『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』などの大作ミュージカルから、
小劇場オリジナル作品、ライブ活動まで幅広く活動を続ける
【港幸樹さん】(写真右)と【谷口浩久さん】(写真左)
レミの司教さまや、エリザの革命家シュテファン、懐かしく覚えていらっしゃる方も多いはず!
おけぴ主催「
おコンサート」でも大活躍してくださった
港幸樹さん(特に「おコンサート番外編 ミュージカルファンのためのオペラ入門講座」では軽快なトーク&パフォーマンスでオペラの魅力を教えて下さいましたくださいました♪)と、ご自身が主宰する演劇ユニット「
E-Quest Company(イークエストカンパニー)」でも意欲的な演劇活動を続ける
谷口浩久さんが、
新ユニット「Robert Tobias」を結成! そのコンセプトは…「NEO STAGE CREATION」!!
おふたりが出会った作品
『貴婦人の訪問』をモチーフにした
第一回公演に続き、早くも第二回公演
『ロバート・トバイアス2「デュエリスト」』が3月18日(土)
高円寺Studio Kにて開催されます♪
前回と同じく、第一部はおふたりによるトーク&ソング
(あのアーティストのメドレーが!? さあ今度は何が飛び出すかお楽しみに♪)。そして第二部はミュージカル『モーツァルト!』と『ルドルフ 〜ザ・ラスト・キス〜』の楽曲を使用したオリジナルパフォーマンス。テーマはずばり「親子の対立」!
おふたりも出演経験のあるミュージカルニ作品をモチーフにしていますが、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと父・レオポルト、そしてルドルフとフランツ・ヨーゼフ皇帝を、港さん&谷口さんが演じるわけでは“ない”とのこと。さらに作品のダイジェストやパロディでも“ない”とのことで…。
んん? これはいったいどんなパフォーマンスが生まれるのか? そしてタイトルの「デュエリスト(=決闘する者)」が意味するものとは?
たくさんの「??」と抱えたおけぴ管理人&スタッフ。さっそくおふたりに時間を作っていただきインタビューしてきました!
◆【『貴婦人の訪問』ボディガード役で意気投合】
──まずはユニット結成のきっかけから教えてください。おふたりの共演は…
港)
2015年の『貴婦人の訪問』初演が初めてです。お互い同じ作品に出演していたことはあるのですが、時期がすれ違いで。
──涼風真世さん演じるクレアのボディガード二人組という役柄でしたね。
港)
同じ役柄で、同じ楽屋で、出ている場面も一緒だから、空き時間もずっと一緒(笑)。
谷口)
話が合う人で良かったなあって(笑)。
ユニット名「Robert Tobias(ロバート トバイアス )」の由来は?
谷口「ボディガード二人組の役名がロビーとトービーなんです。それでロバート&トバイアス」
港「最初は今拓哉さんに“ボディガーズ”がいいんじゃない?と名付けてもらったんですけど…(笑)」
──出会ってすぐに意気投合されたんですか?
港)
稽古場から気が合うなとは思っていたけど、深い話をするようになったのは劇場入りしてからですね。
谷口)
他の人がみんな舞台に出ているのに、僕たち2人だけが楽屋にいることが多くて(笑)。同じ場面に出るので。
港)
楽屋のモニターで舞台の様子を見ながら、演技や表現についてああでもない、こうでもないと話していました。やっぱりプリンシパルキャストの方って、舞台上でなにか突発的なことが起こってもうまく対処できるんです。それって役の内面、土台ができているからこそなんですよね。それをモニターで見ながら、なるほどな、さすがだな、とか。
──初演、再演と過ごしたその時間がユニット結成につながったんですね。ユニットとしての活動第一弾はその『貴婦人の訪問』を題材にしたトーク&パフォーマンスでした。
港)
『貴婦人の訪問』はありがたいことにとても評判が良かったのですが、出演している自分たちも再演を通して「いろいろな解釈、味付けで楽しめる」ことに気がつき、「これは相当おもしろい作品だぞ」と改めて感じました。それでまずはこの作品を題材に自分たちが考えている“表現”についてなにかをお伝えできるのではないか、と考えたんです。
谷口)
どちらが言い出したわけでもなく自然と。初演、再演と共演していくうちに、お互いの活動スタンスも理解できて、その関係性のなかで徐々に熟成されていった企画でしたね。
不条理性のある『貴婦人の訪問』の世界に因果律をつけて、さらにある仕掛けを通して「なぜ彼らがあんなことをしたのか」をお見せすることで、作品のひとつの解釈、「なるほど!」をお伝えできたと思います。──今回は「親子関係」をテーマに、ミュージカル『モーツァルト!』『ルドルフ ~ザ・ラスト・キス~』(以下『ルドルフ』)の楽曲を取り上げるとのことですが。
