世田谷パブリックシアター 現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』開幕レポート


"能楽"から"三島由紀夫"へ…さらに時空を超えるマキノノゾミさん新作書きおろし
物語の舞台は…渋谷のネットカフェ!


時代も場所も、人の生死までも軽々と飛び越えていく「能楽」の世界。

実はとってもクールで最先端! な、能楽ワールドを現代によみがえらせる世田谷パブリックシアター「現代能楽集シリーズ」の第8弾は、マキノノゾミさんの新作書きおろし!

平岡祐太さん、倉科カナさん、眞島秀和さん水田航生さん、根岸拓哉さん、そして一路真輝さん等の魅力的なキャストが、古典の叡智に挑む舞台『道玄坂綺譚』開幕レポートを、舞台写真&おけぴに寄せられた感想コメントともにお届けいたします!




能楽の題材を換骨奪胎し、昭和の世界によみがえらせた三島由紀夫の傑作戯曲集『近代能楽集』

その中から、老婆となり美貌を失った小野小町の物語を、日比谷公園に住み着く老婆のエピソードに変えた「卒塔婆小町」、
平宗盛の愛妾が苦悩する姿を、成金実業家の愛人のエピソードとして描いた「熊野(ゆや)」の二作品を題材にして、マキノノゾミさんが新たに書き下ろした本作。

ネットカフェ、高層マンションに住まうネオ富裕層、家出少女などのキーワードを散りばめた「現実と幻想の世界」の物語とは…?

(以降の赤字はおけぴに寄せられた感想コメントです)


主軸となる物語の舞台は、現代のネットカフェ。
シニカルな笑いも盛り込んだイマドキの世界に、自然に物語に入り込めます。
行き来する過去や未来の物語も、ドラマチックで引き込まれますが、それぞれが、うすぎぬのように重なり合った構造が、さらに面白く、ロマンチックでもあります。
「能楽」や「三島由紀夫」というワードに、難しいかも? と思っている人にも、ぜひぜひ観て欲しいです。

中世の能楽を題材にした三島の近代能楽集をさらに現代に置き換えて、大胆なアレンジをほどこしたマキノ演出に拍手です。

シンプルな舞台美術が濃密な台詞と演技を引き立てていました。
序盤の軽快なシーンから重厚なシーンに一転し、独特な世界に私も客席もどんどん引き込まれていきました。
予測出来ない展開と、魅力的な俳優陣と、マキノノゾミさんの脚本と演出家の素晴らしさ!
久々に本当に面白いと思える素敵な舞台でした

時空が目まぐるしく移動する上、同じ場面が結果を変えて何度も繰り返されます。
夢かうつつか…それでも頭が混乱することはありません。
三島由紀夫の原作を大昔一度読んだけどほぼ忘れかけの状態の私でも大丈夫でした。
匠の演出だと思います。



能舞台を想わす空間に現在・過去・未来が交錯し、虚実取り混ぜ、重厚さの中に軽妙さ溢れる展開がマキノファンには堪らない、ぶっ飛んだ怪作
シンプルな舞台に俳優を浮き立たせた演出。複数の役を演じ分け、それに応えた演技陣。
特に老婆と令嬢、映画女優を動きと台詞回しで見事に演じ分けたコマチ役の一路真輝
劇中の歌声にも魅せられました。

一路真輝さんの凛とした美しさや、それを支えた平岡さんや眞島さんの確かな演技、すべて完璧でした。

作品の面白さももちろんでしたが、出演陣のお芝居が皆さん本当に素晴らしかった。一路さんの大女優ぶりはさすが。

「卒塔婆小町」は、美輪明宏さん出演演出を何度か観ており、時代がかった華族言葉(三島由紀夫の文体)の美しさも楽しみのひとつで、道玄坂のネットカフェからの展開がどうなるのか、想像もできませんでしたが、劇中劇ともいうべき映画の撮影シーンを挟みこんで、元女優の小町ときたか! と感心しました。
橋掛りと揚げ幕風の舞台装置も素敵です。

能の作品を換骨奪胎したのが三島由紀夫の作品なら、さらに換骨奪胎しグリムウッドの小説「リプレイ」の手法で畳み込んだのがマキノノゾミ今回作、との紹介が手っ取り早い。



絶世の美女であったヒロインが、百瀬通いで相手を翻弄した為にその恋は成就出来なかった。
時空を超えた情念、哀れさ。
一路真輝さんの気品ある演技が際立っていました

なんといっても、若く美しい貴族の令嬢から99歳の老婆までを演じる一路真輝さんと、何度も輪廻転生しながら、唯一の女性“小町”と結ばれようとする男性を演じる平岡祐太さんが魅力的

原典の能や、三島由紀夫の『近代能楽集』を知らなくても大丈夫です!
むしろ、この舞台を観ることで、時代を遡って、原典である三島作品や、あるいは能楽にまで興味が及ぶことでしょう。
マキノノゾミさんの練りに練った戯曲と的確な演出により、芸術の香り高い、優れた舞台になっています。

