『天保十二年のシェイクスピア』高橋一生さんインタビュー



 2020年2月から3月にかけて、東京と大阪で上演される 絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』。

 シェイクスピアの全作品からセリフや設定を引用して、江戸時代末期の侠客争いを描いた井上ひさしの初期傑作戯曲が、藤田俊太郎さんの演出のもと、新たなキャストを迎えて生まれ変わります。



 人々を操り、その争いを利用してのし上がろうとする「佐渡の三世次」を演じるのは、約4年ぶりの舞台出演となる高橋一生さん。

 ポスタービジュアルの撮影を終えたばかりの高橋さんに公演への思いをお聞きしました。
(レポ文末に三世次役・扮装ビジュアルも!)







──出演が決まっての率直な思いから教えて下さい。

 これまで幾度も再演されてきた作品ですが、その印象にとらわれずできるだけフラットな状態で、井上(ひさし)さんの戯曲に書かれていることに忠実にやっていきたいです。演出の(藤田)俊太郎さんや共演者のみなさんとどう芝居を作っていくかによって、過去の作品とはまた違うものになるはず。僕も「佐渡の三世次」という役を新鮮に演じたいと思います。


──極悪非道なキャラクターの三世次役、演技プランは?

 三世次はヴィラン(※)でアンチ、“まさしく敵役”という設定ですので、まずは戯曲に忠実にやってみようと。基本的に僕は演出家なり監督なり、一緒に芝居を作る方々がどうやって僕に色を塗ってくださるのかが楽しみなんです。一応最初に自分で粗く色を塗り「どうでしょうか?」と差し出しますが、そのあとの細かい色塗りは柔軟に対応していきたいと思っています。

※ヴィラン…悪党、悪役、ヒーローと対になる存在感がある敵役



──ポスター撮影を終えての感触はいかがでしょうか?

 出来上がりを確認していないのでどう写っているのか全然わからなくて。けれど俊太郎さんが「いい」とおっしゃってくださったので全ておまかせしています。


──ぱっと見てご本人とわからないくらい、これまでのイメージと異なるビジュアルです。

 ポスターの真ん中に誰だかわからない人がいたらおもしろいかなと思い「誰なのかわからなくしてほしい」とリクエストしました。細かいところは本番の舞台でまた変わるかもしれませんが、ポスタービジュアルの衣裳はやっぱりリチャード三世のイメージに近いのでしょうか。ベルベッドのような感触の素材で、色は血のような赤、顔もメイクで汚しています。三世次は、病を患っていて火傷の痕があって、足も引きずっていて…とリチャード三世のキャラクターを引き継いでいる役。そのダークな感じを出すのに試行錯誤しました。実際に舞台の上で自分がどうなるのか楽しみです。やはりビジュアルが変わるとそれだけで芝居もスイッチングできるので。



──歌唱シーンも見どころ(聞きどころ)です。

 …そうだ、歌がある! と、いま思い出しました(笑)。僕は、舞台の上で俳優が歌うということは、うまく歌うことではなく、歌いながらどれだけ芝居ができるかだと思っています。そこに心血を注がないと作品として成立しませんから。海外のミュージカル俳優の方々をみても、語るように歌っているというのか、やっぱり芝居なんです。そのあたりは手探りで作っていくことになると思います。



──セリフと歌の違いとは?

 セリフは、単純に「リズムに還元されたくない」ということがあります。セリフに慣れてしまうと、自分の気持ちのいいリズムになってしまうんです。特に舞台では毎日同じセリフを繰り返すので、どうしても慣れが出てきてしまう。そういうものと久しぶりに向き合ってどんな芝居ができるのか、自分自身でも楽しみです。



──4年ぶりの舞台出演についての思いは?

 実は4年前に出演した作品(16年『レディエント・バーミン』)で「舞台をやりつくした」という感覚があったんです。あんなにも刺激を受けて頭を使う舞台は初めてで、──シナプスが伸びまくるというのか(笑)、とにかく毎回ものすごく体力を消耗して終演後に頭がぼーっとなるほどでした。ただ今回「井上ひさしさんの戯曲を俊太郎さんの演出で」という素晴らしいオファーをいただけたことがとても嬉しく、ぜひ出演したいと思いました。舞台からしばらく離れて、また舞台で新しい刺激がほしくなった頃だったのでタイミングもよかった。そういう意味では作品と三世次という役に引き寄せられたのかもしれません。


──戯曲についての印象を教えて下さい。

 クラシックなものって、いつまでも新しい。この『天保~』もけっこう“攻めている”作品だと思います。よくこんな戯曲を成立させることができたなと改めて驚きました。一方で、シェイクスピア作品や井上作品で描かれているのは、人間なら誰もが必ず持っているはずのクラシックな感情。新しさや奇をてらっただけの作品ではないんです。演じる側も気負いなく、戯曲のおもしろさをそのまま舞台の上に出していけたらと思っています。


──気になる共演者の方はいらっしゃいますか?

