ミュージカル『王家の紋章』シルヴェスター・リーヴァイ氏 取材会レポート

2016年8月、帝国劇場にて日本オリジナルミュージカルの新しい扉が開く!
連載40年を誇る少女漫画の金字塔、『王家の紋章』がミュージカルとなって立ち上がるのです。


 この夏話題の作品で、音楽を手掛けるのは『エリザベート』、『モーツァルト!』といった人気作を生み出した巨匠シルヴェスター・リーヴァイ氏。クリエイティブミーティング真っ只中の6月某日、リーヴァイ氏の取材会が行われました。


【ファンタジー作品の作曲をしてみたかった】


──『王家の紋章』の音楽を引き受けた経緯と原作の魅力についてお聞かせください。

 かねてよりメルヘン、ファンタジー作品の作曲をしてみたいと思っていたところ、ありがたいことに私の70歳の誕生日の日に『王家の紋章』のオファーをいただきました。細川姉妹(細川智栄子先生、芙~みん先生)が生み出したこのマンガの中には、愛、嫉妬、憎しみ、苦難、戦いの緊張…、人間のあらゆる側面が反映されていています。そこに音楽をつけられることを幸せに思っています。

──マンガ原作であることが音楽制作に与えた影響は。

 音楽は私の心と頭で作られる。まず初めに簡単なあらすじと日本語の原作本をいただきましたが、細川姉妹が描いた“画”が強い印象を残しました。その段階で構想は浮かびました。
 その後、『王家の紋章』4巻分を翻訳し、マンガの吹き出しの中に言葉を入れこんだものをいただき、“マンガ”を読むことができました。

 マンガを読むときは、私の一部は作曲家であり、一部は子供。みなさんがそうするように、自分を物語に引き込まれるがままにします。そこから得たインスピレーションが源泉となり音楽が生まれるのです。原作マンガを読むことでさらに作品の核、魅力を理解することができました。

 ここからは4巻読んだ証として、登場人物に対する印象をお話しします。この“登場人物を知る”ということは、作曲するうえで大切な要素ですからね。




 まず、それこそが人気の秘訣ともいうべきことですが、登場人物のひとりひとりにカリスマ性がありキャラクターが確立しています。そして、“悪”だけの人はいません。主人公たちと対立する立場にあるアイシスやイズミルも決してそれだけではないのです。その点を踏まえ、個別のキャラクターイメージを聞いてください。

メンフィス:若きファラオ、尊い生まれの人の典型のような人物。帝王学を学ぶ一方で、甘やかされもした。その結果、頭脳明晰、勇敢であり、頑固、短気。

キャロル:ニューヨークに住む裕福な家で優しく賢い父、兄たちに囲まれて育つ。自由奔放であるとともに頑固なところもある女の子。


そんな二人が出会ったとき…

 メンフィスは白い肌、ブロンドの髪を持つ異国の人キャロルに出会い、一目で恋に落ちる。彼のエモーショナル(感情的)な性格がそうさせると納得できる。
 一方でキャロルは突然違う時代に連れてこられ、メンフィスにも全く興味がなかったがやがて惹かれていく。ちなみに、このキャロルの心の動きは自分の若い頃と重なるんです(笑)。(無関心から次第に惹かれる…これ、少女漫画の王道でございますよ、リーヴァイさん♡)
 この一連のドラマに説得力を持たせるだけの性格付けが細川姉妹によってなされているのです。
 続けますと。

イズミル:トルコ・ヒッタイトのイズミルはエジプトを虎視眈々と狙っている。エジプトのメンフィスとは常に緊張関係にある。その中でキャロルに出会い、恋に落ちてしまう。メンフィスと違うアプローチを見せるでしょう。

アイシス:神秘的、危険な女性です。当時の歴史、時代が求めている人物でもあるといえます。

イムホテップ:物語の中で、精神性という意味でも大事な位置づけの人物です。友人である山口(祐一郎)さんが歌うとわかっていたので、イメージしながら楽しく作曲しました。


