鈴木勝秀さんが2013年に姉妹の話として書き下ろしたリーディング公演『シスターズ』が、今年、「姉」と「弟」の物語『シスター』として生まれ変わり、3月に大阪・サンケイホールブリーゼ、5月に東京・CBGKシブゲキ!!にて上演され好評を博しました。
新たなスタートを切った『シスター』が、今回は博品館劇場にて上演されます。挑むのは7組のペア。静かな会話劇に耳と心を寄せるひととき。今度はどんな姉と弟の物語が繰り広げられるのだろうか…。出演者のひとり、
彩吹真央さんインタビューをお届けします。お話は
【シスター】オフィシャルパートと11月に開催される
【彩吹真央 Live 2017 Take the Y Train】おけぴスペシャルパートの2部構成♪リーディングと音楽ライブ、芸術の秋を彩吹さんとご一緒しましょう!
──本作の印象は。 これぞスズカツ(鈴木勝秀さんの愛称)さんワールドですよね。初めて台本を読んだときは、どんどん先を読み進めたくなりました。そういうことだったのね!という発見にもあふれていて、読んでいて素直に楽しかったんです。作品のテーマ、キーワードとなるのは“死生観”になるかと思いますが、難しいのかなと構える必要はありません。姉と弟という関係だからこその何気ない会話で、重苦しい雰囲気でなく自然にそこに思いが至るような素敵な本です。
また、合間に流れる音楽について、台本には秒単位で指示が書き込まれているんですよ。音楽にも造詣の深いスズカツさんですので、音楽が作りだす世界と本の世界の融合も楽しみです。そうやって作り上げられた骨格のしっかりとした作品なので、こうしてさまざまな組み合わせで上演されるのだと思います。会話の“間(ま)”もそうですが、音楽明けの入り方などにも各ペアの個性が出ると思います。
──朗読劇で表現するときに大切にされていることは。 これまでにもスズカツさん演出の『100歳の少年と12通の手紙』などで朗読を経験させていただきましたが、あまり読み込んではいけないと思っています。演じきってはいけないというか。スズカツさんからも、予習したらダメと言われています。淡々としながらも、無感情ではないという塩梅が難しくもあり、楽しくもある。今は、私自身が初見で本を読み進めていたときの楽しさを新鮮にお伝えするために、作り込み過ぎずにお届けしようと考えています。
ただ、今回は1人での朗読ではなく、読み手である2人は姉と弟になります。ふたりの間にある繋がり、絆はしっかりと感じていただきたいという役者としての欲もあって(笑)。私は橋本淳さんとペアを組みますが、ちゃんと橋本さんのお姉さんに見えたらいいなと思っています。
──橋本さんとは初共演とのことですが。 先日、私が出演していた舞台を観にいらしたときにご挨拶し、直感的に“こんな弟がいたらいいな”と思いました。聞くところによると、お稽古もさらりと1回だけということですので、本番で橋本さんがどんなテンションで言葉を発するのかドキドキというのが本音です。でも、その緊張感も含めて、一度限りのセッションをお客様にも楽しんでいただければと思います。
──彩吹さんご自身はご兄弟はいらっしゃいますか。 私は、4人兄弟の末っ子です。私にとって兄弟は独特の絆で結ばれていて、何があっても最終的には無条件で受け入れてくれる存在。そこをベースにすると、この作品での姉と弟の会話というのも自然に理解できます。同時に、ずっと末っ子で育ってきましたので、姉ってこんな感じなのかなと疑似体験できることは嬉しいです。姉を演じることにはすでにテンション高めです!
──素敵なお話をありがとうございます。全ての公演がその日、その時に生まれるオンリーワンな『シスター』になりそうですね。 今回誕生する7組の「姉」と「弟」は、音月 桂・福士誠治(23日15時)、彩吹真央・橋本 淳(23日19時)、夢咲ねね・有澤樟太郎(24日14時、25日19時)、青木さやか・相葉裕樹(24日19時)、彩輝なお・今川碧海(25日14時)、渡辺えり・池田成志(26日15時)、中嶋朋子・平野 良(26日19時)。
俳優としての出自も個性も年齢も色とりどり、それぞれのセッション、組み合わせの妙が味わえるだろう。公演は10月23日から博品館劇場にて。
【彩吹真央 Live 2017 Take the Y Train】
──続いては11月に行われるライブ『Take the Y Train』についてうかがいます。世界一周の音楽の旅、彩吹さんにピッタリですね!今回のタイトルやコンセプトに至るまでのお話しをお聞かせいただけますか。 旅、大好きなのでピッタリと言っていただけて嬉しいです。まず、宝塚を退団後にファーストライブ『Y+9cm』(2011年2月)を開催しました。そこに込めた想いは「女優になろうとしているその時の自分」、“Y”は、ゆみこ(彩吹さんの愛称)のYで“+9cm”は女優になって初めてはいたヒールの高さです。
──素敵なネーミングですね。それが今回の会場でもある丸の内コットンクラブさんでの『The woman Y』(2015年4月)へとつながるのですね。直訳すると「その女“Y”」ということですが。 ファーストライブから4年ほど経ち、その間に女優としてもさまざまな経験をさせていただきましたので、ちょっと背伸びをした女性の恋心テーマにしました。会場の雰囲気にも合わせたジャジーな雰囲気で「今できる女性としての表現」を頑張ってみました(笑)。
その時に歌いたい曲をリストアップしていく中で、実は今回のコンセプトもできたのです。曲を並べると自然に“旅”というイメージがわき、同時に「A列車で行こう(Take the A Train)」が思い浮かびました。だったらY列車でと、『Take the Y train』というタイトルになりました。実際、今回歌う3分の2はそのときにリストアップした曲です。
ライブでは東京にいながらにして、Y列車で世界一周の音楽の旅をしていただこうと思います。
──楽しそう! 私自身も2年半前に考えたときもワクワクしていましたし、今、準備をしていても楽しくて!!
