絶大な人気と知名度を誇るクラシックバレエ『白鳥の湖』。
言わずと知れたチャイコフスキーの
ドラマティックな音楽、
オデットの哀しみをたずさえた
美しさ、オディールの
誘惑、
白鳥たちの
群舞、そして王子との
“愛” の物語。
ダンスと音楽と物語、
三位一体となった表現が繰り広げられると、
衝撃に近いほど心が動かされ、「こういうことだったのか・・・」
叙情的なその音楽の魅力にも改めて気づかされます。
古典の、名作の力!
それを改めて実感したリハーサルの様子をレポートいたします。
“バレリーナ” と聞いて多くの人が眼に浮かべる姿はこの作品の主人公・オデット
ではないでしょうか。
この日の
オデット(白鳥)/オディール(黒鳥)の対照的な2人の女性を演じるのは
米沢唯さん。
昨年の公演『ジゼル』で高いテクニックと豊かな表現力に
魅了された方も多くいらっしゃるでしょう。
昨秋にはバレエ団の最高位であるプリンシパルに昇格され
ますます存在感に磨きがかかった米沢さん!
米沢さんのオデットはちょっと変な言い方かもしれませんが
“白鳥感” が尋常でないのです。
それでいて心をギュッと締め付けられるような孤独や王子の愛にすがるような
切迫感といった
感情は体温を伴って伝わってくる、
まさに
「白鳥に姿を変えられた女性」なのです。
さらに大きな見どころ!
第3幕にはオデットにそっくりな誘惑者・オディール(黒鳥)として登場するのです。
オディールの背後には悪魔ロートバルト(貝川鐵夫さん)が。。。
この目、指先の表情!王子ならずともグッと引き込まれます。
さらには
32回転のピルエットというダイナミックな見せ場もあるのがこの場面。
心技体の充実が求められる過酷な役だなぁと思ってはいても、
過酷さよりも駆け引きのドキドキが印象的な舞なのです。
これ以上多くは語りません!
キャラクターの違う2役を全身を使って表現されるので、
大きな劇場空間でもご期待くださいね。
美しきオデットと恋におち、永遠の愛を誓うのはこちらのジークフリード王子。
憂いの王子を演じるのは
菅野英男さん。
“モスクワ国立アカデミーで研鑽を積んだ後に、インペリアル・ロシアバレエ、
キエフ国立バレエに所属”という
ロシアバレエの名手!
第1幕では、そこに立っているだけ、ゆったりと歩みを進めるだけで醸し出す
“王子” オーラにうっとりため息でした。そこからオデットに出会い目覚める愛!
第3幕はオデットへの想いを胸に、花嫁候補の美女に見向きもせず
心ここにあらずといった王子の前にオディールが現れ・・・。
そして第4幕での闘いという起承転結すべてに絡む王子。
ああ!すっかり誘惑されている!!
先ほども登場した悪魔ロートバルトには
貝川鐵夫さん。
長身で手足の長い貝川さんの迫力はオデットやジークフリードだけでなく
見るものまでも圧倒します。
思わず「オデット、逃げて~」と心の中で叫んでしまいそうです。
ロートバルト、羽ばたきが力強いのです!
ここまではメインの物語、
“オデットとジークフリート王子の愛は
悪魔ロートバルトの呪いを解くことはできるのか・・・”に焦点を当ててお届けしましたが、この作品は他にも個性的なキャラクターがいっぱい!
なかでも注目なのは
“道化” 、この日演じていた
福田圭吾さんに目が釘づけでした!
シェイクスピア作品などでも登場する道化、この作品でも独特の立ち位置で
作品をけん引します。
キャラクターも濃いのですが、技術的にも体力的にも高いものが要求されるこの役!
王子の
ゆったりした振舞いと道化の
しゃかりきな様子が好対照で楽しいんです。
ジークフリート王子の母・王女には
湯川麻美子さん、キリリとしたキレのある動きに気品が!!
江本拓さんと
本島美和さんの伸びやかな舞
スペインの踊り(
湯川麻美子さん、江本拓さん、本島美和さん、マイレン・トレウバエフさん)
カットされることの多いロシアの踊り・ルースカヤの場面があるのも
新国立劇場版の魅力です。
そしてお待たせいたしました!白鳥の湖ですからね!
白鳥たちの一糸乱れぬコール・ド・バレエのアンサンブルもご堪能ください
一般的に
“バレエ=白鳥の湖” ととらえられることにも確かに一理ある!
ぜひこの機会に名作の力をご堪能ください。
☆稽古場エピソード☆
リハーサル中、米沢さんのチュチュからひとひらの羽根が落ちた瞬間。
思わず心の中で「あ、白鳥さんの羽根が・・・」とそれを目で追ってしまいました。
命ある一羽の白鳥という目で見てしまっていた、
ある意味で童心に帰れる作品なのかもしれません。
名作の力は圧倒するだけでなく、観ているものをリラックスさせる
不思議な力も持ち合わせているのですね。
作品の懐の深さを感じました!!
注)リハーサル中の配役は実際の公演の配役と異なることがございます。
新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』米沢唯さんインタビューは
こちらから!
おけぴ取材班:chiaki(文) mamiko(撮影) 監修:おけぴ管理人