ミュージカル『ローマの休日』開幕!ゲネプロレポート:土屋太鳳さん、加藤和樹さん、太田基裕さん



 ミュージカル『ローマの休日』が誕生したのは1998年10月のこと。とある国の王女がヨーロッパを歴訪中に経験する特別な一日を描く名作映画、永遠のラブ・ストーリーの世界で初めてのミュージカル化の実現でした。この成功が『風と共に去りぬ』(2001年初演)、『十二夜』(2003年初演)、『マリー・アントワネット』(2006年初演)、『レディ・ベス』(2014年初演)といった東宝による日本発のオリジナルミュージカルへと繋がったのです。

 2000年の再演以来、20年の時を経て、装いも新たに上演されるミュージカル『ローマの休日』。帝国劇場で開幕です!





 主演のアン王女役には、いずれも帝国劇場初登場・初主演となる土屋太鳳さんと朝夏まなとさん。タイプの違うお二人がそれぞれのアン王女をどう作り上げるのか、そこにも注目が集まります。

 はじめはスクープ狙いでローマ観光のエスコートを買って出る新聞記者のジョー・ブラッドレー役には加藤和樹さんと平方元基さん。アメリカの新聞社のローマ支社にいる記者、ちょっと斜に構えたところのあるジョー。酸いも甘いも知るジョーの大人の魅力を加藤さん、平方さんがどう見せるのか楽しみです。

 アン王女とジョーの関係を軸に描かれる本作ですが、もう一人、欠くことができないのがジョーの友人で報道カメラマンのアーヴィング。太田基裕さんと藤森慎吾さんという、こちらもタイプもキャリアも異なるダブルキャスト。ジョーが2枚目ど真ん中とすると、アーヴィングは2.5~3枚目という役どころをどんな塩梅で見せるのか、こうご期待!


 様々な組み合わせが楽しみな主要キャスト3役Wキャストの中で、アン王女:土屋太鳳さん、ジョー:加藤和樹さん、アーヴィング:太田基裕さんのゲネプロの様子をレポートいたします。


 劇場にはオーケストラのチューニングの音、この当たり前だったこともとても新鮮に感じる開演前。この公演は、オーケストラピット稼働、生オーケストラで届けられます。ロマンティックなメロディ、迫力のダンスシーン……、作品を彩る音楽が「生」という喜びも特別な一日を素敵に演出。

 物語の舞台となるのはもちろんローマ! とある国の王室の一員・アン王女が諸国歴訪の旅の最終訪問地ローマに到着、王女歓迎の舞踏会から物語は始まります。



 王女の旅に同行するヴィアバーグ伯爵夫人には久野綾希子さん。王女を幼き頃から見守ってきた自負と愛情溢れる夫人です。プロヴノ将軍には今拓哉さん。誇り高き将軍のかわいい一面など、威厳と可愛さが共存。この緩急は今さんならでは!そして在イタリア大使には港幸樹さん。格調高き歌声で物語が始まります!

 一方で、舞踏会の主役のアン王女はというと、式典をそつなくこなしながら、どこか退屈で物憂げ。その上、片方の靴を階段の上から飛ばしてしまうという失態を!これにはお付きの面々も冷や汗。必死に取り繕って、なんとか靴を履き直し踊るシーンなど、とてもコミカルで自然に笑みがこぼれます。

 このように冒頭の王女は、まだまだお子さまが抜けておらず、スピーチも表敬訪問も自らの意思というより、義務感が漂います。ただ、ベッドルームに戻って「明日の予定」を告げられるシーンを見ると、分刻みですべてが管理されている……ちょっと同情してしまうところも。

 好奇心旺盛なアン王女は宮殿の外で行われている、ローマっ子たちの夜通し続くお祭に興味津々。ついに王女は大使館を抜け出してしまうのです。そこで出会う人、物、景色……こうしてローマの街を舞台にした、王女にとって生涯忘れることのない一日が始まる。大使館を抜け出すシーンのアトラクションをクリアしてくような(ラッキーも含め)流れるような展開が作品に躍動感を与えます。そしてアン王女が本当にチャーミング!



