戦争の話かと思ってましたが色々な「愛」の物語でした。(おけぴに寄せられた感想コメントより)
ナチス占領下のパリで繰り広げられる
「闇を抱えた少年」「踊り子の少女」「レジスタンスの青年」
3人の魂の物語─。
1996年に『トーマの心臓』を、世界で初めて演劇作品として上演して以来、“少女漫画界の神さま”と呼ばれる萩尾望都さんの作品を次々に舞台化してきた劇団スタジオライフ。
今回、満を持して取り上げるのは、戦時下、冬のパリを舞台に、奇妙な共同生活を送ることになる踊り子ルイーズと謎の少年ラウル、そしてレジスタンス活動に身を捧げる青年マルシャンの、衝撃的な魂の物語『エッグ・スタンド』です。
ユダヤ人であることを隠して生きるルイーズと、“ある犯罪”を犯した過去を持つラウル。あまりにも無邪気なラウルの存在感が、戦時下の極限状態をかえって際立たせ、何かを感じざるを得ない傑作短編、初の舞台化。
ダブルキャスト、Noirチーム・Rougeチームそれぞれの舞台写真を、おけぴ会員のみなさまの感想コメントとあわせてお届けいたします。
(以下、青字はすべておけぴ会員から寄せられた感想コメント)◆◆萩尾望都作品とこの劇団はつくづく相性がよいと思う。
漫画とは違う表現で同じ世界を作っている。
さらに、お芝居を見たあと、原作にも新たな解釈が生まれて刺激的である。
ひとつひとつのセリフが肉声で語られると、暖かみ、温もり、甘さ、優しさ、冷たさ、怖さ、絵から伝わるものとは違う魅力がある。(写真左から)Noirチーム・ラウル役:松本慎也さん、ルイーズ役:曽世海司さん
◆第二次世界大戦ドイツ人占領下のパリが舞台ということで、なんか暗そう…と、観るのをためらっていらっしゃる方はいませんか?
ステージの背景は、とてもシンプル。モノクロ映画のよう。その中で、踊り子たちの衣装の色、花の色などが、色鮮やかに、印象的に目に写りました。
萩尾先生の作品ならでは…の印象的なセリフが心に残ります。原作を知らない方も是非、観に行ってみて下さい。
◆曽世さんのヒロイン、少し意外でしたが安定の演技力で魅せて下さいます。
松本さんの少年役も必見ですし、岩﨑さんの紳士っぷりも素敵でした。(写真右)Noirチーム・マルシャン役:岩﨑大さん
◆事前に原作を読みましたが、
松本ラウル、曽世ルイーズ、岩﨑マルシャンが原作から出てきたみたいにピッタリでした。◆必要最低限のセットでしたが、シーンの切り替わりに照明が細かく変化したり、役者のマイムで、無いはずの建物や調度品が感じられたりしました。
戦時下の重苦しい空気がなまなましく迫る舞台です。
ラウルはどこまでも無垢で残酷な幼い少年で、ルイーズやマルシャンとあたたかくささやかに生きているはずなのに、ずっとずっと確かなズレをこちらに感じさせていました。
ルイーズの等身大の素直さ健気さが切なかったです。
◆「人を殺すってどんな気分?」
何故と問うとき、見上げる少年(松本慎也)の無垢の瞳はガラス玉のよう。
透明で虚ろ。卵は束縛のイメージなのか、雛を守るものではなく?
