【舞台写真と感想で綴る】新国立劇場『白蟻の巣』観劇レポート



「この平田満を見逃したら後悔すると思う」(おけぴに寄せられた感想より)

 新国立劇場にて上演中の『白蟻の巣』。昭和30年代に書かれた秀作をイマの眼で読み解く、シリーズ≪かさなる視点-日本の戯曲の力-≫の第1弾、三島の初長編戯曲となる本作を演出するのは新国立劇場初登場の谷賢一さん。

 三島由紀夫が世界一周旅行で訪れたリンスで観た白蟻の巣が創作のヒントになり、昭和30年発表、同年劇団青年座(宮田慶子芸術監督の所属劇団でもありますね!)により初演。第2回岸田演劇賞を受賞、三島の劇作家としての地位が確立した作品がどのように新国立劇場の舞台に立ちがるのか!

 では、おけぴ稽古場レポートに続き、舞台写真と感想で綴る、おけぴ観劇レポートスタートです。



◆舞台奥の紗幕越しの土壁(白蟻の巣を暗示?)が、ときおり血を流すように真っ赤に照らされ、登場人物たちの心がまだ死んでいないことを教えてくれるようでした。
 ドロドロの愛憎劇のはずが不思議に清々しく見終わったのも、そんな心の死に瀕した彼らに同情しながら見てしまったからかも。
 見どころは、平田さんのブーツ姿と鞭さばき、安蘭さんの亡霊のような足取り、村川さんの上気していく頬。次点で激しく位置を変える家具。

◆平たく言うと、ブラジルのコーヒー農園の屋敷の主人と使用人夫婦のW不倫の話。
 心中未遂した妻と運転手を主人は寛容に許し、そのまま一緒穏やかに暮らしているのが逆に不気味。
 「寛容な主人」が逆に見えない檻を作り、奇妙な崩れそうなバランスを保っているのがスリリング!寛容である、イコール無関心、無気力な主人の平田満さん。舞台にいない時も感じる圧力が凄い。そして使用人の妻に向ける執着心も良かったです。

◆ひりひりと焼け付くような息苦しい空気の中、一癖も二癖もある登場人物達それぞれの異様さが浮きだってきて、最後焦燥感にかられる展開にゾワゾワと鳥肌が立ちました。
 おもしろかった!効果音や照明の「ブラジルの農園」の表現が、土埃まで感じられるようで素晴らしかったです。とにかく「芝居」を観た!という気持ちを満足させてくれる舞台でした。役者がそれぞれ素晴らしい。


◆美しい日本語と美しい台詞廻しの正統派の三島由紀夫です。
 陰鬱で物憂げなオープニングから諸々が明らかになり感情が溢れ出す終幕。戦前の支配階級である主人夫婦とブラジル生まれの運転手夫婦。滅び行く古い血と生まれ出る新しい血。対比がくっきりと浮かび上がる見応えのある舞台でした。

◆見事にまとめあげられたら舞台でした。ラストシーンに向かうにつれ、どんどん加速していく様子は必見です!時折混ぜられる白蟻の巣についての台詞が最後に集約されるところが見所でした。




◆『戦後まもなくのブラジル。旧華族の農園主・刈屋は、妻・妙子と心中未遂事件をおこした運転手・百島を「寛大さ」で雇い続け、事件後に事件のことを知りながら百島と結婚したその妻・啓子とともに同居させている』──そんな人物設定からして歪んでいる。
 その「旧い血」のよどみを、真綿でくるむようなとらえどころのない佇まいとジワリジワリと重ねられる言葉の抑揚の静。
 豹変とも思える感情の発露の動。ひと時の静と動の交わりのようなお芝居。
 終幕、淀みは解消できたのか。
 「『日本へ帰りたいといっていたのに』と葬式で言われたい」という、雇用人・大杉の言葉に答えを探してみようと思うけれど、見つからない。

◆三島由紀夫戯曲を初めて観ました。少ない登場人物、シンプルなセット、馴染みのない設定というハードルの高い作品かと思っていましたが、とても楽しめました。サスペンス風な終幕も意外性があり、余韻を残して、その後の展開は観客に委ねられているのですね。

◆異常な人間関係に、惹きつけられるお芝居でした。平田満さんはやはり上手いですね。でもやや消化不良…



◆美しい日本語の洪水に飲み込まれるような2時間半でした。
 寒さの残る初台、でも国立劇場の中はブラジルの密林。登場人物が其々にままならない人生にもがき、あきらめかけ、でもあきらめられないもどかしさに苦悩する、
 それが煌めくような言葉で綴られて、息つく暇もない舞台でした。

◆ブラジルだからか、金を持て余しているからか、本気なのか、ゲームなのか?静かで異常な精神状態の駆け引き。本当に変な戯曲。
 だからこそ面白い。そしてキャスティングがとても良い。
 この平田満を見逃したら後悔すると思う。



◆登場人物の心理が推し測れず、台詞を必死で聞いていました。
 久しぶりに頭と心のいい刺激になりました。なんとなく、シェイクスピアを連想してしまいました。

◆ちょっと敬遠していた三島作品でしたが、食わず嫌いはやめようと思います。

◆あつい、あついお芝居ですね。安蘭さん もさすがですが、やはり、期待どおり、平田さんはいいですね。ゾクゾクドキドキさせてもらいました。



◆アラマンダの花、プリマゥェーラの花、が、色味のない舞台において象徴的に情熱の色生命の色として心に飛び込んできました。
 また、観劇の感想とはまた違うかもしれないけれど、パンフレットが面白かった。写真つきのスタッフプロフィールや三島由紀夫のこの戯曲の成り立ち、その時代のブラジルの状況等読んで、下準備ができて観たことで、よりストレートにそれぞれの呼吸、想いが伝わったように思います。

◆舞台となったブラジルの写真展をロビーで開催していて、理解が深まりました。


【公演情報】
新国立劇場『白蟻の巣』
2017年3月2日(木)~19日(日)@新国立劇場小劇場

<スタッフ>
作:三島由紀夫
演出:谷賢一

<キャスト>
安蘭けい 平田 満 村川絵梨 石田佳央 熊坂理恵子 半海一晃

公演HPはこちらから

舞台写真提供:新国立劇場
おけぴ取材班:chiaki(文・編集)監修:おけぴ管理人

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