こまつ座第120回記念公演『きらめく星座』開幕レポート~栗山民也さん&キャストコメント&舞台写真&感想が届きました~




 井上ひさし作品の中でも“私戯曲”と語られ、自らの経験を基に書かれた「昭和庶民伝三部作」の第一作、戦争の足音が聞こえる時代、星のようにきらめく庶民たちを描いた『きらめく星座』
 井上ひさしさんの音楽劇の代表作としてファンの皆様に愛され続ける本作が、大好評上演中です!

『きらめく星座』稽古場レポート&田代万里生さんインタビュー



左より、深谷美歩さん、山西惇さん、秋山菜津子さん、久保酎吉さん、田代万里生さん、後藤浩明さん、木場勝己さん


 開幕リリース(井上さんの言葉、演出の栗山民也さん、出演の秋山菜津子さん、山西惇さん、田代万里生さん、木場勝己さんからの開幕コメント)が届きました。舞台写真、早速ご覧になったみなさまからお寄せいただいた感想とともにご紹介いたします。


 言葉を扱う発信者側の責任、発信された言葉をどう受け止めるかという受信者側の責任、この二つの責任をどう考えるかは、今もわたしたちの課題でありつづけていますが、それを「うんとおもしろく」書いたものがこの作品です。ですから、うんと楽しんでいただければそれでいいのです。そして皆様のお心のどこかに受信と発信の関係について少しでも残るものがあれば、それこそ作者冥利に尽きます。―――井上ひさし(「こまつ座通信」1996年1月より)

◆あらすじ◆
 昭和15年の浅草。小さなレコード店「オデオン堂」に四人の家族と二人の間借り人が仲良く暮らしていた。しかし、陸軍に入隊していた長男の正一が脱走して「非国民の家」扱い。追手がかかり憲兵が住み込みで見張りをする始末。ところが長女・みさをがたくさんの傷痍軍人と交わしてきた文通ハガキの中から選んだ源次郎と結婚するにいたって、今度は一転「美談の家」に。ジャズ(=敵性音楽)が好きで歌謡曲(=軟弱な音楽)が好きなオデオン堂の面々と、軍歌一辺倒の婿・源次郎は何かと衝突が絶えない。戦争へ向かう世の中に振り回されて、生活の小さな喜びを大事にしてきた普通の一家の行く末は、果たして。


<開幕によせて>



左より、秋山菜津子さん、久保酎吉さん


左より、木場勝己さん、深谷美歩さん、後藤浩明さん、山西惇さん


【演出:栗山民也さんコメント】

 三年前と同じ顔ぶれの俳優が集まった今回の稽古場は、実に豊かな時間だった。言葉が俳優の肉体に染み込んだ状態でスタート出来たので、自然に開かれていく様は、あたかも日常生活の断面をそのまま切り取ったように柔らかだ。井上さんに見せたい、聞かせたいと、心から思う。日常のニュースのなかに平然と流れる、「排除」「選別」といった言葉が人間に対して平然と使われる今の時代は、『きらめく星座』で描かれる時代と怖いほどに重なる。こういう芝居が必要ないと「排除」されるのなら、もう私たちの生活から物語や文化というものが、どこかへ葬られてしまう事になる。ちゃんと守らなくては、と切実に思う。



【出演:秋山菜津子さんコメント】

 私が今までに出会った作品の中で、ベストワンの戯曲であると改めて深く感じさせられた、今日までの稽古の日々でした。
 何度も本作品を観ている方も、初めての方も、若い方も、演劇がちょっと苦手という方も、とにかく“現在(いま)”この時代に生きているあらゆる方に観て頂きたい。
 これ程皆さんにお届けしたいと願う作品は、本当に稀かもしれません。それだけの魅力と力を備えた井上ひさしさんの「きらめく星座」。私も誠心誠意、心を込めて演じたいと思っています。



【出演:山西惇さんコメント】

 3年ぶりに高杉源次郎として初日を迎えられること、光栄に思います。
 この名作戯曲を鯛の塩焼きに例えれば、夢中で食べた3年前と比べて、今回は一口ずつじっくり味わい、残った骨からも美味しいお出汁をとっていただいた位に更に充実した稽古が出来ました。
 初演から30年以上を経てもなお、益々輝きを増して今の私たちの胸に迫る「きらめく」台詞の数々を、素敵な共演者の皆様と共に精一杯お届けしたいと思います。
 劇場にてお待ちしています。



【出演:田代万里生さんコメント】

 昭和15 年の浅草の人々は、いったいどんな気持ちで、どんなきらめく星座を見上げていたのか。現代の私たちは、今【何を】見上げているのか。今回の舞台は、例外なく誰にとっても自らのルーツに繋がっているのではないかと思います。井上ひさしさんの力強いメッセージをこの作品を通して精一杯体現し、人間そのものである『ピカピカの奇蹟』を、より一層輝かせることが出来ますように。数ある井上ひさし作品の中でも、自身の「私戯曲」とまで言っているほど思い入れのある大傑作。全力でお届け致します。



