クリスマスシーズンに新国立劇場バレエ団が贈る幸せいっぱいのバレエ『シンデレラ』。ゴージャスでロマンティックで、さらにコミカル!!アシュトン振付による英国ロイヤル・バレエ版『シンデレラ』でシンデレラ、王子を演じる柴山紗帆さん、渡邊峻郁(たかふみ)さんにお話をうかがいました。
この日に行われた2幕と3幕のリハーサルの様子とあわせてお届けします。
──通しリハーサルを拝見いたしましたが、とても素敵なシンデレラと王子様でした。リハーサルを終えていかがですか?渡邊さん) 実は、2幕、3幕と通ししたのは、今日が初めてです。仕上がりはまだまだですが、一度通した!ということが、今日の最大の収穫です(笑)。
柴山さん)
はい。大変でしたが、なんとか通せました(笑)。──リハーサルが終わったときに、お二人がひっそりとハイタッチをしているのが見えましたが。渡邊さん) まずは一回乗り切ったぜ!ということで、ハイタッチも、今日初めてしました(笑)。ねっ!
柴山さん)
はい(笑)。──励まし合い、支え合うお二人の様子をとっても微笑ましく拝見していました。踊っているときも、お二人の笑顔が、見ている側をすごく幸せな気持ちにしてくれるんです!渡邊さん) よかった。“いい表情で”というのは、僕らが目標にしていることのひとつなんです。
──お二人の醸し出す空気にすっかり魅了されました。さて、お二人は今回初めてペアを組まれるということですが、リハーサルしていくなかでお互いの印象は。渡邊さん) 紗帆ちゃんはひとつひとつを、キッチリ、しっかりと積み重ねていく努力家ですね。
柴山さん)
峻郁さんはすごく優しくて、練習にもずっと付き合ってくれて、本当に助けられています。──(なんだか聞き手が照れてしまうほど、真っ直ぐなお二人!) それは踊りからも伝わります!では、キャスティングされたときの率直な思いと、今の時点で役をどのように捉えているかをお聞かせいただけますか。柴山さん)
シンデレラ役は、すごくうれしかったのですが、体力的なことや、誰もが知っているがゆえに、『シンデレラ』の物語をちゃんと伝えられるかなど、不安もありました。
シンデレラ像については、はじめはかなり不幸な感じをイメージしていたので、先生からも「ちょっと不幸すぎる」と言われてしまって(笑)。シンデレラ役の先輩から、アシュトン版では、もう少しポジティブで前向きに頑張る感じだと聞き、それを心がけています。今も先輩方が踊るのを見て学びながら、自分のシンデレラを創り上げられたらと思っています。渡邊さん) 僕は、(配役を)聞いた瞬間、小さくガッツポーズをしました。心の中で「よし!やってやるぞ!」と(笑)。役をいただいたからには、きちんとそれに見合った何かをやるぞ、お見せしようと!
王子は、まさに正統派な、颯爽とした“THE王子”のイメージ。それに加えて、姿を消したシンデレラを見つけ出そうと決意したら、国中を探し、なんとしてでも見つけ出すという強い信念のある王子だととらえています。
──そんなお二人が組むことで、どんな『シンデレラ』になりそうですか。先ほども少しお話が出ましたが、お二人の目標は。渡邊さん) もちろんパートナリングの面で、二人が出会った喜びなどの感情表現を突き詰めることも大切ですが、最終的にはキラキラ感かな(笑)。とてもきらびやかなバレエ、その中心にいる二人なので、僕らもそんなオーラが出せれば…ね。
柴山さん)
はい。私は踊りが地味になりがちなので、常にキラキラ感は課題です。そして、シンデレラはお衣裳もすごく素敵なので、それにも負けないようにしないと(笑)。渡邊さん) シンデレラは1幕からずっと踊りっぱなしというか、体力的にも大変な役だよね。王子は2幕からなので。でも、パッと出てきた瞬間の華やかさというのは難しくもありますね。
──そのために何かご準備を?渡邊さん) ご準備は…(笑)。なんだろう、さわやかな顔?!僕、力が入ると眉間にしわが寄る癖があるので、そこも気を付けながら踊っています(笑)。
──ここで、アシュトン版『シンデレラ』についてうかがいます。ずばり作品の魅力は。渡邊さん) 今回の配役が決まって、アンソニー・ダウエルの王子、そしてアシュトン自身が意地悪なお姉さんを踊っている、昔のロイヤル・バレエの映像を見ました。シンデレラと王子の優雅なパ・ド・ドゥもあれば、お姉さんたちのコミカルな踊りもある、とてもエンターテインメント性の高い作品ですね。
柴山さん)
私もお姉さんたちや道化の踊りをいつも楽しみに見ています。あとは2幕のシンデレラと王子が出会うところのパ・ド・ドゥと音楽もとても印象的です。大きな見せ場になると思うので、私もその魅力をしっかりと表現したいと思っています。渡邊さん) あの音楽は気持ちが上がるよね!
