11月26日開幕、新国立劇場『ヘンリー四世』二部作!初日を前にフォトコール、囲み取材が行われました。
『ヘンリー四世』二部作は、王・ヘンリー四世とその息子のヘンリー五世の世代に焦点を当てたシェイクスピア歴史劇シリーズの大作、今回は第一部-混沌-、第二部-戴冠-として交互上演いたします。
中嶋しゅうさん、浦井健治さん、佐藤B作さん、ラサール石井さん
【フォトコール~第二部 第5場より~】
この日公開されたのは、まさに大詰め、放蕩三昧だったハル王子がついに王冠を戴きヘンリー五世として颯爽と登場。悪友フォールスタッフとの関係が劇的に変化する名場面。
まず劇場に入ると目に飛び込んでくる舞台セットに息をのみます。舞台と地続きの客席、櫓の高さ、そして奥行きは新国立劇場中劇場だからこそ実現する空間。さらに幻想的な照明、まもなく迎える初日に向けてのスタッフの緊張感、取材陣の期待感…、何とも言えない空気で満たされた心地よい劇場空間です。
第二部の第5幕からの抜粋シーンが始まります!
陽気な二人!
写真左より)フォールスタッフ(佐藤B作さん)、シャロー判事(ラサール石井さん)
新たな王を迎える友…
法院長(今井朋彦さん)、ランカスター(亀田佳明さん)
ヨーク大司教(勝部演之さん)
立川三貴さん
下総源太朗さん
こうやってお写真を並べるだけでも実に多彩なキャストが揃っていることがおわかりになりますよね。キャラクターを落とし込み佇む俳優がいる空間は、とても密度の濃い空間です。そして、物語のゴールであり、新たな歴史のスタートでもある。なんとも言えない清々しさとロマンを感じるシーンに…早く全編が見たい!その気持ちを新たにしました。
第一部の様子はこちらから(おけぴ稽古場レポート) そして、断片的ながら稽古場、フォトコールと拝見し、『ヘンリー四世』の空気を少し味わいましたが、そのうえで鵜山さんのメッセージを読むと“なるほど!”なのです。
<演出:鵜山仁さんからのメッセージ> 「王の登場」は、ひとりランカスター朝のヘンリー四世、あるいはヘンリー五世の即位という歴史的事実にとどまらず、人間社会を形成する上で、重要なファクターである「公」の出現の象徴です。その意味でこれは、我々の日常を支配している「公」と「私」の葛藤、「聖」と「俗」との相克を写し出す、格好の命題だと思います。
『ヘンリー四世』という芝居の面白さは、「公」が「私」とせめぎ合いながら立ち上がって行く醍醐味、この一点にあると言っても過言ではない。一方では、「私」から「公」へ、「王」へと変貌してゆくハル王子の通過儀礼が鮮やかに描かれ、他方「公」を成立させるために犠牲にしなければならない「私」、「私生活」の総体が、騎士フォールスタッフという登場人物に結晶しています。
『ヘンリー四世』二部作を、先に新国立劇場で上演した『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』の文脈につなげることで、どんな世界が浮かび上がるか。
この貴重な機会に乗じ、新たなキャスト、スタッフとともに、さらなる創造に身を委ねたいと思います。【囲み取材レポ】
浦井健治さん、岡本健一さん、ラサール石井さん、中嶋しゅうさん、佐藤B作さんが登場しての囲み取材の様子をガッツリレポート!だってもう…面白いんですよ、みなさん。
──『ヘンリー四世』、間もなく開幕!『ヘンリー六世』から同じ顔ぶれとなる、浦井さん、しゅうさん、岡本さんをはじめとするカンパニーに今回からB作さん、ラサールさんが参加されますね。浦井さん)
新国立劇場で、鵜山さんのもと、こうして同じキャスト・スタッフでヘンリーシリーズを上演できることは奇跡だと思っています。このシリーズの仲間は本当に肉親のようなんです。
しゅうさんは父親のようで、舞台上でも自然にその関係があって(演技を超えて)自然に涙が出る瞬間が何度もあります。岡本さんは目が合うと必ず近づいて来て「あそこは…」と僕のお芝居にダメ出ししてくれます。それは僕にとってすごく貴重な時間なんです。
そして、今回は尊敬する先輩方が…。B作さん)
そんなこと言って(笑)一同笑!
