堂本光一さんと井上芳雄さんの共演、演出はジョン・ケアード、世界初演……、本年7月に帝国劇場で開幕し、9月からは梅田芸術劇場にて上演される話題の新作ミュージカル『ナイツ・テイル-騎士物語-』の製作発表が行われました。
豪華キャスト、国内外で活躍するクリエイティブスタッフがご登壇された会見の様子をレポートいたします。
後列)池田篤郎取締役、今井麻緒子さん、デヴィッド・パーソンズさん、島田歌穂さん、大澄賢也さん、岸祐二さん
前列)上白石萌音さん(パネル)、井上芳雄さん、ジョン・ケアードさん、堂本光一さん、音月桂さん
「2000年に帝国劇場に初登場したお二人、あのときから、なにかの縁で結ばれていた」
まずは、東宝株式会社取締役演劇担当の池田篤郎さんより。
「2000年、帝劇最年少座長(21歳)として『MILLENNIUM SHOCK』にて鮮烈なデビュー。その後も、ご自身のライフワークとして全日程即日完売の大人気作であり、日本が世界に誇るオリジナル・ミュージカル『SHOCK』にご出演を重ね、本年の公演で上演1630回(ミュージカル単独主演記録1位)という大きな記録を成し遂げられた堂本光一さん。
同じ年、ミュージカル『エリザベート』東宝版初演にてルドルフ皇太子役として彗星の如く登場したのが井上芳雄さん。瞬く間に、その人気に火がつきスターダムを駆けあがり、現在の素晴らしいご活躍は皆様ご承知の通りです。
このたび、お二人が共に新作に挑むことになりましたが、すでに2000年になにかのご縁で結ばれていたのかも知れません。
そして、新しいことにチャレンジしていきたい、時代を変革していきたいというお二人の思いを世界的な演出家ジョン・ケアード氏がしっかりと受けとめ、シェイクスピアの作品を選び、授けてくださいました。こうして国内外からクリエイティブスタッフが集結し、奇跡的なコラボレーションが動き出します。ミュージカルの革命とも言うべき、新時代のまさに新しいミュージカルが誕生することを確信しています。ご期待下さい!」
【クリエイティブスタッフご挨拶~オリジナルキャストは作者の一部~】
ジョン・ケアードさん(脚本・演出) まずはじめに、光一さんと芳雄さん、お二人が一緒に仕事をするということに興味を持ちました。ただ、2人の男性が同等の重みを持つ作品を見つけることが難しくもありました。『ロミオとロミオ』の様な作品はなかなかね(笑)。そんな中、目に留まったのがシェイクスピア最後の作品『二人の貴公子』です。
※作品、クリエイティブスタッフについては後述 東京で最初に仕事をした帝国劇場から、世界初演の新作を発信することを嬉しく、光栄に思います。
今井麻緒子さん(日本語脚本・訳詞) 素晴らしい才能をもった方々がアイデアを出し合う現場に興奮し、同時にオリジナル作品を作る難しさを感じています。現在ある台本や音楽は、まだ流動的です。役者からインスピレーションを得て、作者は変えていく、オリジナルキャストが別格扱いなのはそういうこと。彼らも作者の一部なのです。その意味でも、私の仕事は初日まで続きそうです(笑)。
デヴィッド・パーソンズさん(振付) 『ナイツ・テイル』は、ダンスによって物語が進む作品。私にとってもチャレンジです。私と振付補にとって、素晴らしいキャストのみなさんが力になってくださると信じています。私はシェイクスピアのことはよく知らないのですが、(ジョン・ケアードという)素晴らしい先生がいるので心配していません(笑)。
【キャストご挨拶】
「正直、できることならば客席で観たい(笑)」(堂本さん)
「光一くんが一歩を踏み出してよかったなと思えるような、そこへ向かう一助となりたい」(井上さん)堂本光一さん(テーベの誇り高き騎士アーサイト役)堂本さん) ちょっとこの空気を壊そうかと思います。ヤバいでしょう(笑)。この時点で、ここ、どこの国?って感じ。
(さすが!本当に空気がほっこりしました。そして、改めて!) こんなにたくさんの方にお集まりいただき、本当にありがとうございます。
「芳雄くんとなにか一緒に」というところから始まり、こうしてひとつずつ形になっていく現実を、今もまだ信じられないところがあります。こうして右を見ても左を見ても素晴らしいみなさんと共に仕事ができることを、嬉しく思うとともに、恐れ多く、そして怖い…と感じております。正直、できることならば客席で観たい(笑)。
芳雄くんは明日から本格的に稽古に入るんですよね。ジョンが言うには「この仕事よりも素敵な仕事をやっている」とかで(笑)。
井上さん) ちょっと僕、感じ悪い人……(笑)?!
