新国立劇場 シェイクスピア歴史劇シリーズ最終作『リチャード二世』開幕!



足掛け12年をかけた壮大な歴史絵巻が、ついに完結!

 2009年に上演された『ヘンリー六世』三部作から始まった、新国立劇場のシェイクスピアの歴史劇シリーズの最終作『リチャード二世』が開幕!




 『リチャード二世』は、本シリーズの中で、歴史的には最も古い時代を扱った史劇。その後に続く人々の争いの原因となった、ヘンリー・ボリングブルック(後のヘンリー四世、浦井健治さん)による、リチャード二世(岡本健一さん)からの王権奪取が描かれます。まさに最終作にして、その発端となる出来事を描いた作品です。

 演出の鵜山仁さんをはじめとするスタッフ、岡本さん、浦井さん、中嶋朋子さんらシリーズに欠かせない俳優陣、ほぼ同じ布陣で、足掛け12年をかけてイギリスの内乱、対フランスとの戦争や権力への執着など、様々な"争い"を通し、人間の営みの愚かさや気高さを描いてきた壮大な歴史絵巻がここに完結するのです!



鵜山仁さん、浦井健治さん、岡本健一さん、中嶋朋子さん

 初日を前に、フォトコールと囲み取材が行われました。これまで本シリーズ作品を見てきた方、はじめて見る方、それぞれに興味をそそられるコメント満載の会見の模様をフォトコール写真と共にご紹介いたします。


──本作の見どころは。

リチャード二世:岡本健一さん)
 2009年から足掛け12年、シェイクスピア歴史劇シリーズとして8本目の上演になります。『リチャード二世』は最終作にして(史実としては)最初の物語。12年稽古してここまできた、12年かけて明日の初日に挑むような心境、集大成です

 シェイクスピアが描いた物語には、人間の心の動き、権力、欲望、愛、生、そして死……が巧みに描かれています。僕らも万全の態勢で感染対策をしていますし、客席も安心して見ていただける状態です。ぜひ劇場でご覧いただけたらと思います。

ヘンリー・ボリングブルック(後のヘンリー四世):浦井健治さん)
 僕らは12年間、たくさんの人の思い、人生が未来に繋がりますように──そんな願いを込めてやってきました。今回、僕が演じるボリングブルックは、かつて中嶋しゅうさんが演じていた役、その時、僕はその息子を演じました。そんな輪廻の中にいる、そして、どこかでしゅうさんが見守ってくださっているのではないかと、今、劇場で稽古をしていて感じています。舞台美術を手掛けてくださっていた島次郎さんも、もうこの世にはいない……。いろんな思いを抱えながら、みんなが前を向いています。みなさんに恥じないように、一回一回しっかりと務めていきたいと思います。そして、演劇って素敵だな、人は演劇を捨てない、絶対繋がっていくものだという希望を感じています。

※2016年上演『ヘンリー四世』にて、ヘンリー四世(=王位についたボリングブルック)を中嶋さんが演じ、ハル王子、後のヘンリー五世を浦井さんが演じました。シリーズ最初の『ヘンリー六世』にもご出演されていた中嶋しゅうさんは2017年にお亡くなりになりました。



王妃:中島朋子さん)
 みなさんがおっしゃったように、長い年月をかけて、同じスタッフ・キャストで作り上げてきたことで、脈々と続く血脈や思いが私たちの身に宿る。そのようにシリーズを制作してくださったことに感謝しています。そしてなにより、こういう時期にお客様の前で演じることができることを本当に幸せに思います。お客様も含め、たくさんの人の思いがひとつになって素晴らしい空間になることを心から願っています。私たちも楽しんでやらせていただきますので、みなさんも楽しんでください。

演出:鵜山仁さん)
 この12年、考えてみれば、ずっと王位を奪うとか奪われるとか──、今回も端的に言うと王位を譲れ、譲れない、いやいややっぱり譲らざるを得ないという権力闘争、人間ドラマです。その中で、僕らにはちょっと野望があるんです。花が咲いて実がなって、葉が落ちて──世代交代、季節の変化というWith Nature、そんな“環境”の中で生きていく者の表情を見ていただくことが願いです。



荒涼とした世界にさく色とりどりの草花
小さな花、草木と板の上の人間たちの争いのコントラスト


──稽古で久しぶりに再会した時は、どんな感じがするものなのでしょうか。

岡本さん)
 何年かぶりに会っても、会った瞬間にそのブランクはすぐになくなるというか(笑)。毎作品、命懸けで取り組んでいる姿を見てきているので、お互いにリスペクトも、異常な(笑)信頼関係もあります。あとは鵜山さんの頭の中にあるものをどうやって自分たちで具現化するかという作業になる。そうなると久しぶりとかなんだとかいう状態じゃないですね(笑)。集まれば、すぐに作品に取り組んでいく、そんな人たちの集まりです。

