ミュージカル『キューティ・ブロンド』脚本家ヘザー・ハックさんスペシャルインタビュー!


ミュージカル『キューティ・ブロンド(原題 Legally Blonde)』
脚本家のヘザー・ハックさん
どことなくエルを彷彿とさせるポジティブパワーに溢れた女性でした!


 おけぴ管理人の、今まで観てきたなかで、一番好きなミュージカル

 いよいよ4月5日から全国公演がスタートするミュージカル『キューティ・ブロンド

 東京公演で盛り上がったおけぴ会員のみなさまの感想コメント&舞台写真も満載! 大興奮の観劇レポートに続き、東京公演観劇のために来日した脚本家ヘザー・ハックさんのおけぴスペシャルインタビューをお届けいたします!


 10年前、ニューヨークでミュージカル『Legally Blonde(キューティ・ブロンド)』に出会い、大・大感動したおけぴ管理人。作品の生みの親のひとりであるヘザー・ハックさんとの対面にテンションアップ! 「生涯のダントツNo.1作品」と熱くお伝えしたところ、この表情♪

 大ヒットした映画版をミュージカルにするときに大切にしたこと、映画版との違い、そしてブロードウェイ公演で出会ったニール・サイモンとの思い出など、たっぷりと語っていただきました!
(ヘザー・ハックさんのお気入りシーンやナンバーも♪)



「日本に来られてとても嬉しい!」というヘザーさん。
お仕事中、煮詰まったときには『千と千尋の神隠し』や『崖の上のポニョ』『思い出のマーニー』などスタジオジブリ作品のDVDをお子さんと一緒に見てリフレッシュすることもあるんだとか♪


──日本でも大ヒットした映画版のミュージカル化。そもそもなぜこの作品のミュージカル化が企画されたのでしょうか?

 エルのキャラクターはミュージカルの主役にぴったり! まさに“ミュージカルを具現化したような人物”それがエル・ウッズだと思います。ですから『Legally Blonde』は「ミュージカルにできる」というよりも「ミュージカルにするべき!」作品でした。


──ミュージカル版の脚本を書くときに、一番大事にしたのはどんな部分ですか?

 この作品は「自分に正直であること」についての普遍的な物語。映画版でリース・ウィザースプーンさんが演じたエルの素晴らしいスピリット――プラス思考の塊で、他者の一番良い部分を見るような彼女の精神性――は絶対に大切にしたかった。それと同時に、ミュージカル版ならではの新しい形でのおもしろさも出したかったので、そのふたつのバランスを取ることが難しかったですね。


2007年NY公演時の写真

──ミュージカル版でのチャレンジというと…?

 より豊かに、深みを持たせることができたのは、エメットのキャラクターだと思います。映画だと彼がどんな人なのかはあまり描かれていません。エルとすこし話して、急に恋に落ちてしまう。そこをより掘り下げて、深く描くことで、エメットとエルの関係性に信憑性を持たせることができたと思っています。


苦学生エメット佐藤隆紀さんとエル神田沙也加さん(日本版公演のニ幕デパートシーン♪)
(笑顔の店員は加藤潤一さん)

──その変化はミュージカル版を見ていて、とても強く感じました! ふたりのシーンだけではなく、ほかのナンバーでも歌詞とセリフがうまく混ざり合って、人物が描かれていきますね。

 セリフから歌へ、スムーズにつながらなくてはいけません。私が書いたセリフが歌詞になったりもしたんですよ。作詞を手がけたネル・ベンジャミンと手に手を取って、素晴らしい協力体制で仕事をすることができました。彼女も一緒に日本に来られたら良かったのに! ネルはいま『ミーン・ガールズ』のミュージカル化に取り組んでいるの。音楽と詞を手がけたローレンス・オキーフと彼女は結婚していて、彼らは一緒にハーバードに通っていたんです。だからふたりの実体験がもとになった要素もあるのよ。


──そうなんですか! 舞台のテンポ感も素晴らしくて、共同作業がうまくいっていたことがよく伝わりました。

 席に座ってシートベルトを締めたら、最後まで一気に駆け抜ける! そんなエネルギーのある作品よね。観客として何度も観ていますが、いまでも飽きません。いつ観てもハッピーな気分で満たされる作品だと思っています。



──ブロードウェイ公演での思い出などあれば聞かせていただけますか?