堂本さん) 明日から芳雄くんと一緒に稽古ができることが楽しみです。先日、ポスター撮影をしましたが、はたしてアーサイト役としてステージ上で脱ぐのか(笑)。芳雄くんは、そういうシーンがあったら降りると言っていました(笑)。
形にするのが難しいと言われている作品、僕らもまだわからないところがありますが、わずか数日の稽古だけでも、ジョンがたくさんことを教えてくれます。遠くにあった“シェイクスピア”という存在が、すぐそこに存在しているように思えるんです。僕はひたすらジョンに、素晴らしい共演者のみなさんに食らいついていきたいと思っております。
そして、皆様の支えも大きな力になります、どうかよろしくお願いいたします。
井上芳雄さん(テーベの騎士、アーサイトのいとこパラモン役)井上さん) 先日、顔合わせがあり、その足でトニー賞のレポートをするという素敵な仕事のために(笑)、NYへ行って参りました。まだ稽古に参加できておらず、馴染めていない……、そんなこともあり感じが悪いままです(笑)。
でも、これからです!僕はパラモンという騎士の役。光一くん演じるアーサイトとは、いとこ同士。二人は親友でありライバルです。ジョンから「彼らはお互いにうらやんでいる。相手になりたいと思っているんだよ」と言われました。僕は、光一くんになりたいなんて大それたことは思いませんが、どこかで「いいな、すごいな」と思っていたことは事実。この作品で、この役で、僕らが交わるという夢のようなことが、たくさんの方のお力により実現したことを大変嬉しく思います。
光一くんは、これまでの活動を続けていくことだけでも、それは素晴らしい功績となります。でも、そこに甘んじることなく、新しい一歩を踏み出した。それこそがすごいことだと思います。リスクもある、
堂本さん) 後悔もある……(笑)。
井上さん) それは……、もう遅いかな(笑)。僕は、その心意気に共感し、そして尊敬しています。僕自身も、そうじゃないと人生は面白くないと思います。光一くんが一歩を踏み出してよかったなと思えるような、そこへ向かう一助となりたい。
そんな風に、僕にとってのホームグラウンドであるミュージカルですので、どちらかというと光一くんを迎える立場でいたのですが、ダンスミュージカル……。聞いていないぞという(笑)。ポスターも素敵に仕上げていただいたのですが、ひと言申し上げたいのは、僕の筋肉は盛っていただいたものです。裸になるかどうかも(笑)。
つまり当たり前ですが、僕にとっても決して楽なことではなく、新しいものを生み出すに際し、苦しいこともあると思いますが、楽しみながら取り組みたいと思います。
(こうなると自然にポスターに目が行きますよね)井上さん) まだ、これから2か月あるから……
堂本さん) 筋トレのことならなんでも聞いて(笑)!
井上さん) いや……(笑)。
音月桂さん(アテネの大公シーシアスの妹エミーリア役、アーサイトとパラモンが想いを寄せる)音月さん) 岸さん演じるシーシアスの妹、エミーリアを演じます。(劇中の)あの時代、女性が自らの意志で結婚相手を決めることは難しく、特に位が高い女性であればあるほど、国のため、家のための政略結婚をせざるを得なかった。そんな時代に生まれながらも、エミーリアは自立心のある、芯の強い女性。ジョンからも、そんな女性が二人の騎士に出会ったことによって変化し、心が豊かになっていくというエミーリア像を聞かせていただきました。現代の女性にも共感してもらえる役になるだろうと、私自身も楽しみにしています。
また、私にとって初めての帝国劇場。客席から観ていた憧れの舞台に立つことには不安も喜びもあります。そして、そこで国民の王子様、国民のプリンスと共演させていただくのが……、宝塚では男役として王子様を演じることが多かったので、女性でいいんだという……。
堂本さん) 音月さんもナイト(騎士)をやったほうがいいんじゃない(笑)。
井上さん) 3人でね(笑)。
音月さん) いえいえ(笑)。女優として、お二人との共演の喜びをかみしめながら、素敵なパズルの1ピースになれるように頑張っていきたいと思います。
岸祐二さん(アテネの大公シーシアス役)岸さん) 2003年の『レ・ミゼラブル』でアンサンブルキャストとして帝劇に立たせていただいてから15年。こうしてまたジョン・ケアードさんの作品で、メインキャストの一人としてここに立たせていただいていることを、光栄に思います。僕が演じるシーシアスは光一くんと芳雄くんの国を倒し、二人を捕虜とします。そして、妹には音月さん、さらに僕にとっての伝説の歌姫、島田歌穂さんを妻にする。こんなに興奮する出来事は人生でまたとないでしょう(笑)。
