【過去ログ】2012/04/03 青年座セレクション「国境のある家」稽古場レポ&インタビュー


2012年4月3日(火)
おけぴ会員稽古場レポ隊企画
青年座セレクション『国境のある家』稽古場レポ&大家仁志さん・黒岩亮さんインタビュー


写真左:大家仁志さん、右:津嘉山正種さん


 今の時代を生きる劇作家の作品にこだわり活動を続ける名門劇団・青年座。過去に上演された秀作を掘り起こす“青年座セレクション”シリーズの第4回公演「国境のある家」の稽古場へ、おけぴ管理人&抽選で選ばれたおけぴ会員レポ隊5名の皆さんとお邪魔してまいりました!

 代々木公園駅からほど近く、劇団の本部や稽古場も併設された青年座劇場は、まさに「劇団の心臓部」。まずは2階にある会議室(資料室)にて、今回の制作担当スタッフのSさんからお話を聞くことが出来ました。





レポ隊) 青年座について教えて下さい。

S) 創立以来「その時代を生きる作家が書き下ろした新作を上演する」ということに、こだわっている劇団です。今でもマキノノゾミさん、中島淳彦さん、鈴木聡さん、永井愛さん…と沢山の方に新作を書き下ろしていただいています。海外の戯曲を扱うことはとても少なくて、特に古典定番のシェイクスピアとかチェーホフとかは全く上演していないですね。研修所の入所試験にも筆記試験がないんですよ。演劇史やシェイクスピアに詳しいということよりも「フィジカル面」や、いま実際に生きているところでどんな興味をもっているか、ということを重視する劇団なんです。

レポ隊) 「国境のある家」とは…?

S) 今回取り上げる八木柊一郎さんの「国境のある家」も、そういう意味では80年代当時の時代をそのまま切り取った作品です。神奈川県逗子市の米軍住宅問題と市長選挙を題材に、いろいろな人たちの台詞を通して、国家論、憲法、人種問題、日米安保問題、それから性の問題…と盛りだくさんのテーマが語られます。いま読んでみても、よくこんなものをやっていたよなあ、と思いますよね。こんな作品を「新劇」と言っていたなんて(笑)。八木柊一郎さんという方は、家族を描いている作品が多いんですが、
それをベースにしながら社会問題をテーマとして取り扱っているんですね。昭和という時代にとてもこだわっていた劇作家です。





 青年座の歴史がぎっしりとつまった部屋で、貴重なお話をききながら、少しずつ緊張がほぐれてきたレポ隊メンバー。この後、青年座劇場の中を案内していただきました。

 俳優さんの名前が書かれたロッカーや、小道具の収納スペース、調音室など、劇場の裏側は発見がいっぱい!(以前に観劇した作品の小道具を見つけてテンションの上がるメンバーも!)

 公演が行われる劇場内では、本番と同じセットが組まれた舞台にも上がらせていただきました。今回のセットは「八百屋舞台」といって、舞台奥に向かって傾斜がついている形式。客席から見ていると気がつかないほどの傾斜ですが、実際に舞台上に立ってみるとこれがけっこう“斜め”です!
 
 この上で演技をするのかー、とちょっぴり出演者気分を味わったレポ隊メンバー。舞台袖にはってある香盤表(出番表)や、小道具などにも興味津々です。

(衣裳のデザイン画にも細かい指定が書き込まれています)





劇場内をじっくりと見学させていただいた後、今回の出演者のお一人、大家仁志さんにインタビューをさせていただきました。


青年座の主要メンバーのおひとり・大家仁志さん 写真右は演出の黒岩亮さん


レポ隊) 今回演じる役どころについて教えて下さい。

大家さん) タイトル通り“国境線の上にいる世代”として描かれている役です。なんというか、とても中途半端な世代(笑)。
終戦の記憶は持っていて、経済的にはものすごく成長をし始めていた時代に自動車メーカーに勤めていて、どんどん外国に車を売って、それでいいじゃないかと考えている。そんな役ですね。劇中では様々な問題を家族から突き付けられます。25年前に書かれた芝居ですが、今も続く米軍基地問題であるとか、未だに何一つ解決していない問題が描かれています。今の原発の問題とも通じるようなテーマもあって、25年前よりさらにシビアになっている日本の状況が見えてくるかもしれないですね。


レポ隊) 役作りの方法は? 


大家さん) とにかく経済的に豊かになることを目指して生きてきた、仕事が生きがいという役ですね。でも実際には・・僕たち役者っていうものは経済活動とはかなり遠いところにいる人間ですから(笑)。本を読んだり、映画を見たりして「サラリーマンってこんなに大変なのか!」と感じたり、想像したりして膨らませて行きます。実際の自分は強く出るような役柄が得意なんだけれど、この役は自分の主張よりも相手の言葉を受けて、嫌われないように・・という姑息なところがある。自分の中にも「つい人に合わせてしまう」とか、そんな部分もあるので(笑)、そういう小さな共通点を見つけて膨らませていきます。

