読売演劇大賞 大賞・最優秀スタッフ賞の堀尾幸男、最優秀女優賞の鈴木杏
今年5月に小川絵梨子(演出)、阿部海太郎(音楽)と戦後の傑作戯曲に挑む 新国立劇場では5月10日から28日まで「マリアの首―幻に長崎を想う曲―」を、第24回読売演劇大賞 大賞・最優秀スタッフ賞受賞の堀尾幸男を美術に迎え、最優秀女優賞を受賞した鈴木杏主演で上演いたします。
「マリアの首」は、終戦後の長崎を舞台に、三人の女性の生きざまを軸に、神との対話と平和への祈りを描き、1959年、岸田演劇賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞した名作です。戦争や被爆の体験を忘れようとする人々、その爪痕を残し記憶を風化させまいとする人々のさまざまな思いを詩的に描きます。
劇作家・田中千禾夫の代表的な傑作戯曲です。
演出にあたるのは、新国立劇場の次期演劇芸術監督への就任が決定している
小川絵梨子。
また劇中の音楽は、これまで蜷川幸雄作品など数々の舞台の劇音楽に携わり、テレビ、映画など幅広いジャンルで作曲活動を行う
阿部海太郎が担います。
読売演劇大賞でスタッフとして史上初めて大賞を受賞したベテランの堀尾と、若くして活躍著しい小川、鈴木、阿部ら、それぞれの分野の最前線で活躍する面々が集結する本作にどうぞご期待ください。
演出・小川絵梨子からのメッセージ 「マリアの首」は私にとって大きな挑戦だと思っています。昭和34年に田中千禾夫によって書かれた本作は、原爆投下後の長崎を舞台に、傷だらけになりつつ生き続ける人々の姿を大きな視点から描いています。
目を背けたくなるような生々しさと、深く静かな祈りのような幻想が同時に存在する、壮大な世界観を持った作品です。
私は現代英米作家の本を演出することが多く、作品も現代人の日々の葛藤を入り口としたものが多いので、この本は自分に身近で手触りの分かりやすいものでは決してありません。しかしこの本から感じられる、残酷さと深い愛情が混在する精神性にとても心を動かされています。先に書いたように大きな挑戦になるとは思いますが覚悟を持って、この作品に飛び込みたいと考えています。
あらすじ 爆撃され被爆した浦上天主堂の残骸を保存するか否かで物議を醸していた終戦後の長崎。
昼は看護婦として働き、夜はケロイドを包帯で隠して娼婦として働く鹿。夫の詩集と薬を売りながら客引きをし、生計を立てている忍。鹿と忍が働く病院で献身的に働く看護婦の静。
いつまでたっても保存か建て壊しか結論の出ない市議会を横目に、原爆で崩れた浦上天主堂の壊れたマリア像の残骸を、秘密裏に拾い集めて、なんとかマリア像だけでも自分たちの手で保存しようと画策する女たち。
雪のある晩、最後に残ったマリアの首を運ぼうと天主堂に集まったが、風呂敷に包もうとしても、マリアの首は重く、なかなか動かないのだった......。
この記事は公演主催者からの提供により、おけぴネットが製作しました