2013/12/12 交響劇『船に乗れ!』公開稽古レポ

歌 × 芝居 × オーケストラの生演奏 = 交響劇!

2010年本屋大賞ベストテンに選ばれた大人気小説を
“交響劇”という新しいスタイルで初舞台化した「船に乗れ!」。


原作は藤谷治さんによる青春音楽小説3部作。
裕福な音楽一家に生まれ、早くからチェロを学び、
哲学書を読み漁るなど自分を「高貴な人間」だと思っていた主人公・津島サトルは、
希望の名門高校の受験に失敗し、祖父が理事長をつとめる二流の音楽高校に入学。
その音楽高校で、さまざまな出会い、恋愛、挫折を経て成長する、
青春という季節のきらめきと残酷さを描いた作品です。

舞台は45歳になった主人公による高校時代の回想というスタイルで綴られるのですが、
高校時代のサトルを演じるのは山崎育三郎さん!
山崎さんの上品で内に秘めたものを感じる
あの雰囲気と歌声に、まさにぴったりの作品!!!!

そして45歳のサトルを演じるのが福井晶一さん!
歌声はもちろん、ストーリーテラー的に語る福井さんの声が心にストンと響きます♪


山崎育三郎さん×福井晶一さん

高校時代のお話は、教室、文化祭、放課後、夏合宿・・・キラキラした響きの
大人サトル世代には眩しすぎる光景です(笑)。
それと同時に青春の “影” も描かれるのがこの作品!
サトル達は、時にその残酷さに直面しつつも、苦悩し、乗り越えていく、
その様子が、“音楽”と”歌声”を効果的に使って描かれていきます。


山崎育三郎さん


福井晶一さん

劇中のお稽古シーンや演奏会シーンで
実際にチェロを演奏するのは、舞台上にいるサトルの分身の演奏者の方。
舞台上のオーケストラの中でサトルと同じ服装で演奏されています。
この、通称“ツインズ”と呼ばれる役者と奏者のシンクロ具合も見どころのひとつで、
スポットライトで照らされる二人、舞台の出はけのタイミングも合わせたりと
この作品ならではのツインズ!注目です。


例えば、サトルがチェロを弾いてる場面では、
オーケストラの中の「もう一人のサトル」が生でクラシックの名曲を奏で、
山崎さん演じるサトルは、曲に乗せてその時の心情を歌います。
それが、単にその曲のメロディで歌うのでなく、
曲にぴったりと合ったオリジナルの旋律で歌ったりもするんです。
(2つのメロディのハーモニーがとても新鮮!)


45歳のサトル役の福井さんの語りと、等身大の高校生を生きる山崎さん(制服姿も素敵!)の対比は、
あの時があって、今の自分があるんだなと、改めて感じさせられました。
(福井さんはストーリーテラー的な存在ですが、途中お二人が絡む場面もありますよ)


そして、特に印象的で胸に響いたのが小野武彦さん演じるサトルの祖父であり
音楽高校の理事長の言葉。
作曲家の話、留学の時の空気の話。
音楽だけに限らず、芸術、それ以外のことにも通じる言葉です。
(これはぜひ劇場で理事長からお聞きになってください!)


サトルとともに学園生活を送るみなさんは・・・
サトルの初恋相手となる南に小川真奈さん。びっくりな展開です。
そしてサトルの親友に平方元基さん、貴公子!の歌声も素敵♪
1年先輩の合田役=入野自由さん・石井一彰さん(Wキャスト)、
輝馬さんのキャラもお楽しみに!
合田に反旗を翻す爽快な女子高生は増田有華さん・谷口ゆうなさんのWキャスト。
(キャラクターの異なるお二人だけに、両方見てみたくなりますよ!)
さらに松岡卓弥さん、加藤雅美さん、
前山剛久さん、木内健人さん、西岡優妃さん、吉田萌美さん等
サトルとともに青春を謳歌するオーケストラの仲間たちにも個性が光ります。


彼らを見守る大人たちも実力派揃い!
担任教師役に文学座の金沢映子さん、オーケストラメンバーを叱咤激励する場面がとってもリアル。
サトルが尊敬する哲学教師役に加藤虎ノ介さん。
ある意味で物語のキーパーソンをしっかりどっしり魅せます。
そういえば、『OPUS』のドリアンに続き、こちらの作品とは虎ノ介さん、クラシックづいていますね。
枝里子の母親に木の実ナナさん、
女手一つで娘を育てた母。慈愛と強さがその一挙手一投足に現れます。
遠くから見つめているだけで伝わる “思い” に涙です。


そしてサトルの良き理解者であるピアノ教師に田中麗奈さん。
マドンナ先生(古いでしょうか・笑)的な先生です♪
軽やかに人生を歩んでいるように見えますが、
音楽を仕事にしている大人のひとりなんですよね。
ちょっとドキドキなシーンも。

物語の中枢を担うオーケストラには、
山崎育三郎さんの母校・東邦音楽大学管弦楽団から現役の音大生41名が参加!!
堂々たる存在感の音を奏でられています!!


