大阪松竹座に再び麦わらの一味が上陸!
スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)『ワンピース』、4月1日の開幕に先立ち、
市川猿之助さん(ルフィ、ハンコック/シャンクス)、
坂東巳之助さん(ゾロ、ボン・クレー、スクアード)、
尾上右近さん(ルフィ、ハンコック/サディちゃん、マルコ)、
坂東新悟さん(ナミ、サンダーソニア・サディちゃん)、
中村隼人さん(サンジ、イナズマ・マルコ)による取材会が行われました。
(カッコ内は配役、日替わりとなりますので詳しくはHPをご覧ください) 記事後半には東京公演をご覧になったみなさんの感想もご紹介しています!開幕がますます楽しみになるっ!!
写真左より)中村隼人さん、尾上右近さん、市川猿之助さん、坂東巳之助さん、坂東新悟さん
──東京公演でお怪我をされた猿之助さん、入院中に励みになったことは。猿之助: 休演中、うれしかったのは僕がいようがいなかろうが、お客さんが劇場に足を運んでくれ、作品を愛してくれたことです。それが僕にも、みんなにも一番の力になりました。
(怪我のほうは)まだまだ完治はしていないんですよ。でも、別に命にかかわるわけではないし、痛みもなく不自由なだけ。(周りからは)無理しちゃいけないと言われるけれど、無理は全然していません。世の中にはもっと大変な中でお仕事復帰されている方もいるわけですし。まぁ、『ワンピース』で怪我をしたので、復帰が『ワンピース』だと話題にもなると思ってね(笑)。
そうそう、神経の関係で指先が動かなかったんですけど、お金を数えようとしたら動いたんです。先生に話したら「人間、必要なことになったら動くんですよ」と言われました。面白いでしょう。
──今回は4パターンの配役です。(
特設ページの配役A~Dをご参照ください)
猿之助: 東京公演の2か月、右近君が(ルフィ)代役を立派に勤めてくれました。これは本役としていけると思ったので、今回はルフィをダブルキャストでやろうと決めました。そしてイワンコフというのは浅野(和之)さん以外に考えられない役。でも、その人しかできないというのはダメなんです。後世に残らないから。だからこそほかの方でとなったとき、ミュージカル仕立てにしたいという思いもあり、劇団四季でも活躍された下村青さん
(劇団四季時代は下村尊則さん)に入って頂きました。ミュージカルで観て素晴らしいと思っていましたし、日舞をね。
隼人: 僕と同じ(藤間)勘紫恵先生のところで習っていらして。
猿之助: そんなご縁もあり、とんとん拍子に決まりました。ちょうど昨日の稽古でオリジナル曲を歌ってね。
巳之助: 新しいテイストが加わり、またひとつ面白くなりそうだと感じました。ニューカマーランドの場面、ボン・クレーとやり取りをしている間に流れている曲の発展形のメロディ、そこに下村さんの歌が乗っているのが素敵です。そして、歌詞がスゴイ。
猿之助: すごかったね。ミュージカル『シカゴ』を観ているのかと思ったね。キワドイ。
右近: 浅野さんのリズムでの芝居に慣れているところに、新たに下村さんがかなりスパイスを効かせてくださって、僕らも新鮮な気持ちなります。歌唱パートの後に、普通に台詞を言うのが恥ずかしくなるくらい(笑)。そのくらい世界観として持っていかれますね。
──ルフィが憧れる海賊シャンクスは平さんと猿之助さんのダブルキャスト。猿之助さんの拵えも初演から一新されました。猿之助: 原作でのシャンクスはシンプルな衣裳で、言ってみれば豪華豪華で見せる歌舞伎の対極。リアルな線ではシャンクスそのままの人がやらないといけない。そこで平さんにやって頂こうと。僕の場合は、どうせ嘘をつくなら、思いっきり嘘をついてしまえと、ザ・歌舞伎スタイル。歌舞伎役者以外は似合わないぞ!というところを(笑)。
──そうなると、配役によって演出も変わるということでしょうか?猿之助: はい。僕のルフィはあまり動かないので(笑)。夜の部(2日は除く)は、展示された国宝の仏像を観に来る感じになるかな(笑)。動くルフィをご覧になるには(右近さんがルフィをする)昼にいらしていください。
右近: すごいですね、国宝になっちゃった。