浦井さん)
 このシリーズの登場人物の名前はヨークだったり、ハリーだったり、同じような名前がどんどん出てきます。12年かけて、それらを演じる役者さんの顔でインプットしてきたので理解できる自分がいるんです! そんな時、今回初参加の原(嘉孝)君の「これ、誰っすか?あの“叔父”って誰っすか?」という質問でハッと気づくんです、僕らはちょっと血筋に慣れてしまっているなと(笑)。



中嶋さん)
 12年やっていると「ああ、あの時のあれってお前のせいだったんだね」とか「あの時はやられたなー」なんて話になるんです。なんて言うか、親戚の集まり?のよう。長年積み重ねてきたものは本当に尊いと思います。


──鵜山さんに伺います。シリーズ最終作が発端となる『リチャード二世』、その構想は最初からお持ちでしたか。



鵜山さん)
 いやぁ、全然ありませんでした。最初に『ヘンリー六世』をやった時は、それ自体が三部作だったので、これでもうたくさんだと思っていたのですが(笑)。幸いなことに、いろんな方の、お客様も含め、力が集まりこうして続けてくることができました。これは大変ラッキーなことだと思っています。一作ごとに、今度どうするの? 今度どうするの?って。そういう風に繋がってきたことは、きっといいことですよね。

──演じる側としては、最後にここに戻るということについていかがですか。

岡本さん)
 僕がこの作品で王座を彼(浦井さん)に奪われる、それを発端にして自分たちが過去にやった作品が未来になっていく。ちょっと不思議な感覚です。僕は2作品だけ王冠を被らせてもらっているのですが、それ以外はほとんど浦井君が王冠を被っています。王冠を被るとその力を感じるんですよね。「みんな、ちゃんと俺の言うことを聞け」という気持ちになる──それが権力なのかな。欲を捨て、日本の、世界のために、人のために生きていかないと、こういうことになりますよというような(笑)。今の日本で上演することで、新しいリンクが生まれる部分も。本当に不思議な感覚のするシリーズです。

──王冠には力がある?



岡本さん)
 王冠って、実際にそれを被ると自分では見えないんですよね。王冠、それ自体に力あるというより、周りの人たちの「見る目」、そこですよね。

 シリーズとして12年やっていると、ずっと見てきたお客様もいれば、今回はじめてシェイクスピア作品に触れる方、はじめて舞台を見るという方もいる。はじめての方にもちゃんと伝わるようにするにはどうするべきか。そう考えると、人の心、気持ちの動きに重きを置くということになります。シェイクスピアといっても難しく考える必要はなく、実在した人物を本当に面白く描いているので、劇場に来て、客席で、人が生きている力、それを生で見るという特別な時間をみんなで味わえたらいいな。

──先ほど浦井さんの話にもあった、事務所の後輩の原さんの反応については。

岡本さん)
 彼は本当に「これは誰のことを言っているのか全然わからない」と言っていました。それは新鮮でした。確かに名前もややこしい。きっとはじめて見るお客様もそうなんだろうと。だから僕の判断基準としては原君が感動したら、みんなが感動できる(笑)。彼、最近よく感動しているんですよ(笑)。

──12年での変化についてはどう感じますか。



浦井さん)
 12年、諸先輩方も年を重ねられ、より一層深みを増しています。発する一音が重い。それは自分の憧れ、目標です。いつかそんな音を出したいという憧れがたくさんのカンパニーです。

中嶋さん)
 もちろん寄る年波にはというところもありますが(笑)、変わってないといえば変わってない。そこがこのカンパニーのすばらしさ。本当に幸せです。顔を合わせるだけで、先輩方から元気をもらってしまうんです。こちらが差し上げねば!と奮い立たせてもらっております。

岡本さん)
 12年の間には、「死」、それを仲間と共有しなければならないこともありました。でも、彼らは稽古場でも本番でも常に見守ってくれているような気がします。だからちょっとでもなめたことをすると、本当に怒られる感じ。一緒に作ってきた、今は別の世界にいった方々のためにも、魂を込めてやらなくてはならないと思います。 でもね、70代、80代の役者さんってすごいですからね。敵わないです。じゃあ自分がその年になったときにそこに行けるだろうか、今からちゃんと健康管理をしてやっていかないと到底たどり着かないでしょう。その姿を劇場で見る。それだけで感動すると思いますよ。

──コロナ禍、稽古などで気を使われたところは。

岡本さん)
 稽古中も雑談とかはないです。静かです。常にマスクをして話もしない。会話をするのは舞台上だけと言ってもいいくらい。

──これまでのように親睦を深めるための食事会なども?