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、宝塚のショーではこのような構成のものが結構あります。パリでシャンソン、アメリカでジャズ、アフリカに行ったらアフリカンミュージックでダンスをしたり。それをコットンクラブでやってみよう!というのが今回のライブです。セットリストの残りの曲はこの2年半に出会った作品からも選んでいます。ミュージカルで私が歌ったものも、ほかの方が歌ったものもあります。関係者の方に「えー、あの曲を歌うの!!」ともれなく驚かれる曲もありますが(笑)、私の中ではあの曲は必須でしょう。さぁ、何の曲かお楽しみに!
──コットンクラブという空間で世界を旅する!贅沢ですね。 もともとライブハウスの空間は好きですし、コットンクラブはゴージャスですよね。でも、私の中ではゴージャス過ぎない落ち着く空間です。そこで私が歌いたい曲を歌うことができるなんて、こんな贅沢な時間はありません。だからこそ、独りよがりになってはいけない。みなさんに楽しんでいただける時間にしたいと思います。MCは最小限にして、音楽に身を委ねながらそれぞれの土地の空気を感じ、想像していただきたいですね。今は家で一人で作業しているのですが、早くみなさんとその時間を共有したくてうずうずしています。みなさま、Y 列車に、ぜひご乗車ください。
──ここからは「旅」にちなんだ質問を!旅行に行く際にはしっかりと行程を決める派? 大体の行程は考えますね。あ!今、思い出したのですが宝塚在団中に水夏希さんと未来優希さんとイタリア旅行をしたんです。その時は水さんがスケジュールを決めてくださったのですが、水さんの計画は分単位でした(笑)。
途中、ランチの後で道に迷ってしまい次の目的地への到着が遅れ…それをすごく悔しがっていて。次の日も「あそこで…」と反省している姿が忘れられません(笑)。A型の水さんらしいでしょう。楽しい旅でした。
──彩吹さんはどんな感じですか。 私は大まかに決めて、でも、ほかに寄ってみたいところができたら、まぁいいか!こっちへ行ってみようと変えていくタイプ。O型です(笑)。
──そうなると気になるのは未来さん…。 どこでも、どちらでもいいですよ~というタイプ(笑)、B型です。A・B・Oの珍道中でした!
──(笑)!では、今、行ってみたい場所は。 (間髪入れず)クロアチアのプロトヴィッツェ湖群国立公園です。湖が好きなんです。太陽と風でキラキラが穏やかに揺らめく湖面が絵のようで、ずっと眺めていられるんです。ぜひ、みなさんも「プロトヴィッツェ湖群国立公園」を調べてみてください。いつか訪れてみたい場所です。
──最後にライブを楽しみにされているみなさんへメッセージを。 さまざまな作品に出会いその世界を生きる役者の仕事を通して、たくさんの国を旅しているような毎日です。ちょっと恥ずかしいこと言いますね(笑)。
私にとって人生が旅なんです。
でも、本当に悩みがあってそれを乗り越えるのは山登りのようですし、深い深い湖に沈んでそこから浮上したら素晴らしい景色が広がることもありますよね。だからこそ感じるニュートラルな日常も大切。それを思い出させてくれるのも旅です。
旅はその前も、旅している間も、帰ってきてからも楽しいものですよね。そんな想いを込めたセットリストをご用意してお待ちしております。
──人生が旅、素敵な言葉です。彩吹さんと一緒に世界を旅する、ワクワクの時間を共有するのがますます楽しみになりました!
取材後、さっそく「プロトヴィッツェ湖群国立公園」を調べましたが、驚きの景色!雄大な自然に包まれて、心穏やかに過ごせそう!これは行きたくなりますね。ちなみにまとまった時間が取れない間はテレビの旅番組で旅行疑似体験を楽しまれるという彩吹さん。テレビとはまたひと味違う、音楽と想像力で楽しむ世界旅行『Take the Y Train』の出発はもうすぐです!
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文・撮影) 監修:おけぴ管理人