『成河&彼方の“僕らの勝手な東京前楽祝いトークショー”』レポート

 ミュージカル『グランドホテル』REDチームでオットー役&男爵役で共演中の成河さん、伊礼彼方さんの熱いトークショーが開催されました。

 お二人におけぴインタビューにご登場いただいたのは『グランドホテル』お稽古前。そこからお稽古、本番と共に過ごした“僕らの時間”が本当に充実したものだったのだろうな!そう感じさせる熱く深いひとときでした。そして、トークの振れ幅は…今回もすごかった(笑)。


 タイトル通り、東京前楽公演を終え駆けつけた成河さん、伊礼さん!お二人の発案で登場は…




ステージ後ろの窓から!!


 この登場プランひとつをとっても、お客様に最大限に楽しんでいただこうという“愛”が炸裂でした。さらに、リハーサル時には「こっちの席からちゃんと見えるかな」と会場のさまざまな角度からチェックし、アイデアを出し、会場スタッフのみなさんの協力のもと最終調整していくお二人。なによりも印象的だったのは、それをお二人ご自身がワクワクしながら進めていたことです。
 こうして会場はお客様をお迎えするウェルカムな空気に満たされたのでした。

 そして…僕らの“愛”同様に、お客様の“愛”も熱く大きかった!


お客様の到着を待つランチBOXたち(絶品お料理は後ほどご紹介♪)


 1st、2ndともにたくさんのお客様にお集まりいただいたトークショー、ここからは2ndステージの様子をレポートいたします。(記憶を頼りに、印象深かったところをご紹介)


なんだかイイ感じな笑顔ですよね!



弾ける笑顔


 やはり話題の中心は『グランドホテル』、もはや恒例と化した闘争心メラメラ?!トーク(笑)。この日、ひと足早く東京楽を迎えたGREENチーム公演をご観劇後に参加されたお客様に、「どうでした?」とコメントを求める成河さん



お客様から「(カーテンコールで)明日はREDチームの千穐楽です!とお話されていましたよ」とのお答えが。それには思わず、「宣伝してくれたの!いい人たちですね(笑)」



 こちらもお約束、伊礼さんの「GREENは見ていないという方いらっしゃいます?」、そして、会場を見まわしその方々に「よしよし」と目配せ(笑)。そんなメラメラでオラオラなところも素敵です(笑)。



 でも、闘争心は、裏を返せば向上心!その後のお話で明らかになったのは、作品への、演劇への熱い想い。やはり“愛”あるお二人です。


序盤はこのようなお話が…。

伊礼)「『ピアフ』公演中に稽古が進むというタイトスケジュールの中での出演を引き受けた決め手は、成河くんと一緒だったから」

成河)「でも、どっちも出演してよかったでしょ。そうそう、(大竹)しのぶさんとの話しなよ!あれ、すごくいい話だから!」

伊礼)「そう?」

「彼方くんは、みんなの前でカッコイイ話をするのが苦手なんですよね」、ということで、日ごろの伊礼さんとの会話の中から素敵なお話を引き出す成河さん。

 大竹さんとの初共演経験を通して、“型通りじゃない”生きた芝居の楽しさと魅力を再発見。芝居が毎回違っていい(ブレじゃない)、目の前にいるピアフが、その時々で本当に少女、プロデューサー(ピアフは伊礼さん演じる歌手シャルル・アズナブールのプロデューサーでもあった)、恋人…に見える。その芝居に大きな影響を受けた。

 そして、成河さんのお芝居からも同じ魅力を感じる…という伊礼さんのお話に、場内、そうそう!と大きくうなずいていると。



「で、僕としのぶ、どっちのほうが大事なの」


「お前だよ」


くーっ!!


基本、こういった調子で進む僕らのトーク(笑)。


【翻訳劇について】


 笑い声の絶えない楽しい中、お芝居についてのお話になるとお二人のシリアス度も客席の集中力も高まります。お芝居好きが集まっていることを実感するしあわせな空気。

 翻訳劇の難しさ、そこに取り組むことの(現実的な)難しさ、でも、絶対に譲れないこと…お話はどんどんヒートアップ。まさにその現場でその問題に直面し、戦っているお二人だからこそのお話の数々、その中で印象的だったのは【日本語の台詞にする】ということ。

 翻訳劇は文字通り、『グランドホテル』でいえば英語で書かれた台詞を日本語に“翻訳”して上演します。そこに制約(情報量の減少、ニュアンスの変化、文化の違い)が生まれるのは当然のこと。その一つの原因は日本語には書き言葉としゃべり言葉があるから。また、日本では会話劇の歴史は浅く、海外戯曲の翻訳には書き言葉が当てられることが多く違和感が生じやすい。一方で、日本の、日本語の演劇ならではの魅力もあり、木下順二さんの群読や野田秀樹さんのような詩的な台詞回しなどはそのひとつ。

 この一連の成河さんの解説のわかりやすいことと言ったら!さらに続きます。

 どうしても避けられない翻訳劇の制約を補うために、役者自身もより場面・感情に即した言葉を探し、どう“しゃべる”かを追求する。それは決して翻訳家さんのお仕事を否定するものではなく、事実、翻訳家もひとりの人間が机上で選んだ言葉がすべて正解だとは思わないというスタンスの方が多く、最終的には演出家、役者との共同作業で生み出されていくもの。最近では小川絵梨子さんや森新太郎さんら、演出家であり翻訳も手掛ける才能が増えている。

うんうん、これはおそらくみなさんも実感されていることですよね!