 ああ、それはもう…たくさんありすぎて!! わたしの人生のなかでも特別にマジカルな時間だったから、ほんとうに思い出はたくさんあるんだけど…なかでも特に印象的で、しばしば思い出すのはプレビュー公演で見かけたある家族の姿です。娘たちと奥さんに連れられてやってきたパパが、いかにも渋々やって来た、という感じで(笑)。ああ、彼はここに来たくなかったんだろうな、というのがあからさまに伝わってきたんです。気になったので注目していたら、ストーリーが進むうちにだんだん彼の気持ちがほどけていくのがわかったの。一幕最後の”♪So Much Better (初めての快感)"が終わる頃にはすごく興奮して、家族に向かって「なんて素晴らしいショーなんだ」って叫んでいたんです(笑)! それを聞いたとき、ほんとうに幸せでした。若い女の子たちがエルのことを好きになってくれるのは予想できましたが、彼のような年代の男性が楽しんでくれたというのがとても嬉しかった。


2007年NY公演時の写真

 それからもうひとつ、とっても嬉しいことがありました。あのニール・サイモンがわたしたちのショーを観に来てくれたんです。すごく優しい人で、観劇後に「素晴らしかったよ」と言いにきてくれました。「脚本も芝居も最高だった。トニー賞ではこの作品に一票を入れるよ」と手紙もくれたんです。今でもその手紙は大切にとってあります。だってあのニール・サイモンがそこまで言ってくれるなんて! ほんとうに素晴らしい思い出。わたしの人生のなかの大切な瞬間です。


──それは、すごいエピソードですね!

 ほんとうに。ニューヨークの評論家たちも彼のようにもう少し寛大な気持ちでわたしたちのショーを観てくれても良かったのにね(笑)。※ 作品の中でエルが受ける偏見と同じように、批評家たちもこの作品を偏った見方で受け止めていたと思う。でもロンドン公演ではローレンス・オリヴィエ賞の作品賞や主演女優賞を受賞したし、その後のパリやオーストラリア公演もすごく盛り上がりました。サンフランシスコでのトライアウト公演も、チケットの売れ行きも劇評もすごく良かったんです。全身ピンクのエルの格好をしたドラァグクイーンが観に来てくれたりして(笑)、みんながこの作品を一大イベントとして楽しみ、エルを愛してくれたのがほんとうに嬉しかった。社会の目、人からの偏見に屈せず、「わたしはこうなんだ!」と言い切れる、素晴らしいメッセージのある作品だと思っています。
 
(※2008年トニー賞には脚本賞・主演女優賞含め各賞にノミネートされましたが、残念ながら受賞ならず…)



2007年NY公演時のPALACE劇場

──ブロードウェイ公演を観たときは、とにかく若い女性の観客が多くて、みんなノリノリで楽しんでいたのが印象的でしたが、男性が観ても、とにかく痛快で元気がもらえる作品だと思います。音楽も素晴らしくて、CDを購入してずっと聴いているんですが、ぜんぜん飽きないです。ヘザー・ハックさんのお好きなセリフや場面、ナンバーはありますか?

 それもたくさんありすぎて(笑)。自分で書いたなかで一番好きなのは…「プレイボーイ・バニー」のくだり。映画とはちょっと違う流れで、エルが自分の主張を取り戻す瞬間があるんですけど、そこが一番好きです。
 「去年のサンプル・セールの…」のジョークは、ほかにも何パターンか案があったんだけど、あれを思いついたときに稽古場で全員が「それだ!」「やったね!!」って、手を叩きあって喜んだの(笑)。それで本番ではあのジョークが採用されたの。

 それから曲は全部好き。とくに"♪What You Want(あなたが欲しいもの)"は大好き! 試験官たちの前にバーンと出てくるのは、わたしの弟の実話なんです。志望大学の入学許可がおりなかった弟に、ママが「でも学校の人たちはあなたのことを知らないじゃない!」と言って、コロラドの大学まで彼を連れて行ったんです! それで教務官に「みなさんは彼のことを知らない。実際に会って判断するほうがいいと思いますよ」と言い放って(笑)。それで彼は入学を許可されました。その実体験をもとにしているんです。


ヘザーハックさんの弟さんの実話から誕生したシーンがこちら!
(映画版ではビデオエッセイでしたね)

 ラストシーンも、社会の中の男女の力関係、女性の背負わされている役割といったものを裏返すような思いを絡めて書きました。ほかにもキャラハン教授のような人物は最低! という思いを込めましたが、まさかあれから10年経って、アメリカの大統領がまさにキャラハン的人物になっているとは…。残念な思いもありますが、だからこそこの作品で主張していることは、これからも声を大にして語り続けていくべきなんだと思っています。
 

──今日これからシアタークリエで観劇されるとのこと。舞台と客席がすごく近くて、きっとブロードウェイ版とまた違う印象を受けられると思います。こちらが言うのもおかしいですが…楽しんできてください!

