『Dance to the Future 2016』 米沢唯さん、福田圭吾さんインタビュー&リハーサルレポート

 2012年に始まった、新国立劇場バレエ団のダンサーの振付作品を新国立劇場バレエ団ダンサーたちが踊る、タイトル通り未来へ向けた企画「Choreographic Group」。
 その舞台を中劇場に移し、初めての公演となる今年の『Dance to the Future 2016』に向け、米沢唯さん福田圭吾さん振付作品のリハーサルの模様を、お二人のインタビューとともにお届けします。


【『Giselle』振付:米沢唯 音楽:A.アダン】

バレエ団を代表するダンサー米沢唯さんの初振付作品は…『Giselle』?!


米沢唯さん

 
──振付をしてみよう、そう思われたきっかけは。

米沢)
 いつもクリエイションをしたいという思いは私の中にありました。最初はクリエイション=(どなたかの)新しい作品に参加するというイメージでしたが、「自分で作ってみれば?」というアドバイスをいただき、挑戦してみることにしました。

──立候補されたわけですね!

米沢)
 はじめにそう言われたときは「えー、私が作るんですか!」という感じでした(笑)。ただ、ダンサー生命というものを考えたとき、その後も自分がこの世界に関わっていくためにも、いつか振付をという考えは持っていました。これまでは、なかなか場も勇気もなく、一度もやったことがなかったのですが、いいタイミングかなと思ったのです。


──タイトルは『Giselle』。

米沢)
 はい、『Giselle』です(笑)。そこに行き着くまでに、音楽も振付もいろいろと試しました。でもどこか自分がこれまで経験した振付の寄せ集めのようになってしまって。私にしか作れないものを追求していった結果、そうなりました。細かいところは本番をお楽しみに!となりますが、創作は、まず、言葉から。文章を書いてそれをイメージして動きを作っていきました。

──その初振付作品を踊るのは、小野絢子さんと米沢さんご自身ですね。

米沢)
 振付に対しては、第一歩すら踏み出せていない状態でしたので、まずは自作自演を想定して作りました。それを公演として舞台にかけることなり、振付も演出もすべて自分の想像の中で行うのは無理だと思い、私が一番信頼している小野絢子さんに踊っていただけないかと依頼しました。一度、絢子さんに渡して、自分が一歩引いてこの作品に関わることの必要性を感じたのです。


──お二人を見ているとクラシックバレエのとき以上に違いが生まれるようです。

米沢)
 そうなんです。振りを渡している時点で、こういう風に踊るんだ!と感じるところがたくさんありました。絢子さんならではの“奇妙な可愛さ”を見ていると、率直に「この人面白いな~」と思って、いろいろとやらせたくなってしまいました(笑)。



──多くは申し上げられませんが、小野さん、米沢さんが作り出す世界は意外性に溢れ、楽しいものでした。初振付に手応えあり!ですか。

米沢)
 実は振付を作っている時はものすごくつらくて…、「もう二度と振付はしない!」と思ったこともありました(笑)。でも、リハーサルが始まり絢子さんと一緒に作っていくのがすごく楽しくて、とても素敵な時間を過ごしています。まだ最初の作品も終えていないので、向いている、向いていない以前の段階ですが、クリエイションはやっぱり面白いですね。


──この経験からダンサーとして得るものも多くありそうですね。

米沢)
 どうなんでしょう。アドバイザーの平山素子さんや絢子さんと話し合うことで、自分がどういう作品を創りたいのか、ということが少しずつはっきりしていくのが面白いです。貴重な経験をしていると思います。

 踊ってくださる絢子さんはもちろん、これから劇場入りに向け、衣裳や照明なども含めた演出も詰めていきますが、そこでは新国立劇場の凄腕スタッフのみなさんに胸を借りようと思っています。周りが盤石なので(笑)、楽しみながら頑張ります。






