今まで、座付き作家であった井上ひさしさんの作品を上演し続けてきたこまつ座ですが、
井上ひさしさん没後5年、待望の新作戯曲が登場します!
注目の作・演出は東憲司(ひがしけんじ)さん。
劇団桟敷童子主宰で、
2012年度の紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀演出家賞、鶴屋南北戯曲賞を受賞された
演劇界注目の異才のお一人です。
その東さんが、井上ひさしさんの原点ともいえる二つの小説を素材に書き下ろし、
音楽は宮川彬良さんが作曲、実力派キャスト7名でおくる、
新しい試みのこまつ座第109回公演 東憲司版「戯作者銘々伝」!
そのお稽古場にお伺いしてきました。
後列左から相島一之さん、山路和弘さん、玉置玲央さん、阿南健治さん
前列左から作・演出の東憲司さん、新妻聖子さん、北村有起哉さん、西岡徳馬さん、こまつ座代表の井上麻矢さん
“戯作(げさく)”って聞いたことがあるようでない言葉ですよね。
江戸時代、黄表紙(きびょうし)や洒落本といった娯楽性の高い大衆小説を総称してそう呼ぶそうです。
戯作の著者“戯作者”たちは、江戸幕府から弾圧されながらも、笑いに命をかけていました。
そんな実在の戯作者たちを描いた井上ひさしさんの小説「戯作者銘々伝」と
その中に登場する戯作者・山東京伝と花火職人を描いた物語「京伝店の烟草入れ」が
今回の舞台の素材になっています。
お稽古場で拝見した一幕冒頭は、
山東京伝役・北村有起哉さん、版元・蔦屋重三郎役の西岡德馬さん、
このお二人が三途の川で、“久しぶりに”出会う場面からはじまります。
西岡德馬さん、北村有起哉さん
にぎにぎしい音楽と共に、
それはまーよくしゃべる戯作者の亡霊たちが次々とあらわれて、
生きてた時は…と懐かしみながら…
左から相島一之さん、阿南健治さん、玉置玲央さん
相島さんと阿南さんは東京サンシャインボーイズ以来の共演。玉置さんは今回最年少!
はじまりました冥土での川開き!
“一生懸命やるんですけど、ちゃらっとやってるよって態度で最後までいられたら”と話されてた山路和弘さん
ドーン!と花火があがる中、
気持よく響き渡る新妻聖子さんの声♪
先妻と後妻という山東京伝の二人の妻を演じる新妻聖子さん
お!軽快な音楽がながれてきました!
ちょーきーーちょーきちょきちょきーーー♪(新妻さん)
ちょーきーーちょーきちょきちょきーーー♪(全員)
三途の川をちょき舟で~♪
新妻ぶしっ!な新妻聖子さんの歌声がとっても快感です!
(劇中歌も何曲かあるようなのでどうぞお楽しみに!)
えどん、えどんどんどんどんどんどん♪
っとそこに無念の風が吹き荒む!
戯作の魂を鎮めてやらねば!
さぁ、口上!
キンッ!
さぁ物語はここから!!
というところでお稽古場見学終了~
キャストさん達のいい声の爽快な台詞まわしが
軽快な音楽とも相まって、
テンポ感がとても気持ちよく、つかみナイスなオープニングでした♪
ちなみにこの劇中の音楽を作曲したのは宮川彬良さん。
作・演出の東さん、最初に歌ができてきた時は、
江戸から遠くはなれた意表をつく音楽と感じたそうですが、
今は逆にそれを利用してとても作品とマッチした音楽になってるとのこと。
実際お稽古冒頭で拝見した楽曲は、とっても軽快で作品のイメージにぴったりでした!
今回、作・演出の東憲司さんは、戯曲を書くにあたり、山形県「遅筆堂文庫」にこもって、
井上ひさしさんの膨大な資料と蔵書に圧倒されながら、
井上さんの言葉、その世界観、過去の作品から息づくメッセージを埋め込む作業に没頭し、
今までで一番苦労して時間のかかった戯曲になったそうです。
こまつ座代表・井上麻矢さんと作・演出の東憲司さん
こまつ座代表の井上麻矢さんも、
「演劇というものは、コンクリートで作られるものではなく、
海のようにどんどん広がっていくもの。根っこは腐ることはなく、
根っこから木がすくすく育っていくような広がりをみせることはあるだろう」
という井上ひさしさんの言葉を紹介され、これからも新しい試みに
果敢にチャレンジしていきたい、それが父井上ひさしさんの遺言でもあると
話されていたのがとても印象的でした。
「むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに」
滑稽に笑い飛ばして、庶民の代表である戯作者たちが権力を批判し戦っていく
そんな井上ひさしさんのメッセージが受け継がれた新作公演です。ご期待下さい!!
今年は「言葉」「憲法」「庶民」をキーワードに展開するこまつ座。
夏には「父と暮せば」(広島の原爆から3年後を描いた親子の物語)が上演されますが、
井上ひさしさんが長崎を舞台にして書きたいとおっしゃっていた「母と暮せば」が、
この冬、山田洋次監督で映画化、上映されます。こちらもどうぞお楽しみに!
冒頭の場面を舞台袖から見つめるのは紅一点・新妻聖子さん♪
おけぴ取材班:おけぴ管理人