2015/02/23 こまつ座&世田谷パブリックシアター『藪原検校』開幕レポート

【舞台写真掲載中、まっさらな気持ちでのご観劇をご希望のみなさまはお気を付けください!】


劇作家井上ひさしさんが生み出した稀代の悪党・二代目藪原検校の一代記!
こまつ座と世田谷パブリックシアターの共同制作作品『藪原検校』が開幕です。
(稽古場レポートはこちらから)


野村萬斎さん

東北生まれの盲目の少年・杉の市が、悪事の限りを尽くして盲人社会の最高位、検校になるまでを描いた悪漢物語(ピカレスク)の決定版!

はじまりは “闇” 、ときに逆光が影絵のように人々を映し出し、ときに目をそむけたくなるほどの光が客席を照らす。自然と視覚や聴覚への意識が高まり、見えるって何?何を見る?さまざまな投げかけが続く…。

『藪原検校』、こまつ座&世田谷パブリックシアターとしては2012年以来の再演舞台が上演中です!


左から:春海四方さん 中越典子さん 野村萬斎さん

-ものがたり-
盲目で生まれた杉の市は、盗みや脅しは当たり前、ついには人を殺めてしまう。
殺し殺してまた殺し、その手を血に塗れさせ、悪の限りを尽くしながら、己の身と金の力を頼りに、盲人社会の最高位である検校にまで登りつめる。東北の地から江戸へと流れてきた少年は、運命の大きな流れに流される――。二代目藪原検校の、その悪行三昧、闇の世界の一代記。



ここからはみなさまから寄せられた感想を舞台写真を交えながらご紹介いたします。


手前:明星真由美さん 奥:野村萬斎さん

井上ひさしさんの名作です。シンプルな舞台装置で、演じる人の台詞、言葉がきっちりと胸に届きました。
野村萬斎さんの切れのいい台詞と、身のこなしは秀逸でした。確かに当代一の藪原検校です。悪党のしたたかさの裏の哀愁も感じました。そして井上脚本の言葉の面白さと重みがずっしりと響きました…。
本当の人間の「悪」とは何なんだろう~。



左から:中越典子さん 野村萬斎さん

全体に善と悪など対極にある事象のコントラストを観客に提示して“さぁどう思う”と問われ続ける感じの流れでした。
劇中に出てきた鋭利な刃物で抉られる感覚に陥りました。
江戸のお話なのに、悪の祝祭というか……ギリシャ悲劇を見て感じる壮大さ、カタルシスを感じさせてくれる舞台でした。
萬斎さんも狂言の型を自由に使われていて、“あ、これは弱法師の型かな”“月見座頭の型の応用かな”など見ていて面白かったです。
中越 典子さんは大変セクシーで前半・後半で全く別ものというか。本当に上手でした。
それから辻萬長さん。“塙保己一がそこにいる”感覚になりました。声の響きでこちらを制されるというか。
もっとこまつ座さんの作品を見てみたいと思いました。



左から:辻萬長さん 野村萬斎さん 山西惇さん

狂言で鍛えた達人技の発声と体のキレが圧巻なのは言うまでもありませんが、
ギターも、三味線や琴の音色まで表現されていて、感動しました。
シルエットを作る、観客に向けての強烈な照明や、大川に人が流される表現も、
工夫があって、素晴らしいものでした。



右端:山西惇さん

千葉伸彦さんの奏でるギターに、開幕から惹きつけられました。
津軽の厳しい冬の情景などが、目ではなく耳から入り込んでくる感覚。
役者で印象的だったのは狂言回しの山西惇さん。独特のリズム感を持つせりふの味を損なわずに長丁場を持たせられるのは、この方の持つ力の凄さを見る思いでした。



左から:中越典子さん 野村萬斎さん

検校が盲人の位であることを初めて知りました。山西さんの語りがとても面白く、
お江戸の名勝や町並みが本当に目に浮かぶようでした。千葉さんのギターも時に三味線、
時に琵琶の音のように聞こえてとても情緒があり素敵でした。
そのなかにあって萬斎さんの反省のない、あっけらかんとした悪っぷりや、ふと見せる盲人の物悲しさは圧巻でした。藪原検校は江戸の、時の違和感のようなものだったのではないかなと感じました。



手前左から:春海四方さん 野村萬斎さん

野村萬斎さんの疾走感あふれる杉の市は、大悪党でありながら生き生きとして魅力的。
なかでも劇中で演じられる余興の早物語「白黒餅合戦囲炉裏ヶ浦の戦い」は実に楽しく、
拍手が巻き起こる。高橋長英版、古田新太版、萬斎初演版と「藪原検校」を35年の間に4回観ることができ、偉大な戯曲の生命力もつよく感じることができた。
井上ひさし先生って凄いなぁ! 演劇っていいなぁ!



奥 左から:辻萬長さん 野村萬斎さん 山西惇さん 酒向芳さん
手前 左から:大高明良さん 春海四方さん

観劇後は片手に劇中のエネルギーの渦、生命力の凄まじさに身を置くしあわせを味わう、まさに観劇感激体験の余韻を握りしめ、もういっぽうの手には井上ひさしさんから現代を生きる私たちに投げかけられた問い。こちらはその重さにしっかりと握りしめることを一瞬躊躇しつつ、問いかけはしっかりと受け止め考え続けなくてはと思う。

エンターテインメント性と社会へのメッセージ、力強い井上戯曲を演出の栗山民也さんのもと素晴らしき俳優さん、スタッフさんで立ち上げた必見の舞台です。


【公演情報】
こまつ座&世田谷パブリックシアター
『藪原検校』
2015年02月23日(月)~2015年03月20日(金)

<スタッフ>
作:井上ひさし
演出:栗山民也

<キャスト>
野村萬斎/中越典子/山西惇/大鷹明良/酒向芳/春海四方/
明星真由美/家塚敦子/山﨑 薫/辻萬長/千葉伸彦(ギター奏者)

世田谷パブリックシアター 公式サイト
こまつ座 公式サイト
『藪原検校』公演公式Twitter

写真提供:こまつ座/世田谷パブリックシアター
撮影:谷古宇正彦(2015年世田谷パブリックシアター )

おけぴ取材班:chiaki(編集) 監修:おけぴ管理人

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