第42回菊田一夫演劇賞の授賞式が行われました。同賞は演劇界の巨星・菊田一夫氏の名を冠し、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家を表彰する賞。第42回となる今回は、2016年4月から2017年3月末までに東京で上演された作品を対象に受賞者が選ばれました。
大賞の麻実れいさんをはじめ、受賞者のみなさんの喜びのコメント&表情、式の後に行われた囲み取材の様子をレポートいたします。
【菊田一夫演劇大賞】
麻実れいさん(『8月の家族たち August:Osage Country』のバイオレット、『炎 アンサンディ』のナワルの役の演技に対して)
『8月の家族たち』開幕レポ 「この度の受賞は、演出のケラリーノ・サンドロヴィッチさん、上村聡史さんから豊かな本をいただき、カンパニーに恵まれ、お客様に支えていただいたことで叶いました。ありがとうございます。
KERAさんと上村さんの作られる世界はとても深く、仲間たちと共にその中で充実した時間を過ごさせていただきました。みんながいなかったら、この大きな作品を乗り越えられなかったと思います。心から感謝しております。
桜の咲く季節に宝塚で初舞台を踏み、47年目の春を迎えています。(この受賞で)いただいた勇気をもって、改めて歩き出したいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
今後のご出演情報
『OTHER DESERT CITIES』【菊田一夫演劇賞】
中川晃教さん(『ジャージー・ボーイズ』のフランキー・ヴァリの役の演技に対して)
『ジャージー・ボーイズ』関連レポ 「最近、うれしいことにミュージカルへの関心が高まっていることを実感しています。それは、これまで僕らをけん引してくれた先輩方がいるからこそだと思います。
19歳のとき、初めて出演した東宝ミュージカル『モーツァルト!』では、僕のお父さん役の市村正親さん、コロレド大司教役の山口祐一郎さんをはじめとする先輩方が、右も左も分からない僕に、手取り足取り、ときには黙ってその姿勢でたくさんのことを教えてくれました。そのひとつひとつの瞬間、学びが、今日に繋がっています。先輩方の力無くしては、今の自分はありません。これから、僕自身がミュージカルを盛り上げていく一員として、これまでの学びをどう形にしていくのか、この賞の受賞を機にしっかりと考えたいと思います。
歌を通して、ミュージカルを通して、たくさんの方に感動を届けられる仕事に携わることができることに感謝しながら、邁進していきます。ありがとうございました」
<今後のご出演情報>
ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』祝千穐楽5/10♪
ミュージカル『ビューティフル』製作発表レポ
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』再演小池徹平さん(『1789 ~バスティーユの恋人たち~』のロナン、『キンキーブーツ』のチャーリー・プライスの役の演技に対して)
ミュージカル『1789 ~バスティーユの恋人たち~』初日前囲みレポ
ミュージカル『1789 ~バスティーユの恋人たち~』製作発表レポ「これまで演劇賞というものに無縁の役者でしたので、まず、この素晴らしい賞をいただけたことに感謝の気持ちでいっぱいです。役者業と歌手業をやっていく中で、なかなか難しいなと思い、どう進んでいけばいいのか悩んでいた時期もありました。そこで『1789』『キンキーブーツ』という作品と、そしてなによりまずミュージカルと出会いました。(この受賞は)自分が歩んできた道が間違っていなかったと、今後のミュージカル俳優としての僕の背中を押してくれるような、大きな励みになります。
この感謝の気持ちをたくさんの方に伝えたいのですが、言葉では限界があります。これからの活動で恩返しをしていけたらと思っています。本日はありがとうございました」
<今後のご出演情報>
ミュージカル『デスノート』
ミュージカル『1789』
新橋耐子さん(『食いしん坊万歳!~正岡子規青春狂詩曲~』の八重役の演技に対して)
「(所属する)文学座は、今年80周年を迎えました。私は在籍、48歳。いままでは先輩たちの胸を借りて、のほほんとやってきました。いろんなことを教えていただきました。いまは『食いしん坊万歳!』の若い劇団員のしっかりとした胸を借りて、ちゃっかり元気をもらってやっています。幸運なことだと思います。
そして、“文学座のよさ”を失わないようにこれからも頑張って芝居してねと言われ、よさって何だろうとつくづく考えております。それを考えつつ、身体に気を付けて次のステップに進みたいと思います。『食いしん坊万歳!』のみんなありがとう。素晴らしい賞をありがとうございました。
藤田俊太郎さん(『ジャージー・ボーイズ』『手紙2017』の演出の成果に対して)
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』観劇レポ
ミュージカル『手紙』観劇レポ「2016、17年、かけがえのない出会いがありました。2本のミュージカルを演出しました。ひとつは『ジャージー・ボーイズ』、1963年、菊田一夫先生演出の『マイ・フェア・レディ』初演から日本のミュージカルを作り、愛してきた東宝のみなさんと仕事をさせていただき、キャスト・スタッフ、その表現力・演技力、質の高さを実感する日々でした。その中で、演出の信念を通しました。終わらない青春、客席と舞台上が一体化する様なミュージカルを作りたいという思いを伝えました。カンパニー一同、そこに果敢に挑戦しました。舞台上でザ・フォーシーズンズのハーモニーを奏でたいという一心でした。