大澄賢也さん(森の楽団のダンス指導者ジェロルド役)大澄さん) 光一くんとは25年ほど前、まだ光一くんが中学生のころにドラマ「家なき子」で共演しました。それ以来、舞台では初共演です。芳雄くんとはミュージカル『ウェディング・シンガー』で初めて共演したのが10年前のこと。今や、帝国劇場を1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月ソールドアウトにするような力をもつまでに成長された二人が一緒に……とても贅沢な作品です。さらに演出にジョン・ケアード氏、振付にデヴィッド・パーソンズ氏。自分は30年以上踊ってきましたが、新人のつもりで、たくさんのことを吸収しながら精一杯努めたいと思います。
島田歌穂さん(アマゾンの女王ヒポリタ役)島田さん) 私の役はギリシャ神話に出てくる女性だけで構成された戦士たち「アマゾン族」の女王ヒポリタ。いわゆるアマゾネスです。しかしシーシアス率いるアテネ軍に敗れ、妃になる。女王としてのプライドと女性としての心に揺れ動く、大変なエネルギー、そして威厳を求められる役です。
32年前、『レ・ミゼラブル』初演のオーディションで出会い、心から尊敬する生涯の恩人ジョン・ケアードさんにこうしてまた大きなチャンスをいただきました。素晴らしい新作ミュージカルが生まれる瞬間、瞬間を、これから味わっていけることにワクワクしています。
上白石萌音さん(パラモンを愛する牢番の娘役)上白石さん(ビデオメッセージ) 牢番の娘を演じる上白石萌音です。私は小さい頃からミュージカルが大好きでした。このお仕事を始めたきっかけもミュージカルです。私にとって憧れの大先輩方と共演させていただけること、そしてジョン・ケアードさん、デヴィッド・パーソンズさんはじめ、世界的なスタッフの方とご一緒できること、大変光栄に、楽しみに思っております。私にとって初めての帝国劇場ということもあり、今から緊張していますが、皆さんの背中を見て追いかけて、たくさん学んで初日を迎えられるよう、精進してまいります。
【質疑応答~ジョンの魔法と「プレイ」~】
──ジョン・ケアードさんからみた堂本さん、井上さんの舞台人としての魅力は。 芳雄さんは『キャンディード』『ダディ・ロング・レッグズ』で主役を務めてくれたのでよく知っています。また、『SHOCK』の光一さんには驚かされました。3時間踊り続け、しかもそれを1日2回公演。そして、今もこうして生きている!!
そんな二人に共通するのは主役としてのカリスマ性です。
──ジョン・ケアード演出の魅力は。堂本さん) 稽古で作品を丁寧にひも解いてくれます。まるで、(物語の歴代の作者)ボッカッチョ、チョーサー、フレッチャー、シェイクスピア、そしてジョン・ケアードというように、ジョンが物語を完成させてくれるような感覚です。
ジョンは、『SHOCK』をご覧になり僕が生きているのが信じられないとおっしゃいますが、僕自身は身体を張るしかなかったんです。(そんなことない!との声に)そんなことありますよ! ですので、今回こそ試練、違う意味で生き抜くことが大変だと思います(笑)。そういう緊張感を持ってやらせていただきます。
井上さん) 光一くんが言ったように、ジョンはシェイクスピアと友達だったのかなと思うくらいの説得力で僕らに物語を説いてくれます。そして、ジョンは僕に演劇の魔法、お芝居の豊かさを教えてくれた方です。今回はスケールの大きな作品になると思いますが、その中にもたくさんのジョンの魔法が施されるでしょう。僕自身も楽しみです。
物語の結末はまだ言えませんが、ジョンの創作により今の時代にピッタリの面白い話になっています。なんていうか、結局、男は愚かだという……(笑)。
堂本さん) 本当にそうだよね。
井上さん) それが真実なんだよ、女性がいつも正しい。
堂本さん) 『ナイツ・テイル』ってヒーロー物語のイメージだけど違うんだよね。
井上さん) ある種、革命だと思います。帝劇でやるミュージカルでこの結末って。でも、それがすごく素敵にみなさんの心に響く!その意味でも新しいと思います。
音月さん) ジョンの稽古場はポジティブな空気であふれています。お芝居を作っていく過程では、課題と向き合ったり、自分自身と闘ったり、多少なりともネガティブに陥ります。でも、毎日、お稽古場に向かうときの気分がとても前向きなのです。今日はどんな刺激をもらえるかしら?という感じに。それは、お料理をして、出来上がりを待つときに似ています。それがジョンの魔法です。
