新国立劇場にて上演中の
『ヘンリー四世』二部作、第一部-混沌-、第二部-戴冠-を続けてみるもよし、すこし時間を置いて見るもよし!実にさまざまな楽しみ方のできる作品です。
【『ヘンリー四世』おけぴ関連記事はこちら】★フォトコール&囲み取材レポ★稽古場レポート★浦井健治さんロングインタビュー★公演NEWS『ヘンリー四世』 ダークサイドに身を置いてもどこか光を感じさせる浦井健治さんのハル王子、
血気盛んな青年をエネルギッシュに演じつつもどこか影を感じさせる岡本健一さんのホットスパー。新国立劇場の歴史劇シリーズを通してみせるおふたりの
コントラストはこの作品でも健在です。
中嶋しゅうさんのヘンリー四世のひと言ひと言は胸に深く刻まれ、
まさに役を生きる佐藤B作さんのフォールスタッフは悪事を重ねるもののどこか否定しきれない。なんだか『レ・ミゼラブル』のテナルディエや『ミス・サイゴン』のエンジニアの生き様をも思い起こさせる、狡猾ながら愛すべき人物。
第一部の
岡本さん(ホットスパー)、
今井朋彦さん(ヴァーノン)、
下総源太朗さん(ウスター伯)、
鍛治直人さん(ダグラス伯)の
反乱軍カルテットの芝居の濃さもたまりませんし、第二部の
ラサール石井さん(シャロー)、
綾田俊樹さん(サイレンス)、
有薗芳記さん(デーヴィー)と
B作フォールスタッフの
“一体どこに着地するのかしら感”溢れる場面も信頼あってのフリーダム!一方で今井さんの決して揺るがない絶対的な法院長のどっしり感も魅力的!
さらに
那須佐代子さんと松岡依都美さんが演じる
パンチの効いた女たちの生命力も見逃せません。(それぞれ『いま、ここにある武器』のロス役、『紙屋町さくらホテル』の園井恵子役と同じ女優さんって…ギャップがすごい!!)
そして全編にあふれる、生きていく中での鬱憤やヤル気、プラスもマイナスもひっくるめた人間のエネルギーが煮えたぎり、煮詰まり、何かを突き破る瞬間の描写は
ロック!
ぶっ飛んだ衣裳、髪型で放蕩三昧のハル王子も太っちょの哲学者フォールスタッフも、赤のレザージャケットと一つに束ねた髪が最高にセクシーなホットスパーもロックなのです。とはいえ、その力に依存しすぎることなくセリフセリフセリフで熱量を積み重ねる
理知的な演出は鵜山仁さん。
(ガンガンいっちゃって~という、感情のリミッターを外したくなる自分も居つつ、すっと劇世界へ戻れる絶妙バランス) まぁ、とにかくざっと書き連ねただけでもこんなにみどころいっぱい!どの角度からどう見るかで十人十色の見え方のする作品です。ちなみに通しで見て、ラストシーンで感じたことは、
「ひとりの男の青春の終り」。就職が決まり、長髪を短く切ったというような流行歌が昔あったような…(笑)。そんな自らが打つ終止符、そして第二章の始まりを感じました。
ここからはお寄せいただいた感想と舞台写真で公演をご紹介!