青春の輝きとほろ苦さを明日への活力にできる作品です。
この公演を観てきた方達の感想もご紹介しておきますね!!



交響劇とはなんぞや?そんな思いを胸に向かったシアターオーブ。
黒い舞台上に浮かび上がる白くクロスしたセットが印象的。
誰もが経験する(したであろう)若かりし日の甘ずっぱく、
どこか苦い思い出がオーケストラのそれぞれの専攻していた楽器を
絶妙に絡めながら進んで行く斬新な手法。
あの交差したポイントがサトルや南、級友や先生たちとの人間関係、
更には現在のサトルの存在や記憶が交差する点だったのか。
爽やかな中にもくせになりそうな『船に乗れ』

交響劇という新しいジャンル、この舞台の成功は山崎さん、福井さんの実力と
オーケストラのすばらしさがあってのことと思います。
クラシックに乗せて歌うのはとても難しいと思いますが、
高校生役のみなさんも含めてとても軽やかに心地よく聞こえました。
ストーリー的には原作を読んでいない身としてはちょっと唐突感が否めませんが、
高校生の悩み、葛藤はよく表現され、加藤さんの先生役が引き締め効果大。
最後の「船に乗れ」のセリフは心に沁みました。

「交響劇」とタイトルに入っている通り、現役音大生たちによる生オケの演奏が素晴らしかった!
役者それぞれに影武者のように楽器奏者がいて、なかなか良い演出だと思いました。
お馴染みのベテラン♪小野さん、木の実さんがストプレで締めていて、良いスパイスに!
クラシックに疎い私でも十分わかりやすく楽しめました。
主人公サトルと哲学の先生役、加藤虎ノ介さんの場面も惹きつけられ印象的です。



美しいクラシックの旋律にのり、自分の高校生時代を思い出すような、
若いエネルギー溢れる、ちょっぴり切ない交響詩です。
クラシック好きな方、
学園ドラマ好きな方に
特にオススメです。
ダブル主演の福井さん、山崎くんの歌声は絶品!!

クラシック音楽に台詞を載せて、奏者の人間としての「心の叫び」を表現させ、
それらを交差させながら、物語を進めていくというこの演出スタイルは、とても斬新で、感動しました。
個人的には、メンデルスゾーンのピアノトリオ、
そして、カザルス本人の声も入っている鳥の歌には鳥肌がたつような感動を覚えました。
山崎育三郎さんは、もともと好きな俳優さんですが、コスチュームをつけた「モーツァルト!」
「ロミオ&ジュリエット」などもよかったですが、
むしろ、この等身大の人間を演じるとき、更にその素晴らしさ、自然な演技力が発揮されていると感じました。
無理なく高校生に見えました。
ますます応援したくなりました。
大人のサトルもせつなさがあってよかったです。



オープニングの福井さんの歌声で一気に物語に引き込まれ、
山崎育三郎さんのすっかり高校生に見える初々しさに胸躍りつつも極上の歌に心が震えました。
クラシックの楽曲に歌が上手く乗るのか、、と不安でしたが美しいハーモニーに
十分に楽しませていただきました。
観終わるといろいろなセリフが胸に沁みこんでいていい意味で考えさせれらる舞台でした。
美しい音楽と意味深いセリフを聞きにリピート決定です。

高校生たちが妙に元気だなと思ったら、80年代の高校生たちなんですね。
今にはない素直さや、元気さ、先生との関係なども今にはないかんじでした。
哲学の先生の言葉が、いちいちよかったです。
ラストへ向けても、この先生との場面が、よかった。
平方さんの、繊細な役が素敵でした。



福井さん側の年齢の自分には、何もかも愛おしくて切ない舞台でした。

会場いっぱいに広がるクラシックの調べと甘酸っぱい高校生の青春群像劇。
音校生という特異な主人公の苦悩が上手く描かれていた。
お金持ちと蕎麦屋の娘、自分に才能があるのか悩む金管、俺は副科だからいいんだ、の愚痴。
全体的には面白い作品です。
個人的にはスネ夫のような憎みきれない合田先輩の石井一彰さんがツボでした!

高校時代の自分を見つめるサトル役の福井晶一さんが人生の船に乗り切れない
不安定な中年の男の心の内を見事に演じきった。
聞かせる台詞と訴えかける歌唱力で舞台を引き締めた。
青春の不安定な心を乗せた登下校の坂道にもなる舞台中央の十字のスロープは
照明効果と共にさまざまなシーンを生み出した。
特にラストシーン、そのスロープが抜けるような青空の中に鳥になり「飛び立て」と
若者たちにメッセージを送ったのは見ている客にも感動を与えた。
交響劇、素晴らしい!



