2014/07/09 『ifi(イフアイ)』蘭寿とむさんインタビュー


新生「蘭寿とむ」始動!!

2014年5月に宝塚歌劇団を退団したばかりの、元花組トップスター蘭寿とむさん。
退団後初となる主演公演『ifi(イフアイ)』が9月、東京・大阪にて上演決定!

現代のNY・マンハッタンで映画監督として活躍する女性を主人公に、失ってしまった恋人にまつわる「もしもあのとき…」という選択の物語を、ダンスそして歌と芝居で描く舞台『ifi』。

演出を手がけるのは、宝塚OGの新たな魅力を引き出すことにも定評ある演出家・小林香さん。
共演にラスタ・トーマスさん、KENTO MORI さんら世界で活躍するダンサーを迎え、ひとつのストーリーから2つの結末が導き出される “運命の選択” を描く、“ifi” の世界とは……?

新しい世界に挑戦する蘭寿とむさんにお話をうかがってまいりました!



熱い男役から、美しい女優へ……
ひとつひとつの質問に真摯に答えてくださった蘭寿とむさん



――退団後初となる舞台に『ifi』を選んだ理由を教えてください。

蘭寿)
ダンスがメインのエンターテイメントショーと聞いて決めました。
やはり私はずっとダンスが好きだったので、共演者の方々も世界的に活躍するダンサーとお聞きして、私にとって新たな挑戦への第一歩になると思いました。
KENTO MORI さんには、退団公演のショー(『TAKARAZUKA∞夢眩』)の一場面を振付していただいたんです。これまでの宝塚にはなかったようなジャンルのダンスで、新しい男役の形だなと思いました。
それまで経験のなかったスムーズなステップ、銀橋でのムーンウォークのようなステップなどは家でも特訓しましたね。床のフローリングの上で(笑)。
退団公演の最後の最後まで “挑戦” でしたが、それが自分にとっても新鮮でしたし、お客様にも喜んでいただけたのではないかなと思っています。
今回 “共演” という新しい御縁をいただけたことがとても嬉しく、一緒に稽古場で作り上げていくことを楽しみにしています。


――今回もまた、新しい蘭寿さんのダンスがみられそうですね。

蘭寿)
男役っぽいかっこいいダンスもあると思いますが、演じる役が映画監督としてバリバリ働いているかっこいい女性という設定なので、男役のかっこよさとはまた違う色を出すのがとても楽しみです。
女性役として踊るということについては……うーむ、どうでしょうか(笑)。
いままでは “男役としてどうみせていくか” ということを徹底してやってきたのですが、今回はそれがないので、これまでよりも自分の中身がそのまま反映される、自分自身の感覚のままでいけるのではないかな、と思っています。

――女性役ということで特別に準備されていることなどありますか?

蘭寿)
もともと女性なんですけどね(笑)。
これまでは本当の自分がいた上で男役をしていて、退団後はもとの自分のまま過ごしているというだけなので、女性になるために特に何かをしているということはないのですが…。
(在団中と)何が変わったかというと、まあ、ヒールのある靴をはいたりとかネイルをしてみたりとか(笑)、それくらいですね。
ダンスとしても “男役としてみせる” という部分がないので、レッスンを受けていても素直に踊りを楽しんでいるというかんじです。

――今回は振付に、宝塚の先輩でもあり、蘭寿さんのダンスとも大変相性の良いANJUさん(安寿ミラさん)のお名前があるのが楽しみですね。

蘭寿)
ヤンさん(※)の振付は、ほんとうに素敵なんです!
男役時代とはまたちがうものになると思いますが、ご自身も女優として活動されていますし、私が退団後初めての舞台ということもわかってくださっているので心強いです。
宝塚時代からのファンのかたもヤンさんの参加をきっと喜んでくださっていると思います。
※ヤンさん…安寿ミラさん(=ANJUさん)の愛称


――ANJUさん以外にも複数の方が振付を手がけるとのことですが、蘭寿さんご自身で振付をするという予定は?

蘭寿)
ないです、ないです!
今はもう目の前のことへの挑戦あるのみ、です。

――宝塚時代に“ダンスの花組” を率いていた蘭寿さんと、ラスタ・トーマスさんをはじめ世界で活躍するダンサーとの共演が楽しみです。蘭寿さんにとってダンスとは?

