2014/11/13 『正しい教室』井上芳雄さんインタビュー

井上芳雄(主演)×蓬莱竜太(作・演出)、旬の才能が挑む骨太なストレートプレイ!

  同窓会で暴露されていく過去の罪とは・・・
  「正しい」のは誰か・・・何が「正しい」のか・・・


井上芳雄さんといえば言わずと知れたミュージカル界のプリンスですが、こまつ座『組曲虐殺』新国立劇場『負傷者16人-SIXTEEN WOUNDED-』などストレートプレイ作品にも意欲的にご出演されています。
作・演出はこれまでにもPARCO劇場にて上演された『TRIANGLE』シリーズ(演出は宮田慶子さん)でもタッグを組んだモダンスイマーズの蓬莱竜太さん。
2015年注目の舞台『正しい教室』、主演の井上芳雄さんにお話をうかがいました。



井上芳雄さん


11月某日、メインビジュアル撮影が行われたスタジオにてインタビューを行いました。井上さんはミュージカル『モーツァルト!』昼公演を終えての撮影。まずはやはりこの話題から。

-ファイナルヴォルフガングとなる『モーツァルト!』、なんだかこれで見納めというのがもったいないほどの完成度です。

井上)
そう言われているうちにやめるのが一番いいかと、狙い通りです(笑)
別に「完成させよう」とは思っていませんが、今自分が一番やりたい形ができている気がします。中身も外側も、つまり年齢も気持ちも技術的にもちょうどいいところでファイナルを迎えられるのかなと感じています。

-まだファイナル公演のさみしさを感じることはないですか。

井上)
今はただ一回一回「これが千穐楽でもいい」という思いで舞台に立っています。
最後まで体力、精神力が持つか、その方が心配です(笑)。

-観るたびに感じますが、この役は並々ならぬ精神力が必要な役ですよね。






井上)
最後死ぬところ、血が一滴も残っていないところまで行くには余裕をもっては終われないんです。どうしてもぐったりしてしまいます。
まだ数回演じたところですが、毎回そうですね。濃いというか。

-この作品ではヴォルフガングに常に寄り添う音楽の才能の化身アマデの存在も大きいですよね。

井上)
最後は共に寄り添うように終わるのですが、そこまでは対立するところも多いので、今回も新しい3人のアマデがいますが、僕はあんまり仲良くしないようにしているんです。子供は好きなんですけど。
『シェルブールの雨傘』などではある程度仲良くなったほうがやりやすいのですが、アマデの子たちとは仲良くなり過ぎないようにしています。
もちろん、しゃべらないとかではないですけど(笑)。ある程度の緊張感のある関係のほうがいいのかなと思っています。これはあくまでも僕の場合はですが。

-というと育三郎さんはちょっと違う?

井上)
育三郎は結構一緒にいたり、コミュニケーションとったりしていると思います。
もちろんそれはどちらが良いとかじゃなくて、それぞれあっていいと思います。
小池(修一郎)先生には、「もっとアマデと話さないとアマデがお前を怖がっている」と言われますが、それぐらいでいいんじゃないかとも思いますし。

僕はあの子たちのお父さんくらいの年齢だと思いますからね(笑)。実際にお父さんがおいくつか知らないですけど、まぁありうる話なんですよね・・・。

-日本初演から12年、そういうことにもなってくるんですね(笑)。初日カーテンコールでは小池さんと12年越しのハグもされましたね。





井上)
まあ流れでそうなりました(笑)。
じっくり話したわけではないですが「すごく立派になったなお前も」と言ってくださっているので、皮肉半分にしても多少はそう思ってくださっているんじゃないかと(笑)。それこそ父親のように見守ってくださっていますからね。

-もしかしたら、井上さん以上にファイナルヴォルフガングへのさみしさを感じていらっしゃるかもしれませんね。

井上)
僕が自分の人生、キャリアの中で頑張ってきた12年と、小池先生がこの子にやらせてみようと思い、教えながらこうしてやれるようになってきた12年。その思いは全然違うところにあり、もしかしたら“演出家として自らの思いを当時右も左もわからなかった役者に託し、育てる” そちらのほうが重みのあることなのかもしれません。僕はもう必死でやっているだけでしたから。

