2019年6月より帝国劇場で上演されるミュージカル『エリザベート』の合同取材会が行われました。出席者は、タイトルロールのエリザベート役の
花總まりさん、
愛希れいかさん、トート役の
井上芳雄さん、
古川雄大さんです。
古川雄大さん、愛希れいかさん、花總まりさん、井上芳雄さん
【花總まりさん】
1996年宝塚歌劇団での『エリザベート』日本初演のエリザベート役であり、2015年より東宝版『エリザベート』にて同役を務める花總まりさん。
井上芳雄さん曰く、
「花總さんは日本で初めてエリザベート役を演じた方です。その方と、また一緒にやらせてもらえることを心からありがたいと思います。前回“レジェンド”と言い過ぎて、今回は別の呼び名を考案中ですが(笑)、本当に、この機会を無駄にしたくないと思っています」その微笑み、すでにエリザベート!
花總さん)
「今日この場に立ち、いよいよ始まるのだとドキドキしています。また新たなメンバーで『エリザベート』を作れることに、とてもワクワクしています。
(今回の役作りについて)それは秘密です(笑)。自分の中にプランはあるのですが、それは稽古中にも、本番が始まってからも千穐楽まで変化していくかもしれないからです。私の中だけの目標、楽しみということで。秘密にさせてください」【愛希れいかさん】
昨年11月に『エリザベート-愛と死の輪舞-』エリザベート役で宝塚歌劇団を退団。退団後初のミュージカル出演が東宝版の同役という愛希れいかさん。
愛希さんの印象を花總さんは、こう語ります。
「『マリー・アントワネット』を見に来てくださって、楽屋でご挨拶しました。そのときは、宝塚を退団された直後で、退団したてのホヤホヤの湯気が立っていました(笑)。それぐらいのフレッシュさを感じました。私にはない湯気がね(笑)」すかさず井上さんから
「今でも(花總さんに)湯気が立っていたら怖いですよ(笑)」弾ける笑顔と緊張感は、まさにフレッシュ!!
「私自身がこの作品の大ファンなので、こうして出演できることがすごく嬉しいです。そして、宝塚歌劇団在団中にも演じているエリザベート役、このような形で新しい挑戦ができることを楽しみにしています。でも、すごく愛されている作品ですので、その責任の大きさも感じています。……今は、緊張の気持ちのほうが大きいですね。頑張ります!」【井上芳雄さん】
「初舞台が本作のルドルフ役である僕にとっては、故郷のような作品」と語るのは2015年からトート役を務める井上芳雄さん。
ジョークを交えながらも、コメントが深い!!
「最近は、様々な形でミュージカルを取り上げて頂き、ミュージカルへの追い風が吹いていると感じます。そんなミュージカル界での『エリザベート』という作品の位置づけは、“日本で独自の進化を遂げているとても大切な演目”です。今までのファンの方はもちろん、初めてご覧になる方に、これが俺たちの『エリザベート』だというものをしっかりとお見せする責任があると感じています。『レ・ミゼラブル』には負けていられません(笑)。
トートは「死」という概念。ある種、哲学的な側面も必要な役です。「死」を描くということは「生」を描くということ。登場人物たちが「どう生きたか」がお客様に伝わるような死神であったらいいなと思っています。「生」と「死」、そのテーマは、今年の公演で答えが出るというものでもない。ずっと考えてきたことですし、これからも考えていくことでしょう」【古川雄大さん】
「2012年にルドルフ役を務めたときから、トート役に憧れていました。死ぬまでにできたらいいなと思っていたのですが、まさかこんなに早くチャンスをいただけるとは。正直びっくりしています」と語るのは、新トートの古川雄大さん。
秘めた情熱、考え方がとても興味深い!
