『SCORE!! ~Musical High School~』、7月24日、25日に明治座での開校を前に、先生役の
中川晃教さん、特別講師役の
坂元健児さん、生徒(学級委員)役の
上口耕平さんによるオモシロ&胸アツトークをレポートいたします。言うなればプレ講義、みなさま予習、復習にお役立てください♪
公演は2部構成、第1部はアメリカン・ハイスクールを舞台に中川先生による
“音楽の素晴らしさ”の熱血授業。第2部はキャストのみなさんのヒット曲をはじめ、ミュージカル・ナンバーの数々をたっぷりと歌い上げる
スペシャルコンサート。果たしてその全貌は──。
誰も見たことのないスペシャルな世界の扉が開くのは、もう間もなく。稽古が始まったばかりのお三方に公演の魅力や、それぞれのルーツについてたっぷりと伺いました。
【熱血教室】
──まずは「中川晃教が名曲と共に紐解く、華麗なるミュージカルの世界」とありますが、本公演が行われるきっかけを中川さんからお話しいただけますか。中川さん)
劇場というのは、僕ら舞台に立つ人間とお客様が感動を分かち合い、それが互いの生きる糧になっていく。そんな場所です。ただ、今は劇場を開けることも当たり前ではなく、また開けたとしても客席の使用上限など100%の稼働も難しい状況です。そのような時でも劇場にお客様をお迎えできる新しいソフトはないだろうか。明治座さんとお仕事をしていく中で生まれた企画の種と、僕自身、改めて考えていたエンターテイメントに携わる者としての役割、使命についての思いが融合して動き始めました。そして、『SCORE!! ~Musical High School~』として、サカケンさん、上口くんをはじめとする今回のキャストのみなさんと一緒に、お客様の元気に繋がるようなステージの第一弾をお届けすることとなりました。──具体的には、どのような教室、授業になりそうですか。中川さん)
僕はこのクラスの先生で、そこに特別講師としてサカケン先生をお招きしたという設定です。僕のキャラクターは熱血先生、イメージは松岡修造さんでいこうと思います!坂元さん)
熱血先生と熱血特別講師で(笑)! お客様も、この学校の生徒の一人だと思っています。一緒に楽しみましょう。ちなみに僕の第一声は「心配ないさ~」です。中川さん)
特別講師のサカケン先生の熱血指導がさく裂するんだろうとワクワクしています(笑)。稽古をしていても、さまざまなジャンルから集まった生徒たちを前に、ミュージカルとはなんぞや!というところで、サカケン先生の目がキランと光るんです。本番でもバシバシ生徒たちを斬っていく様子が目に浮かびます。サカケン先生にワクワクです。上口さん)
お二人の先生方それぞれ、想像を絶するところからの言葉が飛んでくるので、とても刺激的です(笑)。それを受ける生徒からも何が飛び出すかわからない、公演は2日で4ステージありますが、きっと毎回違った展開になると思います。僕は学級委員を務めるのですが、しっかりクラスをまとめて授業を進めることを第一に頑張ります。でも、僕自身も隙あらば弾けたい!中川さん)
一番頼りになりそうなのが学級委員だよね(笑)。坂元さん)
実際に学生時代にやっていたんだよね。上口さん)
小・中学校で学級委員や生徒会長をやっていました。──今回のお役も適任ということですね。中川さん、坂元さんはいかがですか。中川さん)
生徒会の副会長をやっていました。あと……、実は応援団長をしていたんです。上口さん)
今のアッキーさんの繊細な歌声から想像できないです!!──確かに応援団というとドスのきいた声の印象ですよね。中川さん)
一歳年上の兄が応援団長やっていたので、その流れで僕も駆り出されたんです。でも、どんな声を出していたんだろう。記憶はおぼろげですが、とにかく声をつぶさないような発声を心がけていたことは覚えています。あとは応援団長って、応援団をまとめるだけでなく、吹奏楽部が奏でる音楽との調和や、ほかの学生たちの気持ちを一つにまとめ上げる役割もあって。リズムやテンポをコントロールするという意味では──。上口さん)
音楽にも通じる!中川さん)
でも、果たして応援になっていたのか(笑)上口さん)
オリジナリティのあるものだったかもしれませんね。三人)(笑い!!)
