【ダイジェスト映像が公開されました】
VIDEO
東西冷戦下のチェスの世界選手権を舞台にした人間ドラマ。スーパー・ポップ・グループABBAのベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースが作曲を手掛け、原案・作詞はあのティム・ライス(「エビータ」「ジーザス・クライスト・スーパースター(JCS)」)という
伝説のミュージカル『CHESS』 。ロンドン初演版台本を用いた新演出版として日本で上演されます(英語上演/日本語字幕)!
キャストは世界のファントム、ジャン・バルジャンである
ラミン・カリムルーさん (昨年は日本でのJCSコンサートでユダも!)、映画版『レ・ミゼラブル』エポニーヌでもおなじみ、秋に開幕する『アナと雪の女王』ロンドン公演でのエルサ役も決定している
サマンサ・バークスさん 、ウエストエンドの新生
ルーク・ウォルシュさん 、そしてジャン・バルジャンでありフランツ・ヨーゼフであり、LE VELVETSメンバーでもある!
シュガーさんこと佐藤隆紀さん が名を連ねます。
そして演出・振付を手掛けるのは日本でも『パジャマ・ゲーム』振付を手掛けた
ニック・ウィンストンさん (『CATS』『ロック・オブ・エイジズ』『FAME』)。彼が手掛ける
「フィジカル」 な表現も大きな魅力となる『CHESS』への期待が高まった公開稽古の様子をレポートいたします。
こちらには公式動画が!必見! 【CHESSの世界】ニック・ウィンストンさんによるご挨拶
『CHESS』はABBAの二人ベニーとビョルン、そしてティム・ライスによって作られた世界的に愛されている作品です。『エビータ』『ジーザス・クライスト・スーパースター』などほかのティム・ライス作品同様にコンセプトアルバム(1984年)としてまず世に出ました。アルバムは大変なヒットを記録し、「One Night in Bangkok」は全米で3位、「I Know Him So Well」は全英1位にチャートイン。その後、1986年にロンドン・ウエストエンドで初演が開幕し、3年のロングラン公演となりました。
以後、各国で上演されるのですが(コンサート形式を含む)、当時のメガヒットミュージカル『CATS』『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』らと大きく異なるのは、確固たる形が作られないまま、プロダクション毎にオリジナルの作品になっている点です。この度の公演もオリジナル。今回、アンサンブルのみなさんはこの短い期間に難解な英語をしっかりと学び、加えて複雑な振付も覚えてくださっています。そして(メインキャストのみなさんも)このように素晴らしい座組はもう二度とないかもしれない、貴重な機会になるでしょう。
【稽古披露】
♪The Story of Chess(アービター役:佐藤隆紀、アンサンブル) チェスの起源についてアービターが歌う作品冒頭のナンバー。このシーンに今回の『CHESS THE MUSICAL』の“色”が明確に表れているのです。
チェスゲームのすべてを司る絶対的存在アービター(佐藤隆紀さん)
この一見トリッキーな動きに音楽が合わさると……そこはチェスの世界。その一手が命取りになるかのようなスリルのなかで駒を進める緊張感、腹を探りあうような心理戦、有無を言わせずに次々に畳みかけるような音楽と振付の展開に一気に引き込まれました!その中で支配力十分な佐藤アービター!歌声の重厚感とキレのある発音に抗えない絶対的な存在感がにじみます。稽古段階ながら、この1曲目からすでに心のなかでは「この公演、リピート決定だわ!」と思っていました。
♪Nobody’s Side(フローレンス役:サマンサ・バークス、アンサンブル) 続いては、奔放にふるまう悪童のようなアメリカのチェスチャンピオンであるフレディのセコンド、フローレンス(元はハンガリー、つまり東側出身)が葛藤し、感情を爆発させるナンバー。
東西冷戦によって翻弄されるフローレンスの人生。
ハンガリー動乱時に家族との別れを経験し西側に暮らすという面でも、身勝手なフレディとの恋人関係のいう個人的な局面でも、西か東か、フレディかアナトリーかどちらサイドかという葛藤の連続なのです。抑圧されたなかでの爆発といったような、力強く、激しいのだけれどクールさも失わずに歌い上げるサマンサさんの表現に胸が苦しくなります。でも、同時にめちゃめちゃカッコイイナンバーなのです!
