【舞台写真&寄せられた感想ご紹介】(11/7追記)
(右より)温水洋一さん、江波杏子さん
タイトルから想像されるものとまるで違います。
大変洒落た舞台です。
役者二人が素晴らしいのは見る前から予想出来ましたが、美術、照明、音楽、全て素敵です。
演出がとにかく格好良い。
介護や死もテーマの一つではありますが、それだけではありません。
若い方が観に行っても十分楽しめる。
笑えて泣けて胸を打つそんな芝居。
絶対おススメ。
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とにかく、一幕はひたすら温水洋一さんがしゃべる、動く!!
老女役の江波杏子さんも表情だけで会話になっているところがおかしくて。
でも数多い温水さんのセリフの中に人間って?幸せって?生きているって?と、
はっとさせられるセリフがありました。奥深い舞台でした。
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二人芝居なのにほとんどのセリフ温水さんが喋っている。動いているのも温水さん。
それをほとんど喋らずほとんどベッドの上で動かない江波杏子。
温水さんもすごいけど、江波杏子は半端なスゴさじゃない。
見るのにもエネルギーがいるお芝居。お芝居らしい舞台だった。
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温水さんのとぼけた表情に大きめな身振り手振りをつけたセリフ。
それを黙って聞く江波さんの表情の微かな動きから目を離せません。
やることなすこと全て的外れな甥に対する愛情込めた叔母のまなざし。
巧みな役者と演出・音楽で、素晴らしい舞台を見せていただきました。
温水さんのくたびれた服装が季節で細かく替わり、江波さんのネグリジェ姿はかわいらしく、帽子とコート・ショールのピンクがとても素敵でした。
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江波さんの存在感と美しさ。
ほとんど喋らないのに温水さんとの対話が成立していて、
お二人の醸し出す間がなんとも魅力的です。
暗転がたくさんあって最初は戸惑いましたが慣れてくると次に二人の間に漂う空気がどうなっているのか?楽しみになってきました。
静けさの中での温水さんのさり気ない動作一つ一つに細やかな心情を感じてこみ上げるものがありました。
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ミュージカル音楽、シャンソン等、場面場面の心情に上手く当てはまる選曲センスが愉しい作品でした。優しい男を演じたらピカイチの温水さんが演ずる、生い立ちの陰を引きずる男の切なさ!
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(比較的多い)暗転が気にならないばかりか、かえって芝居に浸れ、
暗転の度の音楽もジャズから始まり多種にわたり心地良かった。
一味違った二人芝居を満喫しました。
【稽古場レポート】
“女と女の対話劇”『ブレス・オブ・ライフ』に続いて登場する、ひとり暮らしの老女と中年男の奇妙な共同生活を描く注目の二人芝居のお稽古場へお邪魔してまいりました。
叔母:江波杏子さん、甥:温水洋一さん
―ものがたり―
一人暮らしの叔母から、何十年も音信不通だった甥のもとに「年齢(とし)だ、もうじき死ぬ。」との手紙が届く。取るものも取り敢えず、銀行の仕事を辞めて大急ぎで駆けつけた甥と叔母の奇妙な共同生活が始まる・・・。
率直な感想はさまざまな驚きに満ちた作品ということ。
“二人芝居”とひとくくりにしても、本当にそのスタイルはいろいろ。シリーズ2作目にしてますます二人芝居にはまりそうな取材班でした。
甥には
温水洋一さん。
ひと言発した瞬間、その声の響きでそこに登場人物の“日常”や“生活”が生まれるのです。そうやって作品世界に引き込む力強さがハンパないのです。
しかもこの甥っ子、なかなかくせ者で、かいがいしくお世話をしているかと思うと、
ときどきものすごい毒を放つのです(笑)。
その緩急もたまりません!
ひとことで言ってしまうと偏屈、大人だけど子供みたいな甥っ子
対する叔母には
江波杏子さん。
凛としたたたずまい、やわらかさ、時々見せる少女のような表情。深い人物造形に裏付けされた存在感です。
この作品、そのタイトルにドキリとした方も多いかと思いますが、驚くのはそれだけではございません。
実はこの二人芝居、温水さんと江波さんはほぼ出ずっぱりにもかかわらず、
その台詞のほとんどは温水さんのものなのです。
そしてそれを言葉は発さずに表情や態度で受ける江波さんの芝居、それも決して大きなリアクションではないのですが、
小さく静かな変化が絶妙な空気を作るのです。
言葉は交わさずとも、それはやはり“対話”なのです。ただ、彼女はこれまでどう生きてきたのか、その瞬間何を思ったのか、言葉で表現されることがない分、緻密な役作りが要求される役ですよね。
さらにこの作品は
構成もちょっとユニーク。
小さな景(スケッチのような)の積み重ねで構成され、ときにはワンフレーズ、ワンアクションで暗転なんてことも!
ノゾエ征爾さん(演出)
その戯曲を小気味よいリズムで展開させるのが
劇団「はえぎわ」主宰のノゾエ征爾さん(演出)。
ワンシーンずつ丁寧に積み上げてきます。
こうして取るものもとりあえず駆けつけ始まった共同生活はなんと一年以上にも及び、二人にも変化が・・・。
老い、死、孤独などをテーマに据えながら、それらをシニカルでユーモラスに描きつつ、時々ぐさりとブラックな毒が飛んでくる。これが結構身につまされたりして・・・。
さらにここでは明かせない、ぜひ劇場で味わっていただきたいさらなる驚きもございます。「二人芝居─対話する力─」、このシリーズのど真ん中を突く『ご臨終』。
この秋、大注目の作品です。
<稽古のワンシーン>取材班のお気に入りシーンをご紹介。
日常のスケッチには洗濯物を干すシーンも
どこに何を干すかなど演出家のノゾエさんと打ち合わせる真剣なやりとりが微笑ましく。
干し方が完璧でないところもある意味男らしい?!
そうそう、さきほどタイトルに触れましたが、実は原題は『Vigil(夜通しの看病)』、なるほどまさにその通りなのですが、そこを『ご臨終』という邦題をつけるあたりも面白いですね。
このシーン大好きです!さて、どんなシーンでしょう!!
舞台写真提供:新国立劇場
おけぴ取材班: chiaki(文・撮影) 監修:おけぴ管理人