2014/10/15 劇団Patch『Patch8番勝負 其の六「沈黙のZOO」』稽古場レポ(中村圭斗さん&竹下健人さん・大熊隆太郎さんインタビュー)


Patch8番勝負、今月は“セリフ(ほぼ)なし”の無言劇に挑戦です。
「僕達の新しい可能性を見てほしい」と意気込むおふたり。
(写真左から:竹下健人さん、中村圭斗さん)

ワタナベエンターテインメント所属の若手男性俳優集団【劇団Patch】。
「関西から日本を元気にしたい!」とバラエティ豊かな活躍を見せてくれる彼らですが、“劇団” と名乗るだけに、その活動の中心はやっぱり舞台
結成3年目を迎えた彼らが、8ヶ月連続で8人の演劇人とコラボレーションする武者修行企画『Patch8番勝負!!(パッチパチバンショウブ)』も、いよいよ第6作目となりました。

今回彼らがタッグを組むのは、関西小劇場界のライジングスター、おけぴ関西スタッフも勝手にパワープッシュ中の【劇団壱劇屋】代表・大熊隆太郎さん。
「セリフ(ほぼ)なし」の無言劇でみせてくれるのは、ずばり「Patchな動物園」…!?

“自他ともに認める特殊な創作スタイル”で知られる壱劇屋と、Patchの組み合わせで、いったいどんな動物園が出現するのでしょうか?

『Patch8番勝負 其の六「沈黙のZOO」』稽古場レポをお届けいたします!


劇団Patch×壱劇屋=ZOO!

「役名はまだないのですが…主役です!」(中村さん)

「身体の中からえぐられるように体力を奪われています」(竹下さん)

【ある男の1日、そしてPatch動物園】


テキストにじっくり取り組み、人間の持つ暗部をあぶりだすようにみせた前作『逆さの鳥』(作・演出は伏兵コードの稲田真理さん)から打って変わって、身体表現重視の壱劇屋ワールドに挑戦するPatchメンバー。
作品タイトルどおりに“沈黙”がひとつのキーワードのようですが…?

中村:
「稽古場ではひたすら “マイム” です。
ストーリーは…たぶん大熊さんの頭の中にはあると思うんですけど、今はまだ稽古場でそれぞれのシーンのパーツを作っている状態。
これがつながって、最終的にどんなストーリーになるのか。まだ想像がつかないです。
セリフは、ほとんどゼロに近いですね」


竹下:
「物語というよりは、ひとりの男が朝起きて、会社に行って、1日を過ごして…という流れを表現しています。
あと、動物園の飼育員や動物がいる光景を、パーツごとに作っていっている、という状況です」


中村:
「言葉を使わずにマイムで伝える。
これが本当にむずかしくて…いま苦戦中ですね」


竹下:
「前回の『逆さの鳥』は、本に書かれていること、台詞を大事に作りましたが、今回は台本もなくて…。
毎回、稽古が始まる前に、その日作るシーンのキーワードや構成を大熊さんがホワイトボードに書きだすんです。
しかも、それがなぜか英語なんですよね」



取材にお伺いした日、ちょうどタイミングよく初めての“台本”が配られていました!
A4用紙2枚。台本、というよりも進行表…?

これが問題のホワイトボード。
「ネタばれもなにもないので、写真もどんどん撮ってOKです」とのこと。
さすがの壱劇屋スタイル!