フォトコールより
◆実はシェイクスピアは苦手です。でもヘンリー四世はテンポもよく引き込まれました。
シェイクスピア特有の韻を踏んだ台詞をB作さんのフォールスタッフが言うと何だかただの親父ギャグのようで、それも親近感あったのかもしれません。
セットとBGMが印象的で、衣装は現代風アレンジが入りつつ翻るマントもあり楽しませていただきました。
◆新国立劇場の鵜山さん演出のシェイクスピアシリーズ、続けて拝見していますが、どんどんわかりやすくなっている感じ。ハル王子はヘッドフォンでロックを聴く遊び人で、フォールスタッフの佐藤B作が魅力的。シリーズ通して出演のベテランも、新しい方も、歴史物に人間的な息吹を与えてくれます。第二部を見るのが待ち遠しいです。左から浦井健治さん、佐藤B作さん
◆シェイクスピアの歴史劇は、難しいと考えていましたが、王様側と反乱軍側の衣装のカラー分けやロビーの資料による解説で、分かりやすかったです。
◆主要4役、ハル王子・フォールスタッフ・ホットスパー・ヘンリー4世とそれぞれのキャスティングがピッタリですぐに引き込まれていきました。第2部が楽しみです。
◆フォールスタッフを演じるB作さんが素晴らしいです。太っちょで面白いんだけど、決してお人好しとか剽軽という人物でもなくて、狡猾で機転が利いてユーモアもある役柄を好演しています。他の役者さんへのアドリブ突っ込みも面白くて、B作さん自身も頭の良い方なんでしょうね。
◆堅苦しい感じかと敬遠していたのですが、芸達者な俳優さん達のおかげで、クスクス笑いが所々にあるなかでも、とても濃厚なお芝居を観させていただき楽しめました。左から浦井健治さん、中嶋しゅうさん
◆ヘンリー4世が亡くなるシーン。今まで自由に行動してきたハル王子。父との別れと王位を引き継いでいくところが感動しました。
◆一部と二部をとおしてみることで、ハル王子の成長物語がよくわかりました。
そして、よい為政者としてのありかたや正義は必ずしも皆の幸福になるとは限らないなど現在の社会にも通じるお話では…さすがシェイクスピアです。
◆シリーズ始めは芝居巧者に囲まれていた浦井さんが大変生き生きして、岡本さんのパワーにはいつもやられ。セットも効果的でした。
◆第1部から通しで見たので、ヘンリー四世(中嶋しゅうさん)の老いが、徐々に進んでいく様子がよくわかった。全体を通じて、登場人物の衣装が個性的で、キャラクターが立っている。
そのなかで、いちばんトーンが暗いながらも存在感の際立つ高等法院長(今井朋彦さん)にぐっときた。
◆テンポがよく、長いせりふも冗長に感じませんでした。音楽がQueenで、シェイクスピア劇がほどよくポップになっていたと思います。
◆シェイクスピア劇は登場人物の名前や関係性が解りにくいことがあるのですが、今回は衣装の色や素材でうまく分けられていて見た感じも素敵でした!
舞台も枯れ木のような様々な板をいろいろな形に作り上げて、王の台座もたくさんの意味を持たせてあって感心しました。
出演者の皆さんも各々個性があり、達者な方々ばかりで最後まで楽しかったです。もちろんフォールスタッフは絶品でしたし、浦井さんのハル王子も素敵でした!
◆シェイクスピアと言うことで重厚なストーリーかと思っていましたが、良い意味で裏切ってくれました。ハル王子とフォールスタッフの掛け合いやハルとパーシーの戦いのシーンはスピーディで迫力もあってとても面白かったです。
皆さん魅力的な俳優さん達なので、3時間あっと言う間の観劇でした。
◆シェイクスピア劇と言うといつも身構えて観てしまうのですが、今までで一番楽に観られ楽しめました。お馴染みの役者さんを観ては嬉しくなり、初参加のB作さんラサールさんがどんな色を添えて下さるのか興味深かったのですが、重厚さと軽妙さのバランスがとても心地よかったです。セリフの掛け合いなどクスッとしてしまい楽しかったです。
ハリー王子の放蕩加減が浦井さんのチャーミングさと相まって良かったです!
役者さん達の役変わりも面白くてさすがでした。地続きのセットにキャストの皆さんが並ばれると壮観でした。
◆新国立劇場に行くと、いつもセットのミニチュアを展示してくれているのが楽しみの一つで嬉しいです!
二部作なので長時間の観劇に、貸出しのクッション良いなあと思いました。【おすすめ情報】 話題のクッションはチケットをもぎってもらい入場した左手に貸出コーナーがございます。こちら、一日通しでご覧になるとちょっとお得!第一部終了後、返却すると引換券をもらえます(当日限り有効)。その引換券提示で第二部の開始前に再び借りることができるので、両方見て500円!使い心地もよいですよ。(
新国立劇場とエアウィーヴの共同開発"オペラクッション")
人物相関図や
『ヘンリー四世』名言集など、予習復習に便利な
公演HPも充実です。
浦井さん曰く「お祭だと思ってください!」、まさにそんな楽しみ方のできる作品です!堅苦しさより大衆性を感じさせる『ヘンリー四世』をお見逃しなく!
(第二部の岡本さんのピストルなんて…本当にフェスティバル!!)UK15
舞台写真提供:新国立劇場
おけぴ取材班:chiaki(文・フォトコール撮影) 監修:おけぴ管理人