巳之助: いずれはワンピースの大秘宝そのものになりそうな勢いですね。
右近: 僕は、一生懸命動きます。
猿之助: そうそう、(東京公演を)観ていたら、彼、本当にすごくよく動くんでね。そこはもうしょうがない。
右近: そんなことを言っていただける日が来るとは…。
猿之助: 僕はね、歳も歳だし(笑)。それはもう歌舞伎の至芸に通じるルフィを、動かないのがいいんだよっていう(笑)。動かない、でも実は心が動く、気持ちの芝居を。本当に歌舞伎になるのには70歳、80歳になってやるルフィかな(笑)。
──期せずして東京公演をご覧になり、猿之助さんはどのように感じましたか。猿之助: 初めて『ワンピース』を客観的に観て、新鮮でした。いいところも悪いところもわかりました。
僕が目指しているのは、作品で人を感動させるということ。近代、歌舞伎ではそれがやや薄い。近松(門左衛門)や(鶴屋)南北らによって作品が生み出された当時は、作品性があったのでしょうが、だんだんスター性でもつようになった。スター性ももちろん大事なことなのですが、昨今、ちょっとそちらに傾き過ぎているように感じます。
そんな中で、『ワンピース』が作品として感動していただいているというのはうれしいことです。
もうひとつ感じたことは、僕の手を離れても、あの作品を観れば“猿之助”の色というものが自分でもわかるくらい出ていた(笑)。猿翁の伯父がよく言っている「作品を残せ、そうすれば自分の身が滅んでも名前は後代に残る」ということを思い出しました。
──大阪に向けてのさらなるブラッシュアップはどのあたりを。猿之助: 上演時間を短くする、刈り込みです。『勧進帳』のように絶対にいじれない究極の形にしたいですね。
──みなさんにとっては、猿之助さん不在の2か月はどのような日々でしたか。巳之助: 僕、自分でもそういう意味では冷たい人間だと思っていて。(感傷よりも)代役を右近君が勤めて2か月の公演を行うことが決まった段階で、我々は本興行を兄さんから預かった。そこでは特別なことを何もしない、考えないというのが大切だと、僕はそう理解していました。
右近: 僕も同じくです。ただ、芯の役を2か月勤めるという経験がなかったので、とにかく一日一日、一回一回を全力投球。それでできればいいし、できなかったらそのときに考えればいい、一回入魂でした。終わったときは、いろんなことを感じ過ぎて、一周まわって「無」でした。
※ちなみに右近さんの前にコーヒー紅茶そろい踏みなのは、最初ご所望されたものと違うものがきて、後ほどそちらが届いたためです(笑)。隼人: 起こったことの衝撃は大きく、キャストも動揺しましたが、自分たちがいつもやっていることをしっかりとやる、それがお兄さんに対してできることだと思っていました。
新悟: 勉強させて頂くとか、若手とか、後輩としてという意識で引いてしまうのではなく、自分たちがこの芝居を面白くするんだという覚悟をしました。実際には、お稽古中や怪我をされるまでの間にお兄さんから言われたことを反芻しながら、ただ毎日がむしゃらにやるしかないという状況でもありましたが。
──公演を終えられたときの心境、みなさんから「達成感とともに大阪・名古屋の2か月をどうやるかという思い」「翌日からほかの演目をやることへの焦り」との発言が。右近さん曰くそれらすべてを含めての「無」だそうです。
東京公演では公演グッズの“スーパータンバリン”も大好評でした。猿之助: 狙った通り(笑)。大阪では新色、ピンクとブルーを出します。また、前回から、劇中で主題歌TETOTEのゆずバージョンを流していますが、4月に出るゆずのアルバムにTETOTEが収録されます(NEW ALBUM『BIG YELL』、2018年4月4日リリース)。一緒に盛り上げていきたいですね。
──マルコ、サディをダブルキャストで演じるお三方に、相手の魅力とオリジナリティについてどう感じていらっしゃいますか。右近: サディをダブルキャストで演じる新悟さんは、体型と声が素敵です。僕は割とギュッとしているので(笑)。
巳之助: そもそも新悟君はワンピース体型だよね。
新悟さんのサディちゃん、確かにパーフェクトなボディが印象的!
