こんな新派は見たことがない!
レトロで格調高い三越劇場が、“360度”江戸川乱歩ワールドに!写真左から 明智小五郎役:喜多村緑郎さん、緑川夫人こと黒蜥蜴役:河合雪之丞さん
河合雪之丞丈の黒蜥蜴、女方ならではの匂い立つような妖艶さで正にハマリ役。
喜多村緑郎丈の明智は爽やかに、スーパー歌舞伎仕込み?の京劇風殺陣も披露。
昭和2年開場という三越劇場の豪華な装飾もムード倍増。
良い意味で新派らしくない浪漫活劇、面白かったです! (おけぴに届いた会員感想コメントより)
歌舞伎界から転身した喜多村緑郎さん(元市川月乃助さん)と河合雪之丞さん(元市川春猿さん)が、名探偵・明智小五郎と、この世の美しいものをコレクションすることに執念を燃やす女盗賊・黒蜥蜴に!
これまでの新派のイメージを塗りかえる意欲的な新作舞台、
六月花形新派公演『 黒蜥蜴』開幕レポートをお届けいたします。
多彩なアクションあり、タンゴあり、歌舞伎あり…!?
「とにかくおもしろい舞台をお見せしたい」(喜多村緑郎さん)
(写真左から:春本由香さん、河合雪之丞さん、喜多村緑郎さん、永島敏行さん、秋山真太郎さん(劇団EXILE))
◆【初日前に公開されたゲネプロより舞台写真&囲み取材コメント】
幕が上がるとそこは、昭和初期の東京。
悪の輩が集まる秘密のパーティに、ひときわ妖しく美しい魅力を放つ女賊・黒蜥蜴の姿が…
オープニングからいつもの新派公演とは全くちがう雰囲気!
宝石商の娘・岩瀬早苗への誘拐予告をうけて、明智小五郎が警備に乗り出します…! 喜多村緑郎さん演じる名探偵、甘い魅力とかっこよさのバランスが絶妙です♪
記者会見等で連発した
「ご期待ください」という言葉をそのまま信じてほしい、という喜多村緑郎さん。
「ハードルを上げすぎたかと思いましたが、じゅうぶんに飛び越えられます!」と自ら上演を熱望したという作品への自信を覗かせます。
美しい着物姿で登場した河合雪之丞さんは
「(新作公演には)既存の作品を勉強させて頂くのとはまた違った労力、体力が必要。稽古場からずっと苦労してきましたが、初日が開いても千秋楽までずっと大変なことがあると思う」と、新派として新たな挑戦とも言える舞台を生み出すまでの苦労を滲ませながら、
「とにかく役者とスタッフが走り回って目の回るような大変な舞台。そのぶんお客さまに喜んでいただけるのでは」と語ります。
多彩な立廻り、こちらは京劇風の衣裳でバシッときめる明智小五郎♪
「歌舞伎でやっていたことから、初体験のことまで、とにかくなんでもありの世界」(緑郎さん)という今回の『黒蜥蜴』。これが新派の舞台? 思わず目を疑ってしまうほど、迫力のアクションシーンも満載です!
秋山真太郎さん演じる雨宮潤一は元プロボクサーという設定。
「黒蜥蜴をひたすらに愛し続ける姿もぜひ見てください」(秋山さん)
こちら、ぜひ舞台で実際にご覧いただきたい“だんまり”。
江戸川乱歩で“だんまり”? そうなんです! まさに「なんでもあり!」な楽しさに拍手!
客席を使った演出もふんだんに。まさしく神出鬼没の怪盗たち。
どこから誰が登場するのか? もしかするとあなたの隣に黒蜥蜴が現れるかもしれません…!
明智小五郎といえば変装の名人! ということで…客席の目も欺く化かし合いにもぜひご期待を。さまざまな衣裳を着こなす雪之丞さん(男装姿も♪)、あっと驚く変装を
「コスプレ大好き」と楽しんで演じている様子の緑郎さん。国立劇場歌舞伎俳優研修所の同期でもあるお二人。息ピッタリな演技、パフォーマンスにも納得です。
新派版『黒蜥蜴』のオリジナルシーン、初体験の「タンゴ」を踊る場面では「日本舞踊に通じるものを発見した」という緑郎さん。明智と黒蜥蜴の心がぐっと近づく美しい一場面です
「じっくりと深いお芝居をみせる場面に加え、これまでの新派にはなかった激しいアクション、歌舞伎の所作、ストーリー的にも感動できる深い作品になっている」と新派版『黒蜥蜴』の見どころを語り、「
こんなの新派じゃないと言われるかもしれない。賛否両論あるのは覚悟の上」と言い切る喜多村緑郎さん。そこにあるのは
「とにかくおもしろい舞台を作りたい」という思い、そのことをひしひしと感じる舞台です。
美しいものを集めることに執念を燃やす黒蜥蜴。彼女の秘めた真実とは…? そして誘拐された早苗の運命は…!?
さらにこの作品のもうひとつの主役は、90年前の開場当時の内装をそのまま留める三越劇場そのもの。レトロで格調高い雰囲気はまさに黒蜥蜴の世界観にぴったり! 舞台の上のセットまでぜひ注意深くご覧くださいね。360度ぐるりと江戸川乱歩の世界! その意味が劇場に入るとよくわかると思います。
永島敏行さんの「開通したばかりの銀座線に乗って皆さんよく来ましたね」というセリフに場内、その時代に戻ったかのようでクスクス笑いが。
三越劇場の作りを見たら、その時代にいるような錯覚を覚えるほど。
劇場と舞台がこんなに一体化、合っているのは特筆すべきかなと思いました。 (おけぴに届いた会員感想コメントより) 「最近話題の豊洲にできた360度シアターは客席が回るそうですが、こちらは360度、役者が走り回って、お客さま参加型の芝居に仕上がっています。絶叫マシーンのようにあっというまに終わる展開の早い舞台。老体に鞭打ってがんばります(笑)!」(永島敏行さん)
黒蜥蜴を追い続ける“万年刑事”片桐を演じる永島さん。「彼は刑事ですが、黒蜥蜴に憧れその姿をひと目見たいという下心を持つ男です」(永島さん)
追う者と、追われる者でありながら、不思議な絆を感じ心を通わす明智小五郎と黒蜥蜴。演じるおふたりの表情が、共犯関係ともいえるふたりの不思議な“友情”に真実味を与えます。
美しいものを追い求めた黒蜥蜴が“盗まれたもの”とは? 新派の明日を担うおふたりの演技をじっくりとお楽しみください。
江戸川乱歩の原作小説から感じる“匂い”まで再現されているような、新派版『黒蜥蜴』。新派初登場となる秋山真太郎さん(劇団EXILE)、新派女優の一歩を踏み出したばかりの春本由香さん(尾上松也さんの妹さん♪)、2度目の新派出演となる永島敏行さんに加え、緑郎さん、雪之丞さんとともに歌舞伎界から移籍してきた澤瀉屋のみなさんもご出演です(おけぴスタッフの注目キャラは河合宥季さん演じる黒蜥蜴の手下・紅子ちゃん♪ チャイナドレス姿がキュート!)。
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“日本の美しさを表現し続ける”劇団新派。この『黒蜥蜴』も確かに“日本の美しさ”のひとつの形を私たちに伝えてくれる舞台です。
新派の舞台を見たことがないという方にもぜひオススメしたい六月花形新派公演『黒蜥蜴』。6月24日まで三越劇場にて上演中です。
稽古場レポートもぜひご覧ください
おけぴ取材班:mamiko(撮影/文) 監修:おけぴ管理人