【寄せられた感想をご紹介いたします!】9/13感想追記
数ある井上戯曲の中でも傑作です。東京浅草のレコード店という「定点」で眺められる星座を語っての年月日と時刻の設定は巧みにして詩的。
特に最終場の日付と、登場人物それぞれの前途を思えば、切なくて胸が詰まります。見事に造型された各人物(それぞれが「典型」と言えます)が好配役を得てまさに舞台上に生きています。
誰も自分なりの「真実」を大事に、あの時代状況の中で誠実に生きている、軽快で楽しい雰囲気の中に人間の尊厳が立ち現れます(山西惇さん、いとおしい!)。
木場勝己さんの台詞の重み、ずっと噛みしめていかなくては、と思います。
---------------
何も難しくない、いっぱい笑えます。でも心を動かされるお芝居です。
戦争の話はちょっと…という方にこそおすすめ。笑っている間にいつの間にか色々考えてました。
万里生くんの新しい一面も見る事ができました。身体能力高いです(笑)。
歌の数々はさすがに年代が違いましたが、ほっとするような歌が多くて、昔の歌謡曲素敵だな~と思いました。
---------------
蒸し暑い日の中、出演者の方々の汗だくでの熱演に心が揺さぶられました。
子育てを終えたばかりの母親ですが、少し燃え尽き症候群のような毎日を送っていましたが、秋山菜津子さん演じる母親を観て、母はどんな時も家族の太陽であれ!!と教えて頂いた気がしました。元気を頂きました。
---------------
笑って笑って、でもなんだか哀しくて心にどーんと重いものが残りました。
キャスト全員役をとても生き生きと演じられていて、すばらしかったです。
青空、本当にいい歌だなぁ。
今生きている奇跡を改めて感じました。
---------------
星空と軽やかな音楽、歌、選び抜かれた言葉。
休憩含めて3時間の舞台なので、少し躊躇しましたが、行って良かったです。セリフをビシビシと身体いっぱいで受け止めながら観ました。
戦中のお話ですが、今に通じるおかしみや哀しみがあって、つくづく人間は変わらないものだなと思い、涙がツトーっと流れてきました。
---------------
不器用だけど一本気なゲンさんを演じた山西さん、適役でした。
それぞれの役者さん達が、みんな当て書きされたかのようにぴったりな役柄で良かったです。
---------------
井上ひさしさんの作品を見たのは初めてだったのですが、なんで今まで観なかったんだろう!もったいない!とすっかりファンになりました。
笑いあり、歌あり、ダンスあり、涙あり…必見です。
---------------
初のこまつ座公演でしたが、笑いあり笑いあり笑いありで大満足♪と思っていたら、後半は感動の涙。コンサートでしか拝見していなかった田代さんが、あんなコミカルな演技をされるなんて大発見でした。
---------------
井上ひさし作品の中でも、必見の一つだと思います。笑わせて笑わせて、ぽんと考える球を投げられて、一人ひとりに思いを深めさせる、見事な作劇術です。私がこの作品を初めて見たのは1987年、こまつ座第11回公演でした。
この作品で、井上ひさし作品は同時代人として、人として、見続けていかなければいけない、と思い今に至っています。
この作品のしっかりとした芯は、色褪せることなく、新キャストによって、継承されたと感じました。
---------------
秋山奈津子さん、とても魅力的で素敵でした。
観る前は「この役にどうかな?」と思ってましたが、昔歌手で今は優しくて心温かい義母役にピッタリはまってました!
今までちょっと怖いイメージがありましたが払拭してくれました!
万里生君はすごく良くて、軽い身のこなしには感心し、あるシーンのジャンプ姿はサイコーでした(笑)。
得意のクラシックの歌い方は封印で軽い歌謡曲を歌うだけなので、彼を初めて観る方達には彼の歌の素晴らしさをわかってもらえないかもなのがちょっと残念だけど仕方ないですね。
傷痍軍人役の山西さんの演技にはグッと来ました!
一幕ラストは涙こぼれました。
---------------
生きにくいこの時代に、どんなときでも明るく楽しく歌いとばして前向きに生きているオデオン堂の皆さんがとても魅力的です。
「歌」の力を改めて感じました。木場さん演じる竹田の台詞も心に響きます。
ラストシーン、カレンダーの日付の意味を思うと涙がこぼれました。
【稽古場レポート】
劇作家井上ひさしさんが昭和庶民三部作の第一部として書き下ろした
『きらめく星座』。
数々の名台詞、庶民に愛された流行歌に彩られた名作がこまつ座オリジナルバージョンで再演!緻密な作品作りが行われている稽古場へお邪魔してまいりました。
-ものがたり-(HPより)
時は太平洋戦争前夜昭和15年から16年の東京、浅草のレコード屋オデオン堂の家族と、広告文案家の下宿人は皆、音楽大好きな一家である。しかもその音楽は『仮想敵国のジャズ』であったり、『軟弱な流行歌』であったり・・・。
更に陸軍に入隊していた長男が脱走、追ってきたのは憲兵伍長、いつの間にかオデオン堂は非国民の家と噂されてしまう。
しかし、可憐な一人娘が結婚相手に選んだのは傷病兵。非国民家族から一転、美談の家になったオデオン堂で繰り広げられる、好きなものが好きと言えなかった時代の、愛すべき家族と下宿人たちの運命は・・・。
この日は第5場のお稽古中。
演出の栗山民也さんのもと、台詞の抑揚や動きの細部にまでこだわった丁寧な芝居作りを目の当たりにし、そのひとつひとつに深くうなずいてしまう取材班なのでした。
不穏な空気の漂う時代ながら、そこに生きる市井の人々はカラリと明るくたくましい!
