中村芝翫×檀れい×神山智洋『オセロー』製作発表会レポート

 八代目襲名後はじめての翻訳劇に挑む中村芝翫さん!

 シェイクスピア四大悲劇のひとつに魅力的なキャストが挑む、9月新橋演舞場公演『オセロー』の製作発表会が行われました。



写真左から:松任谷正隆さん(音楽)、前田亜季さん、檀れいさん、中村芝翫さん、神山智洋さん、井上尊晶さん(演出)


 ムーア人の将軍オセローを演じるのは、もちろんこの方、「この年齢になってシェイクスピアをやらせてもらえるとは夢にも思っていなかった」という中村芝翫さん。

 オセローと人種の違いを超えて結ばれる貞淑な妻・デズデモーナ役に檀れいさん。嫉妬心からオセローを陥れるイアーゴー役には、病気降板した今井翼さんに代わり、「翼くんの思いも背負って、オセローの世界をひっかきまわしたい」と意気込む神山智洋さん(ジャニーズWEST)。
 
 このほか、エミーリア役の前田亜季さん、音楽を手がける松任谷正隆さん、演出の井上尊晶さんらが登場した会見の模様をお届けいたします。




30年以上、故・蜷川幸雄氏の助手をつとめた井上尊晶さん。
「いい意味での大きな演劇、芸術ではなく、大衆に愛されるオセローを作りたい」

井上尊晶(演出):
 蜷川が亡くなり1年、自分の人生が半分抜け落ちていたときにこのお話をいただきました。嬉しい半面、どうしようかという迷いもありましたが、そのときふと思い出したのが、蜷川から渡された“スタニスラフスキーの「オセロー」演出プラン”について書かれた記事のコピーのことでした。押し入れを探してみましたら、そのコピーが出てきて「これも運命かな」と。スタニスラフスキーのプランにすべての答えがあるわけではありませんが、蜷川も(スタニスラフスキーの)演劇のエネルギーを引き継ぎたかったのだと思います。
 『NINAGAWA十二夜』で、たったひとり歌舞伎の世界に乗り込んだ蜷川。その蜷川もやったことのなかった新橋演舞場に、今回は自分ひとりで立ち向かいます。伝統ある劇場で、いかにオセローを正しく継承し、現代に復活させるか。シェイクスピアの言葉に翻弄されつつ、その言葉を駆使して、世界と対峙する人間の大きさをあらわしたい。できればワイヤレス(マイク)を使わず、その声が、劇場の空間、──世界に向けて高らかに響いてほしいと思っています。




「ユーミン×帝劇」シリーズの脚本・演出を手がけるなど、マルチな才能を持つ松任谷正隆さん。

松任谷正隆(音楽):
 『青い種子は太陽のなかにある』で蜷川さんとお仕事をすることになったとき、秋元康から「蜷川さんは大丈夫。でもその下にいる井上尊晶が曲者だ」と言われたんです(笑)。その言葉のとおり、稽古場では尊晶さんと随分ぶつかりまして、最終的には“天敵”と呼ぶようになりました(笑)。
 今回、その天敵にまず伝えたのは「僕は音楽がヘタだから、できるだけ早めに準備を始めたい」ということ。それで通常ではありえないような早い時期に読み合わせをしてもらいました。とにかくシェイクスピア、オセローの世界は超クラシック。バロックと言ってもいいくらい。正直なところ台本を読んだだけでは、僕の中にすっと入ってはこなかった。でも読み合わせで芝翫さんがセリフを発したときに、歌舞伎とシェイクスピアのクラシックなイメージを超えた“リアリティ”があって、「これだったら、“あり”だな」と。芝翫さんが真ん中にいることでできあがる世界が、みんなに伝わっていくんだと思います。
 クラシックの新しい解釈がテーマですが、いまのところ30曲作って29曲はボツ(笑)。1曲だけ形になったのは一幕最後のイアーゴーの場面。どろどろしたものをそのままは聞かせずに、偽の言葉で隠しているような、そんな曲です。あとの曲はこれから急ピッチで作る予定です。




6月末からの「松竹大歌舞伎」全国巡業公演で、1年半にわたる襲名披露公演を終える中村芝翫さん。
「歌舞伎にどっぷりと浸かった日々でした」と振り返りながら、「芝翫になったからといって歌舞伎一本ではなく、さまざまな作品に挑戦したい」と意気込みます。

中村芝翫(オセロー役):
 まさか自分がオセロー役をつとめさせていただけるとは夢にも思っていませんでした。数年前に家内から「あなた、シェイクスピアってやってみたくないの?」と聞かれたときに「え、僕がシェイクスピアをやっていいの?」と思ったくらい。この歳になってシェイクスピア作品をさせていただけるなんて、ありがたく思っています。
 
(作品の魅力について)
 シェイクスピアを語れるほど読んでいるわけではありませんが、この『オセロー』に限っていえば歌舞伎に似ている部分もあります。(役の)心で感じて、肉体から声を発するときに、はたして(この役がこの状況で)このセリフを発するかなと思うところがある。そこをどう作るか、これから尊晶さんとやっていくべき作業かなと思っています。

(襲名後はじめて歌舞伎以外の作品に出演することについて)
 「中村芝翫」というのは個人の名前ではなく、八代目として預かっているもの。襲名は会社の社長に就任したようなものですから、八代目としての業績も上げていかなくてはいけません。そのなかでこのオセローという役をいただいた。「こういう作品をやれるようになった」「やってもいいんだ」という思いがあります。襲名興行ではこれまで手がけてこなかった歌舞伎の作品、お役もたくさんつとめさせていただきました。芝翫の新しいページをめくるという意味で、このオセロー役に出会えたことも同じく大変ありがたく思っています。憧れの役でもありますから、重圧で押しつぶされそうな思いもありますけれども、みなさまのお話を聞いて、大変な仕事をさせていただくんだと、いい意味でのワクワク感が出てきました。役者ってやっぱり良い商売ですね(笑)。




