「犬神家の一族」が、新派130年の舞台で甦る──
遺産相続をめぐり、巻き起こる骨肉の争い……
過去と現在に張り巡らされた謎に、名探偵・金田一耕助が挑む!!
横溝正史の
「犬神家の一族」は、1950年から1年半にわたって雑誌「キング」に連載された長編推理小説です。76年には角川映画の第一作として
市川崑監督によって映画化され、一世を風靡。大ヒットを記録したことを覚えている方もいらっしゃると思います。
その後も何度も映画化・テレビドラマ化・舞台化され、日本のミステリー史に燦然と輝き続けるこの不朽の名作を、
このたび創始130を迎えた劇団新派が満を持して舞台化。明治・大正・昭和の古きよき時代の日本を描いてきた新派にとっても異色の新作です。そして、新派130年の記念公演に華を添えるゲストは、
佐藤B作さんと、
浜中文一さんです!
戦後間もない信州・那須湖の湖畔に鎮座する
「犬神御殿」を舞台に、次々と起こる殺人事件。その幕がいま上がる……!
それでは、製作発表記者会見の模様をどうぞ。
*水谷八重子さん
物語の鍵を握る琴の師匠、宮川春琴を演じる
水谷八重子さんは、
「脚本はまだ一幕しかいただいておらず(笑)、どのようにできあがっていくのか、わくわくどきどきしながら待っているところ」と語ります。
「お客さまにもそういう気持ちで切符をお買い求めいただければ、本当にうれしゅうございます」波乃久里子さん
犬神家の長女・松子を演じる
波乃久里子さんは、演出の齋藤さんから言われて原作を読み始めてみたのだとか。
「これが本当に面白くて、最後まで読んでしまうのが嫌でなかなか進まないんですね。ですから半分しか読んでいません(会場笑)。でも、どうしてこれまで新派が取り上げなかったのかなと思うくらい、新派にぴったりの題材。新派のライフワークになるようにがんばります」喜多村緑郎さん
名探偵・金田一耕助を演じる
喜多村緑郎さんは、若い頃から、「江戸川乱歩の明智小五郎」、「横溝正史の金田一耕助」を演じるのが念願だったそう。
「昨年『黒蜥蜴』で明智小五郎をやらせていただき、その念願がこの一年二年の間に叶って、(金田一を)やる前からもう“燃え尽き症候群”になっています(笑)。金田一耕助という役は、歴代のたくさんの俳優さんが演じていらっしゃいますが、齋藤さんの演出どおりにやっていけば、必ずや“喜多村緑郎の金田一耕助”ができると信じています」河合雪之丞さん
犬神家の三女・梅子を演じるのは、
河合雪之丞さん。この役を女方が演じるというのがユニークですね。
「“女方の演じる犬神梅子”がどんな役になるのか、また、きょうだいの三者三様ぶりも楽しんでいただければ。『犬神家の一族』という作品は、時代というか風情というか、そういうものが新派にぴったり。昔の大きなお屋敷の一族という、それだけでもう新派の匂いがしてきます」田口守さん
「作品があまりにも有名すぎて、大半のお客さまは、犯人をもうご存じでしょう」と切り出したのは、犬神家の顧問弁護士・古館恭三を演じる、
田口守さん。
「ですから謎解きはもちろんのこと、そこに出てくる登場人物の生きざまが面白く表現できれば。そして、犬神家の一族の裏側に“新派の一族”というものがあると思います。そのつもりでがんばります」瀬戸摩純さん
犬神家の次女・竹子を演じる、
瀬戸摩純さんは、
「大先輩の久里子さん、雪之丞さんとご一緒に、三姉妹に起用していただけたことが光栄です」と語ります。
「懸命に務めたいと存じます」春本由香さん
河合宥季さん
野々宮珠世役はWキャスト。
春本由香さんが
「宥季さんの女役のきれいな仕草や技を盗みつつ、自分なりの珠世を精一杯演じられればと思います」と意気込みを語ると、
河合宥季さんも
「大役を頂戴して緊張していますが、わくわくもしています」と目を輝かせます。
「新派の俳優としてはまだまだ未熟者ですが、一生懸命務めたいと思っています」浜中文一さん
松子の息子・佐清/青沼静馬(二役)を演じるのは、ゲスト出演の
浜中文一さん。
「ジャニーズ事務所の浜中文一です。130周年という記念すべき年に出演させていただくこと、新派の皆さんと一緒にお芝居をさせていただくこと、そして、犬神家の一族、そして佐清という……びっくりの連続でどきどきしています」佐藤B作さん
すると、橘警察署長役を演じる、もうお一人のゲスト出演、
佐藤B作さんが、浜中さんと同様に「ジャニーズ事務所の……」と切り出し、これには会場も爆笑!
「(『犬神家の一族』の中で)役をやるならやっぱり金田一は来ないだろうし……(会場また笑)ならば警察署長をやりたいなと思ってましたらその役だと言われ、本当に喜んでいます。僕のイメージでは、この役はやはり(映画版の)加藤武さんの印象が強いですが、『警察署長は佐藤B作だよ』と言われるようにがんばりたいと思います」齋藤雅文さん
演出の
齋藤雅文さんは新派の歴史を振り返り、
「(過去の作品にも)“愛情が余ったあまりに殺人を犯す”という物語がたくさんある。情熱的な登場人物がたくさん登場する」と、『犬神家〜』の共通点を指摘します。
「この『犬神家〜』にも、色とか欲とかではなく、“愛情が深いばかりに犯してしまう”という犯罪的行為が多く出てきます。情の強(こわ)い人物ばかりで、非常に温度の高い作品になるのではないかと期待しています」一方で、
「新派には、明治・大正・昭和の古きよき日本を伝えていく、またそれを愛惜するというセンチメンタルな情緒主義のようなものがある」と齋藤さん。
「『犬神家〜』は戦争直後の話だが、大変豊かで贅沢で幸せに暮らしていた一族が、だんだんいろんなものが露呈して、ついには崩壊していくという壮大な物語。“過去の美しいものを遺したいけれども滅んでいく、ないしは別の生き方をしていく”という(新派の)作品の系譜と、実はすごくなじみがいいのではないか」と語りました。
日本のミステリー史を華やかに彩る大作と、
新派130年の歴史の融合。
そんな壮大な試みを前に、出演者の皆さんの強い意気込みが感じられる記者会見でした!
日本の美しさを表現し続ける、劇団新派
「新派」は、江戸から明治に時代が変わる文明開化に産声をあげました。江戸時代に生まれた芝居である歌舞伎=「旧派」に対して、新しい時代と共に生まれた新しい演劇とのジャンルです。その時々の風俗や人情を敏感に採り入れながら
明治・大正・昭和、そして平成へと脈々と受け継がれ、今年、平成30年に
創始130年を迎えました。
日本人のこころ、情緒、風情、そして日本語のもつ優しさ、美しさを大切にした舞台を上演することで、明治・大正・昭和の古きよき日本の美しさを現代に伝え続けています。
おけぴ取材班:hase(取材、撮影) 監修:おけぴ管理人