【出演:木場勝己さんコメント】

 1992年、初こまつ座が『きらめく星座』。この時の役は、脱走兵・正一です。
 2009年、2014年の再演では、広告文案家・竹田慶介です。自ら語っていた台詞を聞き、聞いていた台詞を、自らが口にする、奇妙で新鮮な経験でした。そして、もうすぐ初日の今回も、竹田慶介です。あの「人間広告」の台詞を、長年に渡って言わせていただきましたが、オデオン堂の居候も67才。今回が最後になるかも知れません。




<お寄せいただいた感想>




左より、久保酎吉さん、秋山菜津子さん、木場勝己さん


♪最高傑作に最高キャストが集い、芝居を超えたと言いたくなるほどの、キセキのような瞬間を作り出しています。ぜひ、あの場所に参加、時間と想いを共有して欲しいと思います。観劇が「生きる」体験になります。
 どんな状況にあっても「心の青空」だけは、だれにも渡さずにいたいと思いました。

♪誰かが歌い出すと、みんなで大合唱になる、そんな一体感がとっても愛おしかったです。
曲もどれも素晴らしい!私の青空を秋山さんが最後にとびきり上手に歌う所で、全ての不条理を吹き飛ばしてやる!という固い意志のようなものを感じて勇気をもらえました。

♪昭和15年、開戦間近の東京の小さなレコード店。軍国主義の歪みにも、僅かな食料配給にも、負ける事なく陽気に明るく生き抜いている。その明るいやりとりに、井上ひさしの魅力がたっぷり詰まっていて、当時の名曲も使われていてとても楽しい。しかしそんな家族にも、戦争の暗い影が忍び寄って…。今こそ上演される事に意味のある作品だと思いました。秋山菜津子がきらめく演技、田代万里生が爽やか!



左より、木村靖司さん、木場勝己さん、田代万里生さん、久保酎吉さん、深谷美歩さん


♪NHKで見て以来、いつかナマの舞台で観たいと思ってた作品を観ることがか出来て、本当に良かったです。あの時代の日本人の在り様、不条理と悩み、それが全て日常の中にあるから、キリキリと心に食い込んで来て、観ていて辛かった。それなのになんとも言えない明るさがあるのが嬉しい様な更に辛い様な複雑な気分でした。
 多くの若い方に見て欲しい。
 これをキッカケに考える事が貴重な体験になると思います。

♪笑いながら涙をこらえながら、濃い濃い芝居を楽しみました。
 家族と仲間を普通に守っていく人たちを軸に、山西さん演じる傷痍軍人で娘の夫が、自分が信じて全てを捧げてきた生き方のおかしさを失った右手の痛み、疼きに気づかされていく過程、価値観の違う竹田(木場さん)との台詞のやり取りは、ボケとツッコミの達人の漫才以上の面白さ。見所いっぱい。最後は、やっぱり泣いてしまいます。美しすぎます。

♪茶の間に忍び寄る戦争。それでも歌い笑い、明るく生きようとする人々。
 井上ひさしさんの傑作はたくさん見てきましたが、今回の公演はまた一段と素晴らしいです。圧巻の舞台、是非体感してください。生が一番です。

♪大感動する舞台でした!オデオン堂の温かくて柔らかい雰囲気に、厳しく鋭い現実が入り込み、ドキドキハラハラで、舞台に引きこまれました。1幕2幕、それぞれのラストで涙があふれました。
 心に突き刺さるラストに、きな臭い今を改めて考えさせられます。迷っていたら絶対観てほしい、観て良かったと思える舞台です。そして、茶の間の日めくりカレンダーにも注目してください。



左より、木村靖司さん、久保酎吉さん、木場勝己さん、秋山菜津子さん


<「こまつ座のキセキ」展>(リリースより)


★劇場ロビーにて開催★
幻の未発表作品「パズル」特別限定公開と
楽しくこまつ座がわかる「こまつ座のパズル」を展示!


 こまつ座第120回公演を記念し、こまつ座(井上麻矢)所蔵の井上ひさし未発表作品「パズル」の原稿を特別に公 開いたします。公開するのは幻の作品の直筆原稿用紙、冒頭3枚。今後上演されることのない幻の作品の序章をお楽しみ下さい。

 また、「パズル」原稿の公開と合わせて、楽しくこまつ座の作品を知る事ができる「こまつ座のパズル」を同時展示いたします。第1回公演『頭痛肩こり樋口一葉』から公演中止となった『オセロゲーム』や紀伊國屋サザンシアターの杮 落とし公演となるはずだった『普通の生活』まで、特別公演などを含めこまつ座として上演歴があるのは全48作品。そのうちの43作品が列記されています。欠けてしまった5作品はなんなのか。5作品全て正解した方から抽選で、こまつ座豪華オリジナルグッズをプレゼントいたします。是非お楽しみに!