【大熊さんコメント】
Patchメンバーとは以前にイベントで一緒にパフォーマンスをしたことがあったので、大体の雰囲気は知っていました。
若い男性がワイワイやっていて、その中で僕が振付したりしていると、言い方が悪いかもしれませんけど「調教している」というかんじで(笑)。「わあ、日光猿軍団みたいだな」と。…すみません。
適度にふざけつつも、お互いに「ここまでにしとけよ」という暗黙の了解があって、スタッフやお客さんに見守られながら、じゃれあっている様子に「動物園っぽいなあ」と感じたんですよね。
演劇の作り方への共通意識もない中で、彼らとどうやってコンタクトを取っていくか、どう接していったらいいのかを探りながらやっていたんですけど、その状況が “どう扱っていいのかわからない動物を飼育する感じ” に似ているのかなと思いまして、「今回は “動物園” でいこう」と。
といっても、僕はペットとかあまり飼ったことがないので、あくまでイメージなんですけど(笑)。



壱劇屋メンバー・竹村晋太朗さんと西分綾香さんもゲスト出演。
その役どころは…? お楽しみに!

【普通の “猿” になってほしい】


壱劇屋といえば、パントマイマーとしても活躍する大熊さんをはじめ、メンバー全員の身体能力の高さ、そしてそれを活かしたパフォーマンスが魅力。
その稽古スタイルも独特で、全員参加・全員演出家ともいえる劇団ならではの創作方法をとっています。
はたして、今回の『Patch8番勝負!!』稽古場では…?


「大熊さんは、僕らにも意見を求めてくれるんです。自分のアイディアが採用されて、それが芝居になってお客さんに観てもらえるというのが嬉しいし、新鮮な感覚ですね」(竹下さん)

竹下:
「大熊さんの求める“ニュアンス”を出すのがすごく難しいです。
たとえば、動物園の “猿” になるシーンがあるんですけど、“もっと普通に、シンプルに猿になってほしい” って言われるんです」


中村:
「“シンプルな猿” ってどんなんやろうって、考えちゃうんですよね(笑)。
“猿そのものになってくれ” って言われるんですけど…どうしてもデフォルメしたりしちゃうし、削ってシンプルにするのがむずかしい」



~それではここで、猿(もしくはその他の動物)になりきるPatchメンバーの姿をドーンとお届け!~

なにか口にくわえています…。(井上拓哉さん)

前回公演とは180度違う“ボス猿”役!(松井勇歩さん)

むむ? このポーズは…?
(左から:竹下健人さん、岩崎(※)真吾さん、井上拓哉さん、写真奥:中村圭斗さん)
※「岩崎」さんの崎の字は正しくは「﨑」ですが一部閲覧環境では正しく表示されない場合があるため記事中は「岩崎」と記載しています。

岩崎さんのお腹に一体なにが…!?(腹筋をものすごく使っていそうです!)

これは完全に “何かの動物” です。(三好大貴さん)

異様な存在感!(吉本考志さん)

ゴローン!
【大熊さんコメント】
セリフ劇にしていたらまた違うアプローチがあったのかもしれませんけど、言葉で説明できないことをやってみたかったので、稽古の進め方はいつもの壱劇屋スタイルになっています。
動きやマイムについては、メンバーひとりひとりをみながら、“あ、こいつはもう少し行けるな” とか “ここは見せ方を少し変えよう” とか、調整して作っています。
せっかくメンバーがたくさんいるので、スケジュールが合う人にはできるだけ出演してもらって“動物園” っぽくしたいんです。飛び道具のような個性的なメンバーもいますしね(笑)。
最近劇団の舞台には出ていなかったメンバーにも声をかけて出てもらっています。上野(優人)君と、エレガンス高島さん。
上野君はダンサーとして活動しているので、身体表現性に期待しています。
エレガンス高島さんは…これ言っていいんかな? 僕と同じ年齢で、地元も一緒なんですよね(笑)。それで勝手に“あ、あの人、ここに住んでんのや” って親近感を抱いていて。実際にあってみたら本当にすごく個性的な人だったので、これはもう動物園にいてもらわないと、って。
といっても、結局彼には他のメンバーと少し違う立ち位置で出演してもらうことになったんですけど。これは劇場でのお楽しみに。



残念ながらこの日は上野さん、高島さんは稽古お休みでした。
それぞれの個性が発揮された“動物園”。その全貌はぜひ劇場で!

