谷崎潤一郎没後50年のメモリアルイヤーに谷崎が唯一描いた喜劇作品を新メンバーで明治座初上演!
笑いと涙の『台所太平記』、賑やかな製作発表の様子をレポートいたします。
谷崎潤一郎といえば『春琴抄』『細雪』などがまず思い浮かぶものですから、こちらの作品の上演を知った時、「喜劇?」「谷崎?」思わず資料を二度見してしました。
そんな谷崎潤一郎の生涯最初で最後の喜劇作品は自身谷崎家をモデルにしたといわれる“お手伝いさん奮闘記”!
文豪ならではの鋭い観察力と表現で描いたユーモアあり、愛情あり、涙ありの懐かしくて新しい作品の現場は…賑やかで華やか~!!
舞台となるのは有名な小説家・千倉磊吉の京都にある自宅、まずは千倉家の個性的なお手伝いさんをご紹介!
元気で正義感の強い、鹿児島出身のお手伝いさん初(ハツ)役は沢口靖子さん。
沢口靖子さん
「鹿児島から出てきた真っ正直な初(ハツ)を演じます。
誰もが恐れ入る文豪にストレートな物言いをする初を痛快に感じています。
ただそれは世間知らず、無知からくるものなんですよね。
そこから人間として、女性として洗練されていくところが見どころかなと思っています」
結婚願望が強いお手伝いさん駒役には南野陽子さん。
南野陽子さん
「駒さんは、夢見がちな可愛い女の子。私の実年齢の半分くらいなんですよね。
正直キツイところもありますが(笑)、そう見えるように元気にピュアに頑張ります!」
映画スターを夢見るお手伝いさん百合役は湖月わたるさん。
湖月わたるさん
「宝塚では御法度の先輩にずけずけものを言うタイプの百合、初体験です。
歌やダンスのないストレートプレイも初めてですが、このように笑いと人情のある話が大好きです!稽古場もとても楽しく、私のために「(百合は)態度もでかいけど、身体もでかい」というようなセリフを足していただきました(笑)。そんな自分のキャラクターも活かしていきたいと思います」
一番の古株で仕切り屋のお手伝いさん小夜には竹内都子さん。
竹内都子さん
「初明治座、和物も初でございます。
ずっと着物でのお稽古で「これは痩せるな~」と言ったら南野ちゃんに「痩せへんで~」と即答されました(笑)。
私が演じる小夜は誰からもリスペクトされていない古株。新入りに口答えされ…(笑)。
でも本人は若い子を教育しようとする!そんなお手伝いさんです」
小夜さんには他にも当時としてはちょっと意外な設定・展開があるんです。
その描き方もさすが谷崎!とのこと、楽しみです!
お手伝いさんたちのロマンスの相手?!タクシー運転手の光雄には川﨑麻世さん。
川﨑麻世さん
「お手伝いさんを次々に口説きまくっている光雄役、スキャンダラスな自分にぴったりな役なんじゃないかと(笑)。でも、僕は女性を口説くタイプじゃないですよ。なので、あの手この手で口説く、台本が面白いですね~!」
この個性派メンバーを温かく厳しく包み込むのが…
千倉家夫人の讃子役、高橋惠子さん。
高橋惠子さん
「『細雪』に続いての谷崎作品への出演、とても光栄です。
この作品は私にとって縁があり、18歳の時、テレビドラマ版でお手伝いさん役をさせていただきました。そこから数年、まぁ、42年なんですが(笑)、こうして妻の役をさせていただくのは感慨深いものがあります。
台本を読んだ時、血の繋がっていないけれど親子のような情愛、夫婦の愛などに心を打たれ、泣きました。みなさまに日本の良さを見ていただきたいと思います」
「血がつながらずとも親子のような…お手伝いさんたちを我が子のように思うというのも
この作品のテーマの一つだと思います」(高橋さん)
そして、作者谷崎を思わせる小説家・千倉磊吉役は古谷一行さん。
古谷一行さん
「実は僕も明治座さんの舞台は初めてです。
本が素晴らしい、セリフを覚えながら涙が出てきちゃって。
僕が演じるのは谷崎を思わせる役ですが、厳しい部分も優しい部分もあるんです。
演出の山田(和也)さんにはもうちょっと厳しく突き放すように!と言われますが、ここに並んでいる人たちを見るとどうも芝居が優しくなっちゃうんです(笑)。
そして、ちょっと年齢が若い芝居になっているかな…と心配したのですが、「十分だ」と言われました(笑)。それにはがっかりしたような安心したような…。
パワフルな女性たちに負けないように、麻世君と僕が頑張らないと!!ね!」
「千倉夫妻は理想の夫婦像!稽古中のふとした優しさなどもキュンときています」(湖月さん)
演出はほっこり温かい喜劇に定評のある山田和也さん。
山田和也さん
「この作品は家庭劇です。
そして、舞台となる昭和30年代の日本は今より人と人との繋がりかが強いように感じます。
そんな濃密な人間関係ゆえに生まれるロマンス、嫉妬、諍いがユーモアたっぷりに描かれている、後味さわやかなコメディです」
昭和30年代へタイムスリップ!
昭和といえば、これですね!
みなさんが手にしているのは谷崎潤一郎がお手伝いさんを要請した南さつま市
(そこには『台所太平記』の石碑もあります!)名産の加世田かぼちゃ!
ひとつひとつのかぼちゃにはみなさんの名入れというスペシャルなかぼちゃです。
このかぼちゃ、食べる?食べない?どんなお料理に?でもひと盛り上がりのみなさん!
台所感、いい感じに出ています♪
昭和変動期に小説家宅で繰り広げられたお手伝いさんたちの日常生活を明るく楽しく描いた『台所太平記』、お楽しみに!
【おまけ】
谷崎潤一郎が1886年(明治19年)に誕生し、1965年(昭和40年)に生涯を閉じてから、今年2015年で50年を迎えます。
実は谷崎誕生の地は日本橋人形町、明治座さんから徒歩10分というご縁!
そんなご縁を感じながら、街散策、そして観劇を楽しむのも一興ですよ!
おけぴ取材班:hase(取材・撮影) chiaki(編集) 監修:おけぴ管理人