こまつ座代表 井上麻矢さんより

 こまつ座は1984年の旗揚げ公演から、今回で第120回公演という記念の回を迎えることができました。
 お芝居は一人では作れません。たくさんの演劇を愛する人たちの手をお借りして33年走り続けてまいりました。
 今はもう座付作者であった井上ひさしはあの世に行ってしまいましたが、井上ひさしが遺した作品をピカピカに磨き上げて新しく生まれ変わらせるのが私たちの“これから”になります。「過去に学んで未来に生かす」気持ちでこれからも歩み続けていくことでしょう。いつも観てくださるお客様にどうしたら喜んでいただけるか、私たちが今回企画した展示はそんな気持ちの中で生まれました。 混沌とした時代だからこそ、劇場でしか味わえないものをお持ち帰りいただけるように取り組んでいます。どうか劇場に足を運んでいただければ幸いです。



【1】井上ひさし未発表作品「パズル」直筆原稿 展示



 その筆の遅さから「遅筆堂」とも自称した井上ひさし。公演初日までに書き上げることができず初日を延期した作品、公演自体が中止となった作品も多くあります。その中でも有名なのが「パズル事件」と呼ばれるものです。この事件は『パズル』を初日までに完成させることができなかった井上ひさしが多くの賠償金を自身で支払うことになったというものです。今回、実は完成していた戯曲『パズル』の原稿の冒頭を劇場限定で公開いたします。


【2】こまつ座宣伝美術のキセキ



 これまでの120回の公演をチラシと共に振り返る展示です。こまつ座のチラシで特徴的なのは表面に描かれるイラスト。安野光雅氏、和田誠氏、ペーター佐藤氏など…数多くの方に描いていただきました。もちろん新作の時には台本が完成していることは稀で、井上ひさしのわずかなイメージをヒントに描かれた絵が多数。さらには公演中止となり今では見ることができないチラシも展示します!


【3】「こまつ座のパズル」



 1984年の旗揚げから特別公演なども含めこまつ座で上演してきた48作品を、パズルの1ピースに1作品を書いて展示。その中でピースが抜けている場所に書かれている5作品を当てるクイズ形式の企画です。「こまつ座のパズル」を見ながら劇場ロビーで“親と子”など、世代を超えて会話が弾む…そんな企画を目指しています。



【公演情報】
こまつ座第120回記念公演『きらめく星座』
2017年11月5日(日)〜11月23日(木・祝)@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
2017年11月30日(木)@宮城県 えずこホール(仙南芸術文化センター)大ホール

★スペシャルトークショー★
【終了】11月7日(火)13時公演後:ーキャストトークー 秋山菜津子、山西惇、田代万里生、木村靖司、深谷美歩
11月12日(日)13時公演後:ー戦争の足音が聞こえる時代にー吉原毅(城南信用金庫 顧問)
11月16日(木)13時公演後:井上ひさし誕生日特別トークショー辻萬長、木場勝己、久保酎吉、後藤浩明
11月21日(火)13時公演後:ー「音楽」は人に「笑い」を連れてくる!ーいとうせいこう(作家・クリエーター)
※アフタートークショーは、開催日以外の『きらめく星座』のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。ただし、満席になり次第、ご入場を締め切らせていただくことがございます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。


◆同時開催◆
『こまつ座のキセキ』
第120回公演を記念して、こまつ座の33年間の軌跡を秘蔵の資料と共に展示いたします。
他では見られない貴重な資料を一挙大公開!!『きらめく星座』公演期間中、劇場ロビーにて開催。

<スタッフ>
作:井上ひさし
演出:栗山民也

<キャスト>
秋山菜津子、山西惇、久保酎吉、田代万里生、木村靖司
後藤浩明、深谷美歩、阿岐之将一、岩男海史、木場勝己

ごく普通の人間のごく普通の生活をキチンと描けば観客が腹をかかえて笑い、ポロポロ涙を流してくださる。
観客の笑いと涙、これは戯曲を書く人間にとって最大、最高の勲章です。
これが昭和庶民伝三部作そもそもの始まりです。
これはいわば私戯曲のようなもの。
戦争の影が日ごとに色濃くなっていた昭和15年、太平洋戦争開戦の前年、
東京・浅草の小さなレコード店に集う人々を通して描いた作品です。
描く時代は決して明るいものではありませんが、
各場にちりばめられた当時の流行歌に載せて描かれた物語は、
涙と笑いに満ち満ちた懐かしい香りのするものなのです
―――井上ひさし


公演HPはこちら

舞台写真提供:こまつ座 感想寄稿:おけぴ会員のみなさま
編集:chiaki 監修:おけぴ管理人

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