リーダー・村川勁剛さんのピアノ演奏も飛び出すかも?

壱劇屋公演『UNKNOWN HOSPITAL』にゲスト出演していた中山義紘さん。
マイム演技にも期待!です。
【大熊さんコメント】
今回は無言劇なので、ストーリーがあるようなないような…オムニバス作品のような印象を受ける方もいるかもしれません。
芝居に関して言うと、Patchメンバーの劇団の中でのキャラクターとか立ち位置を観察しながら、この人はこんな役どころが面白いんちゃうかな、と当てはめていくような作り方をしています。
動物園の動物と、人間、それからPatchメンバーのパーソナルな部分を1本の紐でつないでいる感じです。シーンごとに、それぞれに見せ場があって、本当に動物園の“オリ”をひとつずつ見て回るような作りになっています。

【彼を通して、お客さんに “想像” してもらう】


中村:
「僕、今回はじめての主役なんですよ。
稽古が始まる前に大熊さんに呼ばれて、“君、主役だから” って言われたんです!
壱劇屋さんといえば、いま関西の演劇界で「キテる!」と言われている劇団。その名前に泥を塗るわけにはいかないですからプレッシャーは感じています。
それから…僕はPatch二期生で、劇団内でのキャラクターもいじられ役なんです。それを今回ちょっと変えたいなと。芝居でバシッと “僕にも出来んねんぞ!” というところを見せたいと思っています。
いま苦労しているのはとにかく動き、マイムですね。言葉を使わずに伝えることがこんなにも難しいのか! と感じています。
中学から続けていた野球をやめてから筋肉も落ちてしまっていたので、今は体力づくりのためのトレーニングを再開しています」


竹下:
「『破壊ランナー』の時も走って、走って、身体的に大変でしたけれど、今回は体力の持って行かれ方がまた違うんですよ。なんていうか精神的な緊張も含めて身体の中からえぐられていく、というか…(笑)。
マイムってそれこそ指先ひとつまで意識していないと成り立たない。ちょっと油断するだけで伝わるものも伝わらなくなりますから、よっぽど集中力がないと…。
中村はそのあたり今はまだ苦戦していますけど、精神力、内面の体力をつけて、これを乗り越えたら、ものすごい成長につながるんじゃないかなと思って、見守っています。…いや、僕も負けていられないんですけどね!」



【大熊さんコメント】
主役…喜んでました? あ、そうなんや(笑)。
中村くんの役は、なんていうか狂言回しとも違うんですけど、彼のことを追いかけていけば、この作品が見えてくるという役どころです。彼の1日、彼の周りで起こっていることをお客さんに見せていくんです。
この役を中村くんに決めた理由は、彼が一番 “なにもない状態” だったからだと思います。外の色に染まっていないというか、伸びシロがありそうというか。
お客さんには、彼というフィルターを通してPatchメンバーが演じている役や、作品の世界を想像してもらうんですけど、その役に彼がすごく合っていると思ったんですよね。
彼に限らず、今回は全員ほぼ台詞がないですし、“演じていない” という印象を持たれるかもしれません。役になりきって演技するというよりも、Patchメンバーにいつもの彼らのまま舞台に上がってもらって、彼らの身体が持っている魅力をそのまま出してもらっている。作りこむ魅力というよりも、何にも縛られていない、等身大の彼らの魅力が出ているような気がするんです。
「役者をコマのように使っているのに、役者ひとりひとりの個性が出ている」って、壱劇屋の作品でよく言われるんです。それはなんでなんやろうなあ、と考えてみると、多分いい意味でも悪い意味でも役者がそのままの身体でお客さんの前に立っているからではないかと。“自分自身の身体で反応してステージに立てている”。自分で言うのもなんですけれど。
今回もPatchメンバーそれぞれの “そのまま” が浮かび上がるような舞台になっています。観る側にすごくイマジネーションを要求する作品になると思いますが(笑)、ぜひ想像力をかきたてられながら楽しんでほしいと思います。






「せっかくPatchと組んで作品作りをするので」と、これまで壱劇屋の本公演でもやったことのない、(ほぼ)完全無言劇に取り組んでみたという大熊さん。

「何にも縛られていない、解放された彼らが見られると思います。…といってもセリフがないということで、また別の鎖につながれちゃうという側面もありますが。そこはいま格闘中です!」(大熊さん)

それでは最後に、竹下さん、中村さんからの意気込みコメントをどうぞ!

