baghdad cafe'『リターン☆プラネット on stage』稽古場レポ&泉寛介さん・一瀬尚代さんインタビュー

おけぴ関西スタッフが、気になる演劇人そして公演をピックアップ!

今回ご紹介するのは、さまざまな演劇手法を取り込みながら、マイペースな挑戦を続ける劇団 baghdad cafe'(バグダッド・カフェ)の第14回公演『リターン☆プラネット on stage』です。


2003年の旗揚げ以来、自然なセリフや抽象度の高いパフォーマンスをベースに独自の作品を発表し続けている劇団 baghdad cafe'

作・演出を手がける泉寛介さんが2005年に第3回「近松賞」優秀賞を受賞、その後も『サヨナラ』(2007年ロクソドンタフェスティバル3位)、『ワタシ末試験』(2009年space×drama 優秀劇団選出)などを発表、各方面から注目を集める劇団のひとつです。

前回公演『talk about her life』では「生活に近い演劇を。」というテーマのもと、
“台本にセリフの無い「会話劇」”
“テクノ音楽にのせた4人の女優のモノローグ”
“3人の女優による過剰会話劇”
“彼と彼女、2人の挨拶の言葉だけでおくる生活劇”

という4本のオムニバス作品を上演。

「これは、かなり実験的かつオシャレな感じの劇団にちがいない」そう思ったおけぴスタッフ。
・・・しかし!
劇団代表・主演女優の一瀬尚代さん曰く「今回は思いっきりエンタメ舞台です」。
続いて作・演出の泉寛介さんも「テーマは時代劇フランス革命介護」ときっぱり。

劇団の原点に “リターン” したという新作『リターン☆プラネット on stage』稽古場の模様を、泉さん&一瀬さんのインタビューとともにお届けいたします!!

<『リターン☆プラネット on stage』ストーリー>
かつて時代劇映画の黄金期を支えた富良根都 撮影所は、衰退の一途をたどっていた。
銀幕スターを夢見て上京した☆子(すたこ)は、危機感の無い撮影所の面々に不満を抱えていた。
ある日、オーナーの娘である茉莉は「一カ月後に、無駄なこの撮影所を潰してスイーツアトラクション施設を建てる」と言い出す。困った関係者たちは、すごい映画を作って見返してやろうと意気込む。黄金期のような活気を取り戻していくスタッフ達。しかしそんな中、妹から「実家が大変だ」と聞いた☆子は、泣く泣く実家のある田舎惑星「たもつ星」に帰星(帰省)。
そこで☆子が見たものは、変わり果てた実家の姿だった……。
baghdad caféが贈るノスタルジックSF大河コメディエンターテイメント!



殺陣あり歌ありダンスありのエンタメです・・・!
主人公☆子(すたこ)を演じる一瀬さんの独特のオーラ、立ち姿もかっこいい!


こちらは作・演出の泉寛介さん。
こんなにも “なんでもあり♪” な設定を思いつく頭の中は、いったいどうなっているのでしょうか・・・?



                                      
──今回「エンタメで行こう!」と言いだしたのは泉さんとのことですね。

泉)
そうです。
じつは僕は演劇活動をしながら、普通に会社勤めもしているんですよ。
それで仕事が終わって疲れている時には、重くて暗くて長い芝居をみる気があるかというと・・・やっぱりないんですよね(笑)。
それに最近の僕が書く台本がどうしても暗い感じになったり、劇団員から「わからない」と冷たく言われたりすることも多くて。
ここでひとつ、なにも考えずに笑って盛り上がって発散できるような芝居を作ってみたいな、と。


──と言いつつも、単なる“ エンタメ演劇 ”ではない、とのことですが。

泉)
ただ単にわかりやすくて盛り上がる、というものは、僕にとっては全然おもしろくないんです。ちょっと滑稽で、「これって、なんだろう?」と考えさせてくれるようなものが好きなんですよね。
といっても、僕らはもともと劇団員全員がエンタメ演劇で育ってきている。
劇団☆新感線や惑星ピスタチオ、それから僕らの世代で言えば劇団赤鬼さんや、ミジンコターボさん・・・と、わかりやすくおもしろくてアツくなれる、あのお芝居たちには絶対になにか “つくりかた” や “しかけ” があるはずなんです。
それは芝居を外から眺める “メタ的な視線” であったりとか、演劇的な嘘を使ってダイナミックにみせるマイムであるとか・・・そういう演劇的手法って本当にたくさんあるんですよね。
で、今回は先輩たちが作り上げた手法をリスペクトしつつ、ちょっとパロディ的に取り入れて、さらに新しいものを作りたい、という気持ちがあります。



関西小劇場界から集まった個性豊かな出演者たち。
写真左から:辻るりこさん、是常祐美さん(シバイシマイ)、有元はるかさん(はちきれることのないブラウスの会)、山根千佳さん(TAKE IT EASY!)、大江雅子さん、林遊眠さん(劇団ショウダウン)


