北島マヤが! 姫川亜弓が! 紫のバラのひとが! ふたたび、劇場に帰ってきます!! G2さん脚本・演出で2014年に初演された舞台『ガラスの仮面』。劇中劇『二人の王女』を中心に、新たなエピソードも加わった新脚本・新演出でさらに深く描かれる2016年版舞台『ガラスの仮面 惹かれあう魂』が、9月
大阪松竹座と
新橋演舞場で上演されます。
「すごく素直で感受性豊か、まっすぐ過ぎるくらいまっすぐなマヤに憧れます」
“千の仮面を持つ少女”──天才女優・北島マヤを演じる【貫地谷しほりさん】
「再演ではなく、舞台化第2弾と思ってほしい」劇場関係者がそう語るほど、大幅な改訂がされているという新脚本。
“ガラスの仮面ダイジェスト版”ではなく、【主人公・北島マヤ】と【ライバル・姫川亜弓】、そしてマヤを見守り続ける【紫のバラの人】との関係性が、より深くじっくりと描かれるとのことで、原作ファンの期待は高まるばかり!
稽古開始直前の8月某日、公演PRのために来阪した主演の【貫地谷しほり】さん取材会で舞台への意気込みを訊きました。
◆【“紅天女”も降臨! 生まれ変わった『ガラスの仮面』】
「新しい脚本を読んで、私のなかで“北島マヤ”を演じるハードルはさらに上がりました」(貫地谷さん)
──初演との大きな違いは?貫地谷さん)
今回は…紅天女が出てきます! 初演ではマヤと亜弓が紅天女の里に向かうところで物語が終わりましたが、今回は実際に月影先生が紅天女を演じる場面があるんです。紅天女の面がパーンと割れるシーンなど、原作のあの描写をどう舞台で表現するのか…私自身もとても楽しみにしています。
初演は原作のいろいろなエピソードを繋いで、テンポよく見せていきましたが、今回はマヤと紫のバラの人、亜弓さんとの場面をより深く、じっくりと見せる作品になっています。より濃い『ガラスの仮面』の世界がお見せできるのではないかと思っています。
──劇中劇の比重も変わるとか貫地谷さん)
原作でも人気の高い『二人の王女』が中心になるのは変わらないのですが、前回よりもさらに長く、がっつりと劇中劇をみせる形になっています。稽古に入ったら“舞台『二人の王女』”に出演しているような気持ちになるかもしれませんね(笑)。
──新しい脚本を読んで印象は?貫地谷さん)
私、思わず泣いてしまいました! 詳しいストーリーはここではお話できませんが、(初演に採用されていた劇中劇『夜叉姫物語』のセリフ)「おらあ、トキだ!」のような、(マヤの天賦の才能をわかりやすく表現する)飛び道具的な(笑)場面はないんです。そのぶん、“天才・北島マヤ”を演じるハードルは上がっています。でも泣けるくらいに感情を揺さぶられたG2さんの脚本に真摯に取り組めば、お客さまに伝わるものがあるのではと思っています。
原作からの採用エピソードは少し変わりましたが、(初演・再演とも出演の)松永玲子さんが大いに盛り上げてくださったオーディションの場面は今回もありますので、そこはぜひお楽しみに。
「『真夏の夜の夢』がチラッと出てきたので、「もしかしてパック役やるのかな?」と気構えたのですが、ページをめくってみたら、その場面はなかった(笑)。原作のあの動きは無理だとG2さんが判断されたのかもしれません(笑)」(貫地谷さん)
◆【“北島マヤ”を演じるということ】
「マヤはいつでも感受性豊かで素直。羨ましいです」(貫地谷さん)
──初演を振り返って印象的なことは?貫地谷さん)
『ガラスの仮面』といえば、今年で連載40周年で、熱いファンの方がたくさんいる作品。その主役を演じるなんて、これはもうメタメタに叩かれて女優としてつらい思いをするのではないかと(笑)、初日の幕が開けるまでは怖くてたまりませんでした。でも実際にはとても温かく受けいれてくださって…千秋楽の拍手の音がいまでも忘れられません。
──実際に“北島マヤ”を演じてみていかがでしたか?貫地谷さん)
『ガラスの仮面』の世界を通して、あらためて「自分にこんな感情があったんだ」という発見がありました。
舞台に出ずっぱりで、衣裳の早替えも多く、身体的にも大変な作品でしたが、“北島マヤ”として切れ目なく舞台にいることで、すごく感情を揺さぶられて。瞬発力が必要な映像作品とはちがう感情の振れ幅というか、心の奥底から湧いていくるような“悲しさ”や“喜び”を舞台の上で感じることができたんです。
やっぱり女優というお仕事って“普通じゃない”部分もあるじゃないですか。大勢のスタッフさんの前でキスシーンをしたり、泣きわめいたり(笑)。そういうお仕事をしながら日々生活していると、“普通の感覚”を忘れそうになることもあるんです。いちいち気にしていたらやっていけないようなことを、考えないようにするとか…。そうしているうちに「私ってなにも感じない人間なのかな」とか「冷たい人間なのかも」と思うこともあって。でも“北島マヤ”を演じることで、毎日たくさんの感情が湧いてきて、「あ、私ちゃんと人間だった」とひしひしと感じることができましたね。