本格的なコスチューム・プレイは宝塚歌劇団退団後はじめてという檀れいさん。退団後は意外にも和物作品が多く、洋髪のカツラをつける役も久しぶりとのこと。劇中には歌唱シーンもあるそうです。
「お人形さんのようで、薫るような美しさ。こんな方を1ヶ月愛せるなんて僕は幸せものです」(by芝翫さん)

檀れい(デズデモーナ役):
 私にとってはじめてのシェイクスピア作品。なにもかもが“はじめて尽くし”の作品になると思います。みなさんのお話を聞いていて、この作品に携わることがとても怖くなってきてしまったのですが、その思いを取っ払って、この夏は芝翫さん一筋で走ってまいりたいと思います。

(作品の魅力・役作りについて)
 まだ本格的な稽古は始まっていませんが、本読みをして感じたのは「完璧な人間はいない」ということ。どんなに立派な将軍でも、貞淑な妻でも完璧ではない。ちょっとしたボタンのかけちがいから悲劇がおこる、その人間の愚かさ、繊細な部分がおもしろいと思いました。それぞれが役としてぶつかり合い、生まれるものもありますので、稽古をしながら、新たなオセローを作ることができるといいなと思っています。





ダンスを取り入れた演出も検討されているというイアーゴー役。
「ダンスは5歳からやっている得意ジャンル。もしダンスシーンがあるなら、オセローの世界観を背負って踊りたい」と意気込む神山智洋さん。

神山智洋(イアーゴー役):
 まさか自分がシェイクスピア作品をやるときが来るとは! びっくりしたのと同時に「いつかは」という思いもありましたので、「やった!」と嬉しい気持ちで台本を受け取りましたら、これがとんでもないセリフの量で…(笑)。何度か本読みをして、既に尊晶さんからしごかれております。本番まであと3ヶ月。間に合うのかな…と不安な気持ちもありますが、(今井)翼くんから「よろしくお願いします」と言葉をもらいましたので、翼くんの思いも背負って、しっかりと、自分なりのイアーゴーを演じたい。オセローの世界観をひっかきまわして、ぶっ壊していきたいと思います!





良質な演劇作品への出演が続く前田亜季さん。新橋演舞場にははじめての出演です。
「亜季ちゃんとは毎年元旦に顔を合わせる仲の親戚ですから、(共演できて)心強い」(by芝翫さん)

前田亜季(エミーリア役):
 はじめてのシェイクスピア作品、はじめての新橋演舞場です。今はまだ、あの大きな舞台に自分がどんなふうに立っているのかも想像できない状態ですが、みなさんと一緒に新しいオセローを作れればと思っています。







「『たいこどんどん』でご一緒したとき、(演出の)蜷川さんは、いつもニコニコ笑っているんですが、尊晶さんはなかなか怖うございました(笑)。今回も稽古でずいぶん絞られるんじゃないかなと思いますが、山の頂上に向かって、登山口を探して、みんなで頂上を目指していきたい」(芝翫さん)


 本日登場したキャストのほか、池田純矢さん、 石黒英雄さん、辻萬長さん、田口守さんなど多彩な出演者が揃う舞台『オセロー』は、9月2日(日)から26日(水)まで新橋演舞場にて上演されます。


 

【おまけ】
製作発表会のあとの囲み取材で、作品のキーワードのひとつでもある「嫉妬」について聞かれたキャストのみなさん。

芝翫さん:
嫉妬しない人間なんていないでしょう。もちろん僕もしますよ。やっぱりお役のこととかねえ…(笑)。嫉妬すること、あります。
 
檀さん:
嫉妬…あまり自分のなかにはないですね。嫉妬する時間があったら自分のために勉強しよーっと! と思う方なので(笑)、そのあたりはぼんやりした人間なのかもしれません。

前田さん:
今回の台本を読んでいて、綺麗ごとだけではない人間の黒い部分に、わかるなと思って、はっとさせられました。自分にもそういうところがあるかもしれないと思ったので…嫉妬、あるんだと思います。心のどこかに。

神山さん:
(アイドルの世界は嫉妬が多いのではと聞かれて)いやいや、そんな事ないですよ! みんな仲良くがんばっています! え? なんで、なんでみなさん笑うんですか!? …(笑)。


【公演情報】
『オセロー』
2018年9月2日(日) ~26日(水)
新橋演舞場

作:W.シェイクスピア
訳:河合祥一郎
演出:井上尊晶
音楽:松任谷正隆


オセロ―:中村芝翫
 
イアーゴー:神山智洋(ジャニーズWEST)
 
ブラバンショー:辻萬長
ヴェニス公爵:田口守
 
ロドヴィーコ―:大石継太
モンターノー:二反田雅澄
ビアンカ:河合宥季
グラシアーノ―:廣田高志
 
ロダリーゴー:池田純矢
キャシオー:石黒英雄
 
エミーリア:前田亜季
 
デズデモーナ:檀れい
 
 
塚本幸男/児玉真二/河内大和
澤魁士/プリティ太田/野澤健/澄人/鎌田雅尋/水谷悟/五味良介
 
桂佑輔/尾瀧一眞/小野哲平/中村芝晶
 
上川路啓志/駒井健介/チョウヨンホ/長谷川直紀/薄平広樹/原田翔平/光山恭平

公演情報詳細

おけぴ取材班:hase , mamiko  監修:おけぴ管理人
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