竹下:
「今回もまた今までのPatchとはガラリと違った作品です。
あ、Patchはこういうことも出来るんや、と改めて認識していただければすごく嬉しいです。
メンバーもほとんど出演していますし、身体を使うことによって出てくる僕達の新しい魅力、新しい可能性を見ていただけたらな、と思っています」


中村:
「12月の本公演に向けて、Patchはいい感じで上がってきています。
個人的には、一期生との差を縮めたいという思いはずっと自分の中にありました。
今回は初めての主役ですし、“あ、中村圭斗くん、変わったね” “いままでの芝居とはぜんぜん違うね”っ て言ってもらえるように必死で頑張りますので、ぜひ劇場にいらしてください!」





「人間、動物、Patch」というテーマでどんな劇空間が出現するのか?

劇団Patch『Patch8番勝負 其の六「沈黙のZOO」』。
ぜひ劇場で、彼らの新しい身体表現の魅力に触れていらしてください!


「Patchらしいスマイルでお願いします!」とリクエスト。
誰よりもアイドルっぽいポーズをとってくれたのは…大熊さん!

【公演情報】
劇団Patch『Patch8番勝負 其の六「沈黙のZOO」』
10月28日(火)19:30/10月29日(水)15:00/19:00 
森ノ宮ピロティホールサブホール
※約60分の作品の上演後、演出家と出演メンバーによるアフタートークあり

作・演出:大熊隆太郎 (壱劇屋)
出演:劇団Patch 
ゲスト:西分綾香・竹村晋太朗 (壱劇屋)

劇団Patch公式サイト
公式ブログ


<劇団Patch>
劇団Patchとは、演劇で大阪を元気にしたい!という大きな志のもと、関西を拠点とした様々なエンターテインメントを発信。
関西弁で一生懸命を意味する「必死のパッチ」にその名を由来。
2012年4月、3000名以上の中から厳しいオーディションを通過し
関西版 D-BOYS となる劇団Patchを結成!
結成から約半年で挑んだ旗揚げ公演「OLIVER BOYS」(作・演出 末満健一)は大盛況。
演劇活動以外にもテレビやラジオなどのレギュラーも持ち幅広く活動中。
今後さらなる飛躍を目指す。

<「Patch8番勝負!!」>
結成3年目となる2014年5月より、俳優としてさらなる成長と飛躍を目指し、新たな演劇計画に挑むその名も「Patch8番勝負!!《パッチパチバンショウブ》」。
8カ月連続で8人の劇作家と8本の演劇を上演します。

<大熊隆太郎さんプロフィール>
壱劇屋代表/俳優・脚本・演出・振付/7月28日生まれ
<劇団壱劇屋> 
大阪と京都の狭間、枚方を拠点に活動する劇団。
高校演劇全国大会出場メンバーで2008年活動開始。
パントマイム、ダンス、会話劇、コント、アクションを複雑に融合させて観客を不思議な世界へと導く、世にも奇妙なエンターテイメントを創作中。
本公演は年に2~3回と精力的に活動する若手劇団。
DANCE COMPLEX 2008 審査員特別賞受賞。
ロクソドンタフェスティバル2010 優勝。
應典院舞台芸術祭space×drama2012 優秀劇団に選出。

劇団壱劇屋公式サイト

おけぴ取材班:mamiko(文/撮影)   監修:おけぴ管理人

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