マヤはほんとうに“演劇バカ”で、女優という夢に向かって一生懸命で、まっすぐ過ぎるくらいにまっすぐで。普通は大人になると自分の感情に蓋をしてしまうこともありますよね。それでだんだん心が不感症になっていくんだけれど、マヤの場合はいつでも感受性豊かで、思うままに生きていて、すごく羨ましい環境だなって。誰もがマヤになれるわけではないですけど、舞台の上で自分にもマヤのような感情があると発見できたことは嬉しかったですね。
◆【魅力的な『ガラスの仮面』の世界】
「主人公が突出した能力を持っている物語が大好き。
素直に主人公に感情移入しちゃう“いいお客さん”なんです。私」(貫地谷さん)
──もともと原作のファンだったとか貫地谷さん)
高校生の頃に初めて原作を読んでハマってしまいました。当時は役者としての勉強を始めたばかり。「演劇って、ここまでの情熱を持って立ち向かわなくてはいけないの!?」とガツンと殴られたような気持ちになりましたね。
北島マヤ役に決まったと聞いたときは「嘘でしょ? 引き受けちゃったの!?」と、マネージャーに言ったことを覚えています。「これ、生半可な気持ちで受けちゃダメなお仕事ですよ?」って(笑)。それだけ自分も大好きな作品ですし、熱心なファンが多いことも知っていましたし。
──読者としては北島マヤ派? それとも姫川亜弓派?貫地谷さん)
私、物語はぜったいに主人公目線で見てしまう、いいお客さんなんです(笑)。だからやっぱりマヤに感情移入しちゃいますね。もう主人公の敵はみんな自分の敵に思えちゃう(笑)!
──“乙部のりえ”(マヤをおとしいれるキャラクター)なんて許せない! という感じでしょうか貫地谷さん)
原作を読んでいたときは、「なんだ、こいつは。許せない!」と思っていましたが(笑)、初演の(乙部のりえ役の)内田慈さんの演技が素晴らしくて。「乙部のりえってこんなにおもしろい人物だったんだ」と初めて気がつきました。主人公の気持ちに入り込んで原作を読んでいたのが、舞台で立体的になることでマヤ以外の人物も見えるようになったのかもしれませんね。
──マヤに想いを寄せる“見守る系・男子”のふたり、真澄さまと桜小路くんもそれぞれ魅力的なキャラクターですが、貫地谷さんご本人としてはどちらがお好みですか?貫地谷さん)
うーん…個人的にはやっぱり“紫のバラの人”かなあ…。もう完全に主人公(マヤ)目線ですからね、ああいう少女漫画的な展開には弱いです(笑)。「自分が紫のバラの人だ」「好きだ」って言っちゃえばいいのに! …でも言わない、というもどかしさ(笑)。今回の舞台でも、紫のバラの人=真澄さまのツンデレぶりはしっかり描かれると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。
「あの、もどかしい感じがたまらないですよね!」(貫地谷さん)
◆ 1976年から、いまなお連載中の演劇大河コミック『ガラスの仮面』。
演劇以外に取り柄がない、平凡な少女・北島マヤ(貫地谷しほりさん)と、芸能界のサラブレッド・姫川亜弓(マイコさん)。紫のバラの人としてマヤを見守る大都芸能の若社長・速水真澄(小西遼生さん)、俳優仲間でマヤの理解者・桜小路優(浜中文一さん/関西ジャニーズJr.)、真澄の秘書・水城冴子(東風万智子さん)。そして往年の大女優で、マヤを紅天女へと導く師・月影千草(一路真輝さん)。
個性豊かなキャラクターを演じるメインキャスト、脚本・演出を手掛けるG2さんらスタッフの顔ぶれはそのままに、さらなる進化を遂げる舞台『ガラスの仮面』は、9月1日に大阪松竹座にて初日を迎えます。(東京公演は9月16日から新橋演舞場にて)
演劇の素晴らしさ、夢を追い続けることの美しさと厳しさ。紅天女を目指す北島マヤの奮闘、原作愛あふれるG2さんの新演出を、この目で見られる日がいまから待ちきれません!
〜こぼれ話〜
Q.貫地谷さんにとっての【月影先生】、【ライバル・姫川亜弓】のような存在は?
「中学2年生から通った伊藤正次演劇研究所の伊藤正次先生が私にとっての月影先生。ほんとうにいろいろなことを教えていただきました。ライバルは…うーん、ライバルという感覚が自分のなかにあまりないですね。でも素敵だな、こうなりたいな、と思う方はいます。最近だと同時期に2つの作品で共演させていただいた富田靖子さん。演技がほんとうに素晴らしくて、お人柄も素敵で。ああ、こういう人になりたいな、と素直に思いました」
おけぴ取材班:mamiko(文/撮影) 監修:おけぴ管理人