岸さん) ジョンの演出は、彼がなにかを指示し役者が動くというよりは、ジョンの話を聞いているうちに、役者自身がふっとその役になってしまう。自然とその世界に入り込めるように誘導してくれるようなところがあります。それが魔法。そして、最後の最後まで変える勇気と意欲を持った方。それは、いい意味で完成形を持たないとも言えます。最後まで良いものを作ろうとする姿勢を信頼し、稽古をしています。
大澄さん) ジョンは女性にモテるんだろうな。自然と支えたくなるんだろうなという雰囲気をお持ちで、勉強になります(笑)。
島田さん) ジョンとの思い出は、『レ・ミゼラブル』初演の舞台稽古で「歌穂、よかったよ!」と言ってくれるジョンに対して「ううん、ダメ」とずっと首を傾げていた私に「いい加減にしなさい!歌穂は完璧主義者すぎる。演出家の僕を信じて、僕がよかったよと言ったら、ありがとうと言うことを覚えなさい」と言ってくれたことです。今回も、たくさん“ありがとう”と言えるように頑張ります(笑)。
──『SHOCK』では制作者としての顔も持つ堂本さん、本作に1プレイヤーとして参加されていかがですか。堂本さん) 歌稽古は譜面との戦い。そこで感じたことはポール・ゴードン氏による楽曲が非常に難解。そこは大変ですし、やるべきことはたくさんあるのですが、歌稽古をしながらボーカルアレンジもされていく、その過程を見ることがすごく楽しいです。こうやって物事がひとつずつ完成に向けて積み上げられていくんだと。
そしてアンサンブルもプリンシパルも関係ない、ひとりひとりが輝きながら稽古をしています。それがみんなで作り上げていくということ。短い期間にジョンがまとめてくれている、やっぱりジョンは魔法使いですね。
デヴィッド・パーソンズさん) ジョンの稽古場で大切なことは自由な心でいること。彼の仕事の仕方は常にオープン、新しいアイデアに対して柔軟です。稽古場でも皆がそうあり続けることが大切。
ジョン・ケアードさん) 「プレイ(遊び)」ということ。子供が遊ぶ場所をプレイグラウンドと言いますよね。演じるということも「プレイ」、演者も振付家も遊び心を持ち続けることが大切です。お芝居は楽しいものでなくてはならない。だって子供は楽しくないと帰ってしまうでしょう(笑)。稽古場も帰りたくなる場所では困る。それは本番でも一緒です。毎晩「プレイ」であることを忘れないでほしい。シェイクスピア自身も執筆家になる前は演者でした。「プレイ」していたのです。だから、彼が描く人物にはどこか遊びがあって、「プレイ」の要素をもつ。みなさん、エンジョイ!
【囲み取材】
──堂本さんと井上さん、お互いの存在を意識したのは。堂本さん) 僕が2000年に初めて帝劇でやらせていただいたとき。そのときから同世代で井上芳雄くんが素晴らしいパフォーマンスをしているということは知っていました。
井上さん) 僕のほうは小さい頃からTVで拝見していました。それこそヤバイなと思ったのは『SHOCK』が始まり、ジャニーズのみなさんがあそこまで歌って踊ってお芝居されて。このままだと僕らミュージカル俳優の立場は……という危機感すら覚えました。正直、戦々恐々としていましたが、こうして敵ではなく味方として一緒にやっていくことになったことは夢のようです。
──実際に、この企画が動きだしたのは。堂本さん) 東宝の方に引き合わせていただいたのが……、
井上さん) 2,3年前?
堂本さん) そのくらいだね。不思議なことに客席から観ていたので初対面でも「知らない人ではない感覚」がありました(笑)。お話をしていると、おこがましいようですが、共通点も見えてきて。そこから、これまでにやってきたことは違うけれど、二人が一緒になにかをしたら面白いのではと。僕らも周りの方も自然にそう思うようになりました。
──見えてきた共通点とは。井上さん) もともと、東宝の方やファンの方から「光一さんと芳雄さんは発言やファンのイジリ方が似ている」と言われていたんです。
岸さん) 芳雄くんは僕らの中では腹黒王子だから(笑)。
堂本さん) そこか……(笑)。
井上さん) 光一くんもそんな風に毒づいたりするんだと親近感がわきました。もちろんそこだけじゃないですけど(笑)。王子様と言っていただくキャラクターながら、お互い年齢もいい感じにね(笑)。
一同) 笑!!
──稽古場での堂本さんは。音月さん) やはりカリスマですよね。稽古場に光一さんが現れると、みんなスッと吸い込まれるような。
堂本さん) 嘘でしょう!!