浦井さん)
本当に尊敬しているんですよ。B作さん)
またまた(笑)!浦井さん)
フォールスタッフってB作さんにぴったりで、見ていると本当に笑っちゃうくらい。長台詞もすごいですし、B作さんが演じるフォールスタッフ、カンパニーの一員として誇りに思います。──それぞれの役どころは。浦井さん)
自分はのちのヘンリー五世、ハル王子を演じます。その父親である王・ヘンリー四世を中嶋しゅうさん。岡本さんは第一部ではホットスパーという僕とは敵対する関係で、剣を交えます。今の(岡本さんの)この格好は…それとは違って、第二部でのやんちゃくれなピストルという役です。
そして、フォールスタッフというシェイクスピアの中ではナンバーワンともいえる人気キャラクターをB作さんが演じられます。ハル王子の悪友ですが、人間が生きていく中で一番大切なことを全て言っているのではないかというくらいの人物です。シャローを演じるラサールさんは、おしゃべりとセリフの境目がわからないくらい自由自在にお芝居されるところが素晴らしくて、大好きです。──なんだかお衣裳を拝見すると、岡本さんだけ時代が違うような…。岡本さん)
浦井くんから紹介があった通り、第二部ではピストルという役で、王子やフォールスタッフとつるむ、比較的(階層の)下のほうで騒いでいる人物。飛び道具みたいな男です。ラサールさん) (岡本さんの姿を見て)パンキッシュですよね。今回、町場の人たちは結構パンクっぽいんですよ。
しゅうさん)
ちょっとロッド・スチュワートみたいですよね。岡本さん)
全然格好いい役じゃないんですけどね、どんな人物か、これは劇場で確かめてください!──『ヘンリー六世』からご出演されているしゅうさんは、今回のカンパニーはいかがですか。
しゅうさん)
浦井くんも言っていたように、『ヘンリー六世』のメンバーって、なんだろう…顔を合わせた途端に“いい感じ”なんですよね。今回、さらにうれしいのはB作さんやラサールさん、まぁ、こういう言い方をしたら失礼かもしれないけど、きっとシェイクスピアなんかやらないでしょという方…B作さん)
失礼だなー(笑)!一同笑!
しゅうさん)
そういう方たちがやってくれるのが、僕はすごくうれしくて。まぁ、なんていうか“味”って言うんですか。それをいいなと思いながら稽古から見ています。──では、B作さんが、今回、フォールスタッフ役でのご出演を決めたのは…。B作さん)
中嶋さんがおっしゃる通り、シェイクスピアにはほとんど縁がなかったんです。だから僕、初めてですね。本当に初めてシェイクスピアのお芝居に出させていただきますし、あんまり拝見したこともなくて…ラサールさん) 友達が出ていないですからね(笑)。
一同笑!
B作さん)
そうそう、僕の周りの友達、あんまりこういうのに出ないからね(笑)!!
まぁ、なんかお声をかけていただいたのでやってみようかという気持ちで来たんですけど、いやぁ、大変でしたね(笑)。(6時間もやると)身体が変な感じだし、もう、台詞の量たるや…。本当に初めてですね、こんなにしゃべっているのは。間に合うだろうか、初日にセリフが出るんだろうか。“不安だよ、バカ野郎ーっ”て感じです。
でも、楽しんで、精一杯やろうと思っています。こんな機会は人生、最初で最後でしょうから。しゅうさん)
いや、そりゃわかんない。B作さん)
これだけにしてもらいたいです。ラサールさん) そう言えば、まだ、(余裕がなくて)一回も酒飲みに行っていないですよね。
──ラサールさんはいかがですか。ラサールさん) 私は第一部ではギャッズヒルというフォールスタッフの手下みたいな役、第二部がシャローという判事、とても重要な役をね(笑)。主に笑いを担当していますが、ロンドンではかつてローレンスオリビエがやったという役です。彼は第一部ではホットスパーをやったそうんです。
B作さん)
一体どんな俳優なんだ!!ラサールさん) まぁ、そんな役ですが、僕の周りの綾田(俊樹)さんとか、みんなぼけまくるんです。だから良く見ていないと何をしているのかわからない、すごいシーンですよ。
──この作品、アドリブが許されるんですか。ラサールさん) ナチュラルにするためにちょっと足すことを鵜山さんはOKしてくれるんです。ですので、
シェイクスピアならこう書くだろうなという感じのアドリブにしております(笑)。しゅうさん)
お二人が入られることで、これまでと全然違うと思いますよ。いい意味で!岡本さん)
どうしてもシェイクスピアと聞くと難しいとか高尚だというイメージがありますよね。でも、お二人がいることでそれがガッと(下がりますよ)ね。ラサールさん) “いい意味で”ってつければ、何を言ってもいいわけじゃないから!色物かよ(笑)!
