浅草九劇にて上演中のミュージカル『最終陳述 -それでも地球は回る-』。本作が生まれた韓国での再演も発表され、日本版の盛り上がりにも弾みがついた初日シリーズも、佐賀ガリレオの登場で無事終了!いやいや、終了どころか、ここから『最終陳述』の1か月の旅が始まるのです!!
作品の魅力を、舞台稽古のお写真とみなさんから寄せられた感想を交えながらご紹介いたします。(
キャスト紹介はこちらから)
幕開きは、1633年ローマ。宗教裁判の法廷。「地動説」を唱えたガリレオ・ガリレイの裁判が行われています。今、まさに“最終陳述”のとき。
ガリレオ・ガリレイ(佐賀龍彦さん、トリプルキャスト)
ガリレオ・ガリレイ(山田元さん、トリプルキャスト)
【ガリレオ・ガリレイ】イタリアの天文・物理学者、哲学者。自作の望遠鏡で天体観測をするという、科学的な手法を開拓した“天文学の父”。地球が太陽の周りをまわっているという「地動説」を唱えたために、宗教裁判にかけられた。宗教裁判で有罪判決を受けたのち、フィレンツェの有力者一族メディチ家の庇護のもと軟禁生活を送る。
「佐賀さんの真面目で真摯だけど、実はちょっと弱かったり自己中だったりする人間味のあるお芝居も、野島さんの七変化もお見事で、とても素敵でした!」
「山田、加藤両氏のハモリは美しく耳福。音楽・照明も繊細で美しかったです。山田さんは所作が優雅で美しく、加藤さんの静かな演技のシーンは引き込まれるものがありました」
「伊勢大貴さんのガリレオは可愛らしい星の王子様みたいで 色々苦悩葛藤される姿に心奪われます。野島直人さんは 歌が安定していて 色んな役柄を演じ分け、うまいなぁと思いました」
「小さな劇場ですが、照明などとても凝っていてとっても素敵な空間です。照明の演出でイメージがガラッと変わると言うか、場面が浮かぶと言うか、とても素敵でした」 裁判で「地動説」を否定するも有罪を告げられ、失意の中、故郷フィレンツェへ戻るガリレオ。
フィレンツェへもどり、望遠鏡で夜空を見ると……そこに?!
マルチマン(加藤潤一さん、ダブルキャスト)とガリレオ(佐賀龍彦さん、トリプルキャスト)
え?あなたは?
写真右)マルチマン(野島直人さん、ダブルキャスト)
ガリレオの目の前に表れたのは、ニコラウス・コペルニクス。でも、コペルニクスって、もう、亡くなって…。そんな疑問はナンセンス(笑)。ここからガリレオの奇想天外な旅が始まります。
その旅の案内人として登場したのはウィリアム。
ウィリアムって…そう、あの超有名な劇作家、ウィリアム・シャイクスピア。実はシェイクスピアとガリレオは1564年生まれの同い年。互いに意識し合っていたという二人が、ついにあの世で初対面!そりゃ、もう、テンション上がっちゃうわけです。
【ウィリアム・シャイクスピア】イギリス・ルネサンス演劇を代表する劇作家・詩人。ガリレオと同じ1564年生まれ、1616年没。ちなみにガリレオはその26年後、1642年没。
【ニコラウス・コペルニクス】当時主流だった「天動説」を覆す「地動説」を唱えた。『天体の回転について』を出版。「地動説」を唱えたにもかかわらず、コペルニクスが宗教裁判にかけられることはなかった…それは、なぜ?劇中で、その秘密をご覧になってください。
写真右)ガリレオ・ガリレイ(伊勢大貴さん、トリプルキャスト)
二人が向かうのは、天国行きの船が出る港。そこでガリレオを待つのは“人生の最終陳述”。旅の途中には、彼の人生の思い残し、悔恨の念、それにまつわる人々が登場します。
順不同で、そんな登場人物たちをご紹介。(みな実在の人物たちですが、本作はあくまでもフィクションです・笑)
【ジョン・ミルトン】イギリスの詩人。代表作は『失楽園』。ピューリタン革命で、革命派の詩人として活躍。17-18世紀のイギリスの裕福な家の子弟は学業の終了時に、文化的先進国だったフランスやイタリアを旅した、いわゆる修学旅行。ミルトンもしかり。
【ジョルダーノ・ブルーノ】イタリアの哲学者。コペルニクスの地動説を擁護し、異端であると判決を受ける。それでも自説を撤回せず、1600年、カンポ・デ・フィオーリ(花の広場)で火刑に処された。彼の死に、ガリレオは何を想う…。
【プトレマイオス】古代ローマの学者。数学、天文学、占星学……など、幅広い分野で業績を残す。それまでの古代ギリシアの天文学の集大成として執筆した『アルマゲスト』において、地球が宇宙の中心であり、太陽やその他の惑星が地球の周りをまわる「天動説」を唱えた。今ではそれが間違っていたことは周知の事実ですよね。
く、く、車?!