役者が皆いいが、中でも一路真輝は、貫禄のある演技で舞台をしめる。


能楽が元となっているし、堅い舞台なのだろうと思いながら観劇しました。
すると、開始早々流れ出す流行りのアイドルのイント曲、セット転換中に踊るキャスト、そして渋谷にいそうな青年2人が若者言葉でゆるーく会話を始める
なんだこれ。
肩の力が一気に抜けて、いい意味で裏切られました(笑)。

これ、面白いですよ
タイトルが漢字ばかりで難しそうに思っちゃっていたのですが、オープニングで打ち砕かれます。
◯◯◯◯の音楽で始まって、ネットカフェでの渋谷系? の会話。笑えます。
そこからの昭和への場面転換。等々。
役者さんがみんな二役三役やってて、それぞれ上手で面白いんです。
客席の年齢層が高いように感じられたのですが、若者全然いけます! 
むしろ若者もっと観においでよって感じです。



今の日本をあらわすキーワードが散りばめられた舞台。
倉科さんの家出少女も「いるいる、こんな子」という見事な現代っ子ぶり。
いすとテーブル、布だけでネットカフェ、華族の屋敷、高層マンションの部屋を表現する舞台美術も秀逸だった。
時代、場所、人の生死を飄々とクロスする能楽の世界を堪能できた。

企画、監修の野村萬斎さんのファン。演出のマキノノゾミさんのファン。出演者のファン。これらの方々にはおすすめします。
特に倉科カナさんのファンは必見です。

眞島秀和さん、倉科カナさんを舞台で拝見したのは初めてでしたが、テレビで拝見するのとはまた違った迫力ある演技にすっかりファンになりました。



老婆と、家出少女と、戦争に行きたくない青年の物語を堪能しました。
「フェイクが好き」とおっしゃっていたマキノさんが作った最高の虚構世界ですね。

「見たあとすっきり」ではないです。
主軸をどこにおいて見るべきか、なぜあの人がそういう行動をとったのか、キャストは一緒だけど彼らは別人? などなど、見方によって解釈が変わる内容かと思います。
私は自分の答えあわせを兼ねて、再訪する予定です。



重く暗い話かと思っていたが、ところどころに笑いどころがちりばめられていてあっという間の3時間。
これで終わりかと思ったら幾度もひっくり返されるストーリーの展開が大変面白かった。
時事ネタや、色々な有名なエピソードが話の中に出てくるのも見どころ。

時代やシーンのテンポよい展開に惹き付けられました。
近代能楽集、現代能楽集を観たり読んだりしたことがなくても楽しめる舞台ですが、観たことがあると、その比較も楽しかったです。

3時間近い長い舞台でしたが、入れ子になって展開していくふたつのストーリーがあまりにも魅惑的で、しかもユーモアも存分に散りばめられていて、凝縮された満ち足りた時間を過ごせました。
俳優陣も実力のあるメンバーが集結されていて見ごたえのある舞台でした。
最近上演される舞台ではどこかに反戦のメッセージが入っていることが多いですね。

レトロ感と今風がミックスしたファンタジックでリアルな舞台



さすがはマキノノゾミさん。
新作「道玄坂綺譚」として、三島由紀夫の二作品をひとつにまとめていました。
随所に笑いがあるのも、マキノさんらしい。
ストレートプレイだからと期待していなかった一路さんの歌声を聴けたのは、得した気分。
「卒塔婆小町」「熊野」を全く知らずに観ても、現代劇として、かなり面白いのではないでしょうか。

三島由紀夫の作品がコミカルな雰囲気の中、ものすごいスピードで話が展開していく飽きることのない3時間。

交錯する二つの物語。どこまでが現でどこからが夢なのか、
はたまたどこまでが現実でどこからが戦前なのかは観るものが感じるままに想像する余白の在る物語
長いけれども長さを感じさせない惹き付ける要素に溢れている。
これで終わりなのかと思う瞬間は5回程有った。
一路真輝さんの艶やかさと倉科カナさんの美しいドレス姿が印象的。

能とか、三島由紀夫とかいうと難しいものと思いがちだけれど、この作品はいい意味で砕けていて、気軽に観る事ができます

息をつく暇もなく次々と展開していく作風に、自分も気付かぬうちに飲み込まれていました。
展開が読めない面白さを感じつつ、途中から展開を追う必要のなさを初めて感じました。
能楽の知識が全くない私ですが、作品・演出、そのなにかに魅力されたようです



続々と、熱い感想コメントが届き続けている舞台『道玄坂奇譚』。

いい意味で期待を裏切られる? むずかしいけれど、むずかしくない? 渋谷系・能楽? 一路さんの歌声…?

気になってきた方はぜひ劇場へ♪
世田谷パブリックシアターにて11月21日までの上演です。

【公演情報】
現代能楽集VIII「道玄坂綺譚」
三島由紀夫作 近代能楽集「卒塔婆小町」「熊野」より

【作・演出】マキノノゾミ
【企画・監修】野村萬斎

【出演】
平岡祐太/倉科カナ/眞島秀和/
水田航生/根岸拓哉/富山えり子/
粕谷吉洋/神農直隆/藤尾勘太郎/
奥田達士/長江英和/田川可奈美/
一路真輝

世田谷パブリックシアター

感想寄稿:おけぴレポ隊のみなさま 
舞台写真提供:世田谷パブリックシアター 撮影:細野晋司
おけぴ取材班:mamiko(文)

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