気づけばオデオン堂の家族をはじめとする登場人物に親しみと愛おしさを感じている、これが
井上戯曲の魅力ですよね。
そして取材した5場だけでも一人ひとりのドラマがうねり、互いの立場を明確に浮き上がらせ、見ているとタテヨコナナメに感情が揺さぶられます。
そのひとつはオデオン堂の一人娘みさをが日中戦争で右手を失った傷痍軍人の夫 源次郎と病院へ行った一部始終を報告する長台詞。
深谷美歩さん演じる みさをの言葉にそこに居る一人ひとりの心が動きます。ドキリとしたりホッとしたり緊張したり・・・それが
居ずまい、表情、目線の小さな動きで表現されるのです。そしてそれぞれの動きは小さくとも全体として家族を気遣うオデオン堂の空気を作ります。
5場を通した後で、この長台詞のなかでどこがハイライトなのか、台詞の語尾の強さなどの確認作業がなされていました。ちょっとしたアクセントの付け方で確かに印象が変わります!
続いてはそんなオデオン堂へ長男・正一が登場するシーン。
「オバンデス!」ハツラツとしたその声の主は、正一役の
田代万里生さん。
数々のミュージカル作品やオペラ、コンサートで美声を響かせる田代さん、実は今回
初めてのストレートプレイ、そして日本人役!!もちろんこまつ座初登場!ちゃぶ台囲んでます!
変装と見まごうほどの素っ頓狂な姿が実は私服(?!)だったり、真っ直ぐだけどちょっと抜けているところもある正一が登場するとシリアスな舞台も一転てんやわんやの大騒ぎ!
こまつ座作品常連のベテラン勢に混ざっても、そのスコーンと抜けるたくましい声の力でしっかりと存在感を示されています。
本番に向けて髪も短くカットされた、昭和な田代万里生さんにもご注目ください。
(短髪のお姿は
田代さんのブログにてご覧いただけます)
脱走兵である正一は自らの目や耳で世間を見る中で気づき始めた何故、この国の
「道義の実体」を問います。ぶつけるのは義兄であり軍国主義教育にどっぷり染まった源次郎。このときの源次郎の葛藤は哀しくて痛々しい。
源次郎を演じる
山西惇さんはテレビで見せる柔らかで飄々としたイメージとは違う堅物でちょっと怖い感じもします。
自分の中で信じてきたものが揺らぐさまを見て、稽古場ながら身動きできないほどの戦慄が走りました。
そして芝居は、もしかしたらこの作品の中で一番好き!という方も多いかと思う広告文案家竹田のあのシーンへ続くのです。
「いま、誰かから「人間」という商品の広告文をたのまれたとします。
さあ、ぼくはどんな広告文を書けばいいのか。」
とてもとても美しい言葉で願いのような切実さをもって届けられる台詞。演じる
木場勝己さんの温かくて深~い響きの声の根底には竹田が案じる生徒たちへの思いなど、彼のこれまでの人生の重みを感じます。
ぜひ劇場でこの素敵な日本語を味わってください!
さらに!!
★こまつ座30周年記念キャンペーン★「人間にキャッチコピーをつけるなら?」として、ご観劇いただいたみなさまもキャッチコピーに挑戦、応募できる企画もございます。
最後になりましたがこの作品のもう一つの魅力は物語に彩りを添える数々の
流行歌♪5場では♪『星めぐりの歌』を
秋山菜津子さん演じる後妻のふじが歌います。ただ、歌うといっても「歌唱シーンです!」といったことではなく口ずさむようにそのメロディと詩を味わうように歌うのです。うん、改めていい曲!後藤浩明さんのピアノも絶妙!
もちろん音楽大好きな正一役の田代さんも歌います。これまでのミュージカルやオペラとはまたひと味違う
芝居の中での歌も楽しみです!
ほかにも『月光値千金』『燦めく星座』『一杯のコーヒーから』『青空』などが登場しますよ。
リアルタイムで知っているわけではないのですが、でも、歌って心への浸透度高いですよね、それを実感。
家族みんなが知っていて口ずさめる流行歌って、それ自体が貴重になっている今日この頃だな。そんなこともふと頭をよぎりました。
愛すべきオデオン堂の人々、かれらの人生に幸あれ!と思いつつ、私たちはその後日本がどのようになるのかを知っています。
栗山さんからキャストのみなさんに昭和庶民三部作のひとつである『闇に咲く花』からの引用を交えながらの説明もありました。戦争中の人間の狂気や正気、兵隊になるにあたってはまず名前をなくす(兵隊1、兵隊2)、次に癖を無くす(扱いやすくする)そういうことが行われていたこと。
このように井上さんの戯曲に込められたメッセージが栗山さんに受け継がれ、そして舞台上に再び立ち上がるその過程を取材し、観る側もしっかりとそれを受け取って、考えることを続けていかなくてはと気持ちを新たに稽古場を後にしました。
写真提供:こまつ座
おけぴ取材班:chiaki(文)監修:おけぴ管理人