 みなさん気になる方ばかりなんです。「きじるしの王次」役の浦井健治さんは、まさしく“王子”、ミュージカルのプリンスですから「胸をお借りします!」というつもりで。ほかにも梅沢(昌代)さんに、辻(萬長)(※)さん、それから大好きな木場勝己さん。はじめましての方も多いです。みなさんとご一緒して舞台上でどんなことになるのか楽しみです。

※「辻」は一点しんにょう


 



 『絢爛豪華 祝祭音楽劇 天保十二年のシェイクスピア』は、2020年2月8日(土)~2月29日(土)まで東京・日生劇場、3月5日(木)~3月10日(火)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演されます。

 高橋一生さん演じる佐渡の三世次。これまでのイメージを覆すようなアンチヒーローぶりに注目です!



こちらが完成したビジュアル!
全く新しいイメージの高橋一生さん=「佐渡の三世次」に期待が高まります!

♪取材こぼれ話1
 「日生劇場の思い出は?」との質問に、以前『髑髏城の七人〜アオドクロ』を観劇、感激のあまり「楽屋に突撃」したエピソードを明かしてくれました。「いのうえひでのりさんに“僕を覚えていていください!”と出演直訴しました(笑)。タイミングが合わずいまだにその願いは叶っていませんが」(高橋さん)

♪取材こぼれ話2
 休日はもっぱら「自宅でトレーニング」のインドア派。ジムに行く必要がなくなるほど充実のマシンを自宅に揃えてしまったことで、外出の機会がなくなってしまい「やってしまった…」と少しだけ後悔しているとか。日課のようにトレーニングをこなすことで「今が人生で一番動ける体」になっているそうです! (劇場でのパフォーマンスが楽しみですね♪)



【高橋一生さんプロフィール】
ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。近年の主な出演作にドラマ「東京独身男子」、「凪のお暇」、映画「九月の恋と出会うまで」、「引っ越し大名!」、舞台「元禄港歌-千年の恋の森-」(蜷川幸雄演出)、「マーキュリー・ファー」「レディエント・バーミン」(白井晃演出)などがある。主演映画「ロマンスドール」が2020年1月24日公開。

【公演情報】
豪華絢爛 祝祭音楽劇「天保十二年のシェイクスピア」
2020年2月8日(土)~2月29日(土)  日生劇場
3月5日(木)~3月10日(火)  梅田芸術劇場メインホール

作:井上ひさし
音楽:宮川彬良
演出:藤田俊太郎

出演:
高橋一生/浦井健治/唯月ふうか/辻󠄀萬長(※)/樹里咲穂/土井ケイト/阿部裕/玉置孝匡/章平/木内健人/熊谷彩春/梅沢昌代/木場勝己

新川將人/妹尾正文/田川景一/丹宗立峰/出口雅敏/山野靖博/可知寛子/白木美貴子/鈴木結加里/般若愛実/福田えり/武者真由/森加織

※「辻」は一点しんにょう


<ストーリー>
江戸の末期、天保年間。下総国清滝村の旅籠を取り仕切る鰤の十兵衛は、老境に入った自分の跡継ぎを決めるにあたり、三人の娘に対して父への孝養を一人ずつ問う。腹黒い長女・お文と次女・お里は美辞麗句を並べ立てて父親に取り入ろうとするが、父を真心から愛する三女・お光だけは、おべっかの言葉が出てこない。十兵衛の怒りにふれたお光は家を追い出されてしまう。
月日は流れ、天保十二年。跡を継いだお文とお里が欲のままに骨肉の争いを繰り広げている中、醜い顔と身体、歪んだ心を持つ佐渡の三世次が現れる。謎の老婆のお告げに焚き付けられた三世次は、言葉巧みに人を操り、清滝村を手に入れる野望を抱くようになる。そこにお文の息子 ・きじるしの王次が父の死を知り、無念を晴らすために村に帰ってくる―。
主役はみなさまの想像力。この争いの行く末はいかに・・・

公演公式サイト

撮影:岩田えり スタイリスト:秋山貴紀 ヘアメイク:佐藤裕子
おけぴ取材班:おけぴ管理人、mamiko(文)
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