中川さん)
サカケンさんはいかがですか。坂元さん)
僕は器械体操一筋の高校時代でした。学級委員も体操部のキャプテンも縁がなく、ただひたすら競技に向き合っていました。体育科だったので、朝練、授業、午後は部活の日々。──ひとつの「道」に没頭する経験というは、その後も役立っているのでしょうね。坂元さん)
確かにひとつのことに没頭する癖がありますね。マニアックに突き詰めがち。あとはそこで学んだ「厳しさ」も糧になっています。きっと、宝塚(歌劇団)の世界とかもそうなんじゃないかな。レッスンにレッスンを重ねて、ひとつの道を極める。鍛錬するというところは、エンターテイメントもスポーツも、応援団も一緒だと思います。中川さん)
サカケンさん、器械体操をされていたんですか! すごいな。坂元さん)
上口くんもマイケル・ジャクソンのダンスとかすごいよね!上口さん)
ダンスは原点であり、常に傍にいる相棒のような存在です。どこか心がブレた時でも、ダンスに戻るとリセットされ、浄化され、再び動き出せる。いつも助けてもらっています。その根底にあるのは、やっぱり「好き」なんでしょうね。今でも、マイケルのダンスの映像を見始めると何時間でも見続けてしまう。そう思うと、僕ものめりこみ体質なのかも(笑)。中川さん)
稽古でもこのような会話が自然に生まれ、そこからそれぞれのルーツを紐解いたり、互いに学んだり、本当に学校のようなやりとりが繰り広げられるんです。もともと一人ひとりの個性やルーツにあった「あてがき」された台本があるのですが、ここから稽古の中で生まれたものを取り入れながら、さらに面白く変化していきそうです。さらに、その個性が「ミュージカル」という触媒を得て、どんな化学反応を起こすのか。みなさんにはその瞬間に立ち会っていただくことになります。【気になる楽曲】
──予定されている楽曲の中で楽しみにされているのは。上口さん)
僕は夢咲ねねさんと歌う ♪トゥナイトです。昨年、チームは違ったのですが『ウエスト・サイド・ストーリー』日本キャスト版公演に、僕はリフ役、夢咲さんはアニータ役でキャスティングされました。その二人が、トニーとマリアの楽曲 ♪トゥナイトを歌うというのが面白いですよね。実は僕、♪トゥナイトのような、男女のキラキラした感じの歌の経験が少ないので(笑)、結構ドキドキします。楽しみです。坂元さん)
僕は『オペラ座の怪人』の ♪ミュージック・オブ・ザ・ナイト、『レ・ミゼラブル』の ♪スターズを歌います。どちらもやったことのない役なので、なぜこの2曲なのか……バランスかな(笑)。僕が一番年上なので。中川さん)
ちょっと意外ですよね。サカケンさんが一番年上って!上口さん)
そう思うと、僕より年下の方も結構……。坂元さん)
そういう時代になったんだよ(笑)!三人)(笑い!!)
中川さん)
僕は以前から歌ってみたいと思っていた曲、『南太平洋』より ♪魅惑の宵をはじめて歌います。第1部で、ブロードウェイミュージカルの黄金期を支えた名コンビ、ロジャース&ハマースタインを取り上げるので、それを受けての選曲です。そして『ジーザス・クライスト・スーパースター』からも歌います! ほかにも日本のポップスから洋楽まで幅広く歌います。──ちなみに第1部の授業でも歌われるのでしょうか。中川さん)
もちろん歌います! そして第2部はショー形式で、さらに歌います!【秘かに期待しているのは……】
──多ジャンルからのキャストが集う稽古の様子はいかがですか。坂元さん)
それぞれの色が濃いです。おばたのお兄さんは芸人さんらしい存在感で場の空気を確実に面白くしてくれます。声優の石川由依さんは、いくつもの声を持っていらっしゃいますし、徳永ゆうきさんの指パッチンのもすごいんです。中川さん&上口さん) (指パッチンしながら)もうすごいとしか言えない!