蘭寿)
体を動かすことがとにかくうれしい、よろこびなんです。
ずっと、自分の感性をそのままぶつけられるものがダンスだったので。
退団後に少しお休みをとった後にダンスのレッスンに行って「ああ、私はやっぱり体を動かすことが好きなんだな」と改めて感じました。
今回もそのよろこびを感じながら作っていきたいなと思います。
もちろん宝塚時代とは全くちがうジャンルのダンスもありますし、技術的に求められるものも高いと思います。
苦しいこと、こなしていかなくてはいけないこともたくさんあると思いますが、どこかでそれをよろこびに変えて作っていければと。
いまは不安よりも楽しみのほうが大きいですね。


――在団中と変わらず、とてもスマートでいらっしゃいますが、お休み中にトレーニングなどはされていたんですか?

蘭寿)
退団してからの1ヶ月間は特になにもしていないです。
食べ過ぎないようには気をつけていましたけれど(笑)。

――退団後に、これまでやりたくてもできなかったことに挑戦されたりとかは?

蘭寿)
とにかく「何もしない」ということをしてみたかったので(笑)、退団した翌日は家から一歩も出ませんでした。
それまでは1日中予定がないという日がなかったので、「この日はぜったいに予定を入れない!」と決めて。
まあ結局は退団後にメールの嵐だったので、その返信に追われて1日が終わりましたけど(笑)。


――精力的に観劇もされていたとか。

蘭寿)
(宝塚)大劇場以外にも、花組の名古屋公演とか、バウホール… あ、パリ祭にも行きました(笑)。
宝塚以外にも小林香さん演出の『カルメン』、それから宝塚OGの方々が出演された『セレブレーション100!宝塚』! 豪華でしたねー! 素晴らしかったです。

――宝塚時代と舞台を観る目が変わったりしましたか?

蘭寿)
今はまだ宝塚の舞台は、客席に座っていても、ステージ側からのような気持ちで観てしまいますね。
ついこの前まで一緒にやっていた仲間なので気持ちがわかるというか。
これまでは舞台の上で自分の背中の後ろに感じていた仲間たち、その輝く姿を正面からみられる喜び。
これはきっと客席の中で私しか感じられないことなんだなと幸せに思いますし、舞台の上の仲間の姿が誇らしくもあります。

――退団後は個性をいかして自分らしい道を探したいとおっしゃっていましたが、なにか見つかりましたか?

蘭寿)
『ifi』の稽古も始まっていないので、これから先のことも含めて、はっきりとしたビジョンは実はまだ見えていないんです。
稽古場で鏡と向き合ったときに見えてくるものや、舞台に立ったときに感じるものを大事にして、それから自分の道を見つけたいなと。
そこからまたいろいろと考えていきたいなと思っています。

――退団後すぐの始動でファンのかたはいろいろと期待していると思います。

蘭寿)
「どんどんやっちゃって!」というかんじ(笑)?
私としてはとにかく “挑戦” を続けていきたいと思っていますね。

――宝塚時代に培った男役としての芸も持ち続ける?

蘭寿)
(今回の作品に)男役芸を持ち込むつもりはないんです。男役って、やっぱり宝塚のものだと私は思うので。
今回は“かっこいい女性” を表現したいですね。

――OGの中には退団後も男役を続けられる方もいらっしゃいますが。

蘭寿)
そうですね。
それは男役であることが似合っている、その方の個性に合っているからだと思います。
男役からガラッと印象が変わる方もいらっしゃいますが、それもそれが合っているからだと思うんです。
私の個性としては、宝塚を退団した時点でもう男役ではないんです。
今回の舞台では男役ではないけれどかっこいい女性、という感じを出していきたいですね。
もちろんそれ以外の色も表現したいと思っています。たとえばより女性らしい色や、パッション…。
演出の小林香さんがいろいろと引き出してくださると思いますので、それに乗っかって(笑)、さまざまな色に挑戦したいなと思っています。

――今回、結末がふたつある2バージョン上演ということも話題です。蘭寿さんも「あのときにあちらの道を選んでいたら…」と考えたりすることはありますか?

蘭寿)
今回の舞台のテーマでもある「選択」。
その言葉を聞いてまず思い浮かんだのは「宝塚音楽学校に行くか、大学に進学するか」という、これまでの人生で一番大きな選択のことですね。
私は高校3年生になってから音楽学校の受験を決めたんです。
それまでは大学に進学して、海外に留学をして、好きだった英語をいかせる仕事につきたいなという夢もあったので、もし音楽学校に入っていなかったらどんな人生だったんだろう? 高校生の頃に思い浮かべていた夢のようになっていたのかなとか(笑)。
もちろん想像でしかないんですけれど、そうやっていろいろ考えるのは楽しいですよね。

――蘭寿さんが音楽学校に入ってくださってよかったです! それでは最後にこの舞台を楽しみにしている観客へのメッセージをお願いします。

蘭寿)
新しく生まれ出る「蘭寿とむ」に会えるのを、私自身も楽しみにしていますので、みなさんもぜひお楽しみに。
結末もふたつありますので、両方を観ることをぜひ楽しみにしていらしてください。
劇場でお待ちしております!




