政略結婚で引き裂かれた恋人たちの悲劇。
「ベルカントの新女王」が歌い上げる狂乱のアリア! ドニゼッティ作曲によるベルカント・オペラの最高傑作『ルチア』。新国立劇場と、モンテカルロ歌劇場の共同制作によるニュープロダクションがいよいよ3月14日に初日を迎えます。
オルガ・ペレチャッコ=マリオッティさん
タイトルロールを演じるのは、「ベルカントの新女王」と評され、世界中の劇場で引っ張りだことなっている若手スター【
オルガ・ペレチャッコ=マリオッティさん】。悲しみのあまり狂ったヒロインが、高度な歌唱技術を駆使して10分以上も歌い続ける「狂乱の場」に期待が集まります。
フルートなど別の楽器で代用されることも多い「狂乱の場」の演奏に、当時の楽譜の指定通りにグラスハーモニカ
(※)が使われるのも大きなポイント。ドイツのグラスハーモニカ奏者・楽器製作者のサシャ・レッケルト氏による演奏にも注目です。
※グラスハーモニカとは…ガラスなどできたベル型の器をこするなどして音を出す楽器。
「不思議な美しいデリケートな音色。嘘か本当かわかりませんが、人の心を惑わすとされ、演奏が禁止されたこともあったとか」(新国立劇場オペラ芸術監督・飯守泰次郎さん)↓こんな楽器です↓ オペラ鑑賞初心者としては(もしかすると熱心なオペラファンの方も?)、そもそも「ベルカント・オペラとは?」と素朴な疑問が浮かびます。イタリア語で「美しい歌唱」の意味がある“ベルカント”。そのひとつの答えを新制作『ルチア』で見つけることができるかもしれません。
初日に先駆けて、出演者と演出家、指揮者、新国立劇場オペラ芸術監督が意気込みを語った制作発表会の模様をお届けいたします。
新国立劇場オペラ芸術監督の【飯守泰次郎さん】
「新制作となる『ルチア』をぜひモンテカルロでも上演したいとのことで、共同制作が実現しました。国を越えての共同制作は、(やりたいという希望があっても)なかなか条件があわず難しいものだけに、今回実現できたことを嬉しく思っています。モンテカルロは世界的な観光都市。世界中から集まる観客に新国立劇場発信の『ルチア』を観ていただけるのは素晴らしいこと。私自身も大変楽しみにしています。
ベルカント・オペラの代表作である『ルチア』はスターがいないと成り立たない。世界中のメジャー劇場を駆け巡っているオルガさんのスケジュールを幸運にもキャッチできました。その他の役も望み得る最高のキャストです。完璧に洗練された歌唱をご堪能ください」演出を手がける【ジャン=ルイ・グリンダさん】
(モンテカルロ歌劇場総監督)
「モンテカルロと東京、この遠く離れた2つの地で『ルチア』を共同制作できることに大変な喜びを感じています。ベルカントを知り尽くした指揮者、ジャンパオロ・ビザンティ。彼とオペラへの愛を共有できることが誇らしい。演出コンセプトはロマンチシズム。この作品が生まれた時代の空気を大切にしたい。歌い手に対する愛と尊敬の念を持って演出したいと思います。また自然に対する畏怖の念、強く荒々しい自然に対し、小さな人間の存在も対比してみせたい。上演時にカットされることも多いエドガルドとエンリーコの二重唱もストーリー上、重要な場面ですので復活させました。事前にあまりお喋りしすぎると驚きがなくなってしまうかもしれませんが、やはり「狂乱の場」はオルガさんの歌唱で確実に素晴らしいものになると思います。愛と喜びを込めたプロダクションを楽しみにしていてください」指揮の【ジャンパオロ・ビザンティさん】
「私はイタリア人として、ベルカント・オペラの大使だと思っています。イタリアの伝統の一端をみなさんにご紹介できることを誇らしく思います。さまざまな個性、文化、感受性、異なる要素がひとつになり、エネルギーを発するプロダクションになるでしょう。“ベルカント”という言葉は表面的な理解だけをされることもありますが、その語源を考えると秘められたフィロソフィーが見えてきます。イタリア語で“美しい歌唱”というその言葉、そこに真髄があるのです。ベッリーニは「オーケストラは絨毯のようなもので、その上で歌が最大の力を発揮するように」と考えた。それが伝えられ、ドニゼッティの頃には情感豊かな強烈なドラマを歌で表現できるようになったのです。ベルカント・オペラを指揮するときの四箇条は、「声を愛せ」「声を助けよ」「声を支えよ」「(歌手への)押し付けをやめよ」だと思っています。私の思う『ルチア』を歌手、演奏者に提示する、すると彼らからもそれぞれの『ルチア』が僕に与えられる。その共生関係、お互いに支え合うシナジー、それこそがベルカントであると考えています」ルチア役の【オルガ・ペレチャッコ=マリオッティさん】
ウィーンで別作品(『愛の妙薬』)出演後、強行軍で来日予定。
世界が注目する売れっ子若手スターです!
「大好きな日本で新制作『ルチア』に参加できるのが嬉しいです。日本の皆さんは芸術家に対して特別な愛情を捧げてくださいます。歌手を愛し、音楽を愛する演出家、指揮者のおふたりとご一緒できるのも嬉しいことです。新国立劇場はピアニッシモの音も聞きやすく、それが舞台上の自分たちにも聞こえる。これはありそうでなかなかないことです。この完璧に素晴らしい劇場でみなさまと初日にお目にかかれるのを楽しみにしています」ルチアの恋人・エドガルド役の【イスマエル・ジョルディさん】
「みなさんがこの劇場に対して賛辞を述べていますが、これは真実です! 伝統があり魅力に溢れた日本で新プロダクションに参加できるのは幸運です。マエストロ・ビザンティは楽譜に忠実に、そして歌手に大変な気配りをして音楽を作る。これはなかなかないことで、当たり前ではないんです。歌手への全面的な配慮をいただき、素晴らしいキャストとともに、必ずや感動していただける舞台をお届けします」
ルチアの兄で、エドガルドとの仲を引き裂くエンリーコ役の【アルトゥール・ルチンスキーさん】
「新国立劇場で歌うのは初めてです。素晴らしいプロダクション、特にオーケストラの優秀さを特筆したい。日本のオーケストラを尊敬しています。みなさん素晴らしい芸術家だと思います。この劇場で美しいイタリアのオペラ『ルチア』をご紹介できることを誇らしく思います」
◆「ベルカント・オペラって?」
謎はますます深まったかもしれませんが、その答えはぜひ劇場で。オペラ『ルチア』新制作、3月14日から新国立劇場オペラパレスにて上演です。
3月22日には関連企画・レクチャー&ミニコンサート「グラスハーモニカって?」も開催。幻の楽器といわれるグラスハーモニカの魅力を、ドイツから来日する奏者、サシャ・レッケルトさんが語ります(演奏も♪)。
新国立劇場での初演後、2019年11月のモナコ建国記念日にモンテカルロ歌劇場での上演も決定している『ルチア』。世界中から集まるセレブが楽しむ(であろう)新制作オペラを、この東京でいち早く体感できるこの機会をぜひお見逃し、お聴き逃しなく!!
新国立劇場オペラ 公式サイト公演詳細3/14 舞台写真追加↓
オケピ取材班:hase(取材、撮影),mamiko(文) 監修:おけぴ管理人