♪Pity the Child(フレディ役:ルーク・ウォルシュ) フレディの、こちらも胸を締め付けられるようなナンバー。自由奔放なチェスの天才フレディの行動は大人としてちょっとどうなの?というものですが、やはりそこにも理由があるのです。幼き日から抱えていた孤独。それに耐えられなくなったとき彼は……。1曲の中にドラマの詰まったタフなナンバーを舞台全面を使ってルークさんが表現します。日本版での中川晃教さんの壊れそうな繊細な歌唱が印象的でしたが、ルークさんのパワー系の♪Pity the Childもイイ!
フレディにとってのチェスとは……
その苛立ちの源には悲しみがある。まさにPity。「何とかして彼を救い出して」と願う気持ちがわいてくるフレディです。
♪Anthem(アナトリー役:ラミン・カリムルー、アンサンブル) 最後に披露された曲は、もう説明の必要もないくらいの超ビッグナンバー♪Anthemです。数々のミュージカルコンサートでも披露されることの多いナンバーです。ただ、こんなに“芝居なAnthem”は初めて!
フローレンスを連れ立って亡命するアナトリーを執拗に追い回すマスコミ、「祖国を捨てるのか」と問うその一人一人にアナトリーもまた問いかけ、自らの思いを高らかに歌い上げる作品を代表するナンバーです。一瞬にして、シーンを感情を作り上げるラミンさんの歌唱力と演技力に圧倒されます。
そしてそんなアナトリーを見つめるフローレンスも印象的。
こうして4曲の楽曲披露がなされたわけですが、いずれ劣らぬ名曲ぞろい。やっぱり『CHESS』はすごいと再認識しました。そしてそれをただ難解だと感じさせず、すでに表現にまで高めている……やっぱりドリームキャストです。歌唱披露に続き、さらなる高みを目指して日々稽古をしているみなさんの囲み取材がありました!
みなさんの挨拶に続いて、佐藤さんの番になると──
「Hello Japan!My name is Sugar!」 しっかりと報道陣のハートをつかむシュガーさんなのです。稽古の様子を日本人キャストを代表してお話してくださいました。
佐藤さん) みなさんの歌声を聴いたとき本当に「奇跡だ」と感じました。世界の(ミュージカルシーンの)第一線で活躍されている方の歌声を、こうして日本で聴けることはそうあることではございません。加えてみなさん人柄も素晴らしいんです。僕の片言の英語にも優しく返してくださいます。みなさんに追い付け追い越せで日本キャストもアンサンブル含め頑張っています。いや、本当にアンサンブルのみなさんの頑張りには日々パワーをいただいています。この奇跡をぜひ見に来てください。
アンサンブルのみなさん!