この日は複数の取材班による合同インタビューだったのですが、それぞれの記者が質問するたびにその人の目をじっと見つめながら、ひとつひとつの言葉を大切に、真摯にこたえてくださった蘭寿さん。
バリバリの男役から、しなやかな女性へと自然にギアチェンジしたその姿に、おけぴスタッフも改めて心を奪われました!

「挑戦」という言葉を何度も繰り返していた新生・蘭寿とむさんが魅せる新しい世界『ifi』は、9月5日から東京・青山劇場で、9月26日から大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されます。

このインタビュー後に発表された全キャスト、そして詳細なストーリーはこちらをチェック!

日韓で活躍中のパク・ジョンミンさん、オフ・ブロードウェイ舞台で活躍中のジュリアンさん、ヴォーカル・グループ「LE VELVETS」メンバーの黒川拓哉さん、日本人として初めてシルク・ドゥ・ソレイユにダンサーとして参加した辻本和彦さん、そして宝塚の振付も手がけるダンサー・SHUNさんなど、化学反応が楽しみすぎる顔ぶれが発表されています。さらに9月13日、20日にはアフタートークショーも開催!

ますます、どんな舞台になるのか想像もつかなくなってきた『ifi』。
力強いダンサー・パフォーマーを率いた、蘭寿とむさんの新たな輝きを劇場で確かめましょう!!



【公演情報】
『ifi』
2014/9/5(金) ~ 2014/9/21(日) 青山劇場
2014/9/26(金) ~ 2014/9/28(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

<スタッフ>
作・演出:小林香
音楽:スコット・アラン

<出演>
蘭寿とむ/
パク・ジョンミン/A:ジュリアン/B:黒川拓哉[LE VELVETS]/ラスタ・トーマス/辻本知彦/
ケント・モリ/


<あらすじ>
ニューヨーク・マンハッタンで、単館系の映画監督として数々のヒット作を生み出していたユーリ(蘭寿とむ)は、映像カメラマンのヒロと一緒に暮らしていた。仕事に明け暮れているユーリに対し、ヒロは二人の将来のこともプランしたかったが、それでも2人は平和な日々を送っていた。あの事件が起こるまでは……。
ユーリとヒロがよく行く食料雑貨店<This or That>には一風変わった男・ケントがいる。彼は占星術の占いができるため、悩みを抱えた客たちが彼のもとに毎日のように訪れていた。
ある日のこと。<This or That>の帰りに、ユーリはとヒロは若者の喧嘩に巻き込まれてしまう。とっさにヒロからカメラを奪い取って撮影し始めるユーリ。ヒロは危険を感じて撮影するユーリを止めようしたが、彼女はヒロが止めるのを聞かずに撮影を続けた。ユーリにとってはトラブルも恰好の映画のネタになるからだ。案の定、ユーリの行動に怒った若者たちはふたりに襲いかかった。そして―――。
この日、ユーリはヒロを永遠に失った。
激しい後悔の念に苛まれたユーリは事件直後から<This or That>に通いつめ、ケントの占いに依存していく。あの事件を起きたのは、自分が撮影を続けたから、選択を誤ったからだと自分を責め、自分の意志で物事の選択ができなくなったのだ。
そんなユーリのことを、心の底から心配している姿があった。ヒロの弟・パク。彼はユーリを映画監督として尊敬し、ひそかに恋い慕っていた。
ある日、<This or That>で、ユーリは自分自身に問いかける
「If I……。もしも、あの時、もう一つの選択をしていたら……。それが、ifiの世界。もう一人の自分に会える世界。ユーリはその世界に行きたい?」
もしもあの時の選択を選び直せるのなら。 ヒロに逢えるのなら。ユーリはケントの導きで異世界「ifi」へ堕ちていく――――。
広がっていたのは、占星術と彼女が撮った映画の世界が混ざり合った摩訶不思議な世界。『マスカレード』『エステュディオ』『キャバレティスト』そして『オルフェ』。しかも、登場人物は、それぞれに事情を抱えた<This or That>の客たち。
「ifi」の世界で、ユーリは何を知り、何を思うのか。
そして、その先にあるものは……。
Aバージョンでは恋人を取り戻しにifiの世界へ飛び込んでいく!
Bバージョンでは過去を変えるためにifiの世界に堕ちていき、驚愕の真実と向き合う!
A or B?
あなたはどちらの扉を開きますか?

梅田芸術劇場公式サイト
『ifi』公式サイト



  
おけぴ取材班:おけぴ管理人(撮影)、mamiko(文)  監修:おけぴ管理人

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