新国立劇場・舞踊芸術監督デイビッド・ビントレー氏、最後のシーズンもいよいよ大詰め!
4月19日からはビントレー氏渾身の2作品、
日本初演となる
『ファスター』、2005年、10年に続いての上演となる
『カルミナ・ブラーナ』が登場いたします。
“健全”と“背徳”、“スポーツマンシップ”と“愛欲”、一見正反対にも思えるようなこの2つの作品なのですが、HPのキャッチコピーを目にしたとき、一瞬“どちらのこと?”と迷ってしまうような感覚も・・・。
「人生や勝利は、偶然であるはずがない。
ただ、それは運命の女神の気まぐれ・・・」異なる角度から“人間”を描いた豪華2本立ての中から『カルミナ・ブラーナ』のリハーサルの様子をレポートいたします。
オルフ作曲のカンタータにのせて、運命の女神に翻弄される3人の神学生が世俗の欲望に飲み込まれていく様を描いています。ソリスト歌手3名と迫力の合唱によるドラマティックな音楽とビントレーのエネルギッシュで 洒脱な振付との融合は、忘れられない舞台経験を約束します。(作品HPより)
見るものをぐいぐい惹きつける圧倒的な迫力と、ほんの少しの手足の角度の違いで印象が激的に変わっていく稽古の臨場感は、取材を忘れて思わず見入ってしまうほど。
そんな密度の濃い稽古の様子をご紹介いたします。
黒のハイヒールに目隠しという出で立ちで登場する女神の圧倒的なダンスで始まるこの作品。
注目の女神には3演目となる
湯川麻美子さんと初挑戦の
米沢唯さんのダブルキャストというのも楽しみです(レポの最後にお二人からのコメントも!)。
この日は作品終盤の神学生3(タイロン・シングルトンさん)が運命の女神フォルトゥナ(湯川麻美子さん)に翻弄される<求愛>の場面を中心としたお稽古が行われておりました。
タイロン・シングルトンさん 湯川麻美子さん
アクロバッティックなパ・ド・ドゥ
そうかと思うとしっとりとした動きも!
動と静、二人の駆け引きに取材班も翻弄されました!
神学生の苦悩と欲望をしなやか&ダイナミックに表現する
ゲストダンサーのタイロンさん(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB))
この場面は実は“売春宿”の設定。二人のほかにも男女が誘い合うようなダンスが繰り広げられるのです。
女性の小悪魔的なかわいらしさ
気になる動きを見つけると、その場に駆けつけてアドバイスをするビントレーさん、手先や顔の角度ひとつひとつに丁寧に修正が加えられていきます。
印象的な女神の振りもビントレー氏の指導でよりメリハリがつきシャープな印象に!
こちらはダブルキャストの米沢唯さん
作品世界はなかなかスリリングな世界ですが、稽古の様子は和気あいあい。
その中いたるところでそれぞれの振りを確かめ合う姿が!
神学生3のダブルキャストは福岡雄大さん
(今年2月にはBRBの『パゴダの王子』にもゲスト出演した気鋭!)
決して遊んでいるわけではございません!
大柄なタイロンさんが目の前でぐるりと回転し・・・すごい迫力、どのような展開でこの振りが登場するのかもお楽しみに!
ここで作品に話を戻しますと!
古典バレエに60年代英国のポップカルチャーやリバーダンスを取り入れた動きと、中世の音楽の創り出す『カルミナ・ブラーナ』ワールドにぐいぐい心を奪われていると、いよいよクライマックス!
女神は冒頭と同じように黒いハイヒールを履き激しく踊ります!!
この日はピアノ伴奏に合わせてのお稽古でしたが、すでにゾクゾクする迫力。
これが本番では
東京フィルハーモニー交響楽団の演奏、そして
総勢60名の新国立劇場合唱団と
3人のソリストの歌・・・これはいったどうなってしまうんでしょう!
忘れられない感激体験になる予感です!!
思わず振りマネしたくなる、このポーズ!
米沢さんバージョン
お稽古終了後、女神フォルトゥナ役のお二人にコメントをいただきました!!
米沢唯さん 湯川麻美子さん
-白熱のリハーサルが続いている『カルミナ・ブラーナ』、湯川さんは初演からフォルトゥナ役をされていますが。
湯川)
今日も監督と“初演は2005年だったね”と懐かしくお話したんですよ。私にとって3度目の女神フォルトゥナ、今回はゲストのタイロンさんと一緒に新たな気持ちで臨みたいと思います。
この作品、何度やっても冒頭のソロが本当に緊張します。今はハイヒールと目隠しという試練がやってくるんだなという“緊張感”と、今日見ていただいた場面などだんだん気持ちがのってきてわき上がる“踊る楽しさ”の両方を感じています。-一方で米沢さんは今回初挑戦!
米沢)
私がバレエ団のオーディションに来たとき、ゼーゼー息を切らしているダンサーがリハーサル室から出てきて・・・“何をやっているのだろう”と思ったんです。実はそれが2010年の『カルミナ・ブラーナ』のお稽古だったのです。
その思い出の作品にまさかフォルトゥナで出られるなんて。今はとにかくすべて経験されている方がそばにいるというのがとても心強くて、分からないとまず麻美子さんに聞く!という状況です(笑)。-ダブルキャストの良さのひとつですね。
湯川)
私自身もこれまでもフォルトゥナを踊ったゲストダンサーの方などから多くのことを学んできました。そして今回も唯ちゃんが初役でやるのを見ていて、そこから刺激をもらったり、インスパイアされたり、逆に学んでいることがあります。
どんな役でもそうですが、自分以外のキャストとやることは本当に勉強になります。-タイプの違うお二人のフォルトゥナの見比べも楽しみです!
では、最後に湯川さんからお誘いメッセージを!
湯川)
オーケストラに加えて合唱団とソリストの歌手の方々も一緒にというのは新国立劇場バレエ団のレパートリーの中でもあまりないですし、その“饗宴”をたっぷりと体感していただける作品です。音楽、声と踊りが一体化したときの迫力とボリューム感をぜひお楽しみください。-お疲れのところ、ありがとうございました。
それぞれのフォルトナを楽しみにしています!
-こぼれ話-
あえて詳細は申しませんが、劇的な幕切れとなるフォルトゥナと神学生のドラマ。
あの瞬間って・・・どんな気持ちなのでしょう。
湯川)
あのシーンですね、私、このバレエの一番好きなところです(笑)!
米沢)
さすが!私も今は必死ですが“気持ち良い”と思えるように頑張ります!
おけぴ取材班:chiaki(文) おけぴ管理人(撮影)