【公演ニュース】新国立劇場「プライムたちの夜」ニュース&コラムが届きました!


新国立劇場開場 20 周年記念公演の第2弾「プライムたちの夜」が、11 月に宮田慶子演劇芸術監督の演出で上演されますが、上演に先立ち、公演ニュース&コラムが届きました。

作品の舞台は 2060 年頃 。「プライム」と呼ばれるアンドロイドが、日常にすっかり溶け込んでいる世界です。人は、愛する人の人格や姿をアンドロイドにうつし、その人の死後も一緒に暮らします。ただし作品の肝は、その SF 性や未来の描き方ではなく、プライムとその遺族との関わり方を通して見えてく る、生きている人間本来の“感情”であるのだとか……。

2045 年には AI が人間の知能を超すと言われています。今や、私たちの生活のすぐ隣に、未来は現実として姿を現してきているのかもしれません。

この秋、演劇芸術監督宮田慶子が日本で初めて立ち上げる話題の舞台。ぜひお見逃しなく!


本作の上演に際し、この物語に通じるコンセプトを持つ「デジタルシャーマン・プロジェクト」という企画を 進めているアーティストの市原えつこ氏に取材した。
「デジタルシャーマン・プロジェクト」は 2017 年の文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で「シン・ゴジラ」に次いで優秀賞を受賞し、今注目されている。 死者の魂を科学技術によってロボットに移し、49 日の間一緒に過ごすことで遺族の心を癒すという、まさに 「プライムたちの夜」の世界を先取りしているプロジェクトである。


市原えつこ氏によるコラム

身近な人の死を経験したことはあるだろうか。
ない、という人の方が珍しいかもしれない。

私にとって、初めての近親者との離別は祖母の死だった。 お婆ちゃん子だった私は、自分が成長すると同時に祖母から発せられる「死の匂い」が徐々に濃くなっていくのを感じていた。大好きだった祖母が、老いとともに元来の人柄や姿を変えていくのが会うたびに分かる。しかしそれが分かったとて、何もできない。 やがて祖母が亡くなり、通夜葬儀を迎え、弔いのプロセスにより心が整理されるのを感じながらも、彼女に対して何もできなかった後悔や、「次は自分の両親の番だ」という逃れられない事実の重みがのしかかってきた。

いつか必ず訪れる大事な人との別れに、私たちはどう向き合えばいいのだろう? 自分なりにその答えを探すため、当時仕事で扱っていた家庭用ロボットを改造し、故人の似姿を再現するプロジェクトを始めた。

その名も「デジタルシャーマン・プロジェクト」。 試行錯誤のすえ、故人の代替として愛着を持てるような、死後 49 日間だけ一緒にいてくれるロボットを開発した。生前に取得した顔・しぐさ・声など身体の特徴をもとにアプリをつくり、死後にロボットにインストー ル(憑依)させる。
そして、仏教で死者の魂が地上をさまようとされる死後 49 日間だけ稼働させ、遺族の心を癒やす手助けをす る......というものだ。

人類の歴史は弔いの歴史でもある。 大事な人を失う喪失の感情は全人類共通で、これまで様々な文化圏で多種多様な喪のプロセスが行われてきた。 科学技術が発達した現在だからこそ可能な、新しい弔いの形があるはずだと私は考えた。

現代では人工知能、チャットボット、ロボティクスとい った、人間を再現することが可能なテクノロジーが急速 に身近になってきている。国内外の主要企業が独自のチャットボットを開発し、Google をはじめとした巨大企 業が人工知能の技術を猛スピードで更新し、ソフトバンクの Pepper などのヒト型ロボットもどんどん一般家庭 に普及しつつある。 身近な誰かが亡くなったとして、その人を模したロボットなり人工知能プログラムなりを作ることは、物語の舞台である 2050 年を待たずとも、今の技術でもある程度 は可能だ。そして今後、どんどん加速していく流れになるだろう。

そういった科学技術の進化の果てに、誰かを失った喪失感すらもテクノロジーによって埋め合わせできるのだろうか? 人類がこれから向かうことになるであろうそんな問いがこの戯曲「プライムたちの夜」では描かれている。 本作の脚本を読んで、突飛な思いつきで開発を始めた「デジタルシャーマン・プロジェクト」が普及したあとの未来像を見ている気分がした。 日進月歩で科学技術が発達する現代。その中を生きる人間がずっと持ち続ける感情や非合理性。その間で生ま れる軋みや葛藤こそが、かろうじて人間を人間たらしめるのかもしれない。(新国立劇場チラシより転載)


市原えつこ
(メディアアーティスト/妄想監督)
【プロフィール】メディアアーティスト、妄想監督。1988 年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。 日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作す る。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web 媒体、海外雑誌等、多 様なメディアに取り上げられている。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス《セクハラ・インターフェー ス》、虚構の美女と触れ合えるシステム《妄想と現実を代替するシステム SRxSI》、家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ 49 日間共生できる《デジタル シャーマン・プロジェクト》等がある。 2016 年に Yahoo! JAPAN を退社し独立、現在フリーランス。
《デジタルシャーマン・プロジェクト》で総務省異能 vation(独創的な人特別枠)に採択、第 20 回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞 を受賞。「内閣官房オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査:文化を 通じた機運醸成試行プロジェクト」として ISID イノラボとの共同プロジェクトが採択。


公演情報
「プライムたちの夜」
2017 年 11 月 7 日(火)~26 日(日)
新国立劇場小劇場

作:ジョーダン・ハリソン
翻訳:常田景子
演出:宮田慶子
出演:浅丘ルリ子、香寿たつき、佐川和正、相島一之
料金:A席6,480円 B席3,240円 Z席1,620円

公演 公式ホームページはこちら

この記事は公演主催者からの提供により、おけぴネットが製作しました

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