だれ?!…あ、大変失礼いたしました。
なんと申しますか、平たく言うと何でもアリな展開(笑、褒めています)ですが、ふとしたときに等身大の人間の苦悩や心の機微というリアルなものが飛び出すので、いろんな意味で油断できない作品です。
楽曲も多彩!ガリレオが感じた重圧を歌で感じることができる重厚なナンバーから、ポップデュオのシングル曲のようなキャッチーなナンバー♪愛しい人~どうか~、フォーク調で語るように歌うナンバー♪死ぬことを~、踊りだしたくなるワルツ♪見上げて~、夜空を~、そして、それまでのすべての思いが集約された最終曲まで。頭をぐるぐる回る素敵なナンバーぞろいです。(歌体力?!はかなり必要とお察しします)
「一人6役の加藤潤一さんは、まさにマルチマンでした。客席の空気を掴むのがものすごくうまい!「俺について来い!」的な強引な掴み方ではなく、気持ちよくお客を乗せて自分のペースに引き込んでいました。お客の楽しませ方を心得ている!素晴らしい!今回初めて観た役者さんですが、他の舞台でも観たいです」
「挟み込みのチラシに教科書並みの解説も用意してくれているので、早めに行って席で目を通してもいいかと思います」
「役者さんの息づかいまで聞こえるくらい近くて、顔の表情までしっかり見ることができましたが、生き生きとして躍動感があふれていました」
「伊勢さん&加藤さんで観ました。冒頭シリアス独白からの、二人揃ったら一気にコメディ全開になりました。弄られ愛嬌キャラクターのイメージが強いお二人、イケメンシーンも何故か笑いがおこる楽しい舞台でした。他のキャストさんの組合せだと、また全然違うんだろうなぁ。カタリーナの審判は必見です!」ガリレオが望遠鏡をのぞき込むと、一瞬で少年のようなキラキラオーラが溢れだします!
伊勢ガリレオは情熱の男。ガリレオが秘めていた思いの強さを感じます。
ブルーノのシーンをはじめ、光の演出が美しく効果的なのも印象深い舞台です。シンプルな装置で物語を進める、そこでは観客の想像力というのも大きな力になるのです。そして、小劇場空間では、お客様との共犯関係が築けるかもポイント!どの組も引き込む力が強く、しっかりと“旅の道づれ”にされてしまいました!
3方向から舞台を囲むような客席ですので、当然、後ろ向き、横向きの芝居も多数目撃するのですが、同じ場面でもガリレオ越しのウィリアムとウィリアム越しのガリレオで受け取る心情も異なるような気がします。
こちらはお楽しみ♪ 旅の道筋の分岐点、とあるシーンではその先の展開がお客様に託されます。ある回の様子をご紹介。
歌う♪ガリレオ気持ちよさそう!!
明暗…からの
ダンス!ダンス!ダンス! I am a Dancer!!
あれ、1人?!
僕は大丈夫です(byガリレオ)
本筋に戻り(笑)、ガリレオが手にしているのはキーアイテムとなる赤いサイン帳。
山田ガリレオの穏やかな笑みからの慟哭にも似た歌声の終盤の凄みにゾクゾクします。
数々の葛藤を乗り越え、ガリレオの旅はどこへたどり着くのか。
科学と宗教・哲学の話、ガリレオとシェイクスピアの友情の話、ひとりの人間の人生の幕引きの話、大切なものを探す旅の話……。宇宙スケールでもあり、一個人の物語にも見える。見る人によって、何の話だったのか、その印象が変わってくるような多面的な魅力にあふれている作品です。
「推しを観たいなら『どの席もSS席』の小劇場“九劇”オススメです。照明はまるで小惑星のようでとても綺麗でした。信念、生き方を考えさせられる作品でしたが、ユーモア満載で飽きることなく最後まで楽しめました」
「役者さんたった二人で両手の指数じゃ足りない曲数、途中から額に汗が浮かぶのが見える規模の劇場で観られるのも本当に贅沢です。小劇場であれほど鳴り止まない拍手を初めて聞きました」
「佐賀さんの力強い声と野島さんの柔らかい優しい声がきれいに重なり心地よかった!ストーリーは、不思議な設定で、ガリレオ以外を一人で演じるなんて、楽しかった!私はフレディが好きです(笑)」
「ガリレオとシェイクスピアという二人の偉人に名前を借りてはいるものの、全ての普通の人がいかに人生を誇りをもって生きたかを最期の時に問われるという普遍的なもの」
「山田元さんの歌声、姿の美しさ、加藤潤一さんのマルチマンの演技力の高さ大満足でした。帰りの足取りは軽やかに笑顔で幸せな気分で、又絶対観に行くと決めました。至福の時間になる事間違いないです」 このあとはクライマックスシーンになりますので、【公演概要】の下にお写真をちょこっとご紹介。
僕の主人公……厳しさの中に深い愛情が見える野島ウィリアム
佐賀ガリレオは歌声の伸びやかさは言うまでもないのですが、それ以上にメチャメチャ演劇的!
優しい眼差しでガリレオを見つめる加藤ウィリアム、ガリレオの良心の投影のよう……
天から降り注ぐ光。主人公ガリレオが愛した星の光に包まれるラスト、ロマンティック。
ほっ。
公演は3月17日まで、浅草九劇にて!異なる組み合わせで楽しむのもおススメです。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人