 ここからはお二人がお話してくれた『グランドホテル』が観客に届けられるまでに、稽古場で“翻訳”という大きな壁に一緒に立ち向かい格闘した、いくつかの例をご紹介いたします。
 

【OLD SOCKS】

 直訳すれば古い靴下、とても馴染み、愛着のあるものといった意味を持つ言葉。
 
 男爵がユダヤ人サラリーマン会計士のオットーに対して出会った当初からさりげなく呼びかけるこの言葉に対して、彼ら(REDチーム)が選択したのは「友よ」という日本語。



「ただ、男爵としては『おお、友よ!!』と大仰には言うのは違うと思った。むしろ台詞として立てずに、聞こえるか聞こえないかでいい。ただ、“そう呼びかける男である”ことが大事だった」と伊礼さん。

 身分の差がある、実際グランドホテルでぞんざいな扱いを受けるオットーにも「友よ」と投げかける男爵。その言葉が輝きを放つのは…二人してティッカーテープをぐるぐる巻いて株の話をする場面、初めてオットーが男爵に「友よ」と返す瞬間です。さらに、オットーが発するヘブライ語の「メッシュガナ(=ぶったまげた)」を男爵もオウム返しする。
二人の親密さを印象付ける素敵なシーンへ繋がる布石なんですね。本当によくできた戯曲です。



このシーンですね(おけぴレポより)

 この【OLD SOCKS】は演出のトム・サザーランド氏も非常に大切にした台詞で、ディスカッションの末に「おお、友よ」になったが、そこに至るまでには「相棒」などほかの言葉も挙がったそうです。
 ちなみにGREENチームでは「ともだち」なんですよね。



「そこに正解はなく、僕らも「おお、友よ」が唯一絶対だとは、今も思っていない。もし、もっとピッタリくる日本語が見つかったら変わったりして(笑)。みなさん、何かいい言葉を思いつきませんか!」ふと客席へ投げかける成河さん。気軽に客席ともやり取りできるアットホームな雰囲気もお二人ならでは。


【LIFE】

人生、命、この作品のキーワードともいえる、この言葉。

 めぐる【人生】、それが、グランドホテル!
 ひとつの【命】が終わり、ひとつの【命】が生まれる……
 【人生】は人と共にある
 いくつもの台詞が思い出されます。

 他にも、グルシンスカヤは男爵から再び生きる悦び(NEW LIFE)をもらい、エリックは子供の誕生(新しい【命】)の時を待つ。たしかにさまざまなLIFEが!!



 そして、オットーの「命が溢れている!」という台詞、原語では“Life is everywhere”。今回の上演では「命が溢れている」にしたけれど、これもまた完全に表現しきれていないのではないか。でも、取捨選択は避けては通れないことなのでね。と話す成河さん。

 でも、実際の舞台を見ていて、そのシーンは、当然、その数分前からのやり取りに対する台詞でもありながら、グランドホテルでの一夜の出来事が走馬灯のように甦る瞬間でもありました。それは“Life is everywhere”の気持ちで「命が溢れている」が届けられるからなのかと、これまた納得のお話でしたね。

 納得できない台詞はしゃべりたくない、言葉の裏にある嘘のない感情を積み上げていく、そこを丁寧に行えばキャラクターは形作られ、自然と動けるようになる。

 本当になるほどなーの連続でした。


 最後にもう一つ…

「LIFE CAN BE GRAND, WIDE AND HIGH AS THE HEAVEN
LIFE CAN BE SMALL, AS A SEED IN YOUR HAND」


 これはラストに藤岡正明さん演じるエリックが歌う「大きな空を目指すのか 小さな夢を追うのか」。作品はここに集約されていくんだよね!というお二人。


はい、そちらのお客様どうぞ!この段階になるとお客様も積極的に!


お客様からは、このシーンについて「このエリックの歌うメロディは、前に男爵も歌っていましたが…」との質問が。



「いいですね、男爵がらみの質問なのに、成河くんに聞いている感じが。誰に聞けばいいのかをわかっていらっしゃる(笑)、素晴らしい」(伊礼さん)

「(人生の)終わりと始まりが同じ旋律ということ、そこにはもちろん意味があります。繋がっていくということですよね。それはミュージカルならではの表現、魅力ですよね」(成河さん)

 繋がっていく…、そうそう、たばこケースもエリックの手に渡るんだよねと、実はこの瞬間、泣きそうになってしまったおけぴスタッフでした。



「この藤岡くんがいいんだよね。」「彼の表現力で、それまで繰り広げられたそれぞれの一本ずつの物語が一つにグッと束ねられるんだよ!」口々に魅力を語り出すお二人。


【愛するREDチームについて】


 台詞でも、お稽古の進め方でも、気になったことは率直に投げかけ意見交換をする風通しの良い環境を好む成河さん、伊礼さん。空気が滞留したら率先して風穴を開けようと思って臨んだREDチームの稽古では、なんと、お二人が動くまでもなく闊達な意見交換が繰り広げられたそうです。