もうひとつが『手紙』、こちらはオリジナルミュージカルを一から作るという挑戦でした。稽古場はまるで戦場でした。キャスト・スタッフそれぞれの役割をかけての戦いだったと思います。日本人だからできるオリジナルミュージカルを作りたい。犯罪者の家族がまるで犯罪者のように扱われる日本社会の矛盾と向き合う作品を作りました。出来あがった作品は、もしかしたら多少いびつな形のハーモニーだったかもしれませんが、それこそが愛おしく僕たちの日常を描いていたと思います。
僕は、これからもそれぞれの作品のカンパニーの色、音をきちんと奏でられる演出家でいたいと思います」
<今後の作品情報>
『ダニーと紺碧の海』
ミュージカル『ピーターパン』
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』再演決定!!【菊田一夫演劇賞特別賞】
勝柴次朗さん(永年の舞台照明デザインにおける功績に対して)
「このような賞に選んでいただいたことは夢のようです。僕は、半世紀近くこの仕事に携わってきました。この受賞は自分の人生が認められたようで、本当にうれしく思っています。僕は舞台に立つ人間じゃないので、みなさんのようにうまいことは言えませんが(笑)、今日も来てくれている、今まで一緒にやってくれみなさん、ありがとうございます!でも、まだ引退しませんので、これからもよろしくお願いします。
そして最後に、陰ながら支えてくれる妻と娘に、この晴れ姿を見せられてよかったと思います。ありがとうございます」
<今後の作品情報>
ミュージカル『パレード』
ミュージカル『デスノート』 <囲み取材レポート>
麻実れいさん
──受賞されて 大変大きな作品2本でしたので、自分の中で何か責任が果たせたのかなとホッとしています。不思議なことに、年を重ねるごとにいただく本が大変豊かというか、難しくなってきていますが、本当におかげさまでいいカンパニー、仲間に恵まれて乗り越えられました。その点では、私はずっと幸せだったなと思っています。
──今後の目標は 私はすごく不器用なので、何事にも時間がかかりますが、これからも私らしくのんびりと一歩一歩進み、いただいた作品を大切にしようと思います。
──やってみたい役は 実は日本モノに参加したいんです。山本周五郎さんの世界などが大好きなんです。
いつか…と願っていますが、まぁ、来ないでしょうね(笑)。
─ファンへのメッセージを みなさまのおかげで今日まで舞台人として歩くことがかないました。これからも精一杯歩み続けたいと思います。またなにかで、私の舞台の情報をご覧になったら、どうぞ足をお運びくださいませ。
◆中川晃教さん
──受賞されて うれしいです!真面目なことしか言えないわけじゃないんですけど(笑)、ブレずにここまで来られたのは、いつも待っていてくれているお客様、応援してくれるファンのみなさん、そしてともに作っていく仲間たちがいたからという思いが一番にこみ上げてきます。そして、その環境があってこそ、こうして評価されるんだなと。
──賞金はどう使いますか 僕、夢があるんです。日本からアジアへ、アジアから世界へ、自分が持っている力を発揮できたらいいなと!そこで足りないものは語学力。英語の勉強に使いたいと思います。言ったからには、有言実行しないと(笑)!
──ファンへのメッセージを このような素晴らしい賞をいただくことができたのは、劇場に足を運んでくださるお客様、見守ってくれるファンの方のおかげです。ステージに立たせていただくことが日常のようになっていますが、この受賞が、初心にかえるきっかけになりました。賞って、形がないものですよね。では何だろうと考えると、人の熱い想いなのかな。そんな風に思います。その想いに、しっかりとステージで返して行けるように、頑張ります!
◆小池徹平さん
──受賞されて 作品や共演者のみなさんとの出会いがあり、みんなで頑張ったからいただけた賞です。支えてくれたみなさんに感謝の気持ちを伝えたいですね。
ミュージカルの経験はまだ浅いですが、歌も体力も、あらゆる面で日々の鍛錬が必要です。その努力は、本来は人に言うべきものではないけれど、そこも含めて認めていただけたような、報われた気もしています。
『1789』ではセンターで、『キンキーブーツ』ではどちらかというと支える側で、そんな両極端な役でいただけたこともうれしいですね。
──ウエンツさんとは 連絡は取り合っていますよ。この間も彼が出演しているミュージカルを観に行きました。
刺激は受けますよね。一番そばにいた、ある意味家族みたいな感覚から、一歩引いて見ると、彼がどれだけ頑張っているかとか、近くにいたら見えてこなかったものが見える。だから、今、すごくイイ関係性だなと思います。
──演劇論をかわす日も?それは、まずないんじゃないかな。そこは語る気ないですね(笑)。
──今後の活動の方向性は 僕のなかでは、ミュージカルに対してまだまだ貪欲に、行けるところまで行きたいという気持ちがあります。もちろん映像も大好きなジャンルなので、簡単なことではありませんが両立させていきたいと思っています。
──ファンへのメッセージを 素晴らしい演劇賞を受賞させていただきました。ありがとうございます。僕らはこれからも舞台で、演劇のすばらしさを身体を張って伝え続けたいと思っています。ぜひ、また劇場に遊びに来てください。
受賞の喜びをそれぞれの言葉で伝えられているみなさん、キラキラと輝いていました。みなさんがおっしゃっていたのは「仲間」の存在です。舞台はひとりではできないものですよね。役者さん、そして支えるスタッフのみなさんの情熱の結晶を観ているんだな!ということに、改めて感動でした!これからも、感激観劇!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人