一同笑!
岡本さん)
芝居が、“いい意味で”日常になる、高尚じゃなくなるんです(笑)。ラサールさん) でも、最初に本を読んだ時の印象と違って、今、鵜山さんの演出で舞台に立ち上がったものはすごく面白くなりました。ロックもいっぱいかかるし、動きも面白い、セットもスゴイし。全然飽きないと思います。
──ちなみに最初の印象というのは。ラサールさん) 最初は全然わからなかった(笑)。
何回読んでも意味不明みたいなところが、人間がしゃべって、動くとああこういうことがと、さすがお芝居ですね(笑)。一同笑!
──浦井さんは今回の座組はいかがですか。浦井さん)
先輩方の背中の大きさを感じています。絶対に追いつこう、いつまでもいつまでも追い続けたくなる先輩たちが本当にお元気なんですよ。それが自分にとって励みになります。カンパニーにも、そのエネルギーが渦を巻いています。B作さん)
元気は、あなたが一番でしょ。いやぁ、元気ですよ。すごい。こっちが励まされますよ、元気な人がいると(笑)。──浦井さんのどんなところが?B作さん)
もう朝から、稽古場を走り回っている感じです。元気だなーって。浦井さん)
落ち着きがないんです…笑。
でも、やっぱりシェイクスピアって人間のエネルギーが必要なんですよね。岡本さんとも話しているんですけど、ただしゃべっているだけでなく、意志があるんですよね。身体がトーンダウンしちゃうと最後のセリフまで到達できないんです。「クソッ!ここからが一番言いたいことなのに」と自分の体力のなさを感じるような。とにかく体力作りしないと!──体力作りのために何かやっていることは。浦井さん)
寝る。B作さん)
本当だよね、寝ることだ。一同笑!
──岡本さんからアドバイスは。岡本さん)
アドバイスなんてないですけど。
こうやって簡単に情報とか手に入る時代に、劇場に来て生で僕たちがやっている空間、時間を共有してもらうと、まず、人間の姿に感動すると思います。物語云々というより、こんなに懸命に生きているな、戦っているな、笑わせることに命をかけているな…そういう稽古をみんなで何か月もしてきたので、まずは劇場に足を運んでいただきたいと思います。
新国立劇場でないとこういうセットや衣装、キャストはまず集まらないですね。今の時代、こうして6時間やるとかなかなかないですからね。そういった意味で、早くお客様と(この作品、空間を)共有したいです。──6時間はすごいですよ。岡本さん)
『ヘンリー六世』三部作では9時間やった日もありましたが、通しの日から売れていったらしいです。お客さまも続けてご覧になりたいようですね。しゅうさん)
今回もそうですよ。ぜひ通しを見てほしい。それが一番の醍醐味です。──でも、やる側は大変ですよね。準備のほうはいかがですか。B作さん)
もう知らんですよ(笑)。その日その日でどうなるかわかりません、私。でもまぁ、本気の気持ちだけは失わずにやろうと思っています。──支えになっているものは。B作さん)
うまくやって、うまい酒を飲んでやるぞ!それだけです(笑)。浦井さん)
自分はお酒が飲めないので、B作さんたちがワー!おつかれー!と言っている横でジンジャーエールを飲めるように(笑)。
そのくらい命をかけて、全員がこの作品に取り組んでいるんです。昨日も通し稽古の前にも稽古をし、男性楽屋に集まってちょっと酸素も不足するぐらいの人数でダメ出しをずっとやって、通しのあと小返しもして…。本当にギリギリまで時間を使い続けていています。それでも鵜山さんとプロデューサーさんは「いや、9時間よりは楽でしょ」と。僕はそれを励ましの言葉だなと受けとっています。実際のところは、僕はちょっと怯えてはいるんですけど、でもこれを奇跡の公演として、お客様の心に刻まれて、この時間が永遠の時間になるように。そんな薔薇戦争のスタートとなる『ヘンリー四世』という大作を、みなさまと一緒に共有したいです。“お祭”ということで楽しんでいただければと思います。──そして、終わった後はみんなで乾杯。浦井さん)
僕はジンジャーエールで(笑)!【おまけ】
今回の上演に際しては前方客席をつぶして舞台を広げています。まさに“地続き”、このような感じです。
そして今回もございます、記念撮影スポット!
伝説の公演『ヘンリー六世』のセットに座れるチャンスです。
ちょっと見えにくいですが、左のお椅子には王冠も飾られています。こちらは『ヘンリー六世』上演時に浦井さんが実際に被られたものなんですよ。
UK15
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人
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