坂元さん)
ですよね!あと、秘かに期待しているのは夢咲ねねさんの豹変(笑)。稽古序盤は、「私、こんなことできるのかしら」とやや腰が引けていたのですが、3回通した頃には自分から率先していろいろと仕掛けていましたから! これまで見たことのない夢咲さんが見られるかもしれませんよ。そして、ここから稽古を重ねていくことで、まとまっていくのではなく、バラバラな個性がより際立ってくる気がします。それをまとめるのが学級委員ということで(笑)!上口さん)
頑張ります!僕が感じているのは、みなさんがオープンハートで稽古に臨まれているということ。ハッピーオーラとパッションで率いる二人の先生のもと、ミュージカルを学ぶ。まずその時点で心開けるんですよね、改めてミュージカルや音楽の力を感じています。お客様も自然と気持ちが解放される時間になると思います!中川さん)
ほかにも(浅草で人力車を引く現役俥夫によるユニット)東京力車のみなさんや(ダンス&ヴォーカルグループ「lol-エルオーエル-」の)佐藤友祐くんは音楽畑の方々です。今や、ミュージカルとひと言で言っても、作品のテイストも多様で、いろんな世界からミュージカルに人材が集まっています。そんな時代だからこそ、このハイスクールが開校する。ミュージカルってなんだろう、エンターテイメントってなんだろう、それを、そこに携わる僕らがちゃんとアンサーする。サカケン先生と二人三脚で、それぞれの個性の芽を育みながら、ひとつの形にしていければと思います。そして、それが次に繋がっていけばいいなと感じています。【スコアは、その一冊に夢が詰まった「宝物」】
──タイトルの『SCORE!!(スコア)』は、楽譜という意味。そのココロは?中川さん)
ミュージカルには歌があり、踊りがあり、芝居がある。ブロードウェイ発、ウエストエンド発、ウィーン、韓国、そして2・5次元や宝塚歌劇も含めた日本発のオリジナルもある。そういった外枠はみなさんご存じかと思いますが、もう一歩踏み込んで、そこに携わる者としてミュージカルって何だろうと考えた時、そのすべてはスコアに書かれている。それがミュージカルなのではと思ったんです。僕らは、スコアを受け取り、歌詞や音楽、その物語や、役の心情を読み解きます。ただ、解釈と表現の整合性をとるだけがミュージカルではないんです。スコアがレシピだとしたら、最後にその料理を完成させるのは、そこにどう自分の味を加えるのか。その基となる、ミュージカルのレシピ、設計図たる「スコア」をタイトルにしました。──興味深いです。俳優さんにとって、作品への出演が決まり、スコアを手にされた時は、特別な気持ちになるのでしょうか。上口さん)
シンプルなものから緻密に書き込まれたものまでさまざまですが、スコアを見るとワクワクします。この紙に書かれているものが俳優の声とオーケストラやバンドの音楽で奏でられ、物語となった時、舞台上にどう立ち上がるのか。そしてどう届くのか。スコアを渡された時は、その一冊に夢が詰まった「宝物」をいただいた気がします。大切なことはそこに書いてある。役のこと、表現で迷った時に立ち返るのがスコアです。坂元さん)
経験を重ねることによって、スコアから受け取れるものも増えてきます。台本とスコアを照らし合わせることで、役の心情をより深く理解できたり、具体的に捉えることができたり。一方で、「ここはアドリブで」としか書かれていないこともあります。今年出演した『パレード』でも、「即興で歌う」と指示されるところがありました。演じる俳優の感情を即興で表現する、もちろん稽古しながら演出家とも方向性はすり合わせますが、そんな風に生々しい感情表現を求められることもあります。そして、それが僕のスコアとなる。俳優としてすごくいい経験になりますし、そこにもこの仕事の面白さを感じています。中川さん)