とっても身軽な動きの成瀬トモヒロさん


故郷の星に蔓延する奇妙な病気、それは・・・?
(写真左から辻るりこさん、松本茜さん(meyou))

――時代劇撮影所に、スイーツアトラクション、星に帰還・・・と、いろいろな要素がてんこ盛りのストーリーのようですが。

泉)
テーマのひとつは革命です。
フランス革命の話がベースにあって、親の介護問題、時代劇的要素が混じり合います(笑)。
帰省先の惑星で、母親の介護をしながら介護制度に疑問を持ち、星の支配者に立ち向かっていく少女を演じるのが一瀬です。さきほどの稽古で彼女が “フォローミー!” と叫んでいたと思いますが、ジャンヌ・ダルク的要素よりも、どちらかというとベルばら(「ベルサイユのばら」)要素が入っていますね。



「パンがなければスイーツを食べればいいのよ!」
撮影所オーナーの娘・茉莉(まり)を演じるハシグチメグミさん。

泉)
「今回はエンタメでいくぞ!」と決めた時に、まず「・・・で、エンタメってなんだろう?」と考えたんですね。
エンターテイメントとして観る人をひきつける物語には、やっぱり普段の生活では遭遇しないようなドラマチックなものが必要なのではないか、と考えて「これは “革命” やな」と。
もともとやってみたかった “革命” モチーフというのがいくつかあって、それがフランス革命と、チェ・ゲバラの革命と、縄文時代だったんです。
あ、縄文時代から弥生時代への転換って結構おもしろいんですよ。農耕をはじめて、さらに食物を調理・保存できる技術を得たことで、人が村から出ることができるようになって・・・という、これすごい革命やなと思うんですけれど・・・うん、まあフランス革命のほうが共感してもらいやすいかなと(笑)。


――そこにさらに介護がからむわけですね!

泉)
僕はいま33歳なのですが、やっぱり同年代の人たちと会うと、そういう話題がどうしても出てくるんですよね。ちょうど僕自身も家族の介護、相続問題みたいなものを個人的に抱えていて、興味があったんです。
ただ真正面からそのテーマに向き合うと暗くなりそうなので、いつか何かの機会にやってみたいなと思っていました。
それで今回「エンタメ」「革命」となって・・・国の介護制度に不満を持った者たちが立ち上がる!ケアマネージャーの給料も低い!革命だ!・・・あれ、これエンタメになるんじゃないの?って(笑)。


――そしてさらに時代劇要素が・・・。

泉)
フランス革命って18世紀末にはじまるんです。この頃の日本は江戸時代の中期で、数々の時代劇の舞台になっている年代なんですよね。
時代劇といえば剣豪、めちゃくちゃ強い女性剣士とか出てきたらかっこいいな、と思って時代劇撮影所というモチーフが追加されました。
さらに当時も介護の問題はあったはずなんですが、江戸時代の人々はどうやら近所同士で助けあいながら、うまくやっていたらしい。一方、フランスではお年寄りとか貧しい人たちはどんどん切り捨てられていった時代で。なんだかこれって現代の日本みたいだな、と考えたりもして・・・まあ、こういった要素を全部入れ込んだわけではないのですが、「あかるく、わかりやすいエンタメ作品」というテーマで作ったら、こんなかんじになりました(笑)。



シュプレヒコールをあげる民衆!



清らかな少女(?)を愛する将軍(殿村ゆたかさん(melon allstars))は戦場に吠え・・・


荒廃した星で、語り部(有元はるかさん)は歌い・・・


病院では謎の医師(松本茜さん)が・・・踊る!


――泉さんの話をききながら、一瀬さんの眉毛がどんどんハの字になってきていますが(笑)、台本を読んで、まずどう思いましたか?

一瀬)
うーん・・・ああ、ふーん、って・・・(笑)。

泉)
(苦笑)いつもこうなんです。いろいろがんばって書いても劇団員たちは「まあ、ええんちゃう」って。

一瀬)
台本をもらって、これは役者としてめっちゃテンション上げてやらなあかんな、と思いました。
おもしろいことやってるぞ!という空気を出していかな、と。
・・・台本を読むときは、自分が演じることを前提として読むので、作品を客観的にみることができないんです。物語とか作品の流れ、というよりは、役者としての感覚を優先してしまうというか・・・。

泉)
まあ彼女は感覚派女優ですから。天才肌の。ええ。


――泉さんからみた役者としての一瀬さんの魅力は?

泉)
役者としての彼女の魅力は、「納得しないとセリフを言えない」というところですね。
これ、魅力というか欠点でもあるかもしれないんですが(笑)、とにかくちょっとでも違和感があったら彼女はセリフが言えないんです。その違和感を感じ取るセンサーが非常に優れている。
理論的に説明ができなくても、前のセリフとのつながりとか、ちょっとした語尾とかがしっくりこないと本当に黙ってしまうんですよ。
まあ稽古中は「セリフ言えよ!」と思う時もありますけれど、逆に言うと彼女からセリフが出てこないときは、その作品の完成度がまだ低いということなのかな、というバロメーターになりますね。



インタビュー中は控えめな印象だった一瀬さん。
役に入った時の存在感に引きつけられました!