【質疑】
──なぜ『CHESS THE MUSICAL』は確固たる形が作られることなく今日に至るのか。また、今回のコンセプトは。 ニック・ウィンストンさん) この作品は、最初はマイケル・ベネット(『コーラスライン』、『ドリーム・ガールズ』)の演出作品として始まりました。残念ながら彼は製作の過程で病によって作品を離れ、亡くなってしまいました。その後、演出を引き継いだのがトレバー・ナン(『レ・ミゼラブル』オリジナル演出)です。もともとマイケル・ベネットはとてもフィジカルな作品を作ろうしていたのに対して、トレバー・ナンは動きよりも知的な表現に重きを置きました。それゆえ確固たる形がないのではないか。今回の私の演出では、マイケル・ベネットが試みたフィジカルな動き、フィジカルな言葉で物語をお伝えしようと思います。
──それが1曲目から如実に表れていました。 ありがとうございます。まさにあのナンバーはこの作品のフィジカルというものを体現するものです。
──キャストのみなさん、取材陣の前でパフォーマンスをしていかがでしたか。 ルーク・ウォルシュさん) (一言)ナーバス。初めてみなさんの前で披露したので緊張しました。まだ自分の中で演技プランを考えながらのパフォーマンス、その過程をご覧いただいたことになりますが、それもいい経験でした。
サマンサ・バークスさん) 私も緊張しましたが、通常はゲネプロまで披露の機会はないので、このタイミングで緊張感を味わえたことは私にとってもよかったと言えます。
佐藤さん) みなさんがおっしゃった通り、本番に向けていい経験になりました。今の自分の全力を出せたと感じる一方で、もっとやれると感じるところもあります。稽古のなかで日々進化できるように頑張ります。
ラミン・カリムルーさん) 実は今日が稽古に合流して2日目なんです。この時点で披露することで一つの指標ができたのではないかと思います。
(2日目とは驚き!!パフォーマンスもコメントもさすがの落ち着き!さすがのラミンさんです)
──『CHESS THE MUSICAL』の魅力は。 佐藤さん) パワフルだったり繊細だったりと聴いているだけでワクワクする楽曲。さらに、今日ご覧いただいた通りかなりハードな振りが付いています。それを見ていても楽しいですし、ストーリー的にも歴史・政治の中で翻弄されていく恋愛模様という面白さがあります。本当にあらゆる面で楽しんでいただける作品です。
ラミンさん) みなさんに共感していただけるのは、この複雑な時代の中心にラブ・ストーリーがあるということ。それもまた複雑なラブ・ストーリーですが。そしてそこに素晴らしい音楽が存在する。それがみなさんに愛される要素ではないでしょうか。
ルークさん) 私は『CHESS』に関わるのは今回が初めてです。こうして自分の足で立って(この世界、作品を)経験できることをうれしく思います。振付などフィジカルなコンセプトが素晴らしいですし、歌も素晴らしい。歌詞の意味はこれまであまり考えたことがなかったのですが、実際に物語のなかで歌うことで歌の真の意味を知ることもできる貴重な経験となっています。
サマンサさん) みなさんがおっしゃったことに賛成。音楽に関しては、『CHESS』の劇中ナンバーだと知らずに♪I Know Him So Wellなどは子供のころから聴いていて大好きな楽曲でした。ここ数週間は♪One Night in Bangkokにはまって家族がみんなクレイジーになりそうなくらいハードリピートしています。稽古をしていても毎日新しい発見があり、みんなで毎日育てていっているところです。完成したらさらに素晴らしいものになると思います。ぜひ見にいらしてください。
◆ 最後のご挨拶でも佐藤さんから
「世界に通用するステージを作り上げるので、みなさん奇跡の作品をぜひ見にいらしてください」 と力強い言葉が聞かれました。必ずやそこまで行くだろうと感じさせる公開稽古でした!開幕が楽しみ♪この日、楽曲披露があったみなさんのほかにも、アナトリーの妻スヴェトラーナにエリアンナさん、KGBの工作員モロコフに増原英也さんがご出演です。
心をとらえる振付、最高にカッコイイ楽曲、チェス盤の上の攻防があたかも東西冷戦の縮図、比喩になっている作劇の魅力。3人の男女の恋物語とアメリカとソ連の威信をかけた攻防、そのすべてを俯瞰し、同時期のティム・ライス作品、JCSのユダ、エビータのチェのように演劇的にはナレーターとしていわゆる第四の壁を自在に行き来するアービターという存在とは……。フィジカル、音楽、芝居の融合というミュージカルでしかなしえない表現の境地をお見逃しなく!!
こちらに『CHESS』おけぴ過去レポをまとめました!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人