谷口)
前回とは少し違って、『モーツァルト!』『ルドルフ』をダイジェストや別解釈で見せるのではなく、その楽曲や設定を借りながら、あくまで別の人物―それは港さんや谷口本人かもしれないし、あるいは僕らが構築したまったく別の人物かもしれませんが―を描く予定です。
『マンマ・ミーア!』を思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。もともとある楽曲を使って、人物を描いていく手法です。
港)
「コンセプト・ミュージカル」という考え方ですね。ひとつのストーリーを追いかけるのではなく、既存のミュージカルの楽曲を使って、“普遍的な親子の関係”をお見せできたらいいなと思っています。
たとえばヴォルフガングとレオポルトの関係性を、一般的な親子に置き換える。親は子供のためを思っているのかもしれないけれど、子どもにしてみたら「どうしてわかってくれないんだろう」とか。その逆の「親の心子知らず」な面もある。そういう関係性に感情移入しやすい方も多いと思う。ある種の普遍的な関係性を描きたいですね。
【ACTではなくPLAY、本物の演技を伝えたい】
谷口)
僕の信念は「役を演じるときに、役を演じない」こと。舞台上で起きたことに対して本当に心が動く、役として泣いているのか、自分自身が泣いているのかわからないような状態が、僕の目指す役作りです。自分自身の心で感じて、本物の感情で泣く、それが演技だと思っています。
今回はそれをさらに掘り下げて、“役”そのものを取り払って“感情”を動かしていきたいなと。そもそも役を演じるときに大げさな面をかぶる必要はないのではないか、俳優自身の心と身体を通して、本物の感情を感じていただくことが演技なのでは、ということをお客さまにも伝えたいんです。
港)
演じる(ACT)というよりは、我々そのものを見てもらう、それが結果的に僕らがお見せしたいものにつながるのかもしれません。
谷口)
「ACT」というより、「PLAY」に近いかもしれない。役の上で遊ぶ。
港)
ロールプレイングゲームって「役割を遊ぶ」という意味ですよね。そんなかんじで「ACT」でなく、「PLAY」なのかな。
谷口)
それこそが人の心を打つ、これからの演劇だと僕は信じています。周りの俳優や、お客さまにもそれをお伝えして、広がっていくといいなと。
──「ACT」ではなくて「PLAY」…もうすこし詳しく教えてください。
港)
たとえばピアノやチェロを演奏しているときも、どこかで音楽と一体になる瞬間ってありませんか? 音楽に身を委ねて、自分が演奏していることも忘れて、何かに操られているように演奏している…そんな境地にたどり着くのが最高の演奏なんじゃないかなと思うんです。それと同じことが、谷口さんの言う「役が泣いているのか、自分が泣いているのかわからない」瞬間なのではないかな、と。
谷口)
演技って「奇跡」だと僕は思います。だって人間だけですよね、空想で泣いたり怒ったりできるのって。人間には想像力がある。その力を使って実際にはないことが真実になる瞬間って奇跡なんですよ。でもそこに到達するのが難しい。プロフェッショナルとは、その奇跡をいかに計画的に起こせるかだと思います。たまたま奇跡に出会うことはあるかもしれない。でもそれを意図的に起こすことができるように、方法論を勉強したり、稽古を重ねたりしているんだと思うんです。僕らのユニットのコンセプト「NEO STAGE CREATION」はその考えの延長線上にあります。“ネオ”とついていますが、新しくて奇抜なステージをみせるわけではなく、むしろ演技の根源的なものをお見せする、そういう意味では“ネオ”ではなくて“ルネッサンス”なのかもしれません。
──計画的に奇跡を起こすためにはどんなことが必要なのでしょうか。
港)
役のヒントはすべてテキスト(台本)に書かれています。テキストを読み込むしかないんです。それでもちゃんとその人の個性は出てくる。
楽器を演奏していると、楽譜通りに演奏していても、音が自分の声のように聞こえてくることがありませんか? それと一緒で個性なんて捨てても勝手ににじみ出てしまうものなんです。
谷口)
意識しなくてもできるような技術が必要ですよね。やっぱり音程はちゃんと取れなくちゃいけないし(笑)。
港)
歌える人が喋るように歌うのと、音程が取れない人がごまかして叫ぶように歌うのとはぜんぜん違うからね。
──感情を動かすことと、その基礎になる技術、どちらも大切。そのことを伝えつつ、第二部では実際にパフォーマンスで見せてくれるんですね。どんな作品になりそうでしょうか。
港)
