東京の二つの劇場が手を携え、当代市川猿之助が歌舞伎の真髄を魅せる!この秋、新橋演舞場と明治座にて長い長い
歌舞伎史上初の『市川猿之助奮闘連続公演』が行われます!
市川猿之助さん
新橋演舞場と明治座が合同記者会見?!
本来、競合競争相手である東京の二つの劇場が協力協調!!
昨年の歌舞伎座新開場で大きな弾みがついた歌舞伎界が次に打ち出したのは大胆な
奮闘連続公演。
両座小屋付きのお客様の交流、そして歌舞伎ファンのさらなる拡大を目指した英断、そこで大役を担うのは当代きっての人気役者、四代目市川猿之助さん。
「演舞場、明治座と澤瀉屋に大変ゆかりのある両座におきましての奮闘公演、
三代猿之助の四十八撰の代表的な通し狂言を三本となかなか上演されない
『夏姿女團七』、澤瀉屋一門による
『高時』『俊寛』というラインナップでお届けします。
10月歌舞伎座では中村屋さんの追善、11月は高麗屋さんの追善と歌舞伎界で大切な公演が同時上演されるわけですが、ともに
我々の目指すところはひとりでも多くのお客様に歌舞伎を知っていただく、歌舞伎の魅力を伝えたいということです。名古屋での公演も含め、歌舞伎界が一丸となって少しでも活性化できるように、その一助となるべく奮闘公演をさせていただきます」
明治座 三田芳裕 社長 市川猿之助さん 松竹 安孫子正 副社長
--それぞれの演目を選んだ理由「チケットが売れるだろうと、それが一番です(笑)」※もちろんそれだけではございません!演目解説はレポ後半で!
--猿之助歌舞伎新時代のスタートにあたり、先代の猿之助歌舞伎のコンセプト3S(ストーリー、スピード、スペクタクル)をどう評価し、今後どう進めていくのか。「先代が作り上げてからだいぶ時が経ち、当時スピーディーだったものも遅く感じる、そこには
大変な時間軸のずれがございます。それを解消するために常に洗いなおしが必要です。
我々は三代目のやっていることを真似るのではなく、その精神を学ばなくてはなりません。彼が何をしようとしていたのか、それを現代人の我々で考える。そのヒントは初心に立ち返ることにあり、すなわち
初演に戻させてもらいます。また、一番の特徴となるのは私は
女形が出身ですので、そこにも重きを置くということです。『四天王楓江戸粧』では伯父がやらなかった小女郎狐の精を私がやらせていただき、『五十三驛』では与八郎の妹お松という女形を復活させます。
スタッフに関しても、三代目猿之助を支えてくださったスタッフに加え、スーパー歌舞伎セカンドで照明を担当してくれた原田保さんに四代目猿之助のスタッフとして入っていただき
新旧混合でやらせていただきます。
これがたとえば前名の市川亀治郎でしたら作品に手を入れるということはできませんでした。しかしながら私はもう猿之助ですので自由に手を入れさせていただきます。
三代目猿之助の精神を四代目猿之助の肉体を使ったらどうなるのかをお示しするにあたり、多分に
四代目猿之助色が入ることになるかと思います」
“澤瀉屋っ”思わず掛け声をかけたくなるような頼もしい言葉。2か月に及ぶ奮闘公演には並々ならぬ力が必要かと思いますが、それには。
「普段から気心の知れた澤瀉屋一門、また長年澤瀉屋を支えてくださった歌六さん、錦之助さんはじめ諸先輩に加え、竹三郎さんにも力を添えていただきます。不安はございません」
猿之助さんの大奮闘を期待するとともに、同時代を生きる幸運を味わうために劇場に足を運び現代の歌舞伎の魅力に触れたい!そう思う製作発表でした。ここからは演目についての解説をどうぞ。
“十八役早替わり”“宙乗り”と盛り上がる演目が並びます。
【猿之助さん&松竹安孫子副社長による通し狂言作品解説!】
<10月新橋演舞場では昼夜ともに三代猿之助四十八撰より>昼公演『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』「本来は将門の物語がついているのですが、忠文清姫の物語を抽出したやり方で上演します。この演目は不動の地位を築いた人気狂言です」(猿之助)
「当代は一度博多座で上演しておりますが、その時よりいずれ東京でと考えておりました。このたび二度目の上演でそれが叶いました」(安孫子副社長)
夜公演 通し狂言『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』「伯父の猿翁が言う
“猿之助通し狂言三強”は『伊達の十役』『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』そして『獨道中・・・』です。『伊達の十役』は成田屋さん(市川海老蔵さん)、高麗屋さん(市川染五郎さん)にもやっていただいていて、『岩藤』は私もやっております。そこで最近初演の形でやっていない『獨道中・・・』にしました。
最近では15役に減っておりますが、私のモットーは初演に戻してやる!ですので、今回は
18役。初演当時、
南北が目指した53驛を53場でやります」(猿之助)
<11月明治座では上演が稀な傑作と四十八撰より!>昼公演 『夏姿女團七(なつすがたおんなだんしち)』(上方歌舞伎の代表作『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』の舞台を大阪から東京に移し、おもだった登場人物も男から女に書き換えた傑作)
「先の富十郎さん以来、受け継いでいらっしゃる方があまりおられず、上演が珍しいということで決めました」(猿之助)
「昨年の大阪での公演では坂東竹三郎さんが敵役に回り、ご自身がやってこられた女團七を猿之助さんに継承してほしいということで2日限りでしたが上演が実現した演目です。面白い狂言であると共に
明治座さん界隈が舞台になっていることもあり、このたびの上演を決めました」(安孫子副社長)
夜公演 『四天王楓江戸粧(してんのうもみじのえどぐま)』「国立劇場で一度やったきりで
再演は絶対に不可能だと言われていました。
不可能と言われたらやりたいのでこれを選びました(笑)」(猿之助)
「平成8年に三代猿之助さんが国立劇場で復活させた作品です。そのときは昼夜通しての壮大な復活狂言でしたが、今回は刈りこみ、ある場面を抽出し
夜公演に対応できる作品に作り直しております」(安孫子副社長)
--不可能を可能にする秘策は。「ヒントになったのは(10月昼公演の)清文清姫編だけを抽出した『金幣猿島郡』です。
こちらも将門のお話ですが、土蜘蛛の精の場面と将門の場面に大きく分けられます。今回は
土蜘蛛のほうに焦点を当て、それを抽出して構成し直しました。明治座さんは4時開演でなるべく早く終わったほうがいいですよね。そのあたりも試行錯誤しております(笑)」
(猿之助)
10月、11月の猿之助さんの大奮闘に乞うご期待!!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人