岡本さん)
 まず、そういう気持ちにならないです。一緒に楽しむということに関しては、舞台上での時間をみんなで楽しんでいます。でも、このコロナ禍についても鵜山さんがとても印象的なことをおっしゃっていて──それは鵜山さんから(笑)。

鵜山さん)
 コロナを敵だとは思っていない。より寛容になるため、切磋琢磨するためのものだと思っています。先ほど言った「自然と一緒に」というのはそういうこと。人間のことだけを考えているとやっぱりダメみたいだと、痛切にそう思わされます。そして、芝居はそういう“エコー”を聞かなくてはいけないし、それを表現できなくてはいけない。これは割と本気で思っています。

──これで完結とありますが、「今度どうするの?」と言われたら?

鵜山さん)
 それはもう、いくらでも(笑)! 表現するということは続いていく、もしこの繋がりの先に何かがあるなら、それはウェルカムです。この歴史劇シリーズが完結ということです。


──では、最後に岡本さん、浦井さんからひと言。

岡本さん)
 コロナ禍で、みんなそれぞれ意識が変わったと思います。僕も改めて考えてみましたが、この作品は演劇とか、お芝居をするとか、人として生きるとか──、そういう部分を超えた物語になっている。遠くから見たら昆虫も人間も同じなのではないかというような。だから、これは生物の物語──ん?違うかな、これではよく伝わらないですよね(笑)。浦井君どうぞ。



浦井さん)
 新国立劇場で客席を100%の状態にしてお客様をお迎えする最初の公演になります。その意味でも気合十分です。演劇をみんなで新たにスタートさせる、昆虫や植物や人間、すべての生命を開花させてエネルギッシュに生きていこうじゃないか!その学びの場のような、エネルギーが渦巻いている演劇空間を体験していただけると思います。それだけに役者としては一回一回がかなりシビアになると思います。舞台セットをご覧いただくとわかりますが、だだっ広い。そこでいかに集中するか。しゅうさんはそれを“フック”と言いましたが、「フックを誰にかけるか、植物か、役か、想像か」。舞台上で、僕らがエネルギーを回していく、それをお客様に楽しんでいただければと思います。

【ものがたり】
 リチャード二世の王宮。王の面前に、反目しあう二人の貴族、モーブレーとボリングブルックが召喚される。ボリングブルックは先ごろ暗殺されたグロスター公の死に、モーブレーが関与していたと告発するが、モーブレーはこれを否定。王の裁定は後日、決闘によって黒白をつけるというものだった。その当日、いよいよ決闘開始という時に、突如、王は決闘の中止と二人の追放を宣告する。
 ボリングブルックは六年の追放に処されるのだが、やがて彼の父が死去すると、王はその財産を没収する。この暴挙に加え、それまでのリチャードの治世に不満を高まらせていた貴族たちのもとに、ボリングブルックが名誉の回復を求め、大軍を率いて帰国するとの報が寄せられる。
 次々とボリングブルックに靡く貴族たち。民衆の支持も得た彼は、籠城した王と対峙すべく兵を進める。ボリングブルックは自身の名誉回復だけを要求するのだが、気圧された王は自ら譲位を宣言してしまう......。













~シリーズ過去作も見たいな!というみなさまへ~
 『リチャード二世』公演終了後となる、10月27日より、同じ中劇場にて『ヘンリー六世』と『リチャード三世』の映像を上映する【特別イベント】シェイクスピア歴史劇シリーズ映像上映(Aプログラム『ヘンリー六世』/Bプログラム『リチャード三世』)がございます。詳細はこちらにてご確認ください。
【公演情報】
『リチャード二世』
2020年10月2日(金)~25日(日)@新国立劇場中劇場

作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:小田島雄志 演出:鵜山 仁

出演:岡本健一 浦井健治 中嶋朋子 立川三貴 横田栄司 勝部演之 
吉村 直 木下浩之 田代隆秀 一柳みる 大滝 寛 浅野雅博 
那須佐代子 小長谷勝彦 下総源太朗 原 嘉孝 櫻井章喜 石橋徹郎 
清原達之 鍛治直人 川辺邦弘 ⻲田佳明 松角洋平 内藤裕志 椎名一浩 宮崎隼人

芸術監督:小川絵梨子  主催:新国立劇場

公演詳細はHPをご覧ください

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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