デヴィッド・ルヴォーが『ルドルフ』の稽古場で「観客はストーリーではなくて、みんなの生きざまを観にきているんだよ」と言ったことが忘れられないんです。ストーリーがおもしろいのに越したことはないけど、舞台を見たあとって、「あの場面がよかった」「この表情がよかった」そんな感想が多いですよね。
谷口)
人と人との交流、ぶつかり合いをみせることのほうがストーリーより優先順位が高いんです。
港)
今回もそういう意味ではストーリー的なものはない、と言えるかもしれません。「親子の対立」をみせるための流れはありますが。
谷口)
あまりにも僕たち本人そのものが出てしまうと、第一部との区別がつかなくなってしまうので、あくまでも芝居として、現実と虚構のスレスレのところまで降りてみようかなと。劇中で手紙を読むんですが、その一部で僕ら自身の言葉をお聞かせする予定です。もちろん僕らの私生活そのものをお見せしたいわけではなく(笑)、虚構と現実のスレスレのところで。前回のパフォーマンスは完全な虚構でしたが、今回もうちょっと現実に近いものを目撃してもらい、感動につなげるのが目標です。
──既存の作品を使って感動を生む。どんなパフォーマンスになるのか楽しみです。ピアノは今回も高野直子さんですね。前回公演でもピアノ一台だけでまるでオーケストラのような演奏、素晴らしかったです!
港)
いつも無茶ばかりお願いして困らせています(笑)。
谷口)
今回もすごい無茶振りをしていて、さすがに笑ってたね。
港)
無茶振りだけど、完璧じゃなくてもいいんです。これは演奏だけじゃなくて、演技も。前回の稽古で谷口さんがゲストの方々に完成品を出そうと思わなくてもいいんだよって言っていたけど、まさしくそうで。だって完成しちゃうとそれ以上のものがないじゃないですか。
谷口)
ある意味では制作過程のものを見ていただく形になるかもしれない。完成品を見るってつまりパフォーマーがそこで立ち止まっているということ。そこに行き着くまで、完成させるまでの過程がすごく素敵だったりもするんです。完成品をただなぞるのではなく、ある種のインプロビゼーション性、舞台の上で相手からまだまだ何かをもらっている状態を見ていただければ。
【既存の作品に、本当の言葉を加えて描く普遍的な「親子関係」】
──テーマを「親子関係」にしたのには何か理由が?
港)
メンバー2人ですから、2人の人間が対峙するものをやりたいなという思いがありました。お互いに父子の対立が作品のひとつの核でもある『モーツァルト!』に出演していましたし。これを題材に、前回と同じようなダイジェストというか、ひとつの解釈的作品にしようと思っていたら、谷口さんから「もっと普遍的なものを描きたい」という意見が出まして。
谷口)
で、僕が二部の台本を書いて。そのあと曲のつなぎとか、構成とかは港さんにポーンと投げました(笑)。
──「親子関係」というテーマを通して描きたいものとは?
港)
僕の場合は単純に「愛情」ですね。やっぱりこの年齢になると、いろいろな形の「愛情」が心に沁みるじゃないですか。異性への愛情だけでなく、友情だったり、親子の愛情だったり。その「愛情」故に起きてしまう悲しいこともあるし、「愛憎入り交じる」というように愛情があるからこそ逆の表現になってしまうこともある。
僕は親のパートを受け持ちますが、歌いながら色々なことを考えて泣きそうになってしまう箇所もあります。でも最後には救いがあるので…。
谷口)
僕が描きたいのも港さんと同じく「愛情」。それから「感謝」ですね。自分自身の親のことを考えると、ほんとうに感謝しかなくて。そもそも僕が俳優を目指したのも親父につれていってもらった映画がきっかけなんです。僕の人生すべては親父のおかげなのかもしれない。作品のテーマは「親子の対立」ですが、表現したいのは「愛情があるからこそすれ違う」ということで…。(目に涙が浮かぶ)ああもう…だめだね(笑)。親と喧嘩をしたこともあるけど、それはやっぱり愛していたからこそ、なんですよね。あの、こんな泣いてますけど、うちの親父、まだ生きてるんですけどね(笑)。でもやっぱり改めて『モーツァルト!』という作品と重ねて考えると、対立もすべて、愛情からスタートしていたんだなって…(再び涙)。
港)
谷口さん、すぐ泣くんです。僕もけっこう涙もろいんですけど、それ以上に泣く。彼を見ていると、僕はなんて心無い人間なんだろうと思います(笑)。
谷口)
感情のコップが浅いんだと思う…(泣笑)。でも僕が泣くときって、悲しいとか悔しいとかじゃなくて、ほぼすべて「ありがとう」とか「感謝」の涙ですから。
港)
レオポルトが「心を鉄に閉じ込めて」って歌いますが、彼を見ていると真実味のある言葉で歌える気がしますね(笑)。
【これからの「ロバート トバイアス」とお互いのこと】
──ユニットとして今後の展望は? オリジナル作など考えていらっしゃいますか?