死の気配の濃密な時代の下に相寄る三人の魂。
いたいけな少年を演じる松本慎也の存在感、主役三人のバランスが緊張感に満ちてすごすぎる。
こうなるとダブルキャストのもう一つのチームはどうかとても気になる。(写真左から)Rougeチーム・ラウル役:山本芳樹さん、久保優二さん
◆山本芳樹さん演じるラウル少年の透明な存在感に心を奪われました。
公演期間中にさらに進化するのか、気になります。
個人としての殺人は許されないが、戦争と言う大義の下での殺人は許されるの?少年の言葉が心に刺さります。
Noirチームも見てみたくなりました。
◆ハマり役! の方もいれば、想像すらできなかったけど、すごく素敵!! な方もいて、心底楽しめました。
笠原さんと山本さんが、重要な役にキャスティングされるのは、こういう芝居ができるからなんだなーと納得です。
Rougeチーム・マルシャン役:笠原浩夫さん
◆笠原さんのあたたかな芝居、過酷な時代を生きる人々、その真摯な生き方が伝わってきました。笑顔の優しさに救われます。
◆オールメールとは思えない、繊細で優美な作風はいつも通りですが、
それだからこそ、逆に人間の心を破壊する戦争の恐ろしさや虚しさが際立って見えました。
ルイーズ役の久保さんは相変わらずの美しさ。山本さんは、天使と悪魔の両方をあわせ持つ難しい少年役を見事に演じていました。キャバレー「花うさぎ」の踊り子たちとドイツ軍人
◆ナチス占領下のパリが舞台で、暗く重いお話です。
でもいろんな人の視点がみれるお話かと。同じ行為でも人によって意味が変わるというか。
ホステス役の若手たちのダンスや、それをみるドイツ兵たちの小芝居も面白いです。
◆花うさぎの女の子たちが美人ぞろいで可愛いです。
屋根のシーン。ラストの公園のシーン。そして、ポージングがとても美しくて胸が熱くなりました。
◆原作では描ききれない心理描写を、スタジオライフの役者さんたちが繊細に演じられています。
華やかな踊り子さんの場面も作品のスパイスになっていると思います。
◆観劇後、10数年ぶりに、原作を読み返しました。
改めて、萩尾先生の描く少年の【言葉】に、衝撃を受けました。スタジオライフの初演に感謝します。◆男性のみの劇団ですが、原作ファンも納得の上品で丁寧なお芝居です。
すぐに違和感は無くなり、ドイツ占領下のパリに連れて行ってもらえます。
戦時下、つらいことは多いけど、ささやかな幸せもある日々を生きる登場人物たち。
そう見えていたのに、悲劇的な事実が明らかになってくる。
テーマは重いけど、悲しいだけじゃない静かで深い感動を味わえます。
◆原作の持つメッセージを忠実に舞台化した、昨今流行のビジュアル重視の2.5次元ミュージカル等とは一線を画す、スタジオライフらしい作品。
愛しているから殺せる、見知らぬ人を挨拶もなしに殺せるのかというのは、人を殺すということの重みを感じさせる深遠な台詞だと思う。
◆ラストのマルシャンの行動に納得しつつその瞬間にどっと涙が溢れました。
◆私は宝塚の大ファンですが、宝塚では男役を、スタジオライフでは女役を観てしまって自分が面白いなあと思った。◆【おけぴスタッフ観劇ポイント♪】
Noirチーム初日、舞台に登場した曽世ルイーズ、松本ラウルをみて息を呑んだ。髪型、衣装、身のこなし、喋り方…10代の頃に夢中になって読んだ原作漫画のイメージがそのまま目の前に現れたような錯覚に囚われたからだ。演じるふたりは劇団の中でもベテランに位置する“男性俳優”。けれど舞台の上にいるのは確かに、過酷な時代を生き抜こうとする少女ルイーズと、あたためられすぎた“ひよっこ”ラウルだった。特に曽世ルイーズはメイクの工夫もあるのか、ときにマンガのコマそのままの雰囲気を漂わせる。萩尾望都作品に真摯に向かい合い、演劇として立ち上げてきたこれまでの歴史があるスタジオライフだからこその完成度。ぜひ原作ファンにも劇場で確かめてほしい。立ち姿が美しい岩﨑マルシャンが、少女漫画らしい甘さを加えているのも心地いい。
対するRougeチームは、底知れぬ不気味さと虚無感を感じさせる山本ラウルの存在感が光る。なにもかも達観した老人のような表情と、少年の無邪気さ。山本ラウルが巧みに表現すればするほど、それを受け止める笠原マルシャンのやりきれなさ、苛立ちも増幅し、結果的に作品の持つメッセージ性をより強く感じさせる仕上がりになっている。ベテラン2人とわたりあう久保ルイーズの美しさも、男性が女性役を演じるスタジオライフならではの楽しさを感じさせて嬉しくなる。
原作を捻じ曲げることなく約95分にまとめた脚本、演出、そして舞台セットも非常にシンプル。だからこそ浮かび上がる作品のテーマに心を揺さぶられる観劇体験。愛、戦争、倫理観…答えの出ない問いかけを反芻する帰り道もあわせて、萩尾望都×スタジオライフの魅力が詰まった時間を過ごせた。『エッグ・スタンド』製作発表レポート
舞台写真提供:劇団スタジオライフ 感想コメント:おけぴ会員のみなさま
取材・編集:mamiko 監修:おけぴ管理人