本当にお二人がおっしゃった通りです。言葉(台詞)で表現されていなくても、音楽が語るという場面がミュージカルではたくさん出てきます。作曲家からのメッセージを感じることができるのがスコアですよね。
だからこそ『SCORE!!(スコア)』では、ミュージカル作品を紹介するだけでなく、上口くんの言葉を借りれば「宝物」のようなスコアを生み出した作曲家の人生や時代背景を含めて紐解いていきたいですね。そんなミュージカルという大きな器の中で、僕らは何ができるのか。実験的な側面も楽しみながら、新しいスタイルを築いていきたいと思います。と言いつつ、どうなるかはやってみないとわからないのですが(笑)。【大切な指針】
──学び舎が舞台となる本公演。最後に、みなさんの支えになっている恩師の言葉などがありましたら教えていただけますか。坂元さん)
専門学校時代、男子学生が少なく試演会や発表会など、年間3~4本は主役をやっていました。すごい売れっ子でした(笑)。ある時、宮沢賢治の役を演じたのですが、賢治がリンゴを食べて「うまい」と言うところで、先生に「違う」と言われ続けました。ただ「違う」と繰り返し、正解を言ってはくれなかったんです。そのことがずっと心に引っ掛かっていたのですが、10年程経った時に「こういうことだったのか」と気づいたんです。そこから自分の演劇観が変わりました。そして、それに気づけた自分が嬉しかった。あの時の「違う」は大切な恩師からの言葉です。
芝居でも歌でも、言われた時には明確に答えが出なくても、やがて気づくことってよくあるんです。今自分がいる世界ではなく、もっと広い世界があると思いながら、その答えを探していく。視野を広く、これまでも探し続けたいと思います。ただ、この一連の話を先生にも伝えたのですが、先生は全く覚えていなくて(笑)。上口さん)
僕の恩師は、実はこちらのお二方。健児さんには、僕がまだ20代の頃に「自分の声を知ること」の大切さを教えていただきました。健児さんの声に憧れ、そのコツを尋ねたところ、「いろんな声があっていい、とことん自分の声を追求することが大切だ」と言っていただきました。その言葉に勇気づけられました。
また、数年前にはアッキーさんに歌のレッスンをしていただきました。一生懸命、歌おう、歌おうと声を張り上げていた僕にアッキーさんがくださったのは「歌おう、声を出そうというところから一度離れて、言葉を伝えることに集中した方がいい」というアドバイス。
「言葉を伝える」、「自分の声を信じる」というとても大切なことを教えてくださったお二人なんです。お二人ともきょとんとされていますが(笑)。中川さん)
これまで出会ったたくさんの方の言葉に支えられていますが、今、思い浮かんだのは高校時代の担任の先生のエピソードです。倫理の授業で「セブン・イヤーズ・イン・チベット」という映画を見ました。その中に「西洋では頂点を極める人が英雄。東洋での理想は自我を捨てること、目立つことが重要ではない」という主旨の台詞がありました。その台詞と、その授業の終わりの「ナンバー・ワンではなく、オンリー・ワンになりなさい」という先生の言葉。後者は、その後、SMAPのヒット曲でも歌われたフレーズですが、社会や価値観が絶えず変化している時代に、自分を見失いかけた時に思い出す言葉です。あの日の授業が、今でも大切な指針になっています。──素敵なエピソードをありがとうございます!今回のご出演者の中ではミュージカル畑という共通点をお持ちのみなさんでも、歩んでこられた道はさまざまですね。さらに個性豊かなキャストが集結する本番は一体どうなってしまうのか。授業もコンサートもますます楽しみになりました!
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)hase(撮影)監修:おけぴ管理人