音月さん) 本当ですよ。
堂本さん) ぼよーーんとしているでしょう。僕、すごいスロースターターなので。11時スタートの稽古というのも僕には早いんですよ。すみません、いつも時差ボケのようで。
島田さん) そんなにぼんやりとされていたなんて初めて知りました!
──大澄さんは久々の共演ということですが。大澄さん) あの頃は中学生でしたから、そこから本当に素晴らしく成長されて。そして芳雄くんもね。飛ぶ鳥を落とす勢いの二人が……
井上さん) なんかコメントが漠然としているな……(笑)。
大澄さん) いやいや、本心、本心(笑)。
堂本さん) 稽古場では賢也さんと岸さんが僕の癒しなんです。みんな真面目に歌の稽古をするんですけど、賢也さんと岸さんはなんかキャッキャキャッキャしていて。
──堂本さん、井上さんがお互いに感じるプリンスらしさは。井上さん) 光一くんは、いきなり「イエーーイ」と打ち解ける感じではないんです。最初は「あ、どうも」くらい。そこからちょっとずつ心を開いてくれる。そこに「あっ!!心を開いてくれた!」とキュンとするんです。そこが王子ですね(笑)。“ちょっとずつ”がタマラナイ!
堂本さん) 芳雄くんはこうして立っているだけでも、この身長差だし(笑)。声も素晴らしいし、素晴らしいことだらけ。腹黒い部分だけは共有しているようですが。でも、役としても二人とも腹黒いよね。
井上さん) そう、結局、どっちが腹黒いかという。深い友情で結ばれているかと思うと、次の瞬間には「お前、殺してやる!」だから。エミーリアを巡り、だいぶ情緒不安定な二人です(笑)。
──最後にお二人からメッセージを。息の合ったところをどうぞ!堂本さん&井上さん) 打ち合わせなしに!?(笑)。
堂本さん) こうして始動したことが、まだ信じられないような気持もあります。今まで夢見てきたことが少しずつ形になっていく、それを楽しみながら初日、7月……
井上さん) 7月27日!
堂本さん) そこに向かってみんなで日本初演……
井上さん) そして世界初演でもあるね。
堂本さん) このしどろもどろになっているところから、いろいろと察してください(笑)。どうか皆さん楽しみにしていてください。
(なんだかんだで、息ぴったりなお二人です!)【ジョン・ケアード氏による作品解説~21世紀の日本で誕生する『ナイツ・テイル』~】
──3つの原作について。 この作品はシェイクスピア最後の作品、後輩のジョン・フレッチャーとの共同著作です。話自体は3000年前、古代ギリシャの古典。それをジョヴァンニ・ボッカッチョが中世初期のイタリアに置き換えたのが「Teseida」、100年程経ちジェフリー・チョーサーがイングランドに置き換え「騎士の物語」となった。さらにシェイクスピアたちが400年前のイギリスに置き替えたものが「二人の貴公子」。そして21世紀の日本で初演するのが『ナイツ・テイル』となるのです。
すべてに共通する問題は2人の男性が1人の女性に恋をするということ。ほかには名誉、誇りとはというテーマも潜んでいる。その辺りをポイントに脚色し、現代にも通用するものにしたいと思いました。また、物語の中に3つのラブストーリーがあるということにも着目しました。3人の男性と3人の女性、そこを膨らませることによって、シェイクスピアの後期ロマンティック作品のテイストも感じられるのではないか。そうやって原作に敬意を払いながら創作を続けて参りました。
また、この素晴らしいキャストにふさわしい、優れたスタッフが集いました。装置のジョン・ボウサー氏、衣裳のジーン・チャン氏、照明の中川隆一氏……、そして振付のデヴィッド・パーソンズ氏です。この作品はダンスミュージカルです、歌も台詞もありますが、ダンスが非常に重要。デヴィッドは優れた振付家であり、彼のダンスの特長はストーリーを語るダンスであること。信頼しています。
──邦楽について。 ヨーロッパの古典的なものを日本でやるに際し、ただそのままやる、真似るのではなく、文化的なフュージョンがよいのではないかと考えた。日本文化を混ぜたほうがいいということです。舞台デザインも衣裳も、音楽も、日本の要素を入れたいと思いました。
音楽に関しては全編を通して4人の和楽器奏者が舞台上におります。篠笛、津軽三味線、そして2人の和太鼓奏者です。日本のお客様はご存知のとおり和太鼓はダンスにマッチする。馬が登場する戦いのシーンもダンスになるでしょう。そこでも和太鼓を効果的に使えるのではないかと考えています。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人
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