 お二人やご自身の劇団で翻訳劇に取り組んでいる吉原光夫さんは、翻訳にこだわって進めたいという思いを当初から持って臨まれたそうですが、稽古場で「モノ申す!」の口火を切ったのは…草刈民代さんだったとのこと。

伊礼)「草刈さんは翻訳劇うんぬんじゃなくて、「グルシンスカヤ、こんなこと言うかしら」というご自身の経験からくる正直な疑問をストレートに出すんですよね」

成河)「そうそう、そして草刈さんは英語が堪能だから直接英語の台詞から意を酌めるんですよ」

伊礼)「ちょっと英語を見せて!(ニュアンスが)違うじゃない!って」

成河)「それを契機に光夫さんも僕もガンガン行くという(笑)。彼方くん、むしろフォローに回っていたよね。新鮮だった」

伊礼)「そうそう、そこ、補いますと…って(笑)。油断できないのは、土居裕子さんですよ。冷静に「ここはこういうことでよろしいでしょうか」ってね。あの人もなかなかにREDだよ」



成河)「でさぁ、なんかそういうところもすごくラファエラっぽいんだよね。そして、そんな様子を「トムも大変そうだな」と一歩引いて見つめる佐山さんというのも役柄そのまま(笑)」

伊礼)「トムはやさしいからね」

成河)「イギリスから来た振付のリー(・プラウド)や音楽監督のマイケル(・ブラッドリー)との関係も見ていて面白かったよ。これまで一緒に仕事をした外国人演出家はいわゆる巨匠の域、比較的年配の方が多かったので余計に新鮮に映ったのかもしれないけれど、同世代の三人が三人とも譲らないんだよね。かなり時間をかけて議論して、結論を出した後、そっとリーとマイケルのコーヒーを温かいものに差し替えていたトムの姿が忘れられない(笑)」

伊礼)「あったねー、そういうことも!」


 作品への深い理解と愛情、このまま2時間でも3時間でも…本当にお話の尽きないお二人のいろんな意味でのアツアツなトーク!またぜひ開催してほしいですね!


【ごちそうさまでした!】


このしあわせな空間、そしてみなさんのお腹を満たしてくれたのが…LOWPさん!



 ボリュームたっぷりのチキン(しょうがの風味が食欲を誘います!)やキューブ型のメープルデニッシュなど見た目もお味も素晴らしい。ごちそうさまでした!もちろん“僕ら”も美味しく召し上がっていましたよ。



1階のキッチンも朝からフル稼働!パンもお店で焼いています!


LOWPさん外観

 今後、様々な展開を見せそうなLOWPさんにも注目です。今は、お弁当のデリバリーや平日のお昼にはお店の前でお弁当の販売も行っています♪


【仲良しショット】





【おまけ】


 唐突ですが、「おけぴスタッフも考えてみた」のコーナーです。
 LIFEのお話が非常に興味深かったため、その対極ともいえるDEATH(今回は湖月わたるさんがスペシャルダンサーとして表現されています)の意味を調べてみると、そこにあったのは「死」、そして「破滅」

 DEATHに見入られた二人の男の姿
が目に浮かぶのでした。


 こうしてお届けしたトークショーレポ、お楽しみいただけましたでしょうか。そんなお二人がご出演の『グランドホテル』はこれから、名古屋、大阪へと旅に出ます!お見逃しなく!



お二人の情報はこちらでチェック


【成河さん】

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成河・スタッフ オフィシャルTwitter

【伊礼彼方さん】
公式HP
伊礼彼方KANATA LTD.公式Twitter

みなさま、素敵な時間をありがとうございました!!

【公演情報】
ミュージカル『グランドホテル』
2016年4月9日(土)~24日(日)@赤坂ACTシアター
2016年4月27日(水)28日(木)@愛知県芸術劇場大ホール
2016年5月5日(木・祝)~8日(日)@梅田芸術劇場メインホール

<出演>
【GREEN】
中川晃教/宮原浩暢(LE VELVETS)、安寿ミラ/戸井勝海/昆夏美/樹里咲穂/光枝明彦
【RED】
成河/伊礼彼方/草刈民代/吉原光夫/真野恵里菜/土居裕子/佐山陽規

【GREEN&RED】
藤岡正明/味方良介/木内健人/大山真志/湖月わたる
金すんら/友石竜也/青山航士/杉尾 真/新井俊一
真瀬はるか/吉田玲菜/天野朋子/岡本華奈

<スタッフ>
脚本:ルーサー・ディヴィス
作詞・作曲:ロバート・ライト&ジョージ・フォレスト
追加作詞・作曲:モーリー・イェストン
演出:トム・サザーランド
振付:リー・プラウド
音楽監督:マイケル・ブラッドリー
翻訳・訳詞:市川洋二郎

公演HPはこちらから

お弁当写真…Special Thanks N様
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人

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