レポ隊) 稽古場で感じる喜びや苦労する点などを教えて下さい

大家さん) 本番まであと3週間を切っていますが、最終的にこの芝居がどのようになって行くのか、どこを目指すのかは僕自身まだわかっていないんです。
(この言葉に「ええっ!」と驚くレポ隊一同)
芝居の「正解」ってないですよね。相手役の出方によって、こちらも強く出たり、ちょっと引いてみたり・・。打ち合わせをして演技をするわけではないので、今日の稽古もどうなるかわかりません。ただそうやって役と対峙するために、毎日2時間くらい全部の台詞の練習はします。ところが稽古場へ行くと相手役が意外な出方をしたりしてね(笑)。そうするとこっちも「じゃあ、こうやっちゃうぞ!」って、最終的に思わぬところに行き着いちゃったりする(笑)。音楽のセッション、アドリブに近いけれど、戯曲と言う楽譜はちゃんとあるんです。演出家が指揮者で。それがお芝居、稽古場の醍醐味ですね。






演出の黒岩亮さんにもインタビューさせていただきました!



青年座演出部の黒岩亮さん

レポ隊) 演出家は指揮者だというコメントがありましたが。

黒岩さん) そうですね。芝居は音楽に似ていると思います。台本と言う譜面があって、役者がいろんな楽器を持って、いろんな音を出してくれる。今回の作品は音楽でいえばまさにクラシックですよね。同じクラシック音楽でもプレイヤーとコンダクターによって様々な解釈があって例えばカラヤンと小澤征爾では違いますよね。この作品も初演とはずいぶん違ってきていると思います。青年座で「再演」というのは珍しいのですが、先輩たちがかつて上演した作品を掘り下げて行くという作業はとても面白いですね。

レポ隊) 演じる人が変わると作品も変わってくるということでしょうか?

黒岩さん) もちろん楽器が違いますからね(笑)、同じ音色にはならない。そこが演劇の面白いところですよ。

 なるほど!と深く頷くレポ隊一同。
 レポ隊参加者Kさんはお2人の話を聞いてこんな感想を寄せてくれました。

「印象的だったのは、どういう作品になるか今の時点ではまだ分からないというお話。私はもっと、ゴールイメージをそれぞれが持っていて、頭で考えてそれを話し合うような想像をしていたが、実際はもっと感覚的なもの、というより生の人間関係に近いものなのだろうと感じた。ジャズのアドリブなんかとたぶん同じ、と大家さんは言う。それぞれ自分の楽器(セリフ)は自分で練習してくる、譜面(台本)もある。でも皆が集まって演奏したら何が起こるか分からない。そんなことを聞きながら、自分が舞台に求めているのもまさに「生」の感覚だということを考えていた。確かにレールは敷かれている、そこを走る電車が大きく脱線することはない、でもその電車の中で何が起こるかは、台本には書いていない。演出家や、実際に体を動かす役者達、そしておそらく客席も含めて、今まさに生きている生身の人間が、つくっていくもの。その一期一会の感覚を味わいたくて自分は劇場に足を運ぶ」(レポ隊参加者Kさんの感想より)

 たっぷりとお話をきいた後は、いよいよ稽古場へ潜入です!

 本番と同じセットが組まれた劇場で稽古が始まります。稽古の様子は、おけぴレポ隊参加者のみなさんのブログでも詳しく紹介されていますのでぜひご覧下さいませ。

国境のある家 稽古場レポ」(dachoさん)

青年座の稽古見学に行く機会があって、行ってきました!!」(どんぐりマミーさん)


ベテラン山本与志恵さんと津嘉山正種さん。お2人の演じる老夫婦、正気なのかどうなのか紙一重の演技に引き込まれました!



 まるで舞台上でディベートをおこなっているかのような、それぞれの主張がぶつかり合う台詞の応酬の中に、なぜかクスッとわらってしまうようなユーモアが混じっているのも見どころのひとつです。

 劇作家・八木柊一郎さんが家族を通して描いた「日本」の姿。初演から25年を経ても色あせず、私たちの心に何かを語りかけてくる名作です。今の時代を生きる作品を上演し続ける劇団・青年座。その財産とも言える演目を劇場で見ることの出来るチャンスをお見逃しなく!

青年座セレクションVol.4
「国境のある家」
2012年4月21日(土)~29日(日)青年座劇場にて上演

<ストーリー>
現在(いま)なお続く米軍基地問題を背景に日本の戦後民主主義の本質を問う!
1980年代、神奈川県逗子市。
アメリカの接収地となった池子の森を米軍人の住宅地にするという問題を巡って、住民は賛成派と反対派に割れていた。自動車メーカーに勤める夫は、政治には無関心を装い、趣味のオーディオに没頭し、その妻は、米軍基地建設反対派のリーダーの一人として反対運動に奔走している。夫は妻の行動を干渉せず、妻も夫に同調を求めず、こうして夫婦としての体裁は保たれていた。
OLの娘と浪人中の息子も日々の生活を平穏に過ごしている…はずだった。ある日、ある告白をきっかけに、この家族の本当の姿が見えてくる。
徳富蘆花の研究家で自分を蘆花だと思い込んでいる明治生まれの祖父。
接収地の元地主の娘で、その土地に足しげく通う祖母。
アメリカに住みたいという娘。そして「秘密」をもつ息子。
三世代が同居する家族の中で平和の均衡が崩れ、国境線が引かれていく。

最後に大家さん・津嘉山さん&おけぴレポ隊で記念撮影♪





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