新国立劇場 シリーズ「かさなる視点ー日本の戯曲の力ー」取材会レポ

新国立劇場 シリーズ「かさなる視点─日本の戯曲の力─」
谷賢一×上村聡史×小川絵梨子
30代の気鋭の演出家3人が昭和30年代に書かれた秀作を演出


3月「白蟻の巣」(安蘭けい/平田満 ほか)演出:谷賢一
4月「城塞」(山西惇/辻萬長 ほか)演出:上村聡史
5月「マリアの首」(鈴木杏/伊勢佳世 ほか)演出:小川絵梨子


シリーズ「かさなる視点 ─日本の戯曲の力─」と銘打ち、新国立劇場の2017年上半期を飾る、昭和30年代の3つの秀作。
その新シリーズに向けて、三人の演出家が集う取材会が行われました。

「脂の乗っている若手演出家にこそ、日本の戯曲を!」と演劇芸術監督の宮田慶子さんが選んだのは、谷賢一さん、上村聡史さん、小川絵梨子さん。そして、普段は翻訳劇が多いというそのお三方が選んだのは、いずれも昭和30年代に書かれた作品でした。

戦後の復興から高度成長期へと突入する、戦後十数年の混沌とした時代。
「自分たちは変われるのでは」という幻想…色濃く残る戦争…忘れようとしている世の中…

そんな中で生きた作家たちが、世界を自分の中にどう吸い上げ、作品の中で何をたくらんだのか。
そして、平成の時代を生きる若き気鋭の演出家たちが、その「たくらみ」に対してどんな視点で切り込んでいくのか。
三者三様、まったく個性が異なり、期待に胸が膨らみます。


3月:三島由紀夫『白蟻の巣』(谷賢一さん演出)

まず3月の第一弾では、三島由紀夫の劇作家デビュー作で、戦後の空虚感が色濃い『白蟻の巣』が、谷賢一さん(『最後の精神分析』『死と乙女』)演出で上演されます。
キャストは、谷さんが「この方々なら三島由紀夫の美しく分厚い言葉を語れる!」と太鼓判を押す、安蘭けいさん、平田満さん、村川絵梨さんなど精鋭揃いです。
「みなさん賢い方々だと思うので、一緒に考えていきたい」と谷さん。

ちょうどここ1、2年、翻訳劇だけでなく、もう一回日本の文化を掘り起こす作業をしたいと思っていた矢先でした。ですから、お話をいただいて、「日本の戯曲で」というところがハートに合致したんですね。

三島由紀夫のように文章の上手い人は見たことがありません。どういう精神構造だったのか、頭の中を覗きたいほど。最近は、彼が世界や日本をどう認識していたのかという思想の部分にも興味を持っているのですが、今の日本の文明とか魂のような部分に関してとても理知的に分析していた人だということがわかって、すごく意外だったんですね。

『白蟻の巣』には、そんな彼が何を見て、何を考えていたのかということがダイレクトに反映されているので、この作品を通して、日本の文化というものを探れたらいいなと思っています。(谷さん)


宮田慶子さん曰く「慎重なのに、ものすごく“やんちゃ”なたくらみをする」という谷さんの演出にご期待ください!


4月:安部公房『城塞』(上村聡史さん演出)

4月の第二弾では、安部公房が戦争責任を独自の視点で扱う『城塞』が、上村聡史さん(『アルトナの幽閉者』『炎─アンサンディ─』)演出で上演されます。
今回の作品を「“現代社会のきしみ”を紐解く糸口にしたい」と語る上村さん。
「喜劇性を押し出したい!」と選ばれたのは、山西惇さんやたかお鷹さんなど“理屈を壊せる”キャストたち。
(『アルトナの幽閉者』で引きこもりの息子を持つ父親を演じた辻萬長さんは、今度は引きこもりの父親役!)

今まで、現代の作家の書き下ろし作品を多くやってきたので、このテーマは新鮮。同時に、とても大きな課題も感じています。

いま、グローバルな世界の価値観と、自分たちの中に根付いている日本人のローカルな価値観との間がちょっと軋み始めている印象があります。そこに演劇でどう対峙するのかと考えたときに、敗戦という大きな崩壊を経ても変わらなかった日本人の精神や、戦争責任の所在というものが、その軋みを紐解く糸口になるのではないかと思ってこの作品に決めました。

この作品は、喜劇タッチの導入の後に、戦争責任を追及していくという重厚な展開があります。
日本人の精神をちょっと滑稽に、かつ今の自分たちも批評している手つきで、立ち上げていきたいなと思います。(上村さん)



5月:田中千禾夫『マリアの首』(小川絵梨子さん演出)

シリーズの最後を飾る5月の第三弾は、田中千禾夫が戦争の傷あと残る長崎を詩的に描いた『マリアの首』
演出の小川絵梨子さん(『OPUS/作品』『星ノ数ホド』)が「うれしくて奇跡です!」と話すキャストは、鈴木杏さん(『星ノ数ホド』)、伊勢佳世さん(『OPUS/作品』)ほかです。

