1967年の日本初演から50周年、長きにわたり愛され続ける
『屋根の上のヴァイオリン弾き』が開幕しました!2004年からテヴィエを演じる
市村正親さん、2009年から相手役妻ゴールデを務める
鳳蘭さんの鉄板コンビは今年も
絶好調!
鳳蘭さん、市村正親さん
唯月ふうかさん、実咲凜音さん、神田沙也加さん
そんな二人の愛する娘たち、長女ツァイテルには
実咲凜音さん、次女ホーデルには
神田沙也加さん、三女チャヴァには
唯月ふうかさん。娘たちと運命を共にする男たちには、それぞれ
入野自由さん、
広瀬友祐さん、
神田恭兵さんの新キャストが名を連ね、さらにツァイテルを見初める金持ちの肉屋ラザールには
今井清隆さんが初出演、歴史ある作品に新しい風を吹き込みます。
【ゲネプロレポート】
舞台となるのは1905年、帝政ロシアの時代のウクライナのアナテフカという寒村。そこで暮らす酪農業を営み、信心深くお人よしのテヴィエ(市村さん)とその妻ゴールデ(鳳さん)、そんなユダヤ人一家の お年頃の上の3人の娘たちの結婚話を軸に、彼らの人生が描かれます。
しきたり!
オープニングはタイトルにもなっている“屋根の上のヴァイオリン弾き”についてのテヴィエの語り。不安定なユダヤ人の暮らし、それを例えての言葉なのです。そしてどうやってバランスをとっているのか…それが“しきたり”。
そのしきたりの1つが結婚仲介人イエンテの存在。男女は目を見て話すこと、ダンスをすることも禁じられている村のしきたり…、イエンテの持ってくる縁談話と両親の祝福によって結婚が決まるのです。
しかし、娘たちは…。長女のツァイテルは貧しくとも働き者の仕立屋のモーテル(入野自由さん)、次女のホーデルは革命を志す学生のパーチック(広瀬友祐さん)、三女のチャヴァはロシア人学生のフョートカ(神田恭兵さん)と、それぞれの価値観と愛で自分の相手を決めていくのです。
かかあ天下のようなテヴィエ家ですが、最終的に決めるのはお父さん!
物悲しさもある背景ですが、チャーミングな市村テヴィエの神様との対話などで、笑いもいっぱい。会見でのコメント通り、市村テヴィエは愛の人です!汽車を待つシーンなどは、もうもう…。そして、ガミガミかーちゃんな印象のゴールデも、心の底では娘たちのしあわせを祈る。終盤、チャヴァを見つめる視線が…。お二人のコンビネーションはまさに長年連れ添った“それ”があります。(結婚式の日に初めて会ったテヴィエとゴールデの「愛しているか?」のシーンが好きです!)
彼らの愛する娘たちは…。
入野自由さん、実咲凜音さん
♪仕立屋のモーテル!このフレーズが頭をグルグル(お二人のナンバーではないのですが…笑)
おヒゲ姿を思わず二度見してしまった入野モーテル、おどおどしている様子がとても可愛らしく、全力で応援したくなります。心の底からツァイテルを愛し、劇中で大きな成長を遂げるモーテルです。ピンと背筋の伸びた実咲さんのツァイテルは凛とした美しさのある、しっかり者!働き者カップル!
広瀬友祐さん、神田沙也加さん
広瀬さんのパーチックは、颯爽とした登場シーンから強い志を感じさせるカッコよさ。向上心が高く、考え方に芯のある沙也加さんのホーデルと惹かれ合うのも納得。ブレない二人、タブーとされていた男女が踊ることに対しても、手を差し伸べるパーチック、勇気を持ってその手を取るホーデル。情熱的に語るパーチックと聡明で口の達者なホーデルのやりとりはリズムも良く、お似合い!
神田恭兵さん、唯月ふうかさん
政治的思想、世代、お金と愛…さまざまな“違い”が障壁となる中で、三女チャヴァとロシア人のフョートカの間にも大きな壁、宗教の違いが立ちはだかります。本を読むことが大好きな唯月さんのチャヴァは、これでもかというほど愛らしい。それだけにツァイテルの結婚式後、チャヴァの前に立つ神田恭兵さん演じるフョートカの背中が…辛い。それとは別の“あのシーン”での神田恭兵さんの美声も!おおっ!
市村正親さん、今井清隆さん
こちらは今井清隆さん演じる肉屋のラザール。お金持ちの傲慢さより、ツァイテルに惚れた男やもめの哀愁と可愛らしさを感じるラザールです。怒り心頭の中でも、結婚式には列席するあたり、ラザールも“しきたり”を守る村の一員なんですね。(酪農家と肉屋の関係などは
オフィシャルブログの解説が細やか!)
父が稼ぎ、母は家を守る。親の決めた人と結婚。…たしかに今の世の中からすれば、まさに“前近代的な”しきたりの数々、それが良いとか悪いとかではなく、そうやって守ってきた時代があった。それを知り、そうやって生きてきた人々に想いを寄せることは、ひとつの追体験。そこから感じることも少なくありません。
そして、愛ゆえのやさしさ、愛ゆえの厳しさ、父母の愛はいつの時代も変わらない。
そんなテヴィエ一家の貧しいながらも幸せな日々にもやがて…。
安息日や結婚式などユダヤ人の文化や風習も描かれています。
“屋根の上のヴァイオリン弾き”という象徴的な日比野啓一さんの存在感もこれまでにも増して心に残りました。
今回、改めて感じたのは独特のリズムとノスタルジックなメロディの音楽が作る世界。土地に根差した音楽で踊る人々の姿に、あの時代、あの土地の空気を感じます。アナテフカの地に、テヴィエ一家と村の人々は確かに生きていた。
この作品が、今もなお愛されるのは…。ぜひ、それを感じに劇場へ!
ダンスシーンも満載です!
舞台写真提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(文) 監修:おけぴ管理人