──そのキャラクター分析をベースにした音楽制作となると、キャラクターのメインテーマが軸になるのでしょうか。

 それはイエスでありノーです。繰り返されるテーマというのはもちろんありますが、物語の進行によって、メンフィスならば、王になった際には不安と希望が交り合い、恋をしたときは…音楽性は変わってきますよね。
 その点ではアイシスというキャラクターの“弟を深く深く愛する”、“その愛が叶わず嫉妬に変わる”、ともに愛から発生した2つの心情を音楽で表現するのは楽しかったですね。


【浦井さんについては、いよいよ帝劇センターに立つ準備が整ったのだろうと思います】


──魅力的な登場人物たちを演じる俳優のイメージは。



メンフィス役:浦井健治さん(製作発表会見より)

 浦井さんは3月にお会いしましたが、その段階ですでにファラオというキャラクターの雰囲気をまとっていました。みなさんご存知の通り、ハンサムでセクシーな方です。



キャロル役:宮澤佐江さん(製作発表会見より)


 キャロルを演じるお二人、宮澤佐江さんはメールで送られてきた写真を見た瞬間に「(彼女が)キャロル!」と思いました。実際にお会いしてもキャロルそのものでした。オープンでイキイキとしていて、ちょっと生意気なところもあって(笑)。可愛らしい方です。



キャロル役:新妻聖子さん(製作発表会見より)


 新妻聖子さんは10年前の『MA』からのお付き合いで、昨年は彼女のコンサートにも足を運びましたが、常に感動を与えてくれます。素敵な女性、大好きです。



アイシス役:濱田めぐみさん(製作発表会見より)


 そして、今回初めてご一緒するアイシス役の濱田めぐみさんに関しては、『二都物語』を拝見し、役者としても歌い手としても感銘を受けました。それからずっと私の作品への出演を願っていました。今回、願いが叶い、ハッピーです!

──浦井さんはミュージカル『エリザベート』のルドルフ役で帝国劇場デビューをし、ついにこの作品で帝劇のセンターに立ちます。ほかにも多くの俳優のキャリアの節目にリーヴァイさんの作品があるように感じます。リーヴァイさんが日本ミュージカルと関わるようになって20年余りの年月への思いをお聞かせください。

 非常にシンプルながらお答えするのが難しい質問ですね(笑)。
 この20年は信じられないほど素晴らしい年月でした。感謝しています。その年月は、私の作曲家としての人生にもさまざまなものを与えてくれました。
 その中で感じたことは、我々の世界では一度成功すればよいというのではなく、成功を積み重ねていけるかが大事になってきます。そういう意味で、極めて印象深いのは山口祐一郎さんです。
 長年にわたり、常に精力的で、常に成長し、そして全然年を取らない!それは決して天から恵まれたものではありません。日々、規律正しく生活をしていらっしゃるのだろう、その姿勢には本当に感銘を受けます。
 しかも、それは自分が成功したいがゆえではなく、対お客様からくるもの、お客様を愛していらっしゃるからそうなさるのだと思います。
 そういう意味では、ご自分の人生をお客様に預けていらっしゃるとも言えます。本当に素晴らしいことです。



イムホテップ役:山口祐一郎さん(製作発表会見より)


 ほかの方も、日本のアーティストは常に学ぶ気持ちを持っていらっしゃいます。こちらのリクエストを前向きにとらえて、よりよくあろうとするところが、お世辞ではなく心の底から、素敵だと思います。日本において役者であり続けるには、謙虚さが大事なのでしょう。

 浦井さんについては、ルドルフ役から始まり、その後成功を積み重ね、いよいよ帝劇センターに立つ準備が整ったのだろうと思います。




【荻田さんは素晴らしい魔法を見せてくれる、非常に音楽的才能のある方】


──今回タッグを組む荻田浩一さん(脚本・演出・作詞)との創作活動はいかがですか。

 まず、私自身の考えとしては、ひとりが多くの役目を果たすというのはあまり賛成ではないのですが…。荻田さんに関しては、たぐいまれな才能をお持ちです。素晴らしい魔法を見せてくれる、非常に音楽的才能のある方です。何度かお会いしている中で、荻田さんから音楽に関する提案をいただいていますが、それは私にとってとても歓迎すべきことです。
 さらに、たぐいまれなコミュニケーション能力を持った方でもあります。
 それは演出家にとって非常に大切な要素です。