【『beyond the limits of ...』 振付:福田圭吾 音楽:トミー・フォー・セブン】

自らのルーツとバレエ団での経験の融合で生まれる作品…『beyond the limits of ...』


──今回は、男性ダンサー4人、女性ダンサー4人がご出演作品ですが、その着想はどこから。

福田)
 音楽からです。音楽を聴いているうちに、徐々にイメージができてきました。その時点では漠然としたものでしたが、そこからなんとなくそのイメージにあったダンサーが思い浮かんで、出演を依頼して…という感じです。


ダンサー後列)木下嘉人さん、原 健太さん
ダンサー前列)林田翔平さん、奥村康祐さん
先頭:福田圭吾さん


後列)玉井るいさん、堀口 純さん
前列)奥田花純さん、寺田亜沙子さん

──今回はご自身が踊るということは想定されなかったのですか。

福田)
 Dance to the Futureシリーズで振付作品を上演するのは3度目になります。最初は自分も踊りましたが、その時は初めての振付で出演もして…となり、緊張が3倍くらいになりました(笑)。
 それを経て、前回は振付に専念。そして今回は、ということになりますが、上演作品を決めるためにスタジオでの「SHOWING」という選考会のようなものが行われます。僕も30歳を迎え、Dance to the Futureも3回目、ここは挑戦しようと、実はそこには自分が踊る作品も出したのですが、選ばれたのは僕が踊らないほうの作品でした(笑)。

──そうだったのですね。でも、こうして3作目が上演されるというのは、素晴らしいことですよね。3度目にして何かこれまでと違う感覚はありますか。

福田)
 前回の「DANCE to the Future 」からコンテンポラリーダンスの日本の第一人者の平山素子さんがアドバイザーとして参加してくださっています。そのことが創作活動に大きな刺激を与えてくれています。

──タイトルは『beyond the limits of ...』、そこに込めた想いは。

福田)
 実は、これはいい意味で受け取ってほしいのですが(笑)、僕自身はタイトルというものにあまりこだわりがないんです。僕自身がコンテンポラリーダンスを見るときの感覚は、絵画を鑑賞するときと似ているんです。タイトルを意識して見るというより、まず見て、この作品は好きだな、この作品はちょっとよくわからないな、そして見終わったときにどういう意味なのかなとタイトルの意味を調べてもらうような。そうやって作品を味わう感覚です。

 でも、作者は作品名に責任を持つというアドバイスもいただき、『beyond the limits of ...』というタイトルにたどりつきました。

 先ほどお話したようにまず音楽があり、そこから創作を始めましたが、曲のタイトルはVerge(境界線)といいます。これまでの素子さんとの創作活動のなかでも感じていたコンテンポラリーとバレエの境界線ってなんだろうということ。僕らバレエダンサーが踊るコンテンポラリーダンスってなんだろう。その感覚が曲とリンクして、この作品になりましたが、Vergeというタイトルは非常に(言葉として)重いということになり、beyond the limits of ...=範囲外というタイトルになりました。

 そこではクラシックバレエをメインに踊っているダンサーがコンテンポラリーのちょっと慣れない動きで表現することでクールな新しい魅力を引き出すことを目指しています。


──作品を作ることは、動きだけでなく様々な角度からダンスを見つめ直す機会にもなるのですね。


福田)
 その境界線というのは今も答えは出ていませんが、興行としてコンテンポラリーダンスをやっている素子さんと概念的なところも含めディスカッションできたことはすごくいい経験になりました。

──先ほどリハーサルを拝見しましたが、確かにいわゆるバレエっぽくない動きも多く見られました。そういった動きは福田さんの中から自然とわき出てくるのですか。

福田)
 師匠である矢上恵子さんのもとで、子供のころからクラシックに限らず、コンテンポラリーやジャズを踊ってきたので、アイソレーションやドルフィン、コントラクションなどといった動きも僕のルーツの中にあるんですよね。矢上恵子イズムじゃないですけど、師匠の作品作りを目の当たりにしてきたことが、クリエイションをしていると自然と影響を及ぼしてくるんです。