さり気なく台本チェック中、でしょうか・・・。


泉)
彼女をはじめとした劇団員のほか、今回はかなり年齢の幅も広くしっかりとした芝居をする方々に出演してもらっています。
蟹になる奇病とか(笑)、ナンセンスなことを、地に足の着いたしっかりとした芝居でみせてくれると思いますね。
それから日替わりフレッシュキャストとして25歳以下の若手5人にも出てもらいます。実力があるけれどまだあまり知られていない若手を40人くらいピックアップして、その中から僕たちがちょっと先輩風を吹かせて(笑)、厳選したメンバーです。
出演者もストーリーも本当にいろいろなものをコラージュしているので、ミクスチャー的な楽しみかたができるかなと。
深読みしようと思えばできるし、単純にエンターテイメントとして「わー、なんかおもろいな」と楽しんでもらってもいい。
ただ僕はエンタメは “型(かた)” だと思っているので、演出的にきっちり作りこむところはこだわっています。
勢いだけの美しさというのもあると思うけれど、それでブレてしまってはダメだろうと。
いつもこういう作品(エンタメ作品)を作っていないので、慎重になっているのかもしれないですが、これから稽古を重ねてより精度を上げていきたいなとおもっています。


――これまでの実験的な作品を経て、劇団活動11年目にしてあらためてエンタメ作品に戻ってきたというところが興味深いです。

泉)
じつは第3回公演で劇団活動はやめようと思っていたんですよ。みんなそれぞれ生活もあるし、ちょうど就職うんぬんの時期だったし。
それで「最後にみんなでもう1本やろうよ」と作ったのが『サヨナラ』という作品だったんです。これが思いがけず賞をいただいたりして、もう1作続けなくてはならなくなって(笑)。
そんなかんじでずっとタイミングよくつながって、気がつけば10周年を迎えていました。
ちなみに僕らの第1回公演の上演会場は森ノ宮にあったプラネットステーションというところでした。しかもすごいエンタメ志向な作品で(笑)。だから今回ほんとうに「リターン・プラネット」なんですよね。
10年間、いろいろな作品を経てもう一度原点に帰ってきたというか、うん、baghdad cafe'のパワーアップした根幹が感じられる芝居になっているんじゃないかな、と思っています。





泉さん、一瀬さん、ありがとうございました!


今回取材させていただいたのは稽古に入ったばかりの時期でしたが、本番ではここにド派手な照明や映像が加わり、関西小劇場界の売れっ子衣装デザイナー・植田昇明さんの手による素敵衣装に身を包んだキャストが歌い、踊り、敵を斬る!とのこと♪

さらに TEAM marumushi 提供によるオリジナル楽曲や、殺陣・ダンス・歌などそれぞれに得意技を持つ客演陣とのコラボレーションなど、みどころ盛りだくさんの baghdad cafe'第14回公演『リターン☆プラネット on stage』

エンタメ!だけど、それだけではない
baghdad cafe'ならではの、一周まわったあとのエンタメステージ。

介護もベルばらも革命もギャグも涙もダンスも殺陣も全部盛り!な『リターン☆プラネット on stage』は、大阪 in→dependent theatre 2nd にて4月18日から21日まで上演!

このインタビュ―を読んでも、なにが何やらわからないというそこのアナタ!
その全貌はぜひ劇場でお確かめくださいませ(笑)!

<公演情報>
baghdad cafe' the 14th performance
『リターン☆プラネット on stage』
2014年4月18日(金)-21日(月) インディペンデントシアター2nd

作・演出:泉寛介

出演:
一瀬尚代
ハシグチメグミ
辻るりこ

有元はるか(はちきれることのないブラウスの会)
大江雅子
川添公二(テノヒラサイズ)
木下聖浩(kei’s Works)
是常祐美(シバイシマイ)
佐々木ヤス子
条あけみ(あみゅーず・とらいあんぐる)
殿村ゆたか(melon allstars)
成瀬トモヒロ
松本茜(meyou)
山根千佳(TAKE IT EASY!)
林遊眠(劇団ショウダウン)

※25才以下のフレッシュキャストが回替わりで出演!
18(金)19:30福谷圭祐(匿名劇壇)
19(土)14:00大牧ぽるん(激団しろっとそん/苺町)
19(土)19:00青沼リョウスケ(劇想からまわりえっちゃん)
20(日)14:00塩尻綾香(イズム)
21(月)19:30坂本アンディ(がっかりアバター)

baghdad cafe'公式サイト

ブログ「bagh日和」

おけぴ取材班:mamiko(文/撮影)  監修:おけぴ管理人

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