「芳雄さんがおっしゃったように、『エリザベート』は日本を代表するミュージカルであり、僕も大好きな作品です。前回、2016年公演の千穐楽で「ルドルフを卒業します」という宣言をしました。しばらくは『エリザベート』に関われないかなと思っていたのですが、こうしてトート役で出演することとなり、喜びと、それ以上のプレッシャーを感じています。芳雄さんとのWキャスト、たくさんのことを学び、楽しみながら稽古を積み、本番を迎えたいと思います。
トートは「死」。その捉え方は人によって違いますし、同じ人でも置かれている状況、精神状態によって変わってくるものです。だから、見る人によって、いろんな見え方がすると思うんです。そして、「死」は本人が生み出しているのか、対峙する人に見えるのか、そんなことを考えていると自分でもわからなくなってきます。シーンごとに色々な表情を見せるトートとして存在し、物語が終わったときに「死って何だろう」という問いを投げかけられれば。そんなトートを目指しています」【『エリザベート』の魅力】
井上さんのご挨拶にもあったように、ミュージカルブームと言われる昨今、初めて『エリザベート』を観劇される方へ、みなさんが思う作品の魅力を語っていただきました。
井上さん)
「よく訊かれますし、その度に違うことを答えているような気がします。それほどたくさんの魅力があるんです。今、思うことは「別世界」。エリザベートという人物は、国や時代を超え、現代を生きる僕らにもエネルギッシュで魅力的に映ります。彼女の人生にトートという「死」の世界観が加わり、日常とちょっと違う世界に身を置く。そして、観劇後はまた日常に戻っていく感覚を味わえるところが魅力かな」花總さん)
「この物語は、決して幸せなお話ではないんです。やがてハプスブルク家も終焉を迎えるわけですし、登場人物のエリザベートもフランツも、ルドルフ、ゾフィーにしても決して幸せではなかった。そんな人間模様を見た私たちは、共感し、考えさせられ、ときに希望を持つこともある。3時間の作品にたくさんの要素が詰め込まれているので、(語られることの)何百倍も何千倍ものことを感じることができる素晴らしい作品だと思います」愛希さん)
「決して幸せなお話ではない『エリザベート』。でも、私はこの作品を見ると、(作品から)生きる勇気やエネルギーをもらえるんです。初めてミュージカルをご覧になる方はハッピーミュージカルのほうが見やすいかと思われるかもしれませんが、『エリザベート』もぜひ!」古川さん)
「美しさでしょうか。小池先生が作りだす美しい世界観です。物語もトートというファンタジーの要素が入ることで美しさを増し、楽曲もダークな中に美しい旋律がある。そういう美しさは『エリザベート』以外にはないのではないかと思います。それが魅力です」【好きな楽曲】
花總さんは
♪プロローグ、亡霊たちのシーンを挙げ
「あの曲を聞くと出演者ながら鳥肌が立つくらい大好きです!全曲好きなんですけどね」と微笑み、愛希さんは
「エリザベートの少女時代のすべてを表している曲。難しいですが、大好き」と
♪パパみたいに がお好きとのこと。
一方、古川さんは
♪最後のダンス がトートに憧れた理由の1つと挙げつつ、個人的には
「精神病院のシーンが大好きで、グッとくる曲です」と
♪魂の自由と答えられました。井上さんからは、演じ歌う側の率直なコメントが!
「思い入れのある曲はたくさんありますが、トートとしては♪最後のダンスです。「やめて!」とか「イヤよ!」とか言うエリザベートを振り回させてもらい(笑)。僕、普段は穏やかに人に嫌われないように暮らしているのですが、あの曲を歌っている時だけは、自分の中にこんなにSっ気があったのかと(笑)。それを思い切りだせる曲、この仕事をしていて良かったと思います。今年も楽しみにしています(笑)」と。 私たちも楽しみにしています(笑)!
【演出家 小池修一郎さん】
ミュージカル『エリザベート』と言えばこの方!小池修一郎さんとのエピソードについてお話しいただきました。
井上さん)
「まず、今日、この席に小池先生がいらっしゃらないことがね。いらして当たり前と言いますか……、ウィーンで生まれたこの作品ですが、こと日本の『エリザベート』となると小池先生が作り上げてきたと言ってもいいくらいですから。小池先生の何がスゴイって、同じ作品をこんなに何パターンも演出している演出家もいないと思うんです。
東宝版は何年かに一度リニューアルし、宝塚版は基本的に初演を踏襲されている。先生の中で棲み分けはされているんでしょうね。ちなみに今の僕らのバージョンは、今回が3回目となりますが、それまで何度もやってきたものに、また新しく取り組むということは大変なことです。常にエネルギーを持ち、毎回チャレンジする姿勢が印象的です。
『エリザベート』でのエピソードは、稽古場での「トートに関しては、舞台上、衣裳、ヘアメイク、照明の中でやらないと完成しないよな」という言葉が印象的です。僕は、初めてのトート役だったので、稽古中はその真意がわからなかったのですが、舞台上で「あ、確かに」と思いました。そんな風にすべてを見透かしているんです。今思うと、稽古場ではやりにくかったですよ。稽古着でトートの動きというのは……厳しいものがあるんです。古川君はできるかもしれないけど(笑)」古川さん)
「僕は、小池先生とはたくさんご一緒と言いますか、ほとんど小池先生とご一緒なのですが。今も『ロミオ&ジュリエット』でご一緒していますし(笑)。どの作品でも、また初演であれ、再演、新演出であれ、変わらない熱量で作品を追求する姿勢が素敵だなと思います」花總さん)