写真左より)妹娘の髙橋一輝さんと姉娘の小口邦明さん
噂のお姉さんたちを男性ダンサーが踊るというのがオモシロイ!
「意地悪だけど憎めないお姉さんたちです(笑)」(柴山さん)
──実際に踊っていていかがでしょうか。シンデレラも、ただエレガントに…という振りではないですよね。柴山さん)
アシュトンの振りは独特で、とくに手の使い方などは古典とは全然違って大変ですが、私はそれが好きなんです!アシュトンならではの踊りの緩急などを、これからさらに突き詰めていきたいと思っています。──楽しみです!ここからはお二人ご自身についてうかがいます。渡邊さんは今年入団され、最初のシーズンを過ごされていますが、(フランス・トゥールーズのキャピトルバレエ団にてソリストとしてご活躍後、新国立劇場バレエ団に入団)バレエ団の印象は。渡邊さん) まず、ひとりひとりの意識が高い。そこが徹底されたバレエ団という印象です。このぐらいでいいやではなく、それ以上を求めて切磋琢磨しています。そこにはお手本になる先輩方もたくさんいて、日々たくさんのことを勉強しています。
──このバレエ団への入団を希望された決め手は。渡邊さん) 海外にいたころから話を聞いていましたし、レパートリーの多さなどから、日本へ帰ることを決めたときに、まず、ここへ入りたいと思いました。
──7月には「こどものためのバレエ劇場『白鳥の湖』」で主役のジークフリードを演じられ、今度は『シンデレラ』の王子、これからも新国立劇場バレエ団の多彩なレパートリーでさまざまな役に挑戦されることを期待しています!さて、一方で柴山さんは入団から3シーズン目ですね。柴山さん)
早いですね。ようやく慣れてきました(笑)。入団以来、先輩方もやさしくて、たくさんのことを教えていただきました。“バレエ団として”という意識の高さのせいか、本当に細かいところまで惜しみなく教えてくださるんです。先ほど峻郁さんがおっしゃったように“妥協を許さず”の精神です。──これから、どんなダンサーを目指しますか。柴山さん)
イメージを固定せず、どんな役が来ても踊れるダンサーになりたいと思います。技術的にもそのためにはお稽古あるのみです。──『シンデレラ』のチラシにもある、柴山さんのアーティスト写真が非常に大人っぽくて“攻め”の印象なので(笑)、お話をうかがっていて控えめなご本人とのギャップが…。柴山さん)
すごく大人っぽく撮っていただいていて…。こういうイメージの役も、いつかすんなりとできるように頑張ります(笑)。──では、最後にこの公演を楽しみにされているみなさんへメッセージを。渡邊さん) クリスマスシーズンにぴったりなキラキラとした舞台になるように僕や紗帆ちゃんはもちろん、カンパニーのダンサー一同で日々リハーサルに励んでいます。ぜひ、ご覧いただきクリスマス気分を満喫していただければと思います。
僕らの公演日はちょうどクリスマスイブなんですよね!…責任重大ですね(笑)。
柴山さん)
そうですね!クリスマスに『シンデレラ』を見に来ていただく、みなさんの大切な時間を割いていただくのですから、その時間が素敵な時間になるように精一杯務めたいと思います。そして、作品は周りの方と一緒に創り上げるものなので、周りの人とのつながりを大事に踊りたいと思っています。見に来ていただけるとうれしいです。お二人)
お待ちしています!──ありがとうございました!
劇中に出てくるオレンジのような、柑橘系の甘酸っぱさを感じるフレッシュなお二人。リハーサルからインタビューまで、自然に笑顔になる取材でした。【リハーサルより】
<華やかな舞踏会を彩る群舞>
<シンデレラと王子のパ・ド・ドゥにうっとり>
そのシーンごとにお二人の心が動いているからこそ、伝わるものがあります!
魔法使いの仙女は木村優里さん
2幕&3幕の通しリハーサルが終わりほっとしたお二人に…もうひとポーズ!
カーテンコールの決めポーズが待っていました
「なんとなく、こんな感じ?ってやってみましたが、先輩方を見て参考にしないと!」(渡邊さん)
即興ポーズはお二人の人柄のよさが前面に出た微笑ましい一枚に
そっと毛布をかけてあげたくなるような…(笑)
健気で応援したくなるシンデレラです!
上演期間中には、ご来場のお客様向けにオペラパレスホワイエ、プロムナードにて、お子様向けのネイルコーナーやゲームコーナー、お菓子販売、バルーンアートショーなどクリスマスイベント開催です!詳細は
こちらをご覧ください。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人