-その12年の集大成ともいえる『モーツァルト!』、千穐楽まで駆け抜けてください。

さて、ここからはいよいよ本題の『正しい教室』についてうかがいますが、まずは蓬莱さんとのタッグ、井上さんからのラブコールということですが。


井上)
ずっと同世代の劇作家・演出家である蓬莱さんとやりたいと思っていました。
『TRIANGLE』シリーズはショー的要素が強かったので、一度、蓬莱さんの脚本、演出でストレートプレイに取り組んでみたいと思っていました。
でも、蓬莱さんは「本当にそう思っているのか、井上君の気持ちを聞きたい!」とすごく疑っていらっしゃったので(笑)、直接会って「今やる意味のあるもの、一過性で終わることなく残るような作品を作る意気込みで一緒に仕事をしたい」と伝えました。

-その思いが実を結んだものが『正しい教室』なのですね。
中学の同窓会で過去の罪が暴露されていくというストーリーとのことですが。


井上)
この作品は以前蓬莱さんが書かれたものがもとになっていて、今回のバージョンは今回のキャストに合わせて書き直してもらう形になったんです。

-井上さんは「かつて学級委員だった男」ということですが、井上さんのキャラクターを大いに反映したものになりそうでしょうか。

井上)
学級委員どころか生徒会長でしたしね(笑)。
でも、じゃあ僕のイメージそのままかというと、それだけでは終わらないでしょう。
蓬莱さんの脚本の面白さのひとつはキャラクターを裏切るところにあると思っています。
『TRIANGLE』の時もそうでしたが、これまでやったことのないものを求められるんです。
きっと「委員長だった男」も(僕に)似ているところもあればそうでないところも出てくるでしょう。物語が進むにつれて出てくる闇の部分だったり、かつての・・・どんな事実が出てくるのか、僕自身も楽しみです。

-サスペンスタッチというのも楽しみです。改めてうかがいますが、井上さんが思う蓬莱作品の魅力とは。





井上)
前のバージョンの台本を読んで改めて感じたことですが、やっぱり蓬莱さんの作品の大きな魅力は巧みなストーリーテリングにあると思います。
「あれ、どうなるのどうなるの」と思いながら夢中になって読める台本なんです。
台詞は日常会話の言葉で設定も突飛でない、とてもリアルな話なのに次第に思っていたのと違うほうへと小さなどんでん返しを繰り返しながら進んでいき、最後には「正しさってなんだろう」、「誰が正しかったのだろう」というところへ行きつく。価値観が一つじゃないところがいいなって思います。

この脚本でも、登場人物たちは過去のことを話しながら、結局は“今どのように生きているか”が浮き彫りになってくるんです。それは過去の誰かのせいなのか、自分のせいなのか。
どこに原因を見つけるのか、そこはすごく身につまされる話だなと思います。

-今を生きる我々に響く“同時代性”を感じる作風も魅力ですよね。

井上)
はい。今はある出来事が正しいのかそうでないのか、白黒付けにくい時代だと思うんです。
でも、そこで考えることを放棄してはいけない。蓬莱さんの作品はそう終わることが多い気がして、僕はそこに共感するんですよね。結論をバンと出さない、ハッピーエンドなのかそうでないのかそれすらわからないのも魅力かもしれません。
ほかの作品ですが「とにかく考え続けよう、僕らは考え続けるしかない」というような台詞があって、その台詞も非常に印象的でした。

いや、もちろんハッピーエンドで終わるミュージカルの盛り上がりもいいんですけど(笑)。
たとえば『モーツァルト!』もやっぱり投げかけで終わりますよね。あの作品は「彼が幸せだったでしょ、不幸だったでしょ」とかそういうことを言いたいのではなく、「じゃあ、あなたの運命はどうなの」と投げかけて終わる、そういうのいいなと思うんです。
特にストレートプレイをやるときには一筋縄ではいかない、終わった後2日とか3日とか考え続けるようなものをやりたいと思っています。

-蓬莱さんが書かれる日常会話の台詞もミュージカルとはだいぶ違いますよね。

井上)
覚えるのは難しいです。「・・・」とか「ああ」とか「はぁ」とかミュージカルの台本ではあまり見かけないようなニュアンス台詞が多くて(笑)。
でもそれだからこその日常感が出るんですよね。