──音楽に関する提案とは。

 たとえば、イズミルが復讐に燃える場面での歌についてお話ししましょう。
 当初は怒りが最初から最後まで貫くような曲にしましたが、「最初は自分の感情をコントロールしているところから始まり、段階的に気性の激しさを出せないだろうか」という提案を受けました。私もそのアイデアをとても気に入り書き換えました。
 このように、荻田さんは一曲ごとにその曲をどのように考えているかをはっきりと伝えてくださるのです。

──荻田さんの魔法とリーヴァイさんの音楽の魔法が融合した舞台が楽しみです。

 お客様の期待を裏切らないように、しっかり頑張りたいと思います。ただ、実は私自身は楽観しております。今回の来日に際しても何曲か新しい曲を持ってきましたし、今日のミーティングでも新しいアイデアが出ました。帰国したらその宿題に取り掛かりますので!
 劇場へお運びいただきましたら、ファンの方には何時間か素敵な時間、みなさんの人生に何らかの感情を持ち帰っていただけるような時間を提供させていただきたいと思います。


 そんなリーヴァイ氏の最新作『王家の紋章』製作発表で披露された2曲をご紹介いたします。

♪Where I Belong(メンフィス:浦井健治さん、キャロル:新妻聖子さん)
♪Unrequited Love(イズミル:宮野真守さん、平方元基さん、キャロル:宮澤佐江さん、アイシス:濱田めぐみさん)



 リーヴァイ氏の音楽と荻田さんの魔法…どんな『王家の紋章』が立ち上がるのかワクワクですね!


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【公演情報】
ミュージカル「王家の紋章」
2016年8月5日(金)~27日(土)@帝国劇場
おけぴ劇場マップ 帝国劇場
プレビュー公演 8月3日(水)・4日(木)

<キャスト>
メンフィス:浦井健治
キャロル:宮澤佐江/新妻聖子(Wキャスト)
イズミル:宮野真守/平方元基(Wキャスト)
ライアン:伊礼彼方
ミタムン:愛加あゆ
ナフテラ:出雲綾
ルカ:矢田悠祐
ウナス:木暮真一郎
アイシス:濱田めぐみ
イムホテップ:山口祐一郎

川口竜也/工藤広夢

天野朋子/熊澤沙穂/栗山絵美/小板奈央美
島田彩/藤咲みどり/横関咲栄
青山航士/岡田誠/輝海健太/加賀谷真聡
上條駿/齋藤桐人/笹丘征矢/千田真司
長尾哲平/橋田康/若泉亮

<スタッフ>
原作:細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
脚本/作詞/演出:荻田浩一
作曲/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ

<ストーリー>
16歳のアメリカ人キャロル・リードは、エジプトで大好きな考古学を学んでいる。頼もしい兄や、友達や教授に囲まれ、幸せな毎日を送っていた。
ある日、とあるピラミッドの発掘に参加するが、そこは古代エジプトの少年王・メンフィスの墓だった。ピラミッドに眠っていた美しい少年王のマスク、古代エジプトへのロマンに沸き立つキャロル。
そんななか、アイシスという謎の美女が突然現れる。記憶をなくしているという彼女は、キャロルに優しく近づき、リード家で面倒をみることになるが、実はアイシスは古代エジプトの神殿の祭司でメンフィスの異母姉。メンフィスの墓を暴いたことによる祟りを起こすため、現代に現れたのだ。彼女の呪術によって、キャロルは古代エジプトへとタイムスリップしてしまう。
キャロルは、エジプト人にはありえない金髪碧眼に白い肌。そして、考古学の知識と現代の知恵を持つ。やがて古代エジプト人達から、“ナイルの娘”“黄金の姫”と呼ばれ、崇められる様になるが、キャロルは現代を懐かしみ、帰りたいと願っていた。しかし、メンフィスから求愛を受けるようになり、強引で美しい若き王メンフィスに反発しながらも心惹かれてゆく。だが、メンフィスを愛するあまり憎きキャロルの暗殺を企てるアイシスや、キャロルの英知と美しさにほれ込み、彼女を奪おうとするヒッタイト王子・イズミルなど、2人の間には数々の困難が立ちふさがる。
果たしてメンフィスとキャロルの運命は――。

公演特設サイト

おけぴ取材班:chiaki(取材・文・撮影) 監修:おけぴ管理人

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