高畑淳子さん主演 『土佐堀川』製作発表レポート

 「九回転んで、十回起き上がる」

 連続テレビ小説『あさが来た』の原案にもなった『小説 土佐堀川』を、高畑淳子さん主演、田村孝裕さん演出で舞台化!

 幕末から明治、激動の時代を生きた実業家・広岡浅子の波乱の生涯を描く舞台『土佐堀川 近代ニッポン─女性を花咲かせた女 広岡浅子の生涯』の製作発表が行われ、出演者が意気込みを語りました。


浅子が創立に関わった日本女子大学キャンパス内で行われた製作発表。
みなさん、素敵な笑顔です♪


 女性に学問は不要とされた時代に、頭を使い、嫁ぎ先で商売に邁進。「九回転んでも、十回起き上がればいい!」と、“七転び八起き”ならぬ“九転び十起き”の精神で、炭鉱開発、銀行経営、保険事業(現在の大同生命)などを手がけ、日本初の女子大学(現在の日本女子大学)の設立にも関わった広岡浅子の波乱の生涯が、笑いと涙たっぷりに描かれる舞台『土佐堀川』。

 製作発表会冒頭では、日本女子大学・成瀬記念館の学芸員による「広岡浅子ミニ講義」が行われ、取材陣とともに講義を聴講したキャストからは、浅子の「実行力」に驚きの声が上がりました。


豪商三井家のお嬢様として生まれ、17歳で大阪の加島屋に嫁入り。番頭に商売を任せて放蕩三昧の夫に代わり、独学で学んだ知識で経営に関わり、維新の混乱期も見事乗り切る。夫の世話は妾に任せ、炭鉱産業や銀行業、さらに日本初の女子大学設立にも関わるなど精力的に活動した広岡浅子。その生涯を5分で語るミニ講義にキャスト陣も興味津々!



【広岡浅子役:高畑淳子さん】


「(浅子は)1人分というより10人分ぐらいのことをやった方。ほんとうにタフだなとあらためて感じました。(芝居の)台本もタフに仕上がっています。千秋楽まで生きて終われるように願っています(笑)」

──台本を読んでの感想

高畑:涙が出て、なかなか読み進められませんでした。最後に浅子がおばあさんになったところ、いいですねえ。読みながら(涙で)ぐちょぐちょになります。

──浅子の魅力は?

高畑:「なぜ?」と考えることができた人。女性の生き方が限定されていた時代に「なぜ女が本を読んではいけないんだ?」と声を上げることができた。豪商だった三井家に生まれ、自分も男たちと同等に商いをしたいという気持ちがあったのだと思います。商売の上では、目のつけどころが他の人とは違っていた。「おったまげる女だ」というセリフがありますが、浅子は本当に「おったまげる」人ですね。
 自分は浅子のように行動的ではない。ほんとうに驚くべき行動力。でもやはり三井家というバックがあったからという側面もある。浅子ひとりの力ではなく、彼女に巻き込まれる人、力を貸してくれる人もたくさんいたから、あれだけのことを成し遂げることができたのだと思います。

──昨年の『雪まろげ』以来の演劇作品。高畑さんにとって「舞台」とは?

高畑:浅子の生涯と同じように、ひとりではなにも成し遂げられない。「舞台なんて私ひとりの芝居でもたせてやる」なんて傲慢なことを思っていた時代もありましたが、今では「自分の芝居なんて舞台の上のひとかけらでしかない」と感じるようになりました。今回の舞台も長い間企画を練って、(演出の)田村(孝裕)さんがこんなにゲソゲソにやせ細るまで身を削って台本を書き直して…そういうご苦労がある。きっとまた田村さんが私のことを“ええ具合”にしてくださると思っています。



【浅子の夫・広岡信五郎役:赤井英和さん】


浅子の夫で、商売には全く興味のない広岡信五郎役を演じる赤井英和さん。
「浅子役は高畑さんにピッタリ。信五郎は大阪の商家の跡取りだが、けっこう遊び人でいろいろやってる(笑)。これなら自分でもイケるかなと」

──台本を読んでの感想
  
赤井:女中の小藤との間に子どもができたりする役。その小藤のセリフで「涙は悲しいときに出すのやなく、嬉しいときに出すんや」というのがあり、胸を打った。涙を流しながら台本を読みました。

──高畑さんとの共演について

赤井:以前に共演した『ええから加減』の楽屋で、いつも漫才のシーンについて悩んでいた。でも舞台の上では見事に演じていて、「ああ、やっぱり女優やな」と。


【加島屋の女中・小藤役:南野陽子さん】


浅子、信五郎と奇妙な三角関係になりながら、生涯浅子を支え、強い絆で結ばれていた小藤役を「責任を持って演じたい」という南野さん。

南野:小藤は幼いころから晩年まで、ずっと浅子のそばにいて、お互いに支え合いながら生きた人。舞台の上では高畑さんに教えていただきながら、浅子を支えていきたい。ぐっとくるシーンが多すぎて、ちゃんと演じられるだろうかと思うほど。自分自身として台本を読むと感情が込み上げてしまいますが、そこは小藤としてきちんと抑えて演じたいと思います。


【信五郎の弟・広岡正秋役:田山涼成さん】


「赤井さんの“弟”役です(笑)。参っちゃいましたねー」
破天荒な浅子に反発するが、次第に良き理解者、ビジネスパートナーとなっていく正秋。
「浅子のような人の陰には、その人の気持ちを受け継いで、関わって、支える立場の人が必ずいるんだなと感じました。大変おもしろい本です」