──ご自身のルーツとバレエ団での経験の両方が創作活動の糧になっているのですね。振付は、踊ることとはまた違う楽しさがありそうですね。


「ここからさらにリハーサルを重ねることで、ダンサー同士の呼吸やタイミングに慣れてもらい、本番ではギリギリのところでせめぎ合ってもらいたいな」(福田さん)


福田)
 今現在の僕はあくまでもダンサーです。振付に関しては本当に駆け出しの身なので振付家の仕事を語ることはおこがましいのですが、みんなと一つのものを作るという作業は好きですね。そして、ダンサーのこれまでと違う魅力を引き出せたときはとてもうれしく思います。この2つの理由が、振付をする原動力になっていると思います。





 いつもはダンスで私たちを魅了するお二人のクリエイターとしての横顔。
 仲間とともに作り上げることの喜びを語る姿と、ここから本番に向けより一層のブラッシュアップをしていこうとする覚悟に、本番への期待が高まりました。

 また、同時に上演されるのは『暗やみから解き放たれて』。
 2014年の新国立劇場での世界初演を拝見しましたが、ダンスはもちろん、洗練された舞台美術や衣裳を見るだけでも感動。その美しさに静かに心が動かされ、気が付くと涙が頬を伝っていたことを覚えています。

 このシリーズの意義は、創作活動を通じダンサー自身のバレエ、ダンスへの理解を深め、過去から連なるバレエの歴史を未来につなげること。まさに「Dance to the Future」、未来へ向けての一歩をぜひともに体感しましょう!


【公演情報】
『Dance to the Future 2016』
2016年3月12日(土)、13日(日)@新国立劇場中劇場

<スタッフ・キャスト>
第一部、第二部
NBJ Choreographic Group 作品 【アドヴァイザー】平山素子
「Immortals」
【振付】髙橋一輝 【音楽】ヴィヴァルディ/M.リヒター
【出演】盆子原美奈、中島駿野、林田翔平、奥田祥智、佐野和輝、八木 進、吉岡慈夢

「Fun to Dance~日常から飛び出すダンサー達~」
【振付】小口邦明 【音楽】M.グレコ
【出演】小口邦明、若生 愛、宇賀大将、小野寺 雄、フルフォード佳林、益田裕子

「Disconnect」
【振付】宝満直也 【音楽】M.リヒター
【出演】五月女 遥、宝満直也

「如月」
【振付】原田有希 【音楽】D.ヒース
【出演】五月女 遥、玉井るい、柴田知世、原田有希、盆子原美奈、益田裕子、山田歌子

「Giselle」
【振付】米沢 唯 【音楽】A.アダン
【出演】小野絢子(12日)/米沢 唯(13日)

「カンパネラ」
【振付】貝川鐵夫 【音楽】F.リスト
【出演】宇賀大将(12日)/貝川鐵夫(13日)

「beyond the limits of ...」
【振付】福田圭吾 【音楽】トミー フォー セブン
【出演】奥村康祐、寺田亜沙子、奥田花純、堀口 純、木下嘉人、玉井るい、林田翔平、原 健太

第三部
『暗やみから解き放たれて』
【振付】ジェシカ・ラング
【音楽】O.アルナルズ/N.フラーム/J.クレイマー/J.メトカーフ
【装置】ジェシカ・ラング(モロ制作会社ステファニー・フォーサイス、トッド・マックアレンのデザインによる裝置使用)
【照明】ニコール・ピアース
【衣裳】山田いずみ
【出演】小野絢子、福岡雄大、八幡顕光、米沢 唯、奥村康祐、貝川鐵夫、福田圭吾、奥田花純、
五月女 遥、細田千晶、丸尾孝子、川口 藍、広瀬 碧、宝満直也、若生 愛、朝枝尚子、
小野寺 雄、原田有希

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(撮影・インタビュー) 監修:おけぴ管理人

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