“ご予約はお早めに!!”『フリー・コミティッド』稽古場レポート

 NY、マンハッタンにある超人気レストランの予約受付室を舞台に繰り広げられるリアルで笑える一人芝居『フリー・コミティッド』の稽古場の様子をレポートいたします。

 この日は通し稽古が行われましたが、なんて言うか……“面白いですよ~”という言葉で済ませてよいのだろうかとも思うのですが、やっぱり面白い!“どの辺が?”というところは、ぜひ劇場にて味わっていただきたいところですが、それではレポートが終わってしまいますので、チラリと面白さをご紹介いたします。



成河さん


【台本を読んで、アハハハハハ、でも?!】

 登場人物たちのテンポの良いやり取りを楽しみながら台本を読んでいると、ふと気づくのです、「で、これをお一人でなさるんですよね?」と。すごいとか、大変だとか、そんな気持ちとともにこみ上げてくるなんとも言えないヘラヘラとした笑い。通し稽古を前に不謹慎かしらと思いつつ、まずもってこのノンストップの会話劇が“一人芝居”であることが面白いのです。

 そして“一人でなさる”、その人は成河さん。初の一人芝居がこの作品ということですが、よくぞ挑戦してくださった!演出は俳優としても活躍されている千葉哲也さんです。


~成河さん38変化よりちょい見せ その1~



超人気店のバックオフィス……結構雑多です(笑)!
しかも地下室です。





 物語の軸となるのはレストランの予約係サム。人気の店ゆえ、お席はすでに満席、それでも押し寄せる予約依頼にオフィスの電話は鳴りっぱなし。電話の主、レストランの顧客たちは老若男女、多様性の街NYCを肩で風を切って闊歩するような人々から観光客まで実に多彩。当然、セレブと呼ばれる人も!それはもちろん曲者揃いです。そんな電話のあちらとこちらとそちらの会話を全て一人でやるというのだから、ただごとでは済まないのです。さらに電話の相手はお客様だけでなく、従業員からの内線もあれば、一人暮らしの父などなど。

 そうやって死に物狂いで電話をさばくサムの姿が、このお芝居と格闘する成河さんと重なるようなところもあり、そのものすごい形相にいつしか引き込まれ、心の中で「いやいや、そのリクエストはありえないから!」「もう断っていいでしょ!」とツッコミを入れること多数。

 でも……、「もう無理、もう無理」と思いつつ「はい!喜んで!」と明るい声で言ってしまうこと……ありますよね。そんな皆様にお届けする極上の一人芝居、それが『フリー・コミティッド』なのです。



演出:千葉哲也さん


【“ありえない”と“リアル”】

 サムを語るにおいて、もうひとつ面白いのは、彼がオーディション結果(エージェントからの“電話”)を待っている売れない俳優であること。さらにそこに家族の存在なども絡んで、ドラマに奥行きが生まれます。無数の点と点が、次第に結びついていく。いつしか一人芝居ということを飛び越えて、一人ひとりの登場人物たちの物語として見ている自分がいました。あのキャラクター好きだわ!とか思っていたり(笑)。


~成河さん38変化よりちょい見せ その2~






 甘い、辛い、苦い、酸っぱい、塩辛い、そして旨い!いろんな味がする作品ですよ。本公演に関するインタビューなどで「落語」についてお話されていたことも、ふむふむと思いました。


 そうやって観る側の順応性が高まるというか、そこで繰り広げられることに自然と馴染んでしまう、それはきっと成河さんの各キャラクターの表現がしっかりと印象付けられ、作り出す劇世界がリアルだからでしょう。

 でも、こうしてレポートを書くにあたってお写真を選んでいると……全部、成河さんなのです(当たり前)!ただし、わかるんですよ、写真を見るだけで「それが誰なのか」。そんな、一人で38役という“ありえない”ところからたどり着く“リアル”を味わいに、ぜひ劇場へ!


【台本だけではわからない、まさかの!】

 サムのいる予約受付室、ワンシチュエーションで繰り広げられるドラマですが、台本を読んでいるだけでは思いもよらなかったスケール感?!も。会話と音楽、照明……シンプルだけど深い、そこは超アナログスペクタクルとでも言いましょうか(笑)。小劇場ならではの不思議な一体感で駆け抜け、終わったとき「うん!」と頷ける予感。そして観ているだけで、心地よい疲労感と達成感があるんです。
 通し稽古が終わった瞬間、チラシを見返して一日二回公演があることに「汗」。この公演を終えるころ、成河さんがスーパー成河さんになっていそう。それが率直な感想です。



 通し稽古の後、仕草、台詞のニュアンスの微調整。
 「笑うって、息使うんだなー」、まさに息つく暇なくしゃべり続けることの大変さを物語る成河さんのひと言でした。


ときにはこんなことも……

 公演は6月28日~7月22日、DDD青山クロスシアターにて(全30回公演)。

-作品紹介-
 1999年ニューヨークにて初演。作者は劇作家・女優・TVプロデューサーのベッキー・モードさん(それゆえ、サムの俳優としてのエピソードには業界あるあるも!?)。同年の「タイム・マガジン」誌の演劇トップテンに選ばれました。物語はもちろんフィクションですが、固有名詞には時代や土地を感じさせるものも!わかればクスッと笑えるし、わからなくても問題なし!本邦初上演される『フリー・コミティッド』の間口は広い♪とはいえ…“超人気!ご予約はお早めに!!”

【公演情報】
『フリー・コミティッド』
2018年6月28日(木)~7月22日(日)

作 ベッキー・モード
翻訳 常田景子
演出 千葉哲也
出演 成河
企画・製作/主催 シーエイティプロデュース

超人気!ご予約はお早めに!!
失業中の俳優サムを演じながら
金持ちの社交界夫人、レストラン支配人、日本人観光客、カリスマ・シェフ、
サムの父親、変り者のボーイ長、ドミニカ共和国出身のコック、
大柄でタフなフランス女、医者、優しい性格のウェイトレス、下っ端のマフィア etc・・・・
全38役に挑戦!


公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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