 こうして街に飛び出したアン王女ですが、抜け出す直前によく眠れるようにと投与された安定剤の作用で道端で眠り込んでしまうのです。そこに偶然通りかかったのが──ジョー。その時は、まさかそこに横たわる女性が、あのアン王女だとは夢にも思わず! 翌日、新聞社に出勤し、紙面にあるアン王女の写真を見てはじめてジョーは彼女の身の上を知るのです。そして、ある飛び切りの計画を思いつく!

 ジョーに住まいを尋ねられ「コロッセオよ」と答えてしまうなど、王女であることを隠しているようで、その言動はどこか浮世離れしているアン。クスッとわらえるようなカワイイ世間とのズレをキュートに見せる土屋さん。自由を体いっぱいで表現する軽やかなダンスシーンなど、等身大のアン王女をキラキラ輝くように演じます。



 加藤さんのジョーは、クールで落ち着いた語り口も、はじめはアンの言動にあきれ果てるところも、なんだかもうカッコよくて。そして決めどころは、さらにカッコつける(思わずにやけてしまうくらい、はまっています!)。
 もちろんそれだけでなく、はじめはスクープ狙いの野心もあったジョーの変化も丁寧な芝居で表現。『ローマの休日』と言えば!という名シーンの数々、ベスパや真実の口、そしてラストの背中の演技……裏切らない!!



 太田さん演じるアーヴィングは、伸びやかでよく通る歌声が印象的。アン王女のローマ見聞をライター型の小型カメラで隠し撮りしながら、二人の物語の唯一の目撃者として確かな存在感を示します。ジョーに呼び出されたカフェではじめてアンに対面するシーンも最高!アンに職業を明かしていないジョーがあの手この手で、自分の職業やスクープ作戦を隠そうするのを、身体を張って受け止めます(笑)。ラスト、アン王女との対面シーンで見せる粋なところも納得!の軽やかで素敵なアーヴィングです。

 ローマの街を舞台に繰り広げられる物語。随所でイタリア語が飛び交います。警察署長と市民のイタリア語でのやりとりをジョーとアーヴィングがアテレコする場面も楽しい!



 ほかにも、ロングヘアをバッサリ! アン王女のヘアカットのシーンは、美容師マリオ役の岡田亮輔さん率いるヘアサロンのみなさんによるショーアップされたにぎやかな演出でウキウキ。生まれ変わったアン王女の姿には思わず、わぁ!とテンションが上がります。




 夢のような時が過ぎ、やがてそれぞれの現実に戻る時がやってきます。そして、大使館での再会と別れ。一日の経験がアン王女を大人に変える。一人の女性の成長譚を土屋さんが見事に体現。物語の始まりのころとは違う、世間を知り、自らの意思で道を選ぶ、優しさと威厳を持ち合わせた一国の王女がそこにいるのです。記者の質問に答える王女、その答えは……わかっていてもやっぱり感動してしまいます! それを穏やかな表情で見つめる一人の新聞記者、敬意の中に友情をにじませるカメラマン、3人と私たちだけが知る恋物語にキュンとします。

 劇場で過ごす“ココロの休日”。アン王女やジョーがそうであったように、観劇後に戻る現実・日常の景色は少し変わって見えました。晴れやかな気持ちで明日を迎えられそうな、ミュージカル『ローマの休日』。ぜひ劇場でお楽しみください。


【公演情報】
ミュージカル『ローマの休日』
2020年10月4日(日)~28日(水)@帝国劇場
愛知公演 2020年12月19日(土)~25日(金)@御園座
福岡公演 2021年1月1日(金・祝)~12日(火)@博多座

<スタッフ>
脚本:堀越真
演出:山田和也
音楽:大島ミチル
作詞:斉藤由貴

<キャスト>
出演者(各役五十音順 Wキャスト)
朝夏まなと/土屋太鳳 :アン王女役
加藤和樹/平方元基 :ジョー・ブラッドレー役
太田基裕/藤森慎吾 :アーヴィング(カメラマン)役

久野綾希子、今拓哉、岡田亮輔、小野妃香里、港幸樹、松澤重雄

荒木啓佑/宇部洋之/折井洋人/上條 駿/田中秀哉/田中隆雅/平野 亙
藤田宏樹/松谷 嵐/村上幸央/森 雄基/森山晶之/吉田 雄/脇 卓史
桜雪陽子/樺島麻美/小林風花/坂口杏奈/田中里佳/花本あゆみ/般若愛実
樋口 綾/妃白ゆあ/町屋美咲/森 莉那

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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