-続いては、PARCO劇場についてうかがいます。これまでにも数作ご経験されていますが、PARCO劇場の思い出は。

井上)
初めてのストレートプレイ『バタフライはフリー』(2002年)がPARCO劇場だったんですよね。演出は小池先生だったのですが、当時の僕はお芝居が全然できなくて稽古に行くのが本当に嫌でした、パンツ一丁にさせられたし(笑)。いまでも真っ先にその時の記憶が蘇ります。
でも、PARCO劇場の空間は大好きです。
お客様が近くて目線もほぼ一緒、『TRIANGLE』第一作ではルームシェアしているのを覗き見られているような感覚で、なんだか特別な空間です。
こうして何年か毎に立たせてもらえるのはとてもうれしく、そして名誉なことだと思っています。

-初ストレートプレイがPARCO劇場なのですね!その後、今ではストレートプレイでも実力が認められている井上さんですが、ミュージカル作品でも引っ張りだこにもかかわらずストレートプレイにも挑戦し続けるのはなぜなのでしょう。





井上)
僕は元々芝居経験がなかったので、ミュージカルをやるうえでもそのスキルを身につけることは必要だと思っていました。そうなるとお芝居だけをやるべきだということで蜷川さんのところの門を叩いたりしてきたのですが、お芝居や歌ってある種スポーツ的というか、しばらくやらないと必要な筋肉や感覚がなまってしまうんです。

大きな劇場でお芝居をしていて、急に小さな空間での濃密なお芝居となると毎回どうやるかわからなくなる。その逆もしかりで、僕自身、映像も含めそれぞれのジャンルに合わせたお芝居を使い分けるほどの術がまだないんです。
いろんなジャンルを行き来しながら確認していく、それを繰り返している状態です。

ミュージカルだけをやっていると「自分、正面ばっかり見てお芝居していないかな」と不安になってくるときがあるんです。
ミュージカルではそれが必要とされるんですけど(笑)。
そういう時ほど一切正面を向かなくていい芝居をやってみたい、やらなきゃいけないという義務感にも似た意識が湧いてきます。出来なくなる恐怖感って言ってもいいくらいに。
これからも常にその意識は持っていたいと思います。

-元々ミュージカル俳優でありながらストレートプレイにも出る、最近では珍しいことではありませんが井上さんはその先駆者のように見えます。ミュージカルとストレートプレイの両方を経験して一番感じることはなんですか。

井上)
確かに僕がストレートプレイに出始めた当時は、なんでそんなことするんだと言われたり、実際にその現場へ行ったらだれも自分を知らなくて「井上君はミュージカルに出てるんだ」とちょっと違う目で見られたりしましたね(笑)。
今ではそうでもないかもしれませんが、ジャンルの違いを強く感じました。

そしてそこで出会ったのは稽古期間中「この台詞をどう言うか」をずっと考えている人たちです。
ミュージカルでもそれは考えますが、同時に「どう歌うか」、「どう踊るか」を考えている僕たちでは単純に比較しても3倍努力しないとストレートプレイの人たちの芝居にはかなわないんです。
それは毎回強く感じることなので、後輩にも聞かれれば言います。「語弊があるかもしれないけどミュージカルだけやっていてもお芝居がすごくうまくなるのは難しいと思う」と。
ミュージカルはほかにやらなくてはいけないことが多いですから。

-演者側同様に観客側にもジャンルの隔たりってあるように感じます。やはり普段ミュージカルは観るけれどストレートプレイはちょっと・・・という方もいらっしゃると思いますし。





井上)
僕が先駆者かはわかりませんが、結構大々的に「ミュージカルもストレートプレイもやっていますよ」と言って、実際そういう活動をしているつもりです(笑)。
最近、確かに両方観てくださる方も増えた一方で僕を応援してくださる方の中でもやっぱりミュージカルしか観ないという方もいらっしゃる。それも悪くないですし、もちろん自由なのですが、どうしたらいいのかなーというのは正直思います。

ミュージカルファン、宝塚もそうだと思いますが、1つのものにハマっちゃうわけなんですよね。そこでのセオリーというかある種の“村的な不文律”で生きるのが好きなんじゃないですかね。「初日はこうで、今日あれだわ」「あの人は○○よね」って、それは僕自身がそうだから分かるんですけど(笑)。

その人たちに向かって「僕、お芝居をやるので観に来ませんか」といっても敷居が高いのはわかるんです。でも、誰よりもその村の住人であった僕が思うに、その村のことを楽しみ、本当に評価するにはやはりほかの村にも行ってみることも必要なのです。
娯楽だからそんなことをする必要はないのかもしれませんが、お芝居を観ることでミュージカルをまた新しい角度から観ることができ、新しい発見があります。
それによって総合エンタテインメントとしてのミュージカルをより深く理解できるのではないかと思うのです。