戯曲を読んで「これはやってみたいな」と直感で選びましたが、非常に難しい作品。自分の中にもプレッシャーや不安があり、大きな挑戦です。

この作品は市井の人々の話であり、彼らの“生活の匂い”の話。その匂いは私も体感してみたいですし、その過程でおのずと見えてくるものがありそうです。戦争を経験し、その後の時代をどう生きたのかということが書かれていますから、その空気を舞台上でも出せたらいいなと思っています。

ただ、私は当時の生活や空気を知らないので、それをそのまま再現することはできません。それでもノスタルジーや主観に陥ることなく、私たちが“現代の私たちの視点”という客観を通して過去を見るところに、やる意味があるのかなと思っています。ドキュメンタリーのようなリアルなものにはなりませんが、稽古を通して、登場人物たちと同じようなものを感じたり背負ったりできればと思っています。(小川さん)


30代の若さで新国立劇場の芸術監督に抜擢された小川絵梨子さんが「大きな挑戦」と話すこの作品も見逃せません。


新国立劇場小劇場の濃密な空間で繰り広げられる、昭和日本の名作。
昭和30年代の作品を、現代の気鋭の若手演出家たちは、どんな視点で見つめながら立ち上げてくるのでしょうか。

三者三様のたくらみと視点を味わい尽くすのもよし!
演出家比べをするのもよし!
キャストの魅力を楽しむのもよし!
ぜひ3本通しで、日本の戯曲の力・演劇の力を体感してください。


公演情報
2016/2017シーズン
かさなる視点―日本戯曲の力― Vol. 1
『白蟻の巣』
(全公演期間:2017年3月2日(木)~19日(日)@新国立劇場 小劇場)

<スタッフ>
作: 三島由紀夫
演出: 谷 賢一

美術:土岐研一
照明:松本大介
音響:長野朋美
衣裳:前田文子
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:足立充章

<キャスト>
安蘭けい  平田 満 村川絵梨 石田佳央 熊坂理恵子 半海一晃

<ものがたり>
ブラジル、リンスにある珈琲農園。経営者である刈屋義郎と妙子夫妻、その運転手の百島健次と啓子夫妻。4人は奇妙な三角関係にあった。啓子の結婚以前に、妙子と健次が心中未遂事件を起こしていたからである。
それを承知で健次と結婚した啓子ではあったが、徐々に嫉妬にかられるようになり、夫と妙子が決定的に引き離される方法はないかと思案する。一方、心中事件を起こした妻と使用人をそのまま邸に置き続ける義郎の「寛大さ」に縛られ、身動きの取れない妙子。
義郎の寛大さがすべての邪魔をしていると思った啓子は、邸から遠く離れた地へ義郎を送り出す。
義郎の留守の間に健次と妙子が再び関係を結び、それが露呈することで自分たち夫婦が邸から追い出されることを目論んだのだ。
白蟻の巣のように、それぞれの思いが絡み合い、いつしか4人の関係が変化していく......。

公演HPはこちらから

『城塞』
(全公演期間:2017年4月13日(木)~30日(日)@新国立劇場 小劇場)

<スタッフ>
作:安部公房
演出:上村聡史

<キャスト>
山西 惇 椿 真由美 松岡依都美 たかお鷹 辻 萬長

<ものがたり>
とある家の広間。爆音が響く。電燈が尾を引いて消える。どうやら戦時下のようである。「和彦」と呼ばれる男とその父が言い争っていた。父は「和彦」とともに内地に脱出しようとするのだが、「和彦」は母と妹を見捨てるのか、と父を詰る。
しかし、それは「和彦」と呼ばれる男が、父に対して仕掛けた、ある"ごっこ"だった......。

公演HPはこちらから


『マリアの首 -幻に長崎を想う曲-』
(全公演期間:2017年5月10日(水)~28日(日)@新国立劇場 小劇場)

<スタッフ>
作:田中千禾夫
演出:小川絵梨子

<キャスト>
鈴木 杏 伊勢佳世 峯村リエ
山野史人 谷川昭一朗 斉藤直樹 亀田佳明 チョウヨンホ 西岡未央 岡崎さつき

<ものがたり>
爆撃され被爆した浦上天主堂の残骸を保存するか否かで物議を醸していた昭和20年代後半。昼は看護婦として働き、夜はケロイドを包帯で隠して娼婦として働く鹿。夫の詩集と薬を売りながら客引きをし、生計を立てている忍。鹿と忍が働く病院で献身的に働く看護婦の静。
いつまでたっても保存か建て壊しか結論の出ない市議会を横目に、原爆で崩れた浦上天主堂の壊れたマリア像の残骸を、秘密裏に拾い集めて、なんとかマリア像だけでも自分たちの手で保存しようと画策する女たち。
雪のある晩、最後に残ったマリアの首を運ぼうと天主堂に集まったが、風呂敷に包もうとしても、マリアの首は重く、なかなか動かないのだった......。

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:ayano(文)おけぴ管理人(写真) 監修:おけぴ管理人

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