しかしながらこのにこやかな新悟さんが…あのサディちゃんとは。
右近: 体型はどうにもならないので、動きで艶やかさを出せたらと思います。隼人さんのマルコ、東京公演では楽屋が一緒だったので、その見せ方を研究している姿を間近で見ていました。体型のほうは、やっぱり僕はギュッとしているので(笑)、大きく見える見せ方をね。マルコではあえて動かないということも必要なのかもしれません。
ときどきこそっとおしゃべりするマルコなお二人
隼人: 前回までは、ずっと右近君のマルコを観ていたので、その印象が強くあります。まさか自分がダブルキャストでやるとは思っていませんでした。僕は『ワンピース』が好きなので、マルコの特徴、想い、背景、全て頭に入ってくるので、それをいかに自分の身体で表現できるかを意識しました。
新悟: 右近君のサディちゃん、ルフィもそうですが、動きのキレは遠く及びません。別の形で補いながら、自分なりのサディちゃんを作りたいです。どうしても前回は右近君のサディちゃんを追い求めてしまったので。
──巳之助さんは初演から変わらぬ3役を勤められます。不動のポジションですね。巳之助: 僕もそろそろ『ワンピース』を観てみたいです(笑)。全幕、ほぼずっと出ているので部分的に観る時間もなくて。役を譲りたくないなんてことは全く思っていません。
猿之助さん: 募集中(笑)? ゆくゆくはみっくん(巳之助さん)が口伝を残せるくらいになれば…。まだみっくんの代わりは見つからないんだよね。
──お二人のやり取りから、猿之助さんの巳之助さんへの絶大なる信頼感を感じました。
では、最後にみなさまからひと言ずつ。猿之助: 『ワンピース』、昼の部のほうが面白いよ!おススメです。なぜなら若いルフィが観られるから(笑)。
巳之助: 松竹座はギュッとした空間が魅力、距離感を楽しんでいただける劇場です。ぜひ、まだ観たことない方にもご覧頂き、初めての方々が興奮していく様(さま)、初演の時のあの興奮をまた味わえたらうれしいです。
右近: ルフィ役を勤めさせて頂くこと、そして、猿之助のお兄さんも復帰なさってマルコとサディちゃんといった、最初に松竹座で披露した役で戻って来られることをうれしく思っています。僕もバリエーションを楽しみながら勤めさせて頂きますので、みなさんもお楽しみください。どうやら昼の部のほうがいいようで…(笑)。
新悟: 大阪のお客様、前回ご覧になった方には新悟の3役もいいなと思って頂けるようにしっかりと勤めたいと思います。
隼人: 松竹座での『ワンピース』は2回目になりますが、演出もキャストも前回とは全く別物になっています。キャストは4パターン、もちろん昼がいいのでしょうが(笑)、やっぱりどのバージョンも観て頂きたいです。コンパクトな松竹座での上演、新橋演舞場で出来たことが出来なかったり、逆に出来なかったことが出来たり、ここからお稽古して、素晴らしいものを作り上げていきたいと思います。楽しみにしていてください。
【おまけ:愉快な仲間たち】
“カッコいいバージョン”、キリリとカッコいいですね!
“くだけたバージョン”と言われ、右近さんが提案したポーズに…
巳之助さんがモノ申す「どうなの、これ」(笑)
右近さん「失礼しました」(笑)
しかし、その後、“アイドルっぽい感じで!”とのリクエストに巳之助さんが、まさかの…
「知ってる知ってる、こんな感じ?」
これには、場内笑いに包まれました
愉快なみなさんです!『ワンピース』観に行くしかないですね!
【東京公演を観てきた方達(右近さんルフィ回)の感想ご紹介】
・歌舞伎の形をとっていますが、漫画ワンピースの世界観をきちんとリスペクトしているために、どちらの良いところも出てて面白いし、何より楽しい!
・2幕、3幕と楽しさは倍増、水はかかるわ、紙吹雪は舞うわ、演者は客席降りてくるわ、ルフィは飛ぶわ、スゲー楽しかった!
・早替わり、フライング、サンジのかっこよさ、ボンちゃんのオカマ道。原作、アニメが大好きでしたが、大満足のエンターテインメントでした
・カッコイイ男から可愛らしい女性やオカマさん、本水を使った立ち回り・観客とキャストが一体となり盛り上がる宙乗り・お決まりのお涙場面等々、『ワンピース』を知らない方でも物語の始めから幕の下りる瞬間まで楽しめます。
・ルフィとハンコックの早替わり、スーパータンバリンを叩いてスタンディング、客席降りの役者さん達とハイタッチ、紙吹雪、それらの演出だけでワクワク感いっぱい!
・尾上右近さんのルフィは躍動感あり若々しく、ハンコックは綺麗で色気あり!とても良かったです
・個人的には坂東新悟さんのサディちゃんが一押しです。歌舞伎とワンピースがこんなに相性がいいとは思いませんでした
・漫画から飛び出してきたような、巳之助さんのゾロとボンクレーが本当に格好良かった!
・歌舞伎初心者なので普段の歌舞伎はまだまだ聞き取れないところが多いのですが、ワンピース歌舞伎は本当に台詞もわかりやすく初心者が入りやすい作品です
・とにかくすごく楽しくて、タンバリンで盛り上がったゆずの曲がいつまでも頭の中をグルグルしていました
・笑いだけでなく、心に響く台詞がいくつもあって、何度観ても、また観たくなる作品です
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人