「変わらない、そうですね。小池先生は雨が降ろうが、風が吹こうが、何があろうが、小池先生なんです。どんな作品でも相手が誰でも、小池修一郎先生は不動です」井上さん)
「本当に、エネルギー量が全然変わらないですよね」花總さん)
「ご本人は「もうダメだ、もうダメだ」とおっしゃっていますが、演出を受ける私たちからしたら、やっぱり小池先生だなというところを鋭く突いてきます」井上さん)
「そうそう。ちょっと丸くなったかな?と思いきや、別の部分がすごく鋭くなって。油断できない方ですよね」花總さん)
「そう!油断できない方です!」愛希さん)
「(遠慮がちに)私もみなさんと同じで……」井上さん)
「いや、言いたいことがあったら言ったほうがいい!」花總さん)
「(退団後に演出を受けた時)宝塚での演出家と生徒とは微妙に違う印象を私は受けました」井上さん)
「愛ゆえの違いかな。確かにOGさんにはちょっと厳しい?」花總さん)
「(愛希さんも)この稽古場で「あれっ?」と思うかも知れない!」愛希さん)
「私は宝塚時代もコテンパンな方だったので(笑)。どのくらい優しくなるのか……」花總さん)
「いや、違う、違う(笑)」井上さん)
「OGの方には違う厳しさを見せるんです」愛希さん)
「はい、覚悟して臨みます!」(蚊帳の外、涼しい顔の古川さんに)
井上さん)
「でも、古川君だって色んな目に遭ってるよね……まぁ、色んな目っていうのもなんだけど(笑)」古川さん)
「そうですね。小池先生の演出作品ではなくても、観劇してくださった後に楽屋にいらしてダメ出しをされます。でも、それが正しいんです……ちょっと悔しいです(笑)」井上さん)
「それくらい熱いってことですね」古川さん)
「熱く、愛が深い方です」 エリザベート&トートの先輩から、無茶ぶり?ナイスアシスト?の洗礼タイムも(笑)
【ルドルフからトートへ】
ともにルドルフ役を経てトート役を務める井上さんと古川さん、2つの役を演じることについて。
古川さん)
「トートはまだ演じていないのですが(笑)。先日、トートの譜面をさらったとき、こういうフレーズ、メロディを歌っていたんだ!と発見がたくさんありました。そこは面白いですね。あとは、もしトートがルドルフを生みだしているのであれば、ルドルフの気持ちはわかっているので、その部分を膨らませられるのかなと思います」井上さん)
「僕はルドルフを卒業して、しばらく経ってトートになりました。そのときは新演出だったこともあり、新しい作品という気持ちで臨みました。ただ、よく知っている分、“トートはこうじゃなければ”とか、これまで見てきて“あそこが素敵だった”という印象がぬぐえなかったところもあります。まぁ、それも含めて、稽古を進めていくうちに、同じ作品でも役が変わると見える景色が全く違って面白いなと思うようになっていきました。
具体的に大変なのは、トートとルドルフのデュエット♪闇が広がる です。どっちにいけばいいのかわからなくなってしまうんです。ルドルフのパートを歌いそうになったことが、本番中にもありました。上下のハモリも一回ずつ変わるバージョンもあるので、気をつけてやりたいです。ユニゾンにならないように、それも二人ともハモりとか(笑)」 今回は、京本大我さんが続投、新しく三浦涼介さん、木村達成さんがルドルフを演じます。どんな“闇広”が見られるのか、楽しみです!!
さらに公演中の頑張りどころについて、井上さんから。
井上さん)
「僕、基本的にトートをやっている間はとても楽しく過ごしています。みなさんご存知の通り、この作品はエリザベートが主人公。エリザベート役は傍から見ていても本当に大変な役だと思うんです。毎公演、全身全霊を傾けるような。一方、トートはちょっと出てワッと歌えば「とても印象深い」なんて言われ(笑)。だからこそ、僕の力でどうのこうのというのは大変おこがましいのですが、少しでも支えになればと「元気かな」「大丈夫かな」「こうしたらやりやすいかな」、お二人がいかに気持ちよく舞台に立てるかを常に心がけています」 紳士な発言!そして、登場するや否や、瞬時に空気を変えるトートのエネルギーも凄まじいものがありますよね。長い公演を務め上げるには、互いに気にかけるチームワークが必須なのですね。
【メッセージ】
古川さん)
「限られた(稽古)時間ですが、できる限りのことをして、今までにない新しいトートを目指して頑張りたいと思います」井上さん)
「エリザベートの二人を支えて、(トートとしては)最後に命を奪いますが(笑)。支えつつ奪いつつ、大きなカンパニーでの長い公演、作品のテーマとは裏腹に、最後まで元気にやっていきたいと思います」愛希さん)
「素晴らしいキャストの皆様とご一緒できること、そして花總さんとWキャストということを本当に光栄に思います。いっぱい学び、全力で取り組みたいと思います」花總さん)
「こうしてまたエリザベート役で出演できることのありがたさを、今つくづく実感しております。心残りのないよう1回1回を大切に、素晴らしいキャストの方々と一緒に2019年版の『エリザベート』を一生懸命作って参りたいと思います。どうぞ皆様、最後までよろしくお願い致します。本日はありがとうございました」公演は6月7日から8月26日まで、帝国劇場にて上演です!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人