自分の昔を思い出し、甘酸っぱいような、悔しいような、
あの頃の複雑な感情が蘇ってきました。
大人になると色々なことを忘れているのだなと思います。
高校時代の知人、先生達に思わず連絡を取りたくなりました。
クラシックに詳しくない方でも、充分楽しめると思います。
音霊となる演奏の人と出演者の連動した動きにも注目です。

芝居面では、ベテランの木の実ナナさんや小野武彦さん、
田中麗奈さんが作品を引き締めてくれていました。
主演のお二人といい、キャスティングも良かったと思います。



原作が好きで観劇しました。
休憩を含め、約3時間の公演でした。
ストーリーはあちこち端折られていたものの、大筋はほぼ原作通り。
主人公の高校時代の話なので、3年間が嵐のように進みます。
人によっては展開が早すぎると思うかもしれませんが、
冗長な部分がほとんどなく、3時間もあっという間でした。
原作を知らずとも楽しめると思います。
また、交響劇というだけあってうしろで演奏されるオーケストラが
「見せる」ための演奏をしていたのもとても楽しかったです。
歌があんなに多かったのは予想外でしたが、
有名なクラシックにたくさんの歌をのせていて、面白いです。
音楽が好きな方、ミュージカルが好きな方はぜひぜひご覧になってみてください!

役者の‘エア演奏’+ オーケストラの‘本演奏’が、
文楽の人形遣いの技 + 床の三味線や琴の演奏 のようで、対比させて鑑賞するのが楽しかった。
役者陣も遜色ない本格的演奏姿で、驚嘆賛嘆!
音楽科の彼らにとって、楽器は、自分の心を語る分身であり、
慰めてくれる親友であり、共に闘う戦友なのだと感じさせられた。
彼らの悩みの時も迷いの時も、その音色が寄り添い包み込み、
その旋律が人生を支えてくれているのが、舞台上に視覚化されていた気がする。
高校生活最後の文化祭で披露する演奏は、役者とオーケストラの二重写しが際立ち見事!! 感激の涙が出た。

ミュージカル、演劇、オーケストラ、様々な要素が絡み合う。
開演前、薄暗い舞台上に椅子を上げた学生机が並び、
既に物語の中にいる錯覚に襲われ、幕間も『授業(物語)の休憩時間』。
始業のベルが効果的。
船の穂先にも見える舞台装置は非対称なのでセンターより下手側をお勧めします。
一見の価値あり。
独創的。
歌は高度でキャストは健闘。



この作品の特筆すべきは、オーケストラの厚みだと思います。
音がとても気持ちよいです。
音楽に妥協がないところに音楽への敬意を感じます。
ちょこちょこ笑えるシーンもあったり、実力揃いの出演者が作品に向き合う姿が印象的でした。



こうして机を並べていた学生時代を思い出し、
ちょっと背伸びをしていた事や、なんであんなことをしてしまったんだろう
みたいな自身の想い出も甦り、
でもそんな自分の過去を、ふっと優しく包み込んで前に押し出してくれる、
そんな素敵な作品です!


下記もぜひご覧になってみてください

交響劇『船に乗れ!』山崎育三郎さん、福井晶一さんへのおけぴインタビュー
交響劇『船に乗れ!』ビジュアル撮影おけぴレポ


【公演情報】
100年分のありがとう。ハウス食品PRESENTS
アトリエ・ダンカンプロデュース
交響劇『船に乗れ!』
2013年12月13日(金)~21日(土)@東急シアターオーブ

<スタッフ>
原作:藤谷 治(ポプラ社刊「船に乗れ!」より)
脚本:鈴木哲也
演出・作詞:菅野こうめい
音楽監督:宮川彬良
プロデューサー:池田道彦
指揮:西村 友

<キャスト>
山崎育三郎/福井晶一
小川真奈 平方元基 増田有華・谷口ゆうな(Wキャスト)
松岡卓弥 加藤雅美 入野自由・石井一彰(Wキャスト)
輝馬 前山剛久 木内健人 西岡優妃 吉田萌美
金沢映子/加藤虎之介
田中麗奈/木の実ナナ/小野武彦
東邦音楽大学管弦楽団

大人になったサトルが振り返る、音楽高校での3年間。
同級生や教師達との恋・希望・挫折に彩られた怒涛の学校生活。
彼を残酷な運命へと導いたドイツ留学。
美人ピアノ教師とのミステリアスな関係・・・。
思い出されるのは心優しく、もの哀しく、
あらわれてたちまち消えていくメロディだけだ。
そして曲が終わっても、彼の乗り込んだ船は揺れ、航海は続いて行く。

公式サイトはこちら



おけぴ取材班:おけぴ管理人(文/撮影)

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