谷口)
オリジナル作、僕はやりたいですね。
港)
質の高い、二人芝居的なものをしっかりと作れるといいよね。
谷口)
僕らの核になるような作品がほしいですね。言ってしまえば、おもしろいと思えるものならなんでもいいと思うんです。たとえばオフ・ブロードウェイの小さな作品を買って、そこに僕らの魂を吹き込んで新たな作品に立ち上げるというようなこともやってみたいし。
港)
そういう力をつけるために、歌のないストレートプレイに挑戦する必要もあると思います。ミュージカルが好きで、僕らのことを見てくださるお客さまにも、それ以外のものも楽しんでもらえるような状況を作りたいんですよ。
谷口)
芸術の楽しみ方がわかるって、ぜったいに豊かなことですから。
──ただ単純に、既存の作品の深掘りやパロディではなく、「ロバート トバイアス」のステージに触れることで、新たな表現への出会いが生まれると楽しいですよね。
港)
将来的には僕たちからの一方通行ではなく、お客さまも交えてのミュージカルシンポジウムのようなイベントができたらうれしいですね。
──では最後に、「ロバート トバイアス」メンバーのお二人それぞれがどんな人なのか、相手のことを教えてください!
港)
谷口さんは…マニアックな人です(笑)。
谷口)
港さんは僕とはまったく違う性質の人だと思っていて。でも同じことを考えていて、その考えを分かち合える人です。人としてはまったく違うタイプ。僕がネガティブに捉えることを、ものすごくポジティブに受け取っていたりするし。
港)
谷口さんはすごく繊細だけど、協調性もあって、みんなに愛されるなーって。
谷口)
いやいや、それは逆でしょ。港さんのほうが協調性ある。
港)
いえ、僕は一匹狼タイプですから。
谷口)
一匹狼なのに、協調性があって、愛されるタイプなんですよ。
港)
お互いに、自分自身と相手の捉え方が違うんだね(笑)。
谷口)
でも港さんとは見ているもの、目指しているところが同じだな、と思います。同じものを違う視点から見ている。だからこそ話していて発見があるんです。
港)
僕ら『貴婦人の訪問』で二人組のボディガードを演じましたけど、彼らもそれぞれに役割があるはずなんです。クレアを警護するという目標は一緒で、彼女のためにそれぞれ別のところを注視して行動している。2人で同じところを見ていたらボディガードにならないですから。「ロバート トバイアス」もまさにそうで、いろいろな視点から、同じ場所を目指している感じです。
──そんお二人が挑む「Robert Tobias 2 "The Duelists"」。前回とはまた違う味わいになりそうで楽しみです。
港)
いい意味で毎回、裏切っていきたいですよね。
谷口)
僕らなりの裏切りで、毎回変化しながら、それでも後ろを振り返るとちゃんと一本の道ができているといいな、と思っています。
◆ 演技、歌…表現を追い求める港幸樹さん&谷口浩久さんが挑むネクストステージ!
ロバート・トバイアス2「デュエリスト」は、いよいよ今週末3月18日(土)開催です(2ステージ♪)。
演技について真摯に語っていただき、内容もちょっと堅めなのかな? と思いきや、ミュージカルの楽しさいっぱいに、そして新たな発見も満載で鋭意稽古中とのこと。
『モーツァルト!』と『ルドルフ』をモチーフに描かれる父と子の“普遍的な”表現とは? 歌とトークの第一部もぜひお楽しみに♪
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おけぴ取材班:おけぴ管理人 hase(撮影) mamiko(文)