愛を知り、愛に生きた5日間。 シェイクスピアが描いた『ロミオとジュリエット』を、現代の物語に書き換えた
オリジナル・ロック・ミュージカル『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』。クリエイター陣も演出に石丸さち子さん、音楽は和田俊輔さんというワクワクのタッグ!
4月の開幕を前に、稽古場取材会が開催されました。キャストのコメントともにレポートいたします。
柳下大さん、中山義紘さん、東啓介さん、マルシアさん、豊原江理佳さん、大山真志さん
-あらすじ-
2018年、辺境のための経済復興特別区【グラント】に“ライン”が引かれた。
【デルヒ】と【ゼムリャ】に分かれた二つの街の対立は、驚くべき速さで激化していく。
【デルヒ】のハワル(東啓介)はある日、友人のポドフ(柳下大)、ナウチ(中山義紘)らと、ゼムリャの祭りにもぐり込めることになった。“ライン”上に暮らす女・ドゥーシャ(マルシア)の導きで。
そこで、リェータ(豊原江理佳)とハワルは瞬く間に恋に落ちる。しかし、リェータの兄シーラ(大山真志)は、ゼムリャの血と種を守る民族運動の若きリーダーだった。
転がるように恋しあうハワルとリェータであったが、血気にはやるシーラとポドフが衝突し、二人は引き裂かれていく。街の争い、人々の争いの中、愛を知った二つの命が選ぶ道は……。
【普遍的なテーマ】
『ロミオとジュリエット』では二つの家の対立が悲劇を招くのですが、本作では血縁、国境、性別、人種、宗教、経済…といった「境界線=ライン、ボーダー」で隔てられた世界の諍いが影を落とします。より複雑な状況下に見えますが、それでも愛を知る喜び、引かれた線を越えようとする若者の姿は尊く美しい。石丸さんが読み解き現代に立ち上げる『ロミオとジュリエット』に期待が膨らみます。
「最後の最後には“今”を感じていただけると思います」(石丸さち子さん)一目で恋に落ちる二人、ハワルには東啓介さん(ロミオ)、リェータには豊原江理佳さん(ジュリエット)。まぶしすぎる!
東さんが放つ真っ直ぐなエネルギーがハワルにぴったり。
この笑顔……なんとしても守りたくなるのですが、諍いに巻き込んでしまうのは大人。
力強い歌声、真っ直ぐでキラキラした瞳が印象的!
「毎日、ものすごいエネルギーとパッションです。素晴らしい作品にして、革命を起こしたいです。みんなで頑張ります」(豊原さん)「男の子と女の子が出会って駆け抜けるような5日間、恋に出会い、知り、立ち向かい、結果を出す物語。現代を舞台にしたからといって、感情を矮小化することなく、原初的な人を愛し、分かち合おうとするエネルギーを描きたい。美しいものが生まれる可能性があるのに、人は例えば(肌の)色が違うとか…人と人との間に線を引く。そんな恐ろしい渦に巻き込まれたとき、美しいものはあっけなく失われてしまう。その危うさ、むなしさを抱きながら、愛が生まれる瞬間、そして愛が奪われたとき人はどんな選択をするのか…。現代的な読み解き方をしました」(石丸さん)
【デルヒ】の若者たち
柳下大さん演じるポドフ(写真中)はマキューシオーを、中山義紘さん演じるナウチ(写真左)はベンヴォーリオ(ほかにもいくつかのキャラクター)を投影した人物。
「稽古2日目にして、石丸さんは本当に世界を変えようとしているのではないかと思うくらいのすごい熱量を感じています。ぼくらはそれに乗っかって、新しいミュージカル・演劇を作っていきたい」(柳下さん)ロックミュージカル!ダンスもお楽しみに♪
「毎日の稽古でキャストに会えるのがすごく楽しいです。オリジナルミュージカル、僕らが初演キャストになります。この6人でしかできないものを作って、それが残っていったら、すごく素敵だなと思います。演劇の力を信じて頑張ります」(中山さん) それぞれのキャラクターが葛藤を抱え、それぞれの人生に対峙している。個がしっかりと描かれているので、登場人物は少ないのですが社会の縮図としてのドラマが浮き上がる!
こちらは恋を知ったハワルが酒場で仲間と合流というシーン。
恋の喜びを謳いあげるハワルに対し、ポドフとナウチには戸惑いしかない…笑。そのくらい恋、愛は人を変えるのです!
境界線上に暮らす女・ドゥーシャのマルシアさんの祈りのような歌声が稽古場に響きます。
母、大人の女、その両方の顔を持つドゥーシャはときに魔女と恐れられる不思議な存在「知っている大人」
「みなさんの若いエネルギーをいただいて過ごしております(笑)。とにかくすべてが新しいので、私たちが自由に『ロミオとジュリエット』を作れると思っています。ここから初日までに一人ひとりのピースが合体しひとつになる。それを楽しみにしています。そしてお客さまの心に残る何かが届けられたら幸せです」(マルシアさん)【ゼムリャ】の民族運動の若きリーダーであり、リェータの兄シーラには大山真志さん(ティボルトであり…)
写真後方はゼムリャの祭りで踊るリェータ
民衆を扇動するエネルギーに説得力を持たせる大山さんの歌声とダイナミックな動き!和田さんの作り出す音楽の魅力、躍動のロックミュージカルを体感!
「稽古が始まって、僕が思ったのは、ミュージカルとお芝居の垣根を越えた、その“線”を消し去る作品になるのではないかということ。石丸さんの新たな挑戦、僕たちも一緒に挑んでいます。そして、お客様には最後、温かい気持ちを感じて帰っていただけるものになると思います。ぜひ楽しみにしていてください」(大山さん)【熱く丁寧な石丸演出】
コメントにもあるように、実はこの日はまだお稽古が始まってから2日目。披露されたシーンもまだまだ作っている途中。目の前で芝居をつけていく様子も見学することができました。
ハワルの大きな手とリェータの小さな手が触れ合う。そして……想いが爆発!
実際のシーンでは…
ドキドキ
トキメキ
ガシッ!
このドキドキはまさに原初的。この日は序盤シーンをご披露いただきましたが、このあとの展開は若者は若者として、大人は大人として、それぞれ胸が痛みます。そしてひとりの人間として切ない。
「現代劇を観ているようで、やっぱり『ロミオとジュリエット』を観ている感覚、でも、最後の最後には“今”を感じていただけると思います。そして、帰るときには温かい気持ちになり、自分の中に眠っていたエネルギーに気がつき、だれかと出会いたいな、恋をしたいな、隣の人を見る目が優しくなるような芝居になったらと思います」(石丸さん)
「まだ稽古が始まって2日ですが、この6人での『ロミオとジュリエット』、石丸さんの演出、和田さんの素敵な音楽で、本番ではすごくすごく新しいロミジュリになると思っています。思いっきり楽しみしていただいて、構いません!」(東さん)【その成り立ちも熱い!】
本作、物語や音楽はもちろんのこと、その成り立ちに心をつかまれます。企画は、国境を越えて、若者たちの心に響く力強い日本初のオリジナルミュージカルを作る!という強い想いのもと動き出したのです。
次世代ミュージカル俳優育成という点からも、脚本・作詞・演出を担当する石丸さち子さんと2年にわたりワークショップを重ねてきたこと、さらにKAATさんの協力のもと劇場入りから初日までの期間を長く確保。じっくりと育てられた『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』開幕が楽しみです!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人