田山:新しいことを始める人のそばにいる、それはとても苦しいことだと思います。前例がないわけですから。正秋としては伝統を守らなければならないし、最初はどうしても浅子に抵抗があったと思う。でもだんだんと理解を示し、影響を受けて、最後には彼女を助ける。この学校(製作発表が行われた日本女子大学)も、正秋がどんどんお金を出してできたと聞いています。まあ、私がお金を出したわけではないですが(笑)。そのあたりの人間模様が変わっていく様子を芝居で見せられればと思います。


【事業家・五代友厚役/日本女子大学創立者・成瀬仁蔵役:葛山信吾さん】


浅子の人生に大きな影響を与える五代友厚と、日本初の女子大学創立を夢見て浅子と協力する成瀬仁蔵の二役を演じる葛山信吾さん。
「お二方とも日本に大きな功績をのこした人物。その思いを感じながら良い舞台にしたい」

葛山:笑いあり、涙ありの素敵な本。自分が演じる二役は、ほんとうに重要な役で、初めての二役ということもありプレッシャーも感じています。浅子に影響を与える役ということで、高畑さんのパワーに負けないように、しっかりと役を作りたい。


【浅子の娘・亀子役:三倉茉奈さん】


忙しくて自分にかまってくれない母・浅子との関係に悩む亀子。
「娘として複雑な思いがあるはず。でも高畑さんと親子を演じられることが嬉しいです」

三倉:浅子は社会のため、女性のために力を尽くし、たくさんの貢献をした素晴らしい人。でも娘としては複雑な思いもあったと思う。母に反発して言い争う場面もあります。原作小説を読んで印象に残った部分がちゃんと舞台版の台本にもある。実際のお話を大事にして作られたお芝居。亀子も実在の方なので、その思いを大切に演じたいです。


【大隈重信の妻・大隈綾子役:紫ともさん】


「人生をかけて大隈重信を支えた女性。見た目と違い、中身は豪快で一本芯の通った女性だったとか。初共演の皆さんの胸をお借りして、精一杯、綾子の生きた時代を過ごしたい」

紫:浅子のお父さんの「真心を尽くして人と付き合うんや」という言葉に心を揺り動かされました。人間同士の関係、ひとりでは何もできないということを語っている作品。その思い、時代を、演じながら継承していくことも、私たちの大切な役目なのではないかと感じています。


【亀子の夫・広岡恵三役:篠田光亮さん】


浅子のもとで商売を学び、意外な商才を発揮する恵三役・篠田光亮さん。
「大同生命の二代目社長という実在する人物の役なので、違う意味でのプレッシャーが…。今日も大同生命の方がいらしているので、あまり余計なことはしゃべらないようにと思っています!(笑)」

篠田:家族の一員として、そして人間としても成長していくところが、台本を読んではやく演じたいなと楽しみに感じた部分。私生活ではまだ結婚していないので、舞台上で結婚生活を楽しめるのが嬉しいなと思っています(笑)。


【信五郎と小藤の子・園子役:越智静香さん】


小藤の苦渋の選択で養子に出されながら、広岡家との縁が切れることはなかった園子。
「パワフルで激動の時代、そのなかでの女性の哀しみ、苦しみ、喜び、いろいろな感情をたっぷりと味わいたい」

越智:広岡浅子さんってなんてかっこいいんだろうと。台本を読んでいるだけで元気をもらえるような、浅子の明るさがなんとも素晴らしい。最後のシーンをとても楽しみにしています。




 演出の田村孝裕さんいわく「高畑さんは走り出したら止まらないというか、止まれない、そんなところが浅子と重なる。前を向いて、次に進んでいく、そういう姿がすごく重ねやすかった」とのこと。

 最後に、さまざまな経験を乗り越え大きな功績をのこした広岡浅子役に挑む高畑淳子さんから、あらためて決意表明が。

 「倒れるはずがないと思っていた江戸幕府があっけなく倒れ、貨幣価値もまったく変わってしまうなど、起こるはずがないと思っていたことが一度ならず二度三度とあった浅子の人生。泣いている暇もないくらい、その都度、問題に対処していく。そこのところをお見せしたいと思う。それで最後にいろいろなことを振り返るような気持ちになっていただければ。がむしゃらに、目の前にあるものを追いかけて生きる。私自身もちょっとそういう競走馬体質なところがありますけれども、そんな感じで稽古場でも、瞬間、瞬間を生きていたいなと思っております」


 『土佐堀川 近代ニッポン─女性を花咲かせた女 広岡浅子の生涯』は10月4日(水)から28日(土)まで、シアタークリエにて上演。11月には全国公演も予定されています。



フォトセッションは、日本女子大学の初代校長・成瀬仁蔵が開校から亡くなるまで住んでいた住宅を移築・保管した成瀬記念館分館(日本女子大学内)で行われました。


【参考♪浅子の生涯をもっと詳しく!】
広岡浅子の生涯 大同生命の源流 ─加島屋と広岡浅子─
日本女子大学 広岡浅子特集ページ


【公演情報】
『土佐堀川 近代ニッポン─女性を花咲かせた女 広岡浅子の生涯』
2017年10月4日(水)-28日(土)@シアタークリエ
全国公演スケジュールはこちら

原作:古川智映子「小説 土佐堀川」(潮出版社刊)
脚本:小池倫代
演出:田村孝裕

出演:高畑淳子、赤井英和、南野陽子、田山涼成、葛山信吾、小松政夫
    三倉茉奈、紫とも、篠田光亮、越智静香、芋洗坂係長、矢部太郎、武岡淳一、ほか

『土佐堀川 近代ニッポン─女性を花咲かせた女 広岡浅子の生涯』公演公式サイト

おけぴ取材班:hase(取材、撮影)、mamiko  監修:おけぴ管理人

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