動も積極的にされていますね

僕らは今の時代に生きてますからね、
今の世代に伝わるものをやるんですよね。

このたび「ゴスペル・イン・文楽」のDVDが出来上がりました。
英語と日本語の字幕入りです。→詳細はこちら

それから、今度、6月27日に、虎ノ門のJTアートホールで シェーンベルグの浄夜、六重奏に語りを入れてやります→ 詳細はこちら。 シェーンベルグの浄夜は、それを元にした詩があるんですが、 その詩を義太夫節にして語るんです。そこに人形も入ります。 ほんとのコラボレーションですね。 現代の人にもしっかりアピールして、 古典芸能を見に行くという言い訳を与えたいわけです。

なので、ゴスペル・イン・文楽も新作浄瑠璃の一つで、 別にゴスペル文楽を普及させようというわけじゃないんです。

文楽って難しいかもって思ってる人にまず来てもらおうということですね

確かにそんなに一般の人は知りませんもんね。
文楽の情熱的なファンに誘われない限り、自分で行こうという気にはなりませんよね。

ただ最近、歌舞伎・落語ファンが増えてますよね。
歌舞伎、落語のルーツは文楽なんです。
せやから、歌舞伎や落語の作品の中には文楽をパロディ化したようなものもあります

その歌舞伎や落語を鑑賞して、
筋立てのルーツは文楽ということで文楽を見に来てくれる、
これが嬉しい!!


この後、お弟子さんのお稽古があるというので お部屋に少しお邪魔させていただき、
おっと発見して見せていただいたのがこちら。 なんだかとっても新鮮です。

文楽、一度も観たことのない方はぜひ一度ご覧になってみてください。
太夫の声にのった感情、三味線の醸し出す雰囲気、そして人形の心からの演技。
みているうちに人形を人形と思わなくなります。
笑えるシーン、そして泣けるシーンも非常に多いです。私自身も毎回涙ぐんでます。
初めての人は文楽鑑賞教室とか、わかりやすくて、
お値段もお手ごろでいいかもしれません(国立劇場のHPチェックしてみよう)。

英大夫さんは本当に気さくな方で、ほんとに楽しくインタビュー させていただきました。

豊竹英大夫さんは、ホームページも持っておられて、写真なども豊富に 掲載されていますので、ぜひご覧ください→こちら






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