 観劇するのが楽しみでしかたないの。エル役の神田沙也加さんもすごくカワイイ。英語以外の言語で演じられるのも興味深いし、文化によって同じセリフでも解釈や、観客の反応が違ったりするのがおもしろいですよね。
 この作品に取り組んでいた時期から10年たちましたが、今でもこのショーを観た人がハッピーになり続けてくれているなんて、すごく嬉しいし、達成感があります。
 実はこの作品に取り組んでいるとき、お腹に娘がいたんです。だから今でも彼女のことをLegally Blondeベイビーとか、Broadwayベイビーとか呼んでいるの。その下の息子も大きくなって、子どもたちがお留守番できるようになったので、今回の日本公演には「I'm coming!」って(笑)。日本に来ることができてほんとうに嬉しいです!




おけぴ観劇会のミニのぼりももってくださいました♪


【東京公演千秋楽間近の3/31(金)夜、シアタークリエにてご観劇されたヘザー・ハックさんから感想コメントが届きました!】

「何か嫌なことがあったら、今日のこと思いだして忘れることにするわ。
それくらい素晴らしかった。
だいたい、自分の作品を見ると1,2ヶ所は気になるところがあるものだけど、今日のはパーフェクトだった!」



再演大希望♪
観劇会開催が叶ったら、今回の神田沙也加さんサイン入りの横に、
こちらのヘザーさんサイン入りミニのぼりもロビーに飾ります!

【公演情報】
ミュージカル『キューティ・ブロンド』
2017年3月21日(火)~4月3日(月)@ シアタークリエ (完売)

4月5日(水)・6日(木) 愛知 愛知県芸術劇場 大ホール チケット購入
8日(土)  香川・高松 レクザムホール 大ホール チケット購入
12日(水) 大分 iichikoグランシアタ チケット購入
15日(土)・16日(日) 福岡 キャナルシティ劇場  チケット購入
18日(火)  広島 JMSアステールプラザ大ホール チケット購入
20日(木) 静岡 浜松市浜北文化センター 大ホール  チケット購入
23日(日) 福井 越前市いまだて芸術館 チケット購入
27日(木)-30日(日) 大阪 メルパルクホール大阪  チケット購入

音楽/詞:ローレンス・オキーフ&ネル・ベンジャミン
脚本:ヘザー・ハック
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
音楽監督:小澤時史
振付:藤林美沙・梅棒

出演(役名):
神田沙也加(エル)
佐藤隆紀(エメット)
植原卓也(ワーナー)
樹里咲穂(ポーレット)
新田恵海(ヴィヴィアン)
木村花代(ブルック)
長谷川初範(キャラハン教授)

真瀬はるか/ダンドイ舞莉花/武者真由
青山郁代/エリアンナ/北川理恵/濱平奈津美
上野聖太/加藤潤一/高瀬雄史/古川隼大
&ブルーザーとルーファス役、一匹二役のワンちゃん♪

3/26のおけぴ観劇会でお配りした人物相関図を英語版にしてヘザー・ハックさんにお渡ししました♪

<あらすじ>
オシャレが大好きでブロンドが印象的な女子大生エル(神田沙也加)は、学生寮デルタ・ヌウで友人達と自由に楽しく暮らしている。
だがある日、婚約間近だった彼氏のワーナー(植原卓也)に突然振られてしまう。
その理由は「上院議員を目指す自分の妻としてブロンド娘はふさわしくない」という一方的な決めつけによるもの。
納得がいかないエルは、一念発起して猛勉強の末にハーバード大学のロー・スクールに見事合格する。

しかし、ブロンドでピンクのファッションに身を包むエルは学内で目立つ存在となり、黒髪の美女ヴィヴィアン(新田恵海)
をはじめクラスメイト達から批判を浴びてしまう。
しかもワーナーはヴィヴィアンと婚約してしまったという。
だが、その逆境がエルのやる気に火をつけ、一人前の弁護士を目指して奮闘を始めていく。

尊敬すべき先輩エメット(佐藤隆紀)やヘア&ネイリストのポーレット(樹里咲穂)らと知り合い、
外見も中身も磨きを掛けたエルは、大学の教授でもあるキャラハン(長谷川初範)の弁護士事務所でインターン生として働き始める。
そこで担当することになったのは、デルタ・ヌウの先輩でもあるブルック(木村花代)に関わる裁判。
果たしてエルは彼女の容疑を見事に晴らし、一人前の弁護士になることが出来るのか!

公演公式サイト


 


おけぴ取材班:おけぴ管理人(インタビュー)、hase(撮影)、mamiko(文)
本文中のNY写真は、おけぴ管理人の2007年NYでの観劇の際に撮影した写真です

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