僕キッカケでも、なんなら浦井健治キッカケでもいいので(笑)、新国立劇場でPARCO劇場でお芝居やっているらしい。そこで一度村を出てみる!
そこで好き嫌いを判断してもらえばいいんです。
でも、きっと何かがある。また、その村にはその村の素晴らしい人たちがいますしね。
もちろん逆もまたしかり、ストレートプレイ好きの方にミュージカルも観ていただきたいです。
僕という共通項があって、そうやってさまざまなジャンルがクロスオーバーしていくとうれしいなと思います。

-実際に井上さんキッカケで観劇の楽しみの幅が広がった方は多くいらっしゃると思います。とても頼もしいお話をありがとうございました。これからの活動からも目が離せませんね!




【井上芳雄さんの今後の活動】
舞台:ミュージカル『モーツァルト!』 2014年11月-12月@帝国劇場、2015年1月@梅田芸術劇場
CD:ディズニー・カヴァー・アルバム『井上芳雄・ミーツ・ディズニー ~プラウド・オブ・ユア・ボーイ~』12月17日リリース
TV:NHK『ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート2015』スタジオゲスト出演 2015年1月1日(生放送)
舞台:『SHOW-ism Ⅷ 【ユイット】』2015年2月@シアタークリエ
コンサート:『井上芳雄 シングス・ディズニー ~ワン・ナイト・ドリーム!』2015年2月18日@東京国際フォーラム・ホールA
舞台:『正しい教室』2015年3月21・22日@Zeppブルーシアター六本木/4月@PARCO劇場




【井上芳雄さんプロフィール】
1979年7月6日生まれ  福岡県出身  身長 181cm
東京藝術大学音楽学部声楽科 卒業
大学在学中の2000年に、ミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役で鮮烈なデビューを果たす。 以降、その高い歌唱力と存在感で数々のミュージカルや舞台を中心に活躍。井上ひさしの遺作となった「組曲虐殺」では、主役の小林多喜二を演じる等、積極的にストレートプレイにも挑戦している。
一方で、CD制作、コンサート等の音楽活動も意欲的に行い、近年ではテレビ・映画等映像にも活動の幅を広げ俳優として高い評価を得る。第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞(演劇部門)他多数受賞。

【公演情報】
『正しい教室』
2015年4月2日 (木) ~2015年4月19日 (日) @PARCO劇場

2015年3月21日 (土) ~2015年3月22日 (日) @Zeppブルーシアター六本木
2015年3月24日(火) @名鉄ホール
2015年3月26日(木) @福岡国際会議場メインホール
2015年3月28日(土)@森ノ宮ピロティホール

<スタッフ>
作・演出:蓬莱竜太

<キャスト>
井上芳雄 鈴木砂羽 前田亜季 高橋努 岩瀬亮 有川マコト 小島聖/近藤正臣

公演HPはこちらから


おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)、おけぴ管理人(撮影)

おすすめ PICK UP

おけぴ観劇会御礼♪ ミュージカル『レディベス』七人の騎士特集!

★日本初上陸★ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』浦井健治さん&城田優さん取材会レポート

新国立劇場2017/2018シーズン オープニング・バレエ公演【新制作】『くるみ割り人形』主役リハーサル特別公開レポート

【公演NEWS】『TERROR テロ』シーラッハ(作)×森新太郎(演出)×橋爪功…そして観客のあなた

ミュージカル『HEADS UP !』製作発表レポート

『成河トークイベント』レポート

ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』開幕レポート【感想コメント到着♪】

【公演NEWS】新国立劇場 『トロイ戦争は起こらない』開幕!

『黒蜥蜴』製作発表レポート~ランウェイ・パフォーマンス「三島由紀夫に捧げるオマージュ」&会見~

ミュージカル『レディ・ベス』小池修一郎さん取材会レポート

『誰か席に着いて』田辺誠一さん、木村佳乃さん、片桐仁さん、倉科カナさん座談会レポート

『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』おけぴ観劇会 開催決定!

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』製作発表レポート

おけぴスタッフTwitter

おけぴネット チケット掲示板

おけぴネット 託しますサービス

ページトップへ
